安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.1
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大手スポーツ用品メーカー、ヨネックスがロードフレームを作り始めた。このロードバイク界に異業種参入型ブランドがまた一つ誕生したのである。第一弾は650gの超軽量カーボンフレーム、カーボネックス。設計担当者へのインタビューを交えつつ、この純国産フレームの真実に迫る。
真摯な開発姿勢
アジアの工場があらかじめ用意しているフレーム、いわゆるオープンモデルのライセンスを買い取り、ブランドロゴを貼り付けていかにも「我が社が開発しました」風のキャッチコピーを付けて作りニューモデルとして売り出す。もしくはコンセプトや販売価格だけを決め、フレーム設計は工場側に丸投げしてしまう。
モノの良し悪しは別にして、そんな人任せなやり方が半ば当たり前になってしまった昨今の自転車業界で、5年間もかけてロードフレームをゼロから真面目に作ってきたメーカーがある。2014年に自転車業界に参入したヨネックスである。
説明するまでもないだろうが、ヨネックスとはバドミントン、テニス、ゴルフ、スノーボードなどのスポーツ用品を製造・販売する日本の大手スポーツ用品メーカーである。なぜ、そのヨネックスがロードフレームなのか。広報資料にはこんな説明があった。
「長年にわたり培ってきた高いカーボン加工技術を新たな分野で広く活用するべく新事業を模索しておりましたが、この度、スポーツメーカーとして、人々の健康増進に寄与できる事業であり、スポーツとしても人気が高く愛好者が増大している自転車・スポーツサイクル事業への進出を決定いたしました」
いきなり世界最軽量クラス
ヨネックスがカーボンを用いて製造している製品は、バドミントンラケット、テニスラケット、ゴルフクラブ、スノーボードなど多岐にわたる。フレームメーカーとしての出自は、ゴルフシャフトの設計・製造で培われたカーボン製造技術を活かしたグラファイトデザインに近いといえるだろう。
マーケティングや構想期間を含めると、開発期間は5年間にもなるという。そうして出来上がったのが、カーボネックスという車名のフルカーボンロードフレームである。
ここもグラファイトデザインと似ているが、違うのはコンセプトである。グラファイトデザインは「カーボンならではのしなりを活かす」といういささか分かりにくいコンセプトだったが、ヨネックスが目指したものは「高い戦闘力を持った軽量レーシングフレーム」という単純明快なもの。重視したのは軽さなのである。
フレームの単体重量は650g。自社開発の第一作目にして、いきなり世界最軽量クラスを送り出したのだ。695gだいや670gだウチは650gだなどというg単位の軽量化戦争に実性能上の大きな意味があるとはどうにも思えないが、新参メーカーとして市場にインパクトを与えたことは確かである。
■安井行生のロードバイク徹底評論 第6回 YONEX CARBONEX vol.2へ続く