強豪ホビーレーサー・松木健治の秘密に迫る〜オレのポジション〜
目次
仕事をしながら忙しい時間の合間を縫ってトレーニングし、プロ顔負けの実力を発揮するレーサー達がいる。人は、彼らを”強豪ホビーレーサー”と呼ぶ。そんな彼らの体を解剖し、そのポジショニングの秘訣やトレーニング・コンディショニングの秘訣を紹介する連載を開始する! 今回は、「ツール・ドおきなわ」などで活躍するロードレーサー、松木健治さんだ。
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ストーリー 〜ロードレースで上位に君臨し続ける〜
松木さんは1979年生まれで現在は埼玉県に在住。都内の会社に務めるフルタイムワーカーだ。2016年には”ホビーレーサーの甲子園”と呼ばれる「ツール・ドおきなわ市民210km」で5位に入っており、2017年は王者・高岡亮寛さんに僅差で迫り、見事2位に輝いた。2018年には5位に入っている。その他、JBCFのE1カテゴリーでは20勝以上を挙げ、2018年からJプロツアーにも参戦している。強者のロードレーサーとして知られる。所属チームはVC福岡だ。
フィジカル 〜数値上では測れない強さを秘める〜
まず、松木さんの身体面(フィジカル)について見ていこう。シーズンによって多少前後するそうだが、彼の身体データはこれだ。
身長:168cm
体重:58kg
FTP:306W
最大出力:約1100W
脚質:オールラウンダー
身長はそれほど高いわけでもなく、体重も軽量な部類に入る。最近はFTPが300Wを超えるホビーレーサーが珍しくなくなっているので、この306Wという数値も突出したものというわけではない。
それでもロードレースでこれだけの成績を残しているのには、数値では測れない走りのうまさといった強さが秘められているのだろう。また、高い柔軟性を持ち深い前傾を取れる(後述)ことも、彼の強さの秘訣の一つとなっているようだ。
フォーム 〜上体が地面と並行になるほど前傾が深い
続いて、彼のフォームについて見ていこう。肘を深く曲げ、ブラケットでのエアロフォームを取るとかなり前傾が深くなる。下ハンドルを持ったときも同様だ。「集団の中で走っているときはブラケットを持つことが多く、先頭に出て風を切るときは下ハンドルを持ちますね」と松木さん。
背中の曲がり方にも特徴があり、腰のあたりからカクッと深く折れ曲がるように見える。別府史之選手や岡篤志選手のタイプに近いようだ。正面から見ると細身に見える松木さんの体型だが、バイクに乗る姿を横から見ると、かなり体幹部が太いのが見て分かる。
特徴 〜前面投影面積を極力小さくする走り〜
走るときに気をつけていることや意識していることを聞いた。
「気をつけているのは、できるだけ前面投影面積を小さくし、小さい力で高いスピードを維持できるようにすることです。ですから、深い前傾を取ることに合わせ、肘を体の内側に引いたりし、上体をコンパクトにまとめるようにしています。
一般のライダーは真似すると危ないのでお勧めしませんが、(上の写真のように)肘をハンドルバーに置いてTTポジションで走ることもします。集団の先頭を引くときには多用しています」。
身体データの数値からだけでは分からない松木さんの強さは、こうした取り組みからも生まれているのかもしれない。
バイク 〜きわめてオーソドックスなセッティング〜
バイクのセッティングや機材選びはどうしているのか? まず、彼のセッティングとスペックを見ていこう。
●セッティング系のデータ
サドル高:670mm
サドル後退幅:約30mm
ハンドル-サドル落差:約100mm
クランク長:167.5mm
ステム長:90mm
ハンドル幅:400mm(芯-芯)
ギヤ:フロント53-39T/リヤ11-28T
タイヤ幅:23mm(前後とも)
空気圧:6.8気圧(前後とも)
●スペック
フレームセット:コルナゴ・V2-R
メインコンポ:シマノ・デュラエースR9000 Di2
ホイール:カンパニョーロ・ボーラワン35クリンチャー
タイヤ:コンチネンタル・グランプリ5000(写真は旧型だがふだんはこれ)
ハンドル:スペシャライズド・Sワークスシャローベンドカーボンハンドルバー
ステム:シマノプロ・PLTステム
サドル:セラサンマルコ・マントラカーボンFX(廃盤品)
シートポスト:フレーム専用品
ペダル:シマノ・PD-R9000
パワーメーター:パイオニア・SGY-PM910Z
サイクルコンピューター:パイオニア・SGX-CA500
ハンドル-サドル落差はさすがに深いが、全体的に身体的特徴に合わせた相応のセッティングになっていることが分かる。機材選びも、廃盤品のサドルを長年愛用し続けていることを除けば、きわめてオーソドックスにまとめている。
「このサドルだけは手放せないんですよね。最近は前下り気味にセットする人が多いですが、私は状況に合わせて腰を前後させるので、水平にしています。前後位置は前乗りでも後ろ乗りでもない位置となるようにしていますね。
ハンドルも、ブラケットが地面に水平かやや前上がりくらいになるように、オーソドックスにしています。幅は肩幅に合わせています。クランク長が167.5mmなのは、試してみてこれに落ち着いたから、というところですね。
割と安価な普通のステムがついているのは、軽くて頑丈だから(笑)。機材にマニアックにこだわるタイプじゃないですね」。
トレーニング 〜距離を乗り込むことが基本。平日は高強度に〜
気になるトレーニング方法は?
「基本は距離を乗り込むことです。月の走行距離は2000kmを超えますね。
平日は朝5時30分から出勤前までトレーニングします。外も走るし、ローラー台で走ることもあります。基本のメニューは20分間一定の強度を決めて走るペース走と呼ばれるものです。3分〜5分のインターバルトレーニングも取り入れています。
休日になると5〜6時間は走っています。その場合、平日よりも強度は落としめにしていますね」。
かなりのトレーニング量であることが分かる。長距離のレースで力を発揮できるのには、こうした乗り込みが生きているようだ。
日常生活 〜仕事はかなり忙しい。しかしトレーニング時間を確保〜
これだけ多くのトレーニングを行う松木さんではあるが、その時間が潤沢にあるわけではない。会社員で家を出る時間は早め。通勤は片道50分程度で、帰宅は遅い時間になることはザラだそうだ。
そんな中でもどうにか時間を捻出し、トレーニングに励んでいるのだ。なかなか真似できるものではないが、ぜひとも見習いたいところだ。
コンディショニング 〜サプリをうまく活用する〜
トレーニングには、当然ながら体のケアも重要だ。どのようなことに取り組んでいるのか。
「まず、栄養面に気をつけています。プロテインはあまり飲まず、食事でしっかりと栄養素を取ることを前提としていますが、トレーニング後にはBCAAと糖質摂取を欠かさず行っています。BCAAとしては、各社から出ているサプリをうまく活用しています。飲まないのに比べて、翌日の筋肉疲労がかなり軽減されていると感じます。
食べるものは多少気を使いながらも、基本は食べたいものを食べてストイックになりすぎないようにしています。その方が長くトレーニングを継続できて良いかと。食事制限をやり過ぎて結果が出ずに消えていった人もたくさん見てきたし……。
もう一つ気をつけているのはリカバリーのためのボディケアですね。まずストレッチをお風呂上がりか、寝る前にできるときはやります。他に、足がむくむとパフォーマンス落ちるので、足を上げて寝たりコンプレッションソックスを履いたりもします。
年齢を重ねるごとに疲労回復が追いつかなくなってきているのと、代謝が落ちてきているので、いろいろと頼るものが増えてきてますね(笑)」。
サプリメントにはどんなものがある?
トレーニング後にいろいろなサプリメントを摂取しているという松木さん。サプリメントといっても、自転車乗りにお薦めなのはどんなものがあるのか。
代表的なのは味の素・アミノバイタル®シリーズだ。その中でも、松木さんのようにトレーニング後やレース後に摂取するのにお薦めなものとしては、次の2つがある。ぜひ試してみよう。
「アミノバイタル® GOLD」
ロイシン高配合BCAAなど、必須アミノ酸4000mg配合の最先端スポーツサプリメント。顆粒タイプで携行に便利で、トレーニング後やレース後サッと取り出して飲みやすい。
「アミノバイタル® GOLD」ゼリードリンク
ゼリードリンクタイプの「アミノバイタル® GOLD」。カロリー135kcalが含まれ、エネルギー補給も兼ねることができる。