東京五輪MTBテストイベント 他に類を見ない新設コースにてネフとシューターが金
目次
観客のハンドタッチに応えるニノ。気さくなキャラクターで、日本にもファンが多い
初公開の伊豆MTBコースで行われた五輪テストイベント、美しくも難しい新コースで女子はヨランダ・ネフ(スイス)が、男子はニノ・シューター(スイス)が優勝した。日本勢は松本璃奈が女子34位、山本幸平が男子35位となっている。
MTB競技史上類を見ない伊豆MTBコース
1996年のアトランタ五輪から正式競技となったMTB-XCO(クロスカントリー・オリンピック)競技は、五輪が開催されるごとに、そのコースの方向性自体が進化する傾向にある。主にTVなど画面で魅力的に映るようデザインされ、それによって競技性自体も進化する。今度の東京2020に向けた大きな進化の方向性は「激坂と岩場をコンパクトに」。
伊豆MTBコースは、日本サイクルスポーツセンターの敷地内にある。先のリオ2016五輪と敷地の大きさを比べると半分程度だ。そこに約4km、高低差180mのコースを作った。リオでのコース長4.85kmと大きな差はない。
《天城越え》、《浄蓮の滝》、《わさび》、《踊子歩道》といった、伊豆地域にちなんだ名前が岩場、上り坂などのセクションにつけられる。走りも見た目も映えるよう、美しくデザインされている。それらがセンター内にほぼ一望できる範囲に収められる。「本戦ではこれらセクションの映像が、その名称と伊豆の背景と共に、世界に配信されていくだろう」といった発表もある。なお静岡県は五輪後も伊豆MTBコースを存続させ一般公開することを昨年に発表している。
「休むところがない、4km盛り沢山」だと男子日本代表で出場した山本幸平が語った。そのコースに合わせ、選手が乗るMTBのほとんどが、前後サスペンションのフルサスだ。日本の男子代表は山本に加え平林安里、前田公平、平野星矢の4名。女子代表は今井美穂、川口うらら、松本璃奈の3名が出走。レーススタートは来年の本戦と同じく女子が11時、男子が14時となった。
ネフが1周目から独走、スイス勢が上位獲得
女子レースはスタートループに加えてコースを4周。スタート直後に待つ『天城越え』の激坂にて、スタートパックは2列に伸びる。さらにスラロームの要領で、速いライダー順に1列に収まって行く。トップに出たのはヨランダ・ネフ(スイス)。ここから『浄蓮の滝』での岩場ダウンヒル、『散り桜』での2mほど落下するドロップオフで技術のふるい落としが終わり、3周目にはネフをトップに、シーナ・フライ(スイス)、アン・テルプストラ(オランダ)の順に。
それぞれが1分前後の差を開けて進み、ネフの独走は揺るがない。「レースを通してとてもいい気分だった」というネフが2位に1分16秒差をつけてのゴール。「2周目から自分のペースで走るだけでしたが、このコースではそれが一番大事でした。激上りが繰り返すので、自分の体重と脚力に合うスピードを維持しなくてはいけなかった」(ネフ)
スイス女子選手は2位、4位、6位と上位を占めた。「合宿が多く、チームとして動くことが多いからでしょうか。コーチの指導もよく、みんなでレベルが上っていく感触がしています」と2位のフライはその理由を語った。日本女子選手は松本が34位、今井が35位、川口が37位となった。「昨日、2時間半かけてやっと1周できたようなコースだった」(今井)、「初日の試走で転倒、そうなると挑戦したいところも挑戦できなかった」(川口)と、コース難易度とレースの悔しさを口にした。
終始リードしたシューターが終盤でアタック
スタートループ+6周となる男子レース。『天城越え』からのシングルトラックのため、スタートから前に出ないと不利になる。いち早くトップに出たのは、リオ2016の金メダリストで現世界チャンピオンでもあるシューターだ。ループを終え、1周目に入ってから、見てわかるほどの勢いでペースを上げていく。ジャンプのスタイルも超一流であるシューターは、観客の声援を受けながら、7名パックの先頭となってひた走る。
「実はこのとき驚いていた。早くに後ろは千切れるだろうと思っていたけれど、ストレートでの向かい風でまとまってしまい、リードを奪うのは難しかった」(シューター)
後方パックに20秒ほどの差をつけて走り続けた先頭の動きに変化が見えたのはラスト2周。シューターが先頭から下がり、ヘンリケ・アバンチーニ(ブラジル)がトップを引く。全体速度も緩み、後方選手が上がり8名に。
そのままゴールストレートの向かい風をパックで受けた最終周回の天城越え前で、シューターがアタック。その直後にルカ・ブライドット(イタリア)が食らいつき、2名で後方を引き離す。
そしてゴールストレート直前の激上りで、ブライドットはアタックを掛ける。ギアを重くかけ、一気に前に出ようとするも「そのギアが重すぎて失敗、足をついてしまった」(ブライドット)。
無念のブライドットを、それまで後方6位から、前方選手一人ひとりミスを突いて着実に順位を上げたヴィクトール・コレツキー(フランス)が抜き2位に、前のシューターの直後へ付きゴールスプリントへ。
「ニノはスプリントで世界一なのは、みんな知っている」と、結果2位に終わったコレツキーがレース後に語ったように、シューターは余裕を持ってスプリントに勝利、前回のリオに続き五輪テストイベントを勝利で終えた。
日本選手たちは、山本が同一周回でのゴール、8分38秒遅れの35位。「今感じられることを感じ、本番に向けて練習方法などを見極める時間のスタートだと感じています。本番は真夏、本当に暑くなると思うので、体を冷やす方法など考えていかないとと思っています」(山本)。前田が40位、平林が42位、平野が43位となっている。
リザルト
1位 ニノ・シューター (スイス) 1:17:18
2位 ヴィクトール・コレツキー(フランス) +0:02
3位 ルカ・ブライドット(イタリア) +0:10
35位 山本幸平 +8:38
40位 前田公平 -1LAP
42位 平林安里 -3LAP
43位 平野星矢 -4LAP
MTBクロスカントリー 女子
1位 ヨランダ・ネフ(スイス)1:16:12
2位 シーナ・フライ(スイス) +1:46
3位 アン・テルプストラ(オランダ) +2:30
34位 松本璃奈 -1LAP
35位 今井美穂 -1LAP
37位 川口うらら -2LAP