安井行生のロードバイク徹底評論 第3回 RIDLEY FENIX vol.3
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フレーム価格10万円台ながら、ロット・ベリソルのメンバーを乗せて過酷なパリ~ルーベを走るフェニックス。プロトンの中で最も安価なフレームとして有名なリドレーのミドルグレードモデルである。この不死鳥は40~50万円クラスを蹴散らすハイエンドキラーなのか、それとも値段相応の凡車なのか。歴代のリドレーミドルグレードを試乗してきた安井がシゴき倒す。
予想に反して丁寧な作り
今回はちょっとした嫌がらせのつもりでファイバースコープをフレーム内部につっこんでみた。低価格の理由を暴いてやろうと思ったのだ。しかし、予想に反してフレーム内部は非常に綺麗。価格からしてバリやらブラダーやらがどっさり残っているのかと思っていたら、チューブ内壁はスムーズで驚いた。おそらくフレーム内壁の綺麗さと実性能との間に関連性はほとんどないだろう。しかし、フェニックスは「安いんだから作りが雑でもしょうがねぇだろ」ではなく、丁寧な作り方をしていることが分かる。
疑問が残るジオメトリ
細部の造形やグラフィックの仕上がりは丁寧で、ルックスは価格を超えたクオリティだと言っていい。この価格でこの質感は嬉しい。ただ、ジオメトリには疑問が残る。チェーンステー長やフォークオフセットが全サイズで共通なのは、価格帯を考えれば致し方ないところ。ヘッドチューブが長めなので個人的には不満だが、ヘッドパーツやステムの工夫で何とかなる範疇。問題は、リーチである。
一般的なロードフレームでは、小さいサイズになってトップチューブが短くなればなるほどシート角が立ってくる。起きたシートチューブは、当然ながらトップチューブを前方に押し出す。これがとんでもない逆転現象をもたらすことがある。例えばトップチューブ515mm・シート角75度のXSサイズと、トップチューブ520mm・シート角74度のSサイズのフレームがあるとする。トップチューブは5mm短くなっているのだが、シート角が1度起きるとトップチューブ全体を1cmほど前方に押してしまうので、XSサイズのほうがハンドルが遠くなってしまう。ここに、背の小さい人はXSサイズよりSサイズを選んだほうがいいという信じがたい逆転現象が発生する。
見た目だけの水平トップチューブ長に騙されてはいけない。フレームサイズの目安とすべきは、シートチューブ長ではなくトップチューブ長でもなく、BBを通る垂線からヘッドチューブ中心までの水平距離=リーチである。
フェニックスにおいてリーチの逆転現象が起きているのはXXSサイズとXSサイズ。XXSのリーチが380mmであるのに対し、XSのリーチは375mm。大きいはずのXSサイズのほうがりーチが短くなってしまっているのだ。コストの問題でフォークオフセットを統一しなければならないのにフロントセンターを確保する必要があるなどの事情は分かる。しかし、ヘッドチューブ長の長短があるにせよ、小さいサイズのほうがハンドル位置が5mmも遠くなってしまうというのはいかがなものか。このリーチの逆転は、フェニックスだけでなく多くのロードフレームに見られることだが、改善を望みたい。小柄なライダーは注意されたし。