2010年8月号 泊まりがけで行く!快走ロード旅入門

泊まりがけで行く!快走ロード旅入門

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応用 悪いクセは徹底回避!上りはフォームが命|上りでは平地よりフォームを強く意識する
ペダリングはトルクでなくリズムとカカトが大切

上りが苦手な人、上りに入ったらすぐに息が乱れて、ついには降りてバイクを押さなければならない人にとって、今のヒルクライムブームは理解できないだろう。「なんでわざわざ苦しみに行くんだろう」と思い、同じ人間ではないのでは?とも思うかもしれない。しかし、それでも裏では、もっとラクに上れるようになりたい! もっと速くなりたい!と思っているはずだ。平地ではそんなに違わないあいつが上りではどうしてあんなに速いの?という疑問は、誰もが抱いたことがあるだろう。
「何が違うの?」。その答えは、ひと言で言うと\\\\\\\\\\\\\\\”マイペース\\\\\\\\\\\\\\\”で走っているかどうかである。テレビで見るツールの山岳地帯では、まるで平地のように飛んでいく選手たちの姿が映し出される。集団で上っているときには息を乱しているようにも見えない。レースにおいて選手たちはマイペース以上のハイペースで走っていることも多いが、長距離のレースでそのハイペースを作り出すのは、マイペースで走ることがベースにあるのだ。
マイペースで走るテクニックを身につければ、いつもの上りを今までよりラクに上ることができるし、上り好きになってしまうかもしれない。今回、上りの極意を伝授してくれるのは宇都宮ブリッツェンの廣瀬佳正選手。「休むダンシングなら宇宙まででも上っていけますよ!」と笑う廣瀬さんに聞いた『マイペースで上るための』、『上りで効率よく走るための』テクニックを身につけてしまおう。

 

マイペースで走るのは上級者でもなかなか難しいし、初級者にとってはそれを知ることも簡単じゃない。マイペースがわからないのに、「上りではマイペースを維持して」などといわれても、それができれば苦労はない。「マイペースの基本は自分にとって無理のないスピードですが、それが何㎞なのかはっきり言える人は少ないでしょう。そこで、まずは自分の能力がどの程度なのかはっきりさせる必要があります。心拍計とケイデンスメーターを使って、『39×19Tまたは、34×17Tのギヤ比で、1分間にペダルを85回転』。それを平地で1時間維持できるかをチェックしましょう」。これが〝上り力?のある程度の目安になると廣瀬さんは言う。「これができて、心拍数が最大心拍数の80%以内(人によって違うが130?150bpm)で収まっていれば、上りの基礎はできていると思います。スピードではなく、ケイデンスと心拍を知ることが大切なんです。あとはそれを維持することが大切ですね。
頑張ればできる人もいるでしょうし、軽い人はもっと重いギヤでもいいです」
それを維持するために、心拍数が80%を超える人もいるはずだ。「その場合はギヤ比を下げて、回転数と心拍数が維持できるところを探すことになります。ある人は21Tかもしれないし、23Tになるかもしれませんが、心拍が維持できるその負荷がマイペースだと覚えておきましょう」

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「上りを走るのに平地の練習?」と疑問を持つ人もいるかもしれないけど、走ることの基本である、『一定の速度、一定の回転数、一定の負荷』は平地でこそ身につけやすい。上りに強い選手でさえ、トレーニングでは平地がメイン。負荷をかけることで、上りはある程度走ることができるようになるのだ。そのための基本を身につけよう。

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初心者の場合、ペダリングそのものに慣れていないこともある。基本とされる90回転は少し速すぎ! かといって80回転では少し遅いので、85回転を目安にするといい。慣れないうちは速い回転がツライかもしれないが、まずは慣れることから始めよう。

慣れてくれば85回転というのは、無理して回す回転数ではないので、回転が上がってしまうようならギヤ比を上げ、頑張って踏み込むようなら軽くする。そのときの心拍が最大心拍の80%(130 ~ 150bpmほど)がマイペースの目安になる。

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上りを想定して走れば平地でも上りを知ることができる

初心者の場合はマイペースもわからないし、軽いギヤをつけても回せないことが多く、結局はスピードが遅くなるだけで、ちっともラクにならないということが考えられる。基本的なペダルを回し続ける力やテクニックがないために、機材を使いこなせないわけだ。そこでまずやりやすい平地で基本的なテクニック、体力を身につけ、それができたら次に上りの負荷に慣れるようにする。平地の練習でも上りと同じような負荷をかけられるので、必ずしも上りの練習をやりに峠に行く必要はないのだ。たとえば上りで1㎞走るのに4分かかるとすれば、その4分を平地でやってみる。ポジションを維持しながら、80 ~ 85回転を維持して4分間を上りと同じ心拍になるように走るわけだ。そうした走り方をすることで、徐々に高い負荷に慣れていき、上り坂での練習ができるようになる。

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上りでは絶対に頑張らない

「上りは平地とは違い重力に逆らって走るので、つねにペダルを踏み続けなければ進みません。つまり、休むことができないんです。『置いていかれたくないから』と自分より速い人についていったり、『まだいける!』と頑張ってしまうと、ほとんどの人は後半で失速してしまい、場合によっては脚を着いてしまいます。上れないという結果から苦手意識が生まれ、上りたくないという悪循環に陥ってしまうのです」
では、どうすれば上りを走れるのだろうか?「答えは簡単です。上りに入る直前に、ギヤはインナー×ローにしてしまいましょう。軽すぎると感じるかもしれませんが、それは余裕がある証拠です。当たり前のことですが、後半でバテないためには余裕を持って走ることが大切なのです。上まで上ることができれば自信につながりますし、もし上り切ったあとにまだ余裕があったなら、『次は1枚重いギヤでいってみよう』と、次回の走り方をイメージすることもできます。上りのマイペースを知るには、少しずつペースをつかんでいくことがいちばんの近道なんです」

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上りでは平地よりフォームを強く意識する

マイペースといわれても、どの勾配でどのギヤがいいのか? どこからがオーバーペースなのか?経験を積むまでは難しいことのように思える。しかし、廣瀬さんはマイペースをつかむコツを次のように説明してくれた。「マイペースで走れているかどうかをチェックするには、フォームを維持することを心がけて走るといいでしょう」
もし、オーバーペースになる重いギヤで走っていたら、必ずフォームは乱れてくるのだそうだ。「まず、ペダルを踏む脚が疲労します。そして、ペダルを踏めなくなってくるのですが、ギヤを変えずにペダリングを続けると、ペダルを踏むために今度は腕の力を使おうとします。ハンドルを強く握りしめ、ヒジは急な角度で曲がります」
こうなってしまうと負の連鎖が始まる。腕が曲がると、上半身は前傾しすぎてしまう。そうすると次は、股関節の可動域が確保しづらくなり、スムーズなペダリングが難しくなる。アゴが下がり、気道が狭くなってしまうので呼吸がしづらくなる。視線は足下に落ちてしまい、バイクが安定しない。さらに、腕でハンドルを引きつけることにより、座る位置は前方に移動、踏み込むときにカカトが下がりやすくなる。そして踏み込むときに体が左右にぶれてしまう。
こうなってしまってはマイペースどころではないだろう。マイペースとは、脚に無理のないギヤを選び、フォームを意識、維持して走ることなのだ。

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ペダリングはトルクでなくリズムとカカトが大切

”マイペース”で走ることの大切さに加え、上りでは平地以上に効率のいいペダリングが大切なのだと廣瀬さんは教えてくれた。「先ほども言いましたが、上りは重力に逆らって走るため、休むことができません。ですから平地よりシビアに効率のいいペダリングが必要になります。シッティング時のペダリングトルクは〝クランクが1周する間、一定にすること?をイメージするといいでしょう」 初心者は、ビンディングペダルに慣れていないこともあり、ペダリングは上から下に踏んでしまう人が多く、平地では一定トルクで回すことができていても、上りでは意識できない人も多いのだと言う。「このペダリングでは、クランクが上死点から下死点に向かうときにはパワーが生まれますが、下死点を通過するとき、また上死点を通過するときにパワーが途切れてしまいます。結果、ペダルに伝わるトルクにムラが生じ、クランクが1回転する間に加速、減速をしてしまうのです。加速時には、トルクが一定のときに比べて、より大きなパワーが必要になるので、効率の悪いペダリングになってしまい、疲労しやすくなってしまうのです。また、疲れてくると、カカトが下がりがちになってしまいます。いくらパワーを一定にすることを心がけても、しっかりとペダルへパワーが伝達されず、トルクにムラが出てしまうので、つねに”一定”であることを意識しましょう」

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