ピレネー初日のツール・ド・フランス2019第12ステージはS・イェーツが逃げ切り初優勝
目次
第106回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、2019年7月18日にトゥールーズからバニェール・ド・ビゴールまでの209.5 kmで、ピレネー山岳区間初日となる第12ステージを競い、英国のサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)、スペインのペリョ・ビルバオ(アスタナプロチーム)、オーストリアのグレゴール・ミュールベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)の3人が逃げ切り、最後はイェーツがゴールスプリントを制して区間初優勝した。イェーツは3大ツアー全てで区間優勝した選手の仲間入りをした。
メイン集団は2カ所あったカテゴリー1の峠でアタックをかける選手もなく、9分35秒遅れでゴール。フランスのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が総合首位を守った。これで彼は100年前の1919年にマイヨ・ジョーヌが初めて導入された7月19日の記念日に、フランス人としてマイヨ・ジョーヌを着て走る栄誉を得た。
19日にはポーで27.2kmの個人タイムトライアルが行われ、アラフィリップは100年前に最初のマイヨ・ジョーヌを着用したフランスのユージェヌ・クリストフの写真が入ったマイヨ・ジョーヌを着て最終走者としてスタートする。
ピレネー初日は40人が逃げた
ピレネー山岳区間初日の第12ステージは168選手が出走。ベルギーのヤスペル・フィリップセン(チームUAE・エミレーツ)が出走しなかった。これで今大会で最年少は現在新人賞1位でマイヨ・ブランを着ているコロンビアのエガン・ベルナル(チームイネオス)になった。
オフィシャルスタートと同時にトマス・デヘント(ロット・スーダル)がアタックを開始し、ローハン・デニス(バーレーン・メリダ)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(CCCチーム)、マイヨ・ベールのペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)などが逃げを試みたが成功せず、最初の1時間の平均時速は50.6km/hになった。
40km地点でこの日が33歳の誕生日だったサイモン・クラーク(EFエディュケーションファースト)のアタックが決まり、40人の大きな逃げ集団が形成された。この逃げにはマイヨ・ベールのサガン、サイモン・イェーツ、ビルバオ、ミュールベルガーが入っていた。そして逃げに入ると前日に宣言していたマイヨ・アポワのティム・ウェレンス(ロット・スーダル)も加わっていた。
逃げに誰も加わっていなかったチームは、チームイネオス、チームカチューシャ・アルペシン、グルパマ・FDJだった。逃げで最も総合成績が上位のヴァンアーヴェルマートでも14分以上遅れていたため、集団はこの逃げを容認し、翌日の個人タイムトライアルに備えてスローペースになった。
63.3km地点のカテゴリー4の丘はマイヨ・アポワのウェレンスが先頭で通過し、1ポイントを獲得した。ここで40人の逃げ集団とメイン集団のタイム差は3分半近く開いていた。集団ではレース中盤に前日落車して負傷していたジャコモ・ニッツォーロ(チームディメンションデータ)とデニスがレースを棄権した。デニスは翌日の個人タイムトライアルの優勝候補だったが、リタイアの理由は明らかにされていない。
130.5km地点の中間スプリント地点はマイヨ・ベールのサガンが先頭で通過した。目的を果たしたサガンは、ここで集団に戻った。中間スプリント地点を2位で通過したソンニ・コルブレッリ(バーレーン・メリダ)が、その後に始まったペイルスールド峠を先頭で上り始めたが、すぐにリリアン・カルメジャーヌ(トタル・ディレクトエネルジー)が追いついた。
ペイルスールド峠の山頂まで9km地点でコルブレッリは遅れ、先頭はカルメジャーヌ1人になった。山頂まで残り2kmで彼は後続集団に30秒差、メイン集団に6分45秒差を付けて独走を続けた。しかし、山頂間近でマイヨ・アポワのウェレンスに追い抜かれてしまった。ウェレンスはカテゴリー1のペイルスールド峠(残り63.5km)を1位で通過し、10ポイント獲得して山岳賞総合のリードを広げた。
ペイルスールド峠の下りで今度はクラークがアタックし、独走を開始した。彼は次に越えたウルケット・ダンチザン峠(カテゴリー1)のふもとで後続に1分以上のタイム差を付けていた。ゴールまで残り40kmでウルケット・ダンチザン峠の登坂が始まると、後続集団からヨーロッパチャンピオンのマッテーオ・トレンティン(ミッチェルトン・スコット)がアタックし、クラークを追った。
さらにマティアス・フランク(AG2R・ラモンディアル)、ミュールベルガー、ニコラ・ロッシュ(チームサンウェブ)、サイモン・イェーツも追撃を開始した。ウルケット・ダンチザン峠の山頂まで5kmを切ったところで、トレンティンは先頭のクラークを追い越したが、すぐイェーツとミュールベルガーに追いつかれてしまった。
ゴールまで残り30.5kmのウルケット・ダンチザン峠の山頂は、イェーツとミュールベルガーが先頭で通過。メイン集団は7分半遅れていた。下りでビルバオが追いつき、先頭は3人になった。最後はこの3人がバニェール・ド・ビゴールでゴールスプリントを競い、残り200mの最後のカーブの手前で最初に仕掛けたイェーツが先頭でフィニッシュラインを通過した。
■ツールで区間初優勝したサイモン・イェーツのコメント
「彼らを打ち負かす自信は全くなかった。2人の選手(ビルバオとミュールベルガー)がどれくらい速いのか知らなかった。でも、監督は最後のコーナーで先頭を取れと言った。それがうまくいって嬉しいよ。3大ツアー全てで区間を取ることは非常に誇らしい。これはおそらく、ボクにとっと今年唯一の機会だった。ボクの主要な目標は山岳でアダムを助けることだ。ボクたちは今日はその必要がないと考えた。だからボクは逃げに加わった。インピーが別の日に区間優勝した後だし、とても素晴らしいツールだ。願わくばこれが続いて欲しい」
■個人TTでマイヨ・ジョーヌを着る望みが叶ったアラフィリップのコメント
「明日100周年の記念日にマイヨ・ジョーヌを持っているのがどんなことを意味するのか説明するのは難しい。それは多くの意味があり、第1にそれを誇らしく思う。ツール・ド・フランスをリードできてとても嬉しい。明日ボクは最後にタイムトライアルをスタートできるんだ。それはいつも以上に自分を痛めつけようという気持ちにさせる。ボクは自分の限界を超えるだろう」
■第12ステージ結果[7月18日/トゥールーズ〜バニェール・ド・ビゴール/209.5 km]
1. SIMON YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) 04H 57′ 53”
2. PELLO BILBAO (ASTANA PRO TEAM / ESP)
3. GREGOR MÜHLBERGER (BORA – HANSGROHE / AUT)
4. TIESJ BENOOT (LOTTO SOUDAL / BEL) + 01′ 28”
5. FABIO FELLINE (TREK – SEGAFREDO / ITA)+ 01′ 28”
6. MATTEO TRENTIN (MITCHELTON – SCOTT / ITA) + 01′ 28”
7. OLIVER NAESEN (AG2R LA MONDIALE / BEL) + 01′ 28”
8. RUI COSTA (UAE TEAM EMIRATES /POR) + 01′ 28”
9. SIMON CLARKE (EF EDUCATION FIRST / AUS) + 01′ 28”
10. JASPER STUYVEN (TREK – SEGAFREDO / BEL) + 01′ 28”
■第12ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. JULIAN ALAPHILIPPE (DECEUNINCK – QUICK – STEP / FRA) 52H 26’ 09’’
2. GERAINT THOMAS (TEAM INEOS / GBR) + 01′ 12’’
3. EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL) + 01′ 16’’
4. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 01′ 27’’
5. EMANUEL BUCHMANN (BORA – HANSGROHE / GER) + 01′ 45’’
6. ENRIC MAS (DECEUNINCK – QUICK – STEP / ESP) + 01′ 46’’
7. ADAM YATES (MITCHELTON – SCOTT / GBR) + 01′ 47’
8. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) + 02′ 04”
9. DANIEL MARTIN (UAE TEAM EMIRATES / IRL) + 02′ 09’’
10. THIBAUT PINOT (GROUPAMA – FDJ / FRA) + 02′ 33’’
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):PETER SAGAN (BORA – HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):TIM WELLENS (LOTTO SOUDAL / BEL)
■新人賞(マイヨ・ブラン):EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL)
■チーム成績(黄色ゼッケン):TREK – SEGAFREDO (USA)
■敢闘賞(赤ゼッケン): MATTEO TRENTIN (MITCHELTON – SCOTT / ITA)