アルプス最終区間のツール・ド・フランス2019 第20ステージはニバリが逃げ切り優勝/ベルナル総合首位でパリへ
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第106回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、2019年7月27日にアルベールビルからカテゴリー超級のバル・トランス山頂までの59.5kmでアルプス最終区間となる第20ステージを競い、イタリアのヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)が独走で逃げ切り、34歳で6度目の区間優勝を果たした。
区間2位にはゴール目前でメイン集団から飛び出したアルカンシエルのアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)が入り、3位はチームメートのミケル・ランダ(モビスターチーム)だった。
その後方で、マイヨ・ジョーヌを着たコロンビアのエガン・ベルナル(チームイネオス)は、チームメートのゲラント・トーマス(チームイネオス)と握手をしてゴール。悪天候の予報と土砂崩れの影響で、たった59.5kmに短縮したアルプス最終区間で彼は総合首位の座を難なく守った。
22歳のベルナルは南米初のツール・ド・フランス優勝者となり、明日はパリへと凱旋する。マイヨ・ジョーヌ100周年を祝った今年のツールの最後のステージで、彼が着用するのは凱旋門の写真がプリントされたマイヨ・ジョーヌだ。
第20ステージで、総合争いの選手はほとんどタイム差がなくゴールしたが、前日までマイヨ・ジョーヌを守り続けていた地元フランスのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)だけは、予想通りゴールの山頂まで残り13kmでメイン集団から脱落した。彼は3分以上遅れてゴールし、パリの表彰台へ上がる夢はあっけなく消えてしまった。そのため総合2位はトーマス、総合3位はオランダのスティーフェン・クラウスウェイク(チームユンボ・ビスマ)になった。
短縮ステージでニバリが逃げ切った
荒天で中止になったアルプス山岳2日目 第19ステージの影響は翌日まで残った。天気予報では第20ステージも雨の予報で、前日の土砂崩れで通行できない道路もあった為、主催者は第20ステージを130kmから59.5kmに短縮。途中越える予定だったカテゴリー1とカテゴリー2の峠をキャンセルし、アルベールビルのスタートから真っ直ぐゴールのバル・トランスへと向かうレイアウトに変更した。
第20ステージは155選手が出走。スタートしてすぐにニッコロ・ボニファツィオ(トタル・ディレクトエネルジー)がアタックしたが、成功しなかった。2km地点で6人が逃げ出すことに成功した後、23人が追走し、19km地点で合流した。ここに2014年のツールで総合優勝した経験のあるニバリも加わっていた。
集団からは今年のツールで15日間山岳賞のマイヨ・アポワを守ったベルギーのティム・ウェレンス(ロット・スーダル)が、チームメートのトマス・デヘント(ロット・スーダル)と一緒にアタックして逃げを追ったが、合流できずに集団に吸収されてしまった。短縮コースには中間スプリント地点は設定されてなく、29人の逃げ集団はすぐに33.4km続く標高2365mのバル・トランスを上り始めた。チームイネオスがコントロールする集団は2分以上遅れていた。
バル・トランスのふもとでピエールリュック・ペリション(コフィディス)がアタックし、ニバリとイルヌール・ザカリン(チームカチューシャ・アルペシン)が追いついた。ここにトニー・ガロパン(AG2R・ラモンディアル)とマイケル・ウッズ(EFエデュケーションファースト)が合流し、先頭は5人になった。集団はパリの表彰台を狙うチームユンボ・ビスマが引き始めたが、タイム差は2分のままだった。
ゴールまで残り17kmで、先頭にはオマール・フライレ(アスタナプロチーム)が追いついて6人になった。チームユンボ・ビスマが引き続けるメイン集団は40人ほどに減り、ゴールまで残り15kmで逃げとのタイム差を1分15秒にまで縮めた。その後方では、リッチ・ポート(トレック・セガフレード)とダニエル・マーティン(UAEチーム・エミレーツ)が遅れてしまった。
残り13.6kmで、メイン集団はマルク・ソレル(モビスターチーム)がアタックし、スピードが上がった。これに耐えられず、アラフィリップやマイヨ・アポワを着たロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)はメイン集団から脱落してしまった。アラフィリップはエンリク・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)に引かれてゴールを目指したが、タイム差は無情にも開いていった。
先頭では、メイン集団とのタイム差が1分を切った残り13kmで、ニバリが満を持してアタック。ウッズが付いていこうと試みたが失敗した。そこからニバリは独走を続け、今年のツールで目標としていた区間優勝を勝ち取った。彼はこの日、敢闘賞も獲得した。
メイン集団は残りの逃げを追い越しながらバル・トランスを淡々と上り続け、アルプス最終日に期待されたようなマイヨ・ジョーヌ争いの戦いは起こらなかった。最後は総合上位の9人でゴールを目指し、最後にランダが飛び出したが、バルベルデがそれを抜いて2位に入った。
カテゴリー超級のバル・トランスは標高が2000mを越えていたため、山岳賞のポイントは倍になり、もしベルナルが区間2位でゴールしていれば、30ポイントを獲得し、バルデを2ポイント差で抜いて山岳賞でも総合トップになる所だった。しかし、彼には山岳賞まで獲得する意思はなく、トーマスと一緒にゴールし、区間4位でレースを終えた。
不調のバルデは前日のステージ中止とこの日のステージ短縮に助けられ、山岳賞のマイヨ・アポワを守ることができた。34年ぶりのマイヨ・ジョーヌを夢見続けたフランス国民にとっては、シャンゼリゼでバルデが表情台に上がるのは、ささやかな慰めになるだろう。
ポイント賞のマイヨ・ベールを着たスロバキアのペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)は、バル・トランスのフィニッシュラインをウイリーで通過した。彼はポイント賞総合で2位のエリア・ヴィヴィアーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ)に85ポイント差を付けているので、最終日に逆転される恐れはない。
サガンはシャンゼリゼ大通りで無事最終ステージをゴールすれば、7度目のポイント賞受賞となり、ドイツのエリック・ツァーベル(1996~2001年)を抜いて最多受賞回数記録でトップに立つ。
■今年のツールでやっと区間優勝できたニバリのコメント
「最後の数100mは永遠に終わらないように感じたから、フィニッシュラインを通過した時は解放された気分だった。それを実現する唯一の方法は、遠くからアタックすることだった。上りのふもとで持っていたタイム差があれば、やり遂げるのは可能だと信じていた。去年から勝っていなかった。これは素晴らしいリベンジだ」
■山岳賞初受賞が確実になったバルデのコメント
「子供の頃、マイヨ・アポワはボクの夢だった。2015年には最後の山岳ステージでそれを失った。今回はすごく満足だ。7回の参加のうち、異なった賞でシャンゼリゼの表彰台に上がるのは5回目になる。自分自身を再発見するのは良いことだ。このツールは自分の期待通りに物事が運ばなかったが、何がダメだったのかを考える前にこのトロフィーを楽しむつもりだ。失敗は許されるが、努力して全力を尽くすことをしないのは許されないものだ」
■総合優勝に王手をかけたベルナルのコメント
「我々は今、正式に成し遂げることに近づいている。まだ1ステージ残っているが、普通全てがうまく運べば、ボクは最初のツールで勝ったと言うことができる。最後の上りはとてもハードだった。チームユンボ・ビスマは表彰台を狙って必死で走った。我々は快適な状況にあり、ボクは本当に気分が良かった。
コロンビアは最初のツールを勝ち取ろうとしている。ボクはこれが自分の勝利であるだけでなく、国全体の勝利でと感じている。我々はすでにジロ・デ・イタリアもブエルタ・ア・エスパーニャも勝っているが、ツールだけは欠けていた。自分がそれを達成したのは、とても名誉なことだ。我々にとって、それは夢だ。我々はTVでよくツールを観ていたものだが、それは手の届かないものだと思っていた」
■第20ステージ結果[7月27日/アルベールビル〜バル・トランス/59.5 km]
1. VINCENZO NIBALI (BAHRAIN – MERIDA / ITA) 1H 51′ 53”
2. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) + 10”
3. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) + 14’’
4. EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL) +17”
5. GERAINT THOMAS (TEAM INEOS / GBR) +17”
6. RIGOBERTO URAN (EF EDUCATION FIRST / COL) +23’’
7. EMANUEL BUCHMANN (BORA – HANSGROHE / GER) +23’’
8. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM JUMBO – VISMA / NED) +25”
9. WOUT POELS (TEAM INEOS / NED) +30”
10. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) +30”
26. JULIAN ALAPHILIPPE (DECEUNINCK – QUICK – STEP / FRA) + 03’ 17’’
27. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) + 03’ 45’’
■第20ステージまでの総合成績(マイヨ・ジョーヌ)
1. EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL) 79H 52’ 52’’
2. GERAINT THOMAS (TEAM INEOS / GBR) + 01’ 11’’
3. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM JUMBO – VISMA / NED) + 01’ 31’’
4. EMANUEL BUCHMANN (BORA – HANSGROHE / GER) + 01’ 56’’
5. JULIAN ALAPHILIPPE (DECEUNINCK – QUICK – STEP / FRA) + 03’ 45’’
6. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) + 04’ 23’’
7. RIGOBERTO URAN (EF EDUCATION FIRST / COL) + 05’ 15’’
8. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) + 05’ 30’’
9. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) + 06’ 12’’
10. WARREN BARGUIL (TEAM ARKEA – SAMSIC / FRA) + 07’ 32’’
11. RICHIE PORTE (TREK – SEGAFREDO / AUS) + 12’ 05’’
15. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) + 29’ 54’’
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):PETER SAGAN (BORA – HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA)
■新人賞(マイヨ・ブラン):EGAN BERNAL (TEAM INEOS / COL)
※第20ステージは DAVID GAUDU (GROUPAMA – FDJ / FRA) が着用
■チーム成績(黄色ゼッケン):MOVISTAR TEAM (ESP)
■敢闘賞(赤ゼッケン): VINCENZO NIBALI (BAHRAIN – MERIDA / ITA)