第3回「ジャパンエコトラック ライドイン阿蘇」で超ハードコースで絶景を満喫!
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2019年11月16日(土)、11月17日(日)に熊本県阿蘇エリアで開催された、第3回「ジャパンエコトラックライドイン阿蘇」を編集部員が実走!
獲得標高3000m超えのハードコースのチャレンジとともに、秋の阿蘇ならではの絶景&グルメを堪能してきたぞ。
「火の国」阿蘇を自転車で走り尽くせ!
自転車ファンライドイベント「ライドイン阿蘇」は、豊かな日本の自然を体感できるコースである「ジャパンエコトラック」として登録・認定されたエリアを舞台に行われるシリーズイベントのうちの一つ。熊本県阿蘇エリアを舞台に、2018年3月の第1回、2018年12月の第2回に続いて今回は3回目の開催となった。
阿蘇エリアといえば、活発な火山活動が続く阿蘇中岳などの阿蘇五岳を中心としたカルデラ地形や大草原、外輪山との間で共存してきた人々の暮らしなどと世界でも類を見ない雄大な景色や環境に、国内外から多くの観光客が足を運んでいる。
3年前の2016年4月に熊本を震源とする強い地震や、その後の豪雨などで被害を受けたものの、現在も2020年を目標にJR豊肥線や阿蘇大橋の再架橋などと復興が進んでいる。熊本空港(阿蘇くまもと空港)からのアクセスもさらに向上する予定のため、今後ますますサイクリストにとって注目が集まるエリアだ。
そんな阿蘇を満喫すべく、コースは3つ用意されている。阿蘇五岳を一周する距離70km、獲得標高1280mのAコース。阿蘇をぐるりと囲むように続く「外輪山」の南部を満喫する距離92km、獲得標高1930mのBコース。
そして最も人気なのが、AコースとBコースを合わせた距離145km、獲得標高はなんと3090mという上級者向けの阿蘇一周チャレンジができるCコースとなる。
それぞれに制限時間が設けられており(Cコースでは9時間30分以内)、コースの標高図を見ると南阿蘇の「道の駅あそ望の郷くぎの」をスタートしてから、序盤の阿蘇山だけでなく、中盤でのアップダウンや終盤での1000m級山岳など、まさに山岳ロングライドさながらなハードなコース設定だ。
そういったコースのきつさも魅力だが、約20kmごとに設定されたエイドステーション(AS)では、阿蘇や熊本の食材を使ったグルメが振る舞われており、その豪華さも期待が膨らむ。
そんなCコースは大会で1番の人気を誇り、参加者の半数程度がCコースに出走した。
獲得標高3000m超え!絶景だけど超ハード!
と、いうわけで今回筆者は本イベントに初参加。「九州だしきっと温暖だろう」なんて秋シーズン用のウェアを持参したわけだけど、なんと早朝の最低気温は氷点下を下回っている。走りはじめや下りの寒さを凌ぐべく、お守りとして旅用のバックパックに忍ばせているモンベルのダウンベストを着込んで、なんとか走り始めることができそうだ。
日が上っていくとともにスタートし、早速阿蘇山をヒルクライム。外輪山との間に挟まれた南阿蘇の村を眼下に納めながら徐々に標高を上げていく。そしてゆるやかに陽光が差し込むとともに、一面黄金色のススキ原に覆われた阿蘇の山肌が見え始めた。上り基調のトンネルを抜けると、舞い上がる黒煙と山の連峰が間近に迫っている。こんなに噴火に近づくことができるのかと、まるで現実でないような景色にただ驚く。
続くダウンヒルでは、阿蘇の町へと一気に降りていきたいところ。しかしついつい足が止まってしまう。コーナーを曲がる度に不思議な形の山や噴煙を背景にしたコース、そしてのんびり道を横断する牛たちと、まるでこの世界のものではないような光景をスマホのカメラに納めていく。
道の駅阿蘇の団子汁が、下った後の冷え切った体を内側から温めてくれ、やっと目も覚め始めた。ここからまた阿蘇を登り返していこうと踏み始めると、TTバイク特有の風を切り裂くような走行音が聞こえてきた。
グラベルバイクとTTバイクの凸凹コンビ
「すごいバイクに乗ってるね」、と僕が声をかけた青年がショータ君。エスワークスのシヴに乗って、この獲得標高3000m超えのライドに来ているのだから、只者ではない。聞くとトライアスリートに打ち込んでおり、今回もバイクの練習がてらと鹿児島から参加したらしい。
「上りが苦手なので、よかったら一緒に行きませんか?」とショータ君から提案を受ける。いつもなら二つ返事で答えるところだが、しかしちょっと待ってほしい。今回僕が乗っているバイクはいわゆるグラベルロードで、ゆったりライドしようと思い35Cのスリックタイヤをはかしてふわふわと走っているわけだ。さすがにTTバイクと一緒に平地に行くとなると、どうなることかはなんとなく想像できる。
だけど「平地と下りは引きますので!」と、さわやかな提案は受け流せない。ピークを過ぎて、下りが始まる。TTバイクの下り速さといったら!完全に空気を切り裂いているし、もちろんショータ君はガシガシ踏んでいる。ツキイチ以上にぴったりと後方につけて下っているものの、こちらが脚を止めるとひき離されていく。つまりは僕も下りで踏み続けることになる。
絶品カレーが出てきたエイドを超えて、また緩やかな上りをパスしてからの区間は平坦基調のアップダウンが続く。
うっそうとした林の中を上っていく最中、「こんな山の中で静かに上ってたら、熊なんか出てくるかもしてないね」とショータ君に話しかけると「え、九州には熊っていませんよ」と即答された。いないのか、熊本に熊。
ちょっとした上り区間だけはごろごろと太タイヤの走行音を立てながら僕が引いて、下りはTTバイクの速度でビュンビュン進んでいく。すれ違ったロードレーサーはきっと二度見してしまうだろう。
一緒に走り出した時から「最後にヤバい山岳が待ってるよね」と気になっていた、まさにラスボスのグリーンロードが始まる。容赦なくまっすぐ続く10%超えの坂。呼吸を整えつつ、二人で上って行った。長い上りは終わり、空に続く黒煙が再び見えた。阿蘇山だ。一気に下って、スタートゴール地点の道の駅に到着。硬く握手をして、二人のライドを締めくくった。
ここでしか見ることのできない絶景、そしてこのコースでしか一緒に走りえなかったであろう自転車乗りとの出会い。初めて訪れる地は、きっと人と走ることでもっと印象深いものへと変わる。だからこそ僕にとっての阿蘇は、他のどこでもない世界でただひとつの場所となった。
イベント詳細
第3回「ジャパンエコトラック ライドイン阿蘇」
Aコース:阿蘇五岳一周ルート(距離:70km / 獲得標高(累積):1,280m)
Bコース:阿蘇南外輪山満喫ルート(距離:92km/ 獲得標高(累積):1,930m)
Cコース:阿蘇一周チャレンジルート(距離:145km/ 獲得標高(累積):3,090m)
開催日:11月16日(土・受付)、11月17日(日・ファンライド)
開催地:熊本県阿蘇市、高森町、山都町、南阿蘇村、御船町
主催:ジャパンエコトラック阿蘇実行委員会(大会ページ)
Aコース 出走37名中36名完走(97.3%)
Bコース 出走31名中30名完走(96.8%)
Cコース 出走53名中49名完走(92.5%)
全体 出走121名中115名完走(95.0%)
Cコース参加者の皆さんの感想をピックアップ!
「コースはすごくハードだったけど、これからも続けていって欲しい大会だと思います。道の駅をつないでいくことになりますが、このコースは世界でも有数のキツさなのではないでしょうか。普段はトライアスロン競技をしていますが、これは競うのではなく仲間や参加者のみなさんと共に走ることができます。順位を競うのではなく、登山などと同じように楽しんだ人が勝ちですね」
「コースは死ぬかと思いました笑。特に朝の一発目からの阿蘇山ヒルクライムは本当にキツかったです。しかし何より景色が最高で、山頂ももちろんですが渓谷の紅葉が美しかったですね。季節も日中は暖かく気持ちがよかったです。火山灰はすごかったですが笑。常にアップダウンが続き、まるでツールドフランスの山岳ステージみたいでしたね。無事に走りきれてひと安心です」
熊本市内のサイクルショップしゃりんかんの仲間のお二人。「エイドのグルメはどれもすごく美味しかったですね!特に朝のヒルクライム後の道の駅阿蘇で食べた団子汁と、橋のフルーツ盛り合わせがよかったです!」(メグさん)。「阿蘇山噴火の雄大さや、最後のグリーンロードの紅葉など絶景ばかりで、上りの途中であっても毎回脚を止めて写真を撮りたくなるくらいでした。おかげで時間はかかりましたね」(エツコさん)
「今日は兄と二人で参加しましたが、兄が途中でついて来られなかったので、足切り時間もあったので先行してゴールしました。きついきついと言いながらも走り続けることができたのは、やはりエイドステーションのグルメがあったからでしょうか。これまで大分県のライドイベントに多く参加してきましたが、全く違う絶景に驚きましたね」(その後、無事にお兄さんもゴールしました!)