パナレーサーニセコグラベル2024 スプリングライド

パナレーサーニセコグラベル2024

2024年5月12日(日)、北海道ニセコ町発着のコースでパナレーサーニセコグラベル2024 スプリングライドが行われ、全国各地から集まったグラベルライダーが雄大な北海道のグラベルを楽しんだ。

日本のグラベルカルチャーにおいて一定以上の認知度を誇る「ニセコグラベル」。北海道という立地がなせる旅の要素と、なんといっても長くスムーズな砂利道はそれ以外の地域では見られないものだ。2021年の初開催から、現在は春秋の年2回の頻度で開催されている。

春に開催される「スプリングライド」は、秋の「オータムライド」よりも小規模で、よりコアなグラベルファンが集まる。昨年は冷たい雨に見舞われタフな大会となったが、それゆえにグラベルの魅力たる自由さとワイルドさが濃縮したものでもあった。好天で穏やかなオータムライドよりも、荒々しい春のニセコらしさが楽しめる時期と言えるかもしれない。

ニセコのグラベル

こんなグラベルを求めてニセコを訪れる人が絶えない

グラベルの楽しみ方を知るスプリングライドの参加者に向けて、主催者は今大会、実験的に新たな試みを投じた。大会史上初の計測区間となるタイムセクションが設定されたのだ。レースではないニセコグラベルだが、競い合う楽しみ方が新たに提案された形だ。とはいえ、目を三角にしてタイムを争い、順位を競うことが果たして「ニセコグラベルらしさ」とどう同居するのか。

計測区間の試みは、日本でも「グラインデューロ」や「野辺山グラベルチャレンジ」で見られるものだ。それは上り区間であったり、下り区間であったりとイベントのカラーが出るところであるが、今回のニセコグラベルではとにかく距離が圧巻。なんと17km(!)におよぶ100%グラベルがタイムセクションとなった。

今回は試験的な試みということもあり、タイムセクションはロングコースのみに設定された。スタート前に参加者に聞くと、ある程度はみなこの区間を意識している様子。だが、タイムを出すために特別なバイクのセットアップや調整を積んできた人は少ない印象で、あくまでグラベルライドを楽しむことのおまけ的にタイムセクションを捉えているようだった。

スタート

300名近い参加があったパナレーサーニセコグラベル2024 スプリングライド

それにしても、秋より規模が小さいとはいえ、ロングとショートコース合わせて300名近い参加者が一堂に会するスタート地点は圧巻だ。ロードバイク以上に、乗り手の個性や主張、普段の楽しみ方が色濃く反映されるグラベルバイク。参加者のバイクを見て回るだけでも楽しい。

心配された天候も大崩れすることはなく、ロングコースは朝9時にスタート。タイムセクションに意気込むファストラン組と一緒に序盤セクションを進んでいく。

20kmほど走ると、いよいよ本格的なグラベルセクションが開始。そしてここが、17kmに及ぶタイムセクションでもあった。およそ100kmのコースの前半に設定された形だ。速い人たちはぐんぐんと加速してあっという間に見えなくなってしまった。

走りやすい道

当地ではクルマが砂利道を走っているおかげでならされていて、バイクでも走りやすい

タイムセクションの序盤から上り基調で、これは頑張りすぎると後までもたないぞ、と少しスピードを緩める。とはいえある程度は負荷をかけて気持ちのよい強度でクリアしていく。結構上ったなと思うと、道の脇に「残り15km」の看板が出ていて愕然とする。これは長い!

17kmの計測区間はアップダウンに富んでいて、グラベルバイクのセッティングがハマれば気持ちよく走れる設定。とはいえ、全行程をフルで追い込むのはなかなか過酷だ。結果として、筆者で1時間10分かかった。途中ものすごい勢いで下りをかっ飛んでいったゲストライダーの竹之内悠さんが全体のトップでタイムは47分34秒。シクロクロスのスペシャリストでもこれだけの時間がかかるのだから、あんまり追い込むのは得策ではなさそうだ(竹之内さんも「ちょっとしたシクロクロスレース並の時間ですね」と笑っていた)。

簡易エイド

「あの下りは〜」なんて会話が弾むタイムセクション後の簡易エイド

タイムセクション後にはドリンクと軽食の簡易エイドステーションがあって、みんな一休み。話題はもちろん今走ってきたセクションのことだけれど、タイムというよりは、グラベルの荒れ方や度重なる渡渉、スピードの出る下りのことがメインで、みんな楽しそうだ。目を三角にして走っている人はいない。なんともグラベルライドらしい。

前半にタイムセクションは終わるので、後半はただ楽しむのみだ。ニセコのグラベルは思っていた以上にバリエーションがあり、ひたすらスムーズな区間もあれば、ダートと泥の交じる区間もあり、下りでもライン取りをシビアに見ないとスピードの出ない区間もある。要するに、飽きることがない。

グラベル

グラベルと一口に言っても種類は様々。バリエーション豊かな砂利道を楽しむことができる

舗装路

そして付け加えたいのは、グラベルイベントでは「つなぎの区間」である舗装路区間も単品で最高だということ。ニセコクラシックで走ったときはひたすらに辛かったこのエリアの道も、グラベルバイクで心地よいペースで流せるから、見え方が変わる。アップダウンに富んだ舗装路のひたすらに真っ直ぐな道の作りや、空の広さ、こちらを見下ろす羊蹄山……。つなぎの区間も決して侮れない。ニセコのポテンシャルは高い。

スムーズなグラベル

スムーズなグラベルの例

前半に厳しいアップダウンがあったのと対象的に、後半30kmは下り基調。疲労感とスピード感とが心地よいままフィニッシュ地点へ。MCの温かなコールと多くの拍手に包まれて、これ以上ない充足感に包まれる。この雰囲気、この空気感はロードレースでは決して味わえない、グラベルの精神だといえるだろう。

タイムセクションがあることを参加者の多くは意識していて、「つい頑張っちゃいました」という声もちらほら聞かれた。それでも表彰対象のライダーが表彰式に現れないなど、みな結果にはそこまでこだわっていなかったようだ。

フィニッシュ後

ロングコースの走りごたえは十分。無事の帰着を温かい歓声が出迎えてくれる

様々なタイヤ幅

タイヤ幅もライダーのスタイルの数だけ、文字通り幅がある

日本を代表するグラベルイベントとなったパナレーサーニセコグラベル。秋の陣はより大規模に、そしてコースもよりロングで行われるというから、再びこの大地にブロックタイヤで挑んでみたくなる。何度もこのイベントに参加するうちに、自分の「グラベル基準」がニセコになってしまいそうだ。それは第一に幸せなことであるけれど、同時に不幸なことでもある予感がする。

ニセコのグラベルは、ニセコにしか無い。また走りに来よう。

パナレーサーニセコグラベル2024

緯度の高い北海道だから、5月初旬はまだ早春の趣。天候が荒れることもあるが、この時期のニセコならではの空気感は特別だ

<参加者スナップ>

神奈川からの参加者

神奈川にお住まいながらニセコグラベルは3回目の参加とのこと(お名前聞き忘れて失礼!)。初となるタイムセクションは「長くても30分くらいかと思いきや1時間もあってビックリしました(笑)」とその長さに驚いた模様。野辺山グラベルチャレンジや、グラインデューロなど全国のグラベルイベントに足繁く参加しているが、ニセコのグラベルは「初心者でも楽しめるイージーさがありながら、踏めばスピードに乗ったライドが楽しめる」とのこと。新車のチャプター2、KAHA(カハ)がいかしていました。

坂東さん

この格好でニセコ花園ヒルクライムは何度も走っているという坂東さん。この辺りでは知られた存在。ニセコグラベルは初参加。冬にはファットバイクでの雪上ライドも楽しんでいるとか。プロムナードバーのようでいて走りやすいヴェノのメトロポイントハンドルバーがこだわりポイント。

竹之内悠さん

前日入りしてグラベルライドを楽しんだというゲストライダーの竹之内悠さん。「路面が綺麗なグラベルがニセコの魅力。来たらわかります(笑) トラブルに見舞われた参加者がいないようなら、タイムセクションは頑張って走ってみようかと思います」という言葉の通り、17kmを47分34秒と圧巻の走り。それでも、終始楽しそうな姿が印象的だった。

村上商事さん

「グラベルの質が関東と違う!」と喜ぶのは埼玉からやってきた村上商事さん。前日に積丹半島エリアでのトレイルライドを経てニセコグラベルにやってきたという満喫ぶり。2000年代のマングースのマウンテンバイクをあえて現代のパーツで組んだというこだわりのグラベルバイクが個性豊かなバイクが揃う会場でも目立っていた。