「すくもグラベルまんぷくライド2024」で、ひと夏のグラベルトリップ!
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2024年8月11日、「すくもグラベルまんぷくライド2024 supported by Panaracer」が高知県宿毛(すくも)市で開催された。山や渓流に加えて地元の美味しい食材を楽しめることで、毎年多くのサイクリストを魅了している本イベントは、初めての「グラベル旅」にもぴったりだ!? 編集部エリグチがレポートする。
夏の宿毛へグラベルバイクとGO!
宿毛(すくも)市は、高知県の南西部に位置し、海と山、そして川がギュットコンパクトにまとまった自然豊かなエリアだ。
山々は古くから林業で栄え、縦横無尽に林道が続いており、四国南西部の山岳地帯を水源に持つ松田川の支流がその道沿いを流れている。そのまま川に沿って宿毛の町に出たかと思えば、ほどなくして目前に広がるのは宿毛湾の美しい海岸線。そんな恵まれた自然環境から、アウトドア人口も多く、日本各地から愛好者たちが訪れる地でもある。
そんな宿毛には、四国西南端となる「宿毛駅」がある、ものの……正直なところ交通アクセスは不便だ。
最寄りとなる高知龍馬空港や愛媛・松山空港とどちらからも車で約2時間30分とほぼ同じ距離で離れており、高知駅からの特急列車のアクセスも約2時間20分かかる。
だからこそ、良いのである。
今回、僕こと筆者エリグチは、この「すくもグラベルまんぷく」イベント前日に移動として、東京から松山空港へフライト。空港バスを経由して、そこからさらに特急電車で松山から宇和島までを輪行。JR四国の列車の揺れに身を任せ、駅でうどんをかっこんでからは、今度は輪行解除して、宇和島から宿毛までの約60kmのサイクリングだ。
宿毛津島線の峠道を越え、四国の夏の空気をいっぱいに感じ、時折立ち止まって写真を撮ったり、清流に脚を付けたりしつつ進むその道のりは、それだけでもう夏休みの冒険感に満ちている。
夕方前に宿毛にたどり着く。せっかくだから旅先の酒場でも巡ろうか……とはいえ一人だしなあ。
なんて心配するなかれ。このイベント、なんと居酒屋で「前夜祭」が用意されているのである!
居酒屋「八坂」に着くと、大座敷に50人近くの参加者が集まっている。
高知といえば「さらち料理」での宴会だ。宿毛湾の恵みを受けた新鮮な魚介類が、刺身に煮付けにからあげにと盛りだくさんで並ぶ様は、まさにはるばる高知までやって来たお楽しみが満載。そしてそんな宴会は大人数であればあるほど良い。同じ趣味を持つ人々同士、あっという間に仲間は増えて……けれどこれは、まだ初日に過ぎないのである。
グラベルもグルメもお腹いっぱい
さてさて、前置きが長くなったものの、この「すくもグラベルまんぷくライド」として、宿毛市総合運動公園をスタート&ゴール地点とするこのイベントには、「グラベルでまんぷくコース」と「ロードでまんぷくコース」(55.4kmの舗装路コース)の2つの異なるコースが用意された。
僕が参加したのは、「グラベルでまんぷくコース」の全長42.2kmのコース。グラベル初心者も参加しやすいように設定されたこの距離設定は、遠方からやって来た身にもちょうど気負いすぎずに挑める距離で絶妙だ。
朝の会場で宿毛の定番朝食「すくモーニング」(実際、宿毛の町中には早朝からモーニングをたっぷりと食べることができる喫茶店がたくさんあるのだ)をゆっくりといただき、開会の挨拶をもとにイベントはゆるやかにスタート。
走り出してすぐに、約5kmのダブルトラックのグラベル道が始まった。獲得標高100mほどの緩やかな坂道では、最初のうちは慎重にハンドルを操っていたが、次第に緊張がほぐれていくのを感じる。太いグラベルタイヤから伝わる砂利や土の感覚が心地良く、ペダルも軽快にまわっていく。綺麗に整った木々の間からは木漏れ日が差し込む。普段は林業用地として利用される静かな空間を、グラベルバイクやXCMTB、eバイクとそれぞれのオフロード車にまたがった一団が過ぎていった。
グラベル区間を抜けた後は、松田川沿いの約5kmにわたる舗装路ヒルクライムへ。緩やかな上り坂が続くこの区間では、脚にじわじわと負荷がかかり、息が上がり始める。盆前の酷暑真っ盛りとあり日差しはとても強い。
そんななか到着した第一エイドステーションには、たくさんの菓子パンがずらりと並ぶ。ヒルクライム直後の暑さの中では、けっこうヘビー? とはいえボランティアスタッフの皆さんの「これからのためにエネルギー補給は大事!」との声かけもあり、参加者皆でしっかりと味わおう。そう、このイベント、「グルメライド」でもあるのである。
水平基調のワインディングを抜けると、高知でお馴染みの沈下橋がかかる渓流ポイントがあらわれた。たまらず川につかり、全身を冷やす。透き通った水が足元を流れ、火照った体が一気にクールダウンだ。
そこからすぐの第二エイドステーションでは、冷たいかき氷が待っていた。しかも、地元特産の柑橘「直七」シロップを使った爽やかな一品で、汗をかき続けた体に染み渡る冷たさと柑橘のフレッシュな味わい。これには誰もが笑顔になった!
そしていよいよコース後半、約4kmで100m近くの標高を一気に上るグラベルヒルクライムが始まる。ここはコース中でも最もキツイ勾配基調のセクション。しかし、この坂を乗り越えた後には、絶好のご褒美が待っていた。比較的路面が整った、直線基調のグラベルダウンヒル区間だ。
第三エイドを越えた後の林道の下りを終えると、目の前に広がるのは再び透き通った渓流。この頃には、一緒にイベントを走る参加者同士も足並みや楽しみ方が揃い始め、「また、川ポイントだよ!」「ここの水の冷たさ、ちょっと入ってみて!」と、互いに声を掛け合って輪が広がる。これぞ中規模イベントの良さでもあるのだろう。
そうしてついにフィニッシュ地点に到着。しかしこのイベントはまだ終わらない。ゴール後には地元の名物が詰まったランチプレートや、ライド後にうれしい、冷たいうどんが用意された。
誰もが笑顔で「これはお腹も走りももまんぷく!」と満足感に包まれながら、特別な一日は締めくくられた。
「すくもグラベルまんぷくライド2024」は、真夏の高知の山や渓流を自転車で駆け抜ける爽快感があり、そこにこの宿毛の人々の温かいホスピタリティを感じ、参加者同士やゲストライダー達との距離もグッと近まる。それは他のどこでもない、ここでしか味わえない特別なひとときだと僕は思う。
現在世界各地で注目を集めている「グラベル」という切り口は、新しい風を吹き込むものとして重要だ。そしてこの国でずっと長く親しまれているサイクリング、すなわち自転車で旅をするという遊びそのものにグラベルというスパイスが混ざり合えば、ライドの奥行きはもっと深くなり、人と人の関わりはより増していく。
そんな温かさを誰もが体感できるとあれば、そのイベントは唯一無二の価値となる。
きっとまた宿毛を訪れたら「お久しぶり!」「また会えたね!」と言い合えるんだろう。そんなことを期待して、次の夏が楽しみで仕方が無い。そうしてどこか不思議な宿毛の日々は過ぎていった。
参加者の皆さんのコメントを紹介!