懐かしのMTBが勢ぞろい!オールドMTBミーティング開催

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秋晴れの御殿場で、日本全国からオールドMTBファンが集まるイベントが開催された。今回で5回目を迎えるこのイベントの模様をサイクルスポーツ編集部の鈴木がレポート!

1980年代から90年代にかけて日本中で人気を博したMTBブーム。その熱は、今再びムーブメントとなり、幅広い世代が楽しんでいる。それを示すかのように、11月3日(日)静岡県の御殿場で開催された「オールドMTBミーティング5 in 御殿場 ~Thank you Gary Fisher」には全国から愛好者が集結。各々が愛車を持ち寄り、ライドへ参加したり、コンテストに出品したりと思い思いに楽しんでいた。サイスポ編集部の鈴木はオールドMTB初心者なので、初参加のイベントである。

愛車とともに、心地よい時間を走る

集合場所は御殿場で330年以上の歴史を誇る勝又製茶さん。午前7時頃から続々と参加者が集まり、ライドへの受付を進めていった。

受付を済ませると、バイク用のゼッケンプレートが渡される。プレートは2種類あり、筆者はマングース IBOC SPORTでの参加だったため「CHEAP CHIC BIKE AWARD」と書かれたプレートを受け取った。これは、「古き良き大衆車を今かっこよく乗っている」という意味だそう。このプレートは午後に行われる愛車コンテストでそのまま使用される。

ライドコースはショートとロングに分かれ、参加者は今回から使用を開始した地図アプリ「ライドウィズGPS」を確認しながら走行。富士山を眺めながらのんびりポタリングかと思いきや、オールドMTBならではのアップダウンがある本格的なコースで、川渡りや田んぼのあぜ道など多彩なルートが用意され、参加者を楽しませた。

ゲイリー・フィッシャーのタンデム車「ジェミニ タンデム」で参加した近藤さんは、「一緒に乗る人は会場で見つけようと思っていた(笑)」と話すほどのリラックスした雰囲気。約30年前に購入したこのバイクは、使用機会が少なかったため状態が非常に良く、なんとタイヤも当時のままだとか。結局、相席のライダーは見つからなかったため、筆者がバディとして参加することに。2人分のパワーで坂道をぐいぐい上り、長いホイールベースの安定感で荒れた路面も難なく進む。轍を踏み越えて力強く進むので、まるで戦車に乗っているような感覚。下りではドライバーに身を任せ、後席でただひたすら漕ぎ続ける”一蓮托生”のライド体験だった。

参加者はそれぞれの愛車でライドに参加。時代やスタイルはさまざまだ

車通りの少ない道をゆっくり走りながら、参加者たちは景色を楽しむひとときを満喫

参加者の中には、途中でバイクを交換しながら走る人もいた

会場には出店ブースが並び、それぞれのスタイルで販売

ライドから戻ると、会場には出店ブースが立ち並び、中央広場にはバイクコンテスト出品のMTBがずらりと並び初めていた。

芝生広場にはいくつかの出店ブースが並び、店主それぞれのスタイルでオールドMTBパーツやフレーム、当時のヘルメット、ウェア類などの貴重なアイテムが販売されていた。プロ・アマ問わず誰でも出店でき、午前中のライドに参加すれば無料で出店可能。家で余ったパーツなどを持ち寄って販売する姿も見られた。

本誌のオールドMTB特集(2024年4月号)にも登場した佐々木英樹さんも出店し、フレームやサスペンション、リムなど多彩なパーツを揃えていた

パーツは様々な種類が並び、目利きの参加者たちは真剣な眼差しで一つ一つを探し求めていた

パーツが揃えば、当然ウェアやグローブ、ヘルメットなども揃えたくなるもの。会場には掘り出し物も多く、個性を演出できるアイテムが並んでいた

自転車用の金属パーツで有名な日東も出店し、現行品の展示とともに、蔵出しのパーツ販売を行っていた

「あなたの自転車描きます。¥100」の看板があり、小学生の女の子が愛車と富士山を描いてくれた。完成したイラストはバイクの特徴を良く捉えている。このように、自分の特技を活かして販売できる点が、イベントの面白さを際立たせていた。

オールドMTBコンテスト開催!

会場には約100台ものオールドMTBが集結し、圧巻の光景が広がっている。参加者による持ち込み台数に制限はなく、中には1人で3台持ち込む人もいる。どの車体も丁寧にメンテナンスされており、30~40年前のものとは思えないほど美しい状態だ。

コンテストは2種類あり、それぞれに個性が光る内容だ。「The Most Wanted Bike」では、会場に集まったバイクの中から「一番欲しい」と思う一台に投票する形式。「CHEAP CHIC BIKE AWARD」では、かつて多くの人に愛された大衆車を、今でもスタイリッシュに乗りこなしているバイクが対象となる。それぞれ専用のゼッケンプレートが付けられており、投票はシールを貼る形で行われる。

今回はイベント後の11月5日が「MTBの父」とも称されるゲイリー・フィッシャー氏の誕生日だったこともあり、会場には彼の名を冠したバイクが多く集結していた

会場を提供した勝又製茶の代表・勝又共生さんは、自身の愛車OTAKEをコンテストに出品。そのフレームには、伝説的なライダー・大竹雅一さん本人のサインが入っている。この他にも様々な自転車を50台ほど所有しているらしい。筋金入りのコレクターだ!

「アサミ」さんは、約35年間乗り続けているマウンテンゴート・デラックスで参加。このバイクの特徴である扁平なトップチューブが、独特の個性を放っている。最近、この愛車を11速化し、さらに進化させたのだとか。「MTBは乗ってナンボ!」という信念のもと、このバイクを日常使いとして活用し、月に200〜300kmを走っている

MTBがまだ存在しなかった時代、チャーリー・カニンガムはフレーム素材にアルミを採用するなど、マウンテンバイクの歴史を語る上で欠かせない人物だ。今回の展示では、試作4台目と見られる貴重なフレームが披露された。これはとある倉庫で発見されたもので、フレームとハンドル以外は残っていなかったが、オーナーの「もつなべ」さんがシートポストを削り出しで自作し、欠けている部分も丁寧にオリジナルの仕様に再現した。ホイールサイズは前26インチ、後20インチと異なる仕様で、カニンガム自身がさまざまな試みをしていたことがうかがえる

「CHEAP CHIC BIKE AWARD」を受賞したのは、アラヤ・マディフォックス。オーナーの「masaya」さんが1991年に初めて購入したスポーツバイクだ。ホイールやブレーキを含む基本的なコンポーネントは当時のまま維持されている。色は当時の鮮やかさを失っていると言うが、それがまた時間の経過を感じさせる独特の味わいとなっている

優勝はゲイリー・フィッシャー「ジェミニ タンデム」

今回の「一番欲しいバイク」に選ばれたのは、近藤さんのゲイリー・フィッシャー「ジェミニ タンデム」。投票で同票となった3台の中から、じゃんけん大会で見事勝ち抜いた。近藤さんは「初参加だけど、とても楽しいイベントに参加できて良かった」と語る。1991年当時、40万円ほどで購入したこのバイクは、都内にわずか3台しか在庫がなかった中で探し出した貴重な一台。ステム、ハンドル、サドルなどの細部にまでゲイリー・フィッシャーのネームが刻まれており、こだわりが感じられる。タイヤサイズは26×2.2で、ブレーキにはサンツアー、変速やクランクにはシマノパーツが採用されている。

コンテストの勝者には、自転車パーツを組み合わせて作られたユニークなトロフィーが贈られる。スプロケットやギア、チェーンなどで構成され、手に持つとズシリと重い。このトロフィーは次回のイベントで返還する必要があり、次回の参加も楽しみにさせてくれる仕組みとなっている

最後は参加者全員で記念撮影。一日があっという間に過ぎるほど充実した楽しいイベントだった。筆者のような初心者でも暖かく迎えてくれる雰囲気の中、異なる世代が一つの文化を共有し、楽しむ姿が印象的で、これからもさらに広がっていきそうだ。オールドMTBをお持ちで興味がある方は、来年の開催もぜひチェックしてみてほしい。