あの伝説のグラベルイベントが、完全再始動!グラインデューロ ミナカミ ジャパン 2024

目次

Presented by SHIMANO

伝説のバトンは水上(みなかみ)へ。合言葉はMAXIN&RELAXIN、ワールドワイドなグラベルの祭典が3度目の来日。多様化を極めるグラベルシーン、その最前線へ飛び込んだ。

グラインデューロ2024

グラインデューロ ミナカミ ジャパン 2024
開催日/2024年10月18日(金)〜20日(日)
開催地/群馬県利根郡みなかみ町

グラインデューロ2024 グラインデューロ2024 グラインデューロ2024

3度目の正直

“画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く”。それがグラインデューロジャパンに対する偽らざる本音であった。台風に翻弄された斑尾(まだらお)、トラブル続きだった白馬。グラベルの本流を伝える魅力的イベントなのに、どこか本領を発揮できていない。そしてみなかみ町には、前日から霧雨が降り続けている。どんな一日になるだろう?大勢の期待と不安を背負い、3年目のイベントが静かに動き出した。

谷川岳(たにがわだけ)と温泉街、そして気持ちばかりの紅葉。東京駅から輪行で2時間40分、群馬県北部のみなかみ町にグラインデューロがやってきた。深い峡谷を生かしたトレッキングやラフティングが人気で、ロード競技者にはおなじみの群馬CSCが程近く、ローカルガイドと行くMTBツアーもある。全国的な知名度はないが、サイクルイベントに必要な素養をしっかり備えているエリアだ。

世界5か国で開催されるグラインデューロは、ここ日本がシーズン最終戦。MTBエンデューロレースに多数のエンタメミックスを詰め込んだ闇鍋的イベントであり、独自の世界観で根強い支持を集めている。そして新会場の水上には、約220人のライダーたちが集結した。大会運営は地元スタッフ+実績あるスペシャリストたちがチームを組み、町の全面協力をもって開催へとこぎ着けた。

興奮と平穏の間で

水上のコースは前半50km、後半30kmの2つのループで構成され、総獲得標高は1800m。未舗装率は2割ほどと少ないが、どれもスパイシーで走り応えは十分だ。前半ループを終えたら一度会場に戻り、ランチタイムと共にゆったりと仕切り直すことができる。幸いにして天気は回復し、序盤はレトロな温泉街を経由してオンロードのペダルアップが続く。とはいえリエゾン区間はリザルトに反映されないため、マイペースで進んでも問題ない。

コース上には4つの計測区間があり、合計タイムで順位付けがなされる。うち前半3つは上り基調のオフロードであり、拳サイズの石が散らばる林道、乗車困難な登山道、ゲレンデの直登が行手を阻む。これは安全性を重視したための措置で、次回大会は爽快なダウンヒル計測にぜひ期待したいところだ。ハードなクライミングの一方で、山々を見通せる展望スポットやジープロードのダウンヒルもあり、アドベンチャー感は期待以上。計測ではシリアスに、リエゾンは緩めに、緊張とリラックスの波乗りが続く。タイヤは40C以上、ギヤ比は1以下のグラベルコンポが本領を発揮するコースであり、クライマーに利のある展開となった。

ライド一辺倒にはならないエンタメもグラインデューロの一部だ。ヴィレッジと呼ばれる会場は各社のブースで飾りつけられ、併催イベントの「Mフェスティバル」ではダイナミックなライブサウンドが響いた。キャンプ場も開放され、各々のスタイルで自然に親しむライダーの姿も目立った。前日は約1kmのショートTT「シュワルベ・シェイクダウン」、翌朝は一ノ倉沢までのヒルクライムツアー「ハングオーバーライド」とサブイベントも充実。できるだけ長く会場にとどまり、ライダーたちと交流を深め、隅々まで味わい尽くすことをおすすめしたい。

最初のグラベルセクション

スタートから23kmで最初のグラベルセクションに突入、身体をオフロードになじませていく。未舗装率は2割と控えめながらピリッと辛く、スペクタクルが凝縮されている

リエゾン区間

つなぎのリエゾン区間は舗装路のペダルアップが続く。とはいえグラベルバイクのワイドギヤならば労せず上り切れるレベル。サドルトークを弾ませながら次の計測アタックを目指す

第1計測

第1計測は4.2kmのヒルクライム。待ち受けるのは拳大の石が敷き詰められた林道、しかも前夜の雨でテクニカルさは2割増。グラインデューロの洗礼を浴びつつ先を急ぐ

第2計測

第2計測の頂上は絶景タイム、そしてスキー場の管理通路を通るダウンヒルへ。そこかしこからライダーたちの歓声が聞こえる。やはりグラベルライドに下りは欠かせない

ベーコンエッグトースト

スタート前には朝食が振る舞われた。アニメから飛び出したようなベーコンエッグトーストは、シンプルなのにこんなにもおいしい。参加費にはランチとディナー代も含まれる

キャンプ泊

希望者はキャンプ泊も楽しめるのが本イベントの特色。グラベルファミリーの秘密会議は夜更けまで続いた。バイク&キャンプの流派を見比べるのも楽しい空間であった

世界に並び立つ日本のグラベル

心配された雨は表彰式まで降らず、大きなトラブルもなく無事閉会。大幅なアップデートを遂げたグラインデューロは、ライダーの期待にしっかり応えてくれたと感じる。大会の魅力は健在で、競技性と楽しさが同居するグラベル・マジックアワーを堪能できた。コース難易度はやや高くチャレンジングだが、順位を気にせず走っても大いに楽しめる。同時に、日本屈指のインターナショナルなサイクルイベントでもあるので、ぜひ海外勢との交流を深めてほしいところ。彼らの小粋なバイク&ファッションは必見だ。

日本の林道(そのまま「Rindo」で通じる)は海外勢にも好評で、日本の優れた走行環境を示すお手本となったことだろう。完走目的のグラベルイベントが現在主流である中で、レース要素を強く押し出したグラインデューロは国内唯一であり、先駆けと呼べる存在だ。欧米圏が起こすグラベルレースの波は、ここ日本にもいずれ届くはず。国内でのグラベル競技の盛り上がりに期待だ。翌年も同エリアを舞台に、計測区間のアップデートを含む新コースで開催予定だという。脚とテクニックに自信アリのライダーは上位進出のチャンスありだ。水上での冒険を次回も心待ちにしたい。

井本はじめ選手

ロードからMTBまで様々なライダーにチャンスがある、それがグラベルレースの妙だ。写真は2024年国内ダウンヒル王者の井本はじめ選手。第4計測では堂々の1位を獲得

水上ローカルの知見とコネクションを結集

ネイサン・ベネットさん

Course Setter
ネイサン・ベネットさん

27年間この町で活動を続け、コースは知り尽くしていました。自らのレース経験やMTBツアー実績を基に、易しくも難しくもない、でも安全第一なラインを探りました。谷川岳や赤城山を見通せるザ・日本の絶景がコースのハイライトです。サイクルイベント開催は簡単ではないですが、各方面から協力を得られました。素晴らしいチームワークで、大きなトラブルなく開催できたのが何よりの収穫です。来年も水上でお会いしましょう!

ミナカミ ジャパンのグラベルライダーたちと機材をチェック!

グラインデューロは世界のグラベル交差点。20か国を超えるライダーたちが水上会場を彩った。彼らの目に日本の“Rindo”はどう映ったのだろうか?

英国紳士、日本のグラベルに降り立つ

ハンナ・パロサーリさんとオリバー・タウンセンドさん

(左)ハンナ・パロサーリさん (右)オリバー・タウンセンドさん

日本にはないオリジナリティを発揮し、共に会場を盛り上げてくれた海外ライダーたち。「ユナイテッド・イン・グラベル」を合言葉にインタビューを敢行した。

まずは英国発のグラベル専門メディア「グラベルユニオン」のメンバーであるオリバーさん。大会参加とシマノとのコミュニケーションのために来日した。オフロード歴30年以上のベテランであり、北イングランドがホームコース。3万km走った初代グレイルに40Cのシュワルベタイヤを装備。英国人らしくラファの着こなしがマッチしていた。

オリバーさん

同行のハンナさんは長期バイクパッキングツアーを愛する旅人。フィンランド出身で、スキーをバイクにくくりつけての雪上ツアー経験もあるという。愛車はスコットのアディクトグラベルRCで、軽くてタフな相棒として信頼を置く。大会後は長野へと旅立っていった。

ハンナさん

結束力で魅せた欧州キャニオン・ガールズ

キャニオンガールズ

左から
◎Sofie Mangertsederさん
◎Maria Jatkovicsさん
◎Amelie Graefさん
◎Laura Clausさん

ドイツから2人、オーストリアから2人で参戦のガールズチーム「GRLPCK」。キャニオンのグレイルを駆るアンバサダーチームであり、世界中のグラベルライド紀行をSNSで発信している。立ち振る舞いは華やかにして、羽田空港から自走バイクパッキングで水上までやってきたツワモノたちだ。グラインデューロはグループ走行必須ではないが、常に全員で足並みそろえて進み、水上の自然風景を楽しむ姿が印象的だった。

アジアの風を吹き込むチーム・インドネシア

インドネシアチーム

左から
◎Suharna Ping Tjuanさん
◎Riza katon kumoroさん
◎Ario Bagus Wicaksonoさん
◎Thopa Syaibaniさん
◎Alejandro Reyesさん

日本在住メンバー+来日組で結成されたインドネシアチーム。バイクも着こなしも日本にはないもので非常にスタイリッシュだった。水上では全日程キャンプで過ごし、イベント後は輪行を駆使して日本中へと散らばっていった(後日、筆者ナカタニはバグスさんと富山ライドを満喫した)。聞けば、インドネシアではウルトラサイクリングやグラベル遊びが一大ブームだという。東南アジアの自転車熱を日本に届けてくれる存在であった。

日本、グラベル、ビールを愛するトリオ

アメリカとニュージーランドの3人組

左から
◎Daniel Bellamyさん
◎James Cummingさん
◎Daniel Hebberdさん

アメリカとニュージーランド出身の3人組チーム。ダニエルさんは立川のクラフトビール醸造所「Sakamichi Brewing」のスタッフであり、過去には2年間/2万3000kmのアメリカ自転車旅行を走破した生粋のツーリスト。グラインデューロは2回目で、今回は上り計測で苦戦したと笑顔で答えた。ジェームズさんはトレックのクロスバイクにグラベルタイヤを履かせたお手軽仕様で完走。こんなカスタムもアリだろう。

サイクリングとの出合いはグラベルから

黄前さんペア

左から
◎黄前一希さん 
◎黄前菊江さん

京都からペア参加の黄前さん。グラインデューロは昨年に続き2回目。F1よりもパリダカールラリーが好きな根っからのオフロードファンで、サイクリングデビューの1台目からグラベルバイクを指名買いしたという。実はグラベルは余り走ってないと謙遜するが、カスタムのこなれ感からはバイク愛が伝わる。手組ホイールやRIDE FARRのハンドルバーなど、一ひねりを効かせたパーツセレクトが違いを引き立てていた。

シマノ・GRXをグラインデューロでどう使いこなす?

清水一輝さん

Shimano SPONSERED RIDER
清水一輝さん

BLAZE A TRAIL所属のプロライダー。ダウンヒル競技で全日本5冠を達成し、今年からグラベルへと活動の幅を広げる。バイクはジャイアントのリボルト・アドバンスド。

グラベルライドが新しい扉を開いてくれた

Q : グラベルイベントのご経験は?

グラインデューロは2回目で、最初のきっかけはニセコグラベルでした。ロングライドは余り得意ではないのですが、125kmの最長コースに挑戦しました。キツいながらも完走できて達成感があり、シリアスなダウンヒルレースとは全く違う世界に魅了されました。

Q : ご自身にとってグラベルはどのような位置付けですか?

ロードとMTBの中間にあって、様々な属性のライダーとコミュニケーションがとれる点が魅力です。休日はインターネットでルートを調べて、ダウンヒラーの仲間とグループライドを楽しんでいます。トレイルライドと同じく必ず多人数で走るので、自然の中でおしゃべりしながら心身共にリフレッシュしています。グラベルは改めて自転車の楽しさを思い出させてくれますね。

Q : GRX Di2で感じるメリットは?

ギヤの歯数差が近くて、変速後も一定のリズムでペダリングを続けられるところが好みです。導入時は40Tフロントシングルでしたが、平地での高速化を狙ってダブルに変更しました。電動変速は常に正確で速く、シフトボタン長押しによる3段一気変速が使いやすくて気に入ってます。ブレーキも扱いやすくパワフルで、ダウンヒラーから見ても十分な信頼性があると感じます。

フロントダブル

MTBライダーらしく乗り始めはフロントシングル派だったが、現在は48/31Tのフロントダブルに落ち着いた。機材の高速化で、レーサーにはダブル回帰が進んでいる印象だ

レバー

グリップとエルゴノミクスを極めたGRX Di2レバー。フレアハンドルに最適化されたシェイプは繊細なブレーキコントロールをもたらす。サテライトスイッチ増設も可能だ

スプロケット

スプロケットは11〜34Tの12速。細かなギヤステップがケイデンスを安定させる。リボルトの可変式リヤエンド「フリップチップ」は、反応性重視のショートポジションに

Q : グラベルで安全に下るコツは?

できるだけ太いタイヤを履いて、空気圧を落として走ることですね。特に空気圧はベストなセッティングを探ってほしいです。ニーグリップでバイクを抑えたり、目線を遠くに置いたり、ダウンヒルで培ったスキルもフル活用しています。

ホイール

タイヤはマキシスのランブラー40Cで、前1.6/後1.8気圧。上りの軽さを重視し、下りはスキルで補う構えだ。GRXホイールは内幅25mmのカーボンリムを採用

Q : 今後の展望について教えてください

MTBを通じたコミュニティづくりをさらに広げていきたいです。グラベルイベントでもっと多くのライダーと交流して、共に走って、オフロードの魅力を伝えていきたいです。グラベルライダーをMTBへ、そしてダウンヒルの世界へと連れて行けたら最高ですね!