茨城県へ延伸したB.B.BASEでつくばりんりんロードへ!

目次

自転車を輪行せず、そのまま乗車できるラックを装備したサイクルトレイン『B.B.BASE』。行き先は、東京・両国駅の専用ホームから温暖な気候で一年中サイクリングが楽しめる千葉・房総半島。サイクルスポーツの読者諸氏には、もうおなじみの存在だ。

全4コースあるうち、これまで佐原駅までだったコースが、潮来、鹿島神宮駅へと茨城県まで初めて延伸。その潮来駅を起点に『つくば霞ヶ浦りんりんロード』を含めた霞ヶ浦周辺の魅力を知ってもらおうというメディア向けのツアーが開催されたので、参加してきたレポートをしよう!

『B.B.BASE』とは『BOSO BICYCLE BASE』の略。両国駅から、一年中サイクリングを楽しめる温暖な千葉県の房総半島へと向かう自転車専用列車だ。週末ごとに行き先が変わり、内房、外房、銚子、そして今回乗車した佐原・鹿島方面へと向かう4コースが用意されている。

元々、京浜東北線等を走っていた車両を自転車用にリニューアル。座席の背後に、解体せずに自転車を縦置きできるラックを装備。『B.B.BASE』が出発、到着する両国駅は一般乗客が利用するホームではなく、専用ホームへと自転車を押したままアクセスできるので、乗車、降車がストレスフリー。『B.B.BASE』利用の乗客=自転車仲間だけの利用なのが、なんともうれしい!

両国駅西口には、『ベックス・コーヒー・ショップ』が7:00~21:00オープン。マイボトルへのコーヒーサービスはもちろん、『B.B.BASE』の当日乗車券の提示で、ドリンクのワンサイズアップを無料で行なってくれる。電源やWi-Fiも完備し、店外にはサイクルラックもある

『ベックス・コーヒー・ショップ』両国店限定のパニーニモーニングのセットは420円。ハム&たまごのサンドで、店内で食べてもよし、『B.B.BASE』車内にも小さなテーブルで備わっているので、テイクアウトもOK!

 

B.B.BASEでナショナルサイクルルートにダイレクトアクセス!

潮来駅到着直前の常陸利根川からこの歓迎ぶり。乗客全員が、感動した

 

佐原・鹿島コースは両国駅を8:12に出発。途中、東千葉駅、佐原駅に停車して、10:07に延伸された潮来駅に到着。意外と乗車時間が長いが、輪行で他の乗客に気遣い、自転車が邪魔になったり倒れたりを心配する必要がなく、のんびり寛いて電車移動できるのは、『B.B.BASE』ならではの利点だろう。

 

さて潮来は249.5kmと日本一の周囲長を誇る霞ヶ浦と常陸利根川とつながっている街。水路が縦横に張り巡らされた水郷、そして春のアヤメの美しさで知られるところ。そして日本一平坦な全長180kmの『つくば霞ヶ浦りんりんロード』というサイクリングコース沿いの街でもある。

 

春だけでなく、一年中観光客を向かい入れる準備を整えてきた潮来駅では、『B.B.BASE』がお隣の佐原駅から延伸されたことを大歓迎。土手やホーム、改札周辺に多くの町民が訪れ、お祝い&お祭りムードで出迎えてくれた。自転車好きを大いに受け入れてくる街。もう、それだけで愛おしい街。スタート地点に最高だ。

 

潮来駅に到着!

 

駅のホームから熱烈な歓迎ムードに包まれる

 

絣柄の衣装でお出迎え!

潮来駅前では、お米やお茶でもてなしを受けた。メディアのサイクリストがこれだけの数集まるイベントもそうない

 

 

湖岸の霞ヶ浦りんりんロードを快走

潮来駅からは、すぐに『つくば霞ヶ浦りんりんロード』に入れた。

このコースは2019年に選定された3つの『ナショナルサイクルルート』のひとつだ。ちなみに残りの2つは『ビワイチ』と『しまなみ海道サイクリングロード』。筆者はこのコース、そして霞ヶ浦を初めて訪れたが、もう、期待しかない。

 

霞ヶ浦東岸を北上するコースに入ってすぐに、まるで海のようだと感じた。それくらいに風景に広がりがあり、周囲に高い山もないので、気持ちいいほどの開放感に満ちていた。「霞の浦」とも呼ばれるらしく、対岸がボンヤリと霞んで、風情を満喫できた。

この日は、そんなコースを約50km北上。土浦駅を目指す予定だ。ところでこの『つくば霞ヶ浦りんりんロード』は、自転車専用道路ではない。一部は専用のようだが、霞ヶ浦東岸は、釣り等のレジャーを楽しむ他の観光客が乗ったクルマも通り、歩道を利用することもあった。グループライドの際には、周囲に充分な注意、配慮が必要だ。

 

ゲストハウス古民家江口屋 薪で焚いた米をかみしめる

潮来駅から約30km。霞ヶ浦の北岸、かすみがうら市に位置する『ゲストハウス 古民家 江口屋』さんで、昼食を頂いた。明治後期に建てられた元造り酒屋を改装。霞ヶ浦は風の力で進む帆引き船が観光用に航行しているが、旧き良きものが残る風景は、旅心を刺激する。

http://www.kasumigaura-kankou.jp/eguchiya/

 

さて『江口屋』さんは、本来、昼食の提供はないとのこと。宿泊利用者の朝食として提供される薪釜で炊いたごはんと地元野菜の副菜という、素材の味わいを楽しめる手料理を、特別に頂いた。

噛みしめるほどに旨味が口いっぱいに広がり、身体と心が豊かになる料理。この贅沢を体験するために、今度は霞ヶ浦一周ライドをして、ココ『江口屋』に泊まるのもあり! 調べてみると石窯でピザ作り、蓮根豚と茨城野菜のBBQなんていう体験プログラムもやっている。宿泊者には無料のレンタサイクルもあるので、家族利用も楽しそうだ。

 

宿泊は星野リゾートBEB5土浦で

のんびりとツーリングした最後のお楽しみは、土浦駅の駅ビル。サイクルショップやサイクルベースを備えたサイクリストのための駅ビル「PLAYatre TSUCHIURA」内に、2020年10月にオープンした『星野リゾート BEB5土浦』だ。

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/beb5tsuchiura/

 

土浦駅の改札階直結のホテルエントランス。自転車をそのままホテル内に持ち込むことができる

地元・茨城県では日本一リーズナブルに泊まれる星野リゾートとして知られているという。しかし、自転車好きにとってはリーズナブルさに加えて、自転車をそのままホテル内に、さらには部屋にまで持ち込める安心感が最高のホテルだ。

ホテル内に入ると、自転車をイメージするインテリアや自転車レースを映したモニター、さらにはスムージーが作れる自転車ミキサーという珍しいものまであり、自転車愛を満喫できる。とはいえ、そこには自転車野郎の汗臭さは皆無。星野リゾートならではのセンスのよさを感じられ、自転車ビギナーの彼女やパートナーを誘えば、喜んでくれること間違いないだろう。

 

サイクルルームはツイン仕様。ロビーから廊下、部屋まで、ホテル内はどこでも自転車を持ち込むことができる。インテリアも自転車を連想させるものが多用されているので、テンションが上がる

 

部屋に入ってすぐの場所に2台分のサイクルラックが用意されている

 

木のぬくもりを感じられるダブルルーム。一人旅でも使いやすい。自転車は部屋を出てすぐの廊下に駐輪できる。館内にはたくさんの監視カメラが設置されているので安心。

 

希望すればシューズドライヤーをレンタルすることができる。悪天候のライド後の宿泊には、ありがたいサービスだ

 

ツインのサイクルルーム以外には室内に備え付けの自転車ラックはない。だが、希望すれば写真のようにラックをレンタルし、室内で保管することもできる

自転車愛を刺激するサービスは、まだまだある。

ゲストルームには自転車持ち込みはOKだが、なぜか土足は厳禁。だのに自転車と添い寝できるオプションが用意されている。実際に利用者は少なからず、いるという。いや、もうこれには驚きしなかない。自転車好きのためのホテルを越えて、まるでテーマパークだ。

 

SNS映え間違いなしの愛車添い寝サービス。専用のシーツを貸し出してくれる

 

ペダルを漕いでスムージーを作ろう!

 

このホテルの特長は、他にも色々とある。

まず通常は断られるゲストルームへの飲食物の持ち込みが可能。昨今の情勢で外食を控えたい人は、仲間や家族と部屋メシ&パーティーを楽しむのもアリだ!

フロント階には24時間営業のカフェがあり、TAMARIBAというフリースペースで仲間同士、居合わせた自転車好き同士でワイワイと盛り上がれるのもいい。自転車工具を揃えたサイクルスペースや、ワーケーションに活用できるワークスペースも用意されている。また宿泊者専用のレンタサイクルも用意され、手ぶらツーリングも楽しめるのもいい。

 

TAMARIBAでも提供されるキリンビールのクラフトビールシリーズ。ちなみに茨城県はビール生産量日本一

 

翌日は朝焼けライドからスタート!

『BEB5土浦』の朝は早い。なぜなら、「朝焼け絶景サイクリング」というツアーがあるから。この日は5時に土浦駅前に集合。料金は1名2200円で、レンタサイクルやヘルメット、自撮り棒やマップ、干し芋とコーヒーの朝食等がセットになっている。

朝焼けなんて、どこで見ても一緒でしょ……と思う人は旅心を育てた方がいい。

霞ヶ浦の向こうから上がる朝陽、赤く焼けた空が、まだ風のない滑らかな湖面に映る光景は、なかなか他の場所では見られないもの。仮に雲が出て朝陽が見られなくても、明るさを取り戻していく空、そして静かな湖を眺めているだけで、朝の心地よさを堪能できる。

特に自転車ビギナーにとっては、思い出に残る時間になるだろう。

みんなで朝焼けを待つというのはなかなかスペシャルな経験になる

 

朝焼けを見た後は霞ヶ浦総合公園でホテルスタッフが用意したコーヒーをいただく。茨城県名産品の干し芋とどうぞ

朝焼けライドグッズ。ホッカイロや干し芋。アルコールスプレーも入る。自転車メガネで朝からハイテンションに!?

各アイテムはハンドルバッグにもなるポーチに入っていた

 

ホテルに戻ったら朝食。「PLAYatre TSUCHIURA」内のカフェでサンドイッチと飲み物のセットが宿泊者に提供される。

チェックアウトは11時。でも、なんとだいたい11時でよいそう。少し遅れても構わないことをサービスにしているそうで、時間ギリギリまでサイクリングを楽しんで、シャワーを浴びて、チェックアウトしてもらいたいという。

宿泊者、自転車好き目線の細かいけれども、うれしいサービスは、「さすが、星野リゾート!」と思える。

 

つくば霞ヶ浦りんりんロードをさらに北上。筑波山方面へ

2日目は土浦駅から筑波山方面へ20km。『つくば霞ヶ浦りんりんロード』のコースの一部で、その昔筑波鉄道だった廃線跡を北上する。

 

昨日の湖畔のコースと打って変わって、田園風景のなかを進んだ。

横切る車道が定期的にあるものの、大半が歩行者と自転車専用道路なので、気持ちよくスピードを出せる。途中には城跡や鉄道路線だったことを示すホーム跡が残っている。漕ぎ進む程に大きくなる筑波山が、平坦な風景のなかで、やけに神々しい。

元々が線路ということでアップダウンも少なく走りやすい

かつての駅が休憩スポットになっている。ホームに自転車で到着するというのは不思議な体験だ

 

メディアツアーにはマヴィックカーも帯同。パンクなどトラブル時にも心強かった

 

ゴール地点は茨城県桜川市真壁町にある『見晴らしの丘 真壁 うり坊』。泊まれるレストランで、ランチ、ディナーを、宿の名称にある通り、見晴らしのよい部屋で頂ける。ランチは30食限定のイタリアン。また、大正時代につくられた趣のある建物にある宿泊部屋は、海外からの観光客に人気だそう。『つくば霞ヶ浦りんりんロード』からも近く、筑波山も至近。ツーリングやヒルクライムを楽しみ、眺めと料理を味わう、ちょっとお洒落な自転車旅にぴったりだ。

https://uribou.jp/index.html

ライドツアー最後のランチでコース料理をいただく。野菜の味が濃い!

女性を含めたライド時に頂けば、間違いない料理だ

 

 

B.B.BASEバスで潮来へワープ

ランチ後はプライベートで来ていたら、土浦駅まで自転車を漕いで戻り、常磐線で輪行して帰京するところだが、今回はメディアツアーなので、B.B.BASEバスに自転車を積んで潮来駅へ。でも自転車の前輪だけ外して専用ラックにセットできるバスで移動する貴重な経験もできたので、それはそれで楽しい時間だった。

 

両国解散

潮来駅からは、行きに乗った『B.B.BASE』で両国駅へ。17:06潮来発、19:32両国着。メディアツアー以外の利用客を見てみると、両国駅から自走で帰る人が多かったように思える。

 

とはいえ両国駅近くには予約制の駐車場「タイムズのB」の利用も可能。また両国駅前には『B.B.BASEバイシクルステーション』があり、ロードバイクやクロスバイクのレンタルができる。B.B.BASE運行日に営業していて、貸出、返却も列車の出発、到着時間に合わせているので、手軽に『B.B.BASE』でツーリングを楽しみたい、また輪行はちょっと・・・という人は、是非利用したい。

 

両国駅からは輪行の面倒がない『B.B.BASE』で、週末日帰り、そして1泊で美しいサイクルコースと施設の充実した『つくば霞ヶ浦りんりんロード』を楽しむ自転車旅。いつも以上に、「自転車って最高!」と思える時間でした。