団体臨時列車水郡線サイクルトレイン最前線2022号で行く「奥久慈里山ヒルクライム2022」

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「水郡線サイクルトレイン」をPRするライドイベント「奥久慈里山ヒルクライム2022」が2022年2月20日に開催された。茨城県北部の常陸太田から常陸大子を巡るヒルクライムコースや、イベントについて詳しく紹介する。

 

「奥久慈里山ヒルクライム2022」が開催

JR水戸駅

茨城県水戸市と福島県郡山市を結ぶ水郡線では、2021年5月より地域活性化を図る実証実験として「水郡線サイクルトレイン」の運行を実施している。取り組みの一環として、2022年2月20日には水戸駅から団体臨時列車のサイクルトレインを運行し、茨城県北部の奥久慈エリアのヒルクライムルートを巡るイベント「奥久慈里山ヒルクライム2022」が開催された。

ゲストライダーにヒルクライマー・YouTuberとしてもお馴染みの篠さんをお招きして、総勢22人のライダーが茨城の魅力を巡るヒルクライムを楽しんだ。今回は奥久慈エリアの魅力とともに、イベント当日の様子をレポートする。

 

水戸駅から常陸太田駅まで団体臨時列車のサイクルトレインでGO

サイクルラック

「奥久慈里山ヒルクライム2022」当日は雨予報が出ていたものの、集合時間の9時半には雨は小康状態となった。雲の切れ間から光が差し込みつつある水戸駅に、イベントに意気込みするサイクリストたちが集結した。参加者たちを奥久慈エリアに案内するのは、茨城県より認定を受けた「いばらきサイクリングサポートライダー」のメンバーと、笠間市のサイクルチーム「KASAMA Volpe(ヴォルペ)」のメンバー、そしてゲストライダーの篠さんだ。

今回、PRしている「水郡線サイクルトレイン」とは、水郡線の一部区間において、自転車を輪行せずにそのまま列車に持ち込めるサービスだ*。

水郡線サイクルトレイン

往路では、この日限定で水戸駅と常陸太田駅を結ぶ団体臨時列車のサイクルトレインが運行した。サイクリストと自転車を積み込んだ2両編成の水郡線は、10時10分に水戸駅を出発。見送りの駅員さんたちが手を振る中、列車は常陸太田駅を目指して走りだした。

*事前登録が必要。詳細は公式サイトまで

自転車と一緒に水郡線に乗車

 

未知なるヒルクライムが続く奥久慈の道

見送る駅員

 

今回走行するのは総距離50m、獲得標高700mのヒルクライムコースだ。常陸太田駅から県道33号を北上し、日本最大級の全長・高さを誇る竜神大吊橋へ。地元の名産品をエイドで味わいながら、袋田の滝に立ち寄り、常陸大子駅から水戸駅行き団体臨時列車のサイクルトレインに乗り込む。上菅谷駅から東西にY字に分岐する水郡線の特徴を生かして、反時計回りに奥久慈エリアを列車とサイクリングで巡る一筆書きルートだ。

「茨城県北は県南の筑波山周辺とは一味違い、山々に囲まれた里山風景が広がっています。今回のルートで最大の難所といえば、竜神大吊橋直前に待ち受ける激坂、通称『竜神大吊橋ヒルクライム』ですね」と、教えてくれたのは試走でこのルートを攻略した、いばらきサイクリングサポートライダーの文倉さんだ。

 

水郡線の車内

水戸駅から常陸太田駅に向かう車内では、ルートについての説明や、これから始まるライドへの期待にサイクリスト同士の会話も弾む。30分ほどの列車の旅だったが、ローカル線車内に所狭しと並ぶ自転車、そして気合い十分のサイクリストたちと、サイクルトレインらしい光景が広がっていた。

 

一番の難所!? 『竜神大吊橋ヒルクライム』で力試し

常陸太田駅

常陸太田駅に到着後、まずは北上する。市街地を抜けると、田畑と山々が四方を取り囲む県道33号へ。ひと言で“山”といっても東北や信州の山岳地帯のように荘厳なものではなく、日本昔ばなしで登場するような素朴な風景なのが印象的だ。

県道33号

県道33号は上りっぱなしの登坂コースではなく、小さなアップダウンが繰り返される快走路だ。参加者たちも軽快にルートを進んでいくも、竜神大吊橋へ至る分岐点へ到着。県道はさらに北へ延びるが、一度ここで分岐を西に逸れ、『竜神大吊橋ヒルクライム』へアタックだ!

竜神大吊橋ヒルクライム

先ほどのフットワークの軽い上り基調とは打って変わって、ヘビー級の九十九折りが続くヒルクライムが続く。コーナーの所々で参加者たちの雄叫び(?)がこだました。

竜神大吊橋

息も絶え絶え上りきった先に待っていたのは、100mもの渓谷にかかる大吊橋と、出来たてのエイド食。完走したサイクリストの顔が次々とほころんだ。

けんちん蕎麦と玉喜屋のみそ饅頭

エイドに並んだのは、常陸太田名産の蕎麦を使った具だくさんのけんちん蕎麦と、地元で老舗の和菓子屋「玉喜屋」のみそ饅頭だ。地元の方々が協力してくださり、サイクリストたちの到着時間を逆算し、熱々の状態で準備してくれたという。激坂にしごかれたあとの温かく優しい味は格別だろう。

水郡線サイクルトレイン

参加者の中には「想像よりも結構キツかったです。もうあれ以上のヒルクライムはいらないかな……」という人や、「もっと上りたかったですね」と名残惜しそうな人も。さて、あなたの脚力にとって竜神大吊橋ヒルクライムは? 気になる人は、ぜひ自身の脚で挑戦してみてほしい。

 

名瀑・袋田の滝へ足を伸ばして

竜神大吊橋を後にし、再び県道33号を北へ進む。軽快なアップダウンが続くかと思いきや、常陸太田市と大子町の境界線にかけて改めて登坂がはじまった。あまり山のイメージがない茨城県だが、侮るなかれ。予想だにしなかったヒルクライムが出迎えてくれる土地柄のようだ。

常陸太田市と大子町の境界線

大子町に入るとすぐに日本三大名瀑・袋田の滝へ到着する。高さ120m、幅73mの大きさを誇る袋田の滝は、対面するとかなり圧倒的だ。滝周辺にはお土産屋も多く、川魚の串焼きや団子など軽食も楽しめる。袋田の滝から常陸大子駅までは目と鼻の先なので、とことん名瀑に癒やされるも良し、小腹を満たすのにも良しのスポットだろう。

袋田の滝

ゴール時に配布された大子町の名産品

ゴール時に配布された大子町の名産品

 

まだ見ぬ峠道が待ち受ける、水郡線沿線へようこそ

常陸大子駅

無事、常陸大子駅に到着したサイクリストたちを待っていたのは、復路の団体臨時列車のサイクルトレインだった。輪行せずに直接乗り降りできることは、ライド後の疲れた体にもありがたい。常陸大子駅から水戸駅まではおおよそ1時間、ゆったりとローカル線の旅を楽しめる。

帰りの水郡線車内

列車内はライドの振り返りで盛り上がっていた。走り甲斐のあるコースだったという声が多かったが、一部には走り足りなかったというサイクリストも。しかし安心してほしい。ヒルクライムを愛で尽くし、峠道マニアである篠さん曰く「魅力は尽きない」とのこと。

「今日はよく走っていらっしゃる方が多かったので、スイスイ完走できちゃいましたね。もしもっと坂を攻めたいのなら、今回のルートではなく山側の林道がおすすめです! 奥久慈グリーンライン林道や奥久慈パノラマライン、アップルラインなど豊富な峠道がありますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね」

水郡線サイクルトレイン

「水郡線サイクルトレイン」は2022年4月2日から通年で実施することが発表された。現在の奥久慈エリアはいわば原石のような場所だ。交通量や信号も少なく、ブルーラインの整備などサイクリスト向けの施策も地域を挙げて推進している。ヒルクライマーをはじめとする首都圏ライダーの『新・サイクリストの聖地』として、より熱を帯びていくだろう。