「ZwiftアカデミーROAD 2022」参加ガイド〜あなたの脚質が分かりより強くなれる!
目次
ロードバイクユーザーにも人気の世界的オンラインフィットネスサービス「Zwift(ズイフト)」。そのZwiftが2022年9月12日〜10月9日までのトレーニングイベント「ZwiftアカデミーROAD 2022」を開催する。Zwift契約ユーザーなら誰でも追加費用なしで気軽に参加でき、“脚質”が診断できるうえに今後さらに強くなるための大きなヒントが得られる。参加しない手はない!
Zwiftアカデミーとは?
簡単に言うと、1か月間で行われるワークアウトのイベントであり、“才能発掘プログラム”である。
開催期間中、スケジュールに沿って2つのグループライドと6つのワークアウトを行うことで、自分のいわば脚質が診断され、ワークアウトを行った後の成長がデータで分かり、さらにあなたの力を伸ばすためのカスタムされたワークアウトとトレーニングプランがメールで届くものだ。この脚質は3つの「表現型」と名付けられたタイプから診断してもらえる(後に詳しく)。
今回は2021年よりも実施期間が短くコンパクトになり、より参加しやすくなっている。さらに、自分のカテゴリー(Zwiftでは参加レースごとに自分の脚力に応じてA〜Dでいわば参加レベル=カテゴリーを分けてもらえる。女性カテゴリー=Eカテゴリーもある)に応じてロングバージョンとショートバージョンのどちらかでワークアウトを行え、短い時間でもできるようになった。なお、ロングバージョンでも長いワークアウトで1時間かからない。
また、今回はオンデマンド方式のワークアウトでは案内表示が日本語対応になり、より理解もしやすくなっているのがうれしい。
ちなみに、成績が優秀だった参加者のうち男女1人ずつ、男性はUCIプロチームであるアルペシンフェニックスへ、女性はUCIウィメンズチームのキャニオンスラムと1年間契約を結ぶ権利を得ることができる! 実際、グランツールでステージ2勝を挙げたジェイ・ヴァインという選手をこのイベントから輩出しており、レーサーにとってはプロへの切符をつかめる夢のあるプログラムでもあるのだ。
Zwiftアカデミーへの参加/詳細についてはこちらの公式ウェブサイトのページをチェックしよう!
https://www.zwift.com/ja/academy
Zwiftアカデミーに参加するメリットとは?
ここからは自転車コーチの中田尚志さんに解説を仰ぎつつ、具体的にアカデミーのメリット、内容について紹介していこう。
プロへの切符をつかむこともできる、というのも注目だが、我々一般のサイクリストにとって、このイベントに参加するメリットはどんなところにあるのだろうか?
「自分の強みが何で、逆に課題点が何かを手軽に洗い出すことができる点です。
例えば、熱心にヒルクライムレースに取り組んでいる方で、なかなか結果が出せず悩んでいる人がいるとしましょう。その人がこのアカデミーを受けてみたら、結果はロードレースの方が向いていることが分かった、ということがありえます。それが分かったら、もしかしたらロードレースの方が結果が出せるかもしれないので、そちらに有効な領域のワークアウトを中心にこなしていく方が良い、という方向性が分かります。
逆に、例えばFTP領域が弱いのでそこをもっと鍛えて補っていかないといけない、といった課題点も洗い出せるのです。
また、1回1時間程度という時間の取り組みやすさも魅力です。1時間のライドというと、さまざまなサイクリストにとって短すぎず長すぎず、ちょうどよい時間と言えます。また、信号や交通状況、昼夜も気にすることなく、好きな時間に集中して行えることも重要です。リアルなコーチングの世界でもこうした診断を行うのですが、これを一般の方が実走で行うのはかなり難しい。それが、このイベントを通じて手軽にできるのです。
さらに、普段Zwiftをプレイしているけど、さまざまなワークアウトがありすぎて何をやったらいいか分からない、という人にとっても有効です。これをきっかけに自分の弱点を潰す/強みを伸ばすために、どういう系統のワークアウトを選んでいけばいいのか、判断もつきやすくなります。
Zwiftには自分の目指したい方向性に合ったおすすめのワークアウトプランを作ってくれる機能もありますから、「表現型」とアカデミーの結果を受けて、それを活用してみるのも良いでしょう。
それから、Zwiftのワークアウトをやったことがないという人にとっては、ひとまずこのアカデミーをイベント参加気分で受けてみるのも良い機会になると思います。“ワークアウトってこんなことをやるんだ、今後もやってみようかな”と一つのきっかけにもなるでしょう」。
具体的にどんなライド&ワークアウトをやる?
「内容は有名で実績のある海外のコーチが監修しており、非常によく考えられた内容になっています。最初は有酸素領域、後半は無酸素領域とだんだんと強度が上がっていき、サイクリストとして求められる全領域にアプローチできるようになっていますね」と中田さん。
ベースラインライド
一番最初に行うグループライド。通常Zwiftで使用されるコースの1つを使い、現状のあなたの「表現型」を診断する。
自分なりのペースで走っていけばよいのだが、自分の持てる力を全て出しつくすようにしよう。途中に3つの高強度で走る区間(セグメント)が設けられている(上のマップの1つめの短い上り区間、中間のスプリント区間、最後の長い上り区間)。
ワークアウト① エアロビックコンディショニング
「テンポ」と呼ばれるやや息が上がる程度の強度(FTPの80%程度)で走りつつ、途中で1分のFTP走を2回入れる。レストを挟んでそのセットを3回繰り返す。
「脚ならし的ワークアウトです。Zwiftアカデミーはこんなふうにやっていくんだな、という感覚を乗りながらまずは体験していくためのものですね」と中田さん。
ワークアウト② FTPショートブロックス
FTP領域のインターバルを3セット。後半になるにつれて強度は下がっていくが、維持する時間が伸びていく。
「FTPを上げて、エンデュランス能力を鍛えるためのワークアウトですね。これをやると、上り坂のあと一旦下りがきて、そのあと上り坂がくるのを繰り返すなど、リアルなレースでよくあるシチュエーションを想定した力が磨かれます」と中田さん。
ワークアウト③ ザ・ヴォルケーノ
ベースラインライドで登場する「ヴォルケーノKOM」という上りセグメントを模したもの。FTP〜VO2マックス領域(FTPの105〜118%の強度)のインターバルをこなす。
「有酸素と無酸素の境にあるVO2マックスのパワーゾーンを長く維持できるようになります。かなりきつい内容です」と中田さん。
ワークアウト④ ディプリーティングワークアウト
ディプリーティングとは、英語で“枯渇する”といった意味。最初に3本のスプリントをこなし、その名のとおりほとんど力を使い果たしたくらいの状態にする。そこから10分のFTP領域の走りをこなし、レストを挟んでまた同じことをもう一度繰り返す。
「プロ選手がよく取り組む内容です。アタック合戦のあとに集団が落ち着き、FTP強度で走り続けるような状況に耐えられるようにするためのものです。一定ペースで走るのが得意でも、最初にがつんと強度が上がってしまうとそのあといつもどおりの力が出せなくなる、なんて人におすすめです」。
ワークアウト⑤ ピラミッド
高強度のインターバルトレーニングだが、もがく時間がそれぞれ一定でなく、短い時間から伸びていき、そしてだんだんとまた短くなるという、時間の上がり下がりがピラミッドの形をほうふつとさせる内容になっている。途中にテンポ領域の7分の走りを入れ、最後にもう一度同じ“ピラミッド”を繰り返す。
「脚がいっぱいいっぱいになったあとでもそこそこのペースで走り続けつつ、脚を回復させる能力が磨かれます。例えば、高強度な上りをこなしたあと、平地をそこそこのペースで走り続けつつ脚を回復させ、最後にまた高強度な上りをこなすといった、レースでよく見られるシチュエーションに対応できるようになります」。
ワークアウト⑥ プッシュ・ザ・ペインバリアー
意訳するならば、「痛みという感覚なんて取っ払え!」という意味か。一連のワークアウトの締めくくりとして、高強度なインターバルを5セットこなす内容となっている。
「始めにもう脚がかなりきつい状態になるほど追い込んだあと、長めの高強度走が3本現れ、いわば“不快に慣れる”ことを目的としています。最大パワーを伸ばす効果が期待できます。また、これをやっておけばライドやレース本番でこれよりきついことはないでしょう。卒業テスト的なものですね」と中田さん。
フィニッシュラインライド
始めに行ったベースラインライドとまったく同じコース・内容のグループライドを最後に行い、6つのワークアウトをこなしたあとで自分の能力がどう伸びたかを測る。
詳細についてはZwift公式サイトをチェックしよう!
●ベースライン&フィニッシュラインライドについて
https://www.zwift.com/uk/academy-zaroad-road-baseline-and-finish
●6つのワークアウトについて
https://www.zwift.com/ja/academy/zaroad/road-workouts#workout1
専用アプリ「Zwiftコンパニオン」でデータをチェックしよう!
専用アプリを使うと、アカデミーによってあなたの能力がどう進化したのかをデータで見ることができる。また、あなたの「表現型」についてより深く学ぶことが可能だ。
診断できる「表現型」とは?
あなたが生まれ持ったいわゆる脚質は、Zwiftアカデミーでは3つの「表現型(英語ではフェノタイプと言う)」として提示される。
①スプリンター
瞬間的に高いパワーを出すのが得意なタイプ。
「日本国内で行われるレースでいうと、クリテリウムや平坦コースのロードレースが得意なタイプです」と中田さん。
②パーシューター
高い出力を中程度の時間維持し、それを何度も繰り出すのが得意なタイプ。
「日本国内で行われるレースでいうとロードレース全般に強いタイプで、何度も自分からアタックをしかけたりできるタイプです」と中田さん。
③タイムトライアリスト
一定ペースで中〜高強度の出力を維持し続けるのが得意なタイプ。
「日本のロードバイクシーンで言うと、いわゆるヒルクライマーとその名のとおりタイムトライアルが得意な人のタイプです。また、ロングライドが得意な人もこちらに当てはまります」と中田さん。
「表現型」についての詳細は公式サイトをチェック!
https://www.zwift.com/ja/academy-zaroad-phenotype-rider-type
★日本語対応
「表現型」を受けて、得意分野を伸ばし、苦手分野を克服しよう
「自分の表現型が分かると、その得意分野を伸ばすために何をしたら良いか、逆に苦手分野を補うために何をしたら良いのか、方向性が見えてきます。
例えば、あなたがタイムトライアリストと診断されたとしましょう。このタイプは一定の強度を維持し続けるのが得意で、そのうちパワーウェイトレシオに優れる人はヒルクライムレースで活躍できます。さらにその力を伸ばすならば、FTPを伸ばすワークアウトを中心にこなしていくと良いですね。
一方で、このタイプは短い時間で高い力を出すのが苦手です。すると、例えばヒルクライムレースでも途中でアタックがかかるとちぎれてしまう、あるいはゴールで一騎打ちになったときにスプリントで破れてしまう、といった弱点があります。それを補うために、高強度・短時間のインターバルを行うワークアウトをこなす、といった対策ができます」。
Zwiftをさらに楽しみ、よりサイクリストとして成長できるまたとない機会だ。ぜひ、本アカデミーに参加してみよう!