MTBはもちろん、グラベル、ロード、eバイクでも楽しめる新生「シマノバイカーズフェスティバル」
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MTBブームの只中、1991年に「シマノバイカーズフェスティバル」はスタートした。長年に亘り、エンデュランスやXC、DHレースを中心としたレースイベントとして親しまれてきたが、近年、内容が大きく変わっていることをご存知だろうか?
31回目を迎える今大会は、2023年7月29日、30日の2日間に亘り、長野県富士見町の富士見パノラマリゾートと、その周辺の道路を使って開催された。今大会では、イベント内容が見直され、大幅にリニューアルされた。
MTBのみならず、グラベルバイクやロードバイク、eバイクで走れるツアーが人気のツーリング・イベントは、昨年以上に充実。会場内では、丸一日を使ってMTBで走る楽しさを新発見する「Trail Ride+」という新コンテンツが登場。レースに出場しない家族や仲間も楽しめる「6Wheel&Campingゾーン」も新設された。会場にやって来た人すべてが気軽に楽しめる、展示、試乗、ワークショックが充実したことが印象的だった。
いろいろな自転車で楽しめる充実のツアー
2日間で、計28コースのツーリング・イベントを実施。ロードバイクで八ヶ岳周辺をグループライドする「南八ヶ岳オンロードライド」には、シマノレーシングのメンバーが同行。全長約55kmと約102mの2つのルートを使ったツアーでは、八ヶ岳から南アルプスを見渡す絶景の中をたっぷりと走った。
グラベルツアーは、約20.2km、約26.9km、約46.9kmと、技量に合わせて選べる3コースを用意。スタート地点までは専用のバスで移動。木陰が心地良い林道を中心にしたグラベルロードを堪能した。eグラベルバイクでの参加もOK。全体に下り基調のコースレイアウトとなっており、ビギナーでもグラベルライドの楽しさを無理なく体感できた。
景色を楽しみながら会場周辺の未舗装路を気軽にMTBライドできる「八ヶ岳MTBトレッキングツアー」も人気。レンタルeMTBで走る「E-MTB体験ツアー」、今回、新登場した近隣の管理釣り場まで走って、釣りが楽しめる「Ride&Fishツアー」など、普段、あまり自転車に乗っていない人でも気軽に楽しめるツアーも充実していた。募集開始直後に満員となるツアーもあったとか。
丸一日かけてスキルアップできる新設プログラム
初日の7時から17時まで、富士見パノラマ内に特設された専用コースで、たっぷりと走り込める「Trail Ride+」も今回初の試み。コースは、スタート地点まで第1ペアリフトを使ってアクセスし、そこから上りもある下り基調のコースを走る。コース全長は830m、高低差約56m。ショートカットを使うと470mという集中して走れるほど良い長さ。
シマノがサポートするDHトップライダーの井出川直樹さん、永田隼也さんに加え、4回のオリンピック出場経験を持つXCライダーの山本幸平さんの3人を講師に迎え、じっくりとレクチャーを受けながら、コースを攻略するプログラムだ。最初に全員でコースを歩き、その後、各自のタイムを計測。その後、フリー走行中には、豪華講師陣から、最速のライン取りや、上り、下り、それぞれのタイムアップにつながる走り方がレクチャーされた。
午後には2回目のタイム計測で、実力アップを実感。最後は、参加者と講師がコースを一緒に走るメガトレインで締めくくった。
森の中のシングルトラックを上って下ってコントロールする、MTBの本質と楽しさを新たに発見する人もいれば、再発見する復活組も。終了後に参加者たちが、晴れやかに談笑する姿が印象的だった。
初心者でも無理なく参加できるグラベルレース
レースプログラムも大幅に見直された。今回から、グラベルレースを「GX」という名称に変更。XC、GXともに、初心者でも参加できる「Light」というクラスを設定。60分で競われる経験者向けの「Race」クラスの半分の30分で周回数を競う。GXのスタートは、ルマン式を採用。選手は自転車を置いた場所までランで行き、そこから自転車に乗ってコースへ入る。
XC、GXのレースには、2日目の伴走クリニックで講師を務めた宇都宮ブリッツェンの沢田時選手、山本幸平さんも参加。沢田選手は、バイクを乗り換え両種目に出場。「普段からMTBとシクロクロスに出場していますが、同じ日に2種目のレースに出たのは人生初です(笑)」と沢田選手。GXレースでは、最後尾からスタートし、ランで大勢を追い抜き、その後の快走でも会場を沸かせていた。
見て試乗して楽しめるプログラムも充実
ゲレンデボトムには、「6Wheel&Campingゾーン」が新登場した。このゾーンには、神奈川県にあるクルマとアウトドアの総合ショップ「GOOD OPEN AIRS myX」のプロデュースで、キャリア、クルマ、アウトドアギアの有名ブランドがずらり並んだ。テーマは、クルマに自転車を積んでアウトドアフィールドに繰り出す「6Wheel Life」。ルーフトップテントを搭載したSUVや、スタイリッシュにMTBを積んだピックアップがずらり。MSRやニーモ、チャムスなどの人気アウトドアブランドのブースも登場し、クルマ+自転車で楽しむライフスタイルのみならず、バイクパッキング用のテントやバッグなどをチェックすることもできた。
そのほか、数多くのブランドがテントを並べた「出展社PRゾーン」では、eMTBやグラベルバイクの試乗車や、最新パーツ、ウェア、用品などの展示やアウトレット販売もあり。試乗コースは、林間のダブルトラックを走れる「グラベル試乗コース」、無料でリフトに乗ってシングルトラックと芝生エリアを下れる「メイン試乗コース」、eMTBの実力をゲレンデの上りで試せる「ショート試乗コース」の個性ある3コースが設置された。
エキシビションレースでは伝説のダートブロスが復活!
初日のすべてのプログラムが終了すると「ウェルカムパーティー」がスタートした。地元のクラフトビール、樽酒に加えて、特製ハンバーガーまでが無料でふるまわれた。参加者のみならず、列に並べば誰でもいただける太っ腹ぶり。アルコールが入り、お腹も膨れたところで、ゲレンデの芝生エリアを使ったレジェンドライダーによるエキシビションレースがスタートした。
デュアルスラロームは、MTBレース草創期の1990年代から2000年代初頭にかけて人気を得たレース。2名の選手が、スタートゲートに並び、一斉にスタート。コースに設置されたフラッグを通過しながら着順を競うもの。
このレースには、当時、国内外で活躍した伝説のチーム「ダートブロス」の柳原康弘さんと塚本岳さん、そして、高松健二さん、栗瀬裕太さんの4名が招待された。4人のレジェンドがコースに登場すると、富士見パノラマのゲレンデが大声援に包まれた。実は、このレースだけを見にやって来たという人もかなりいた。
レースは、3位決定戦でダートブロスの直接対決もあり、大いに盛り上がるなか、決勝では高松健二さんが僅差で逃げ切りウイナーに。4選手とも、現役時代を髣髴とさせるロケットスタートとキレキレのターンで大いに会場を沸かせた。しかも全員、当時のバイクで走っていた。
ゴール後には、MCの和田ポリスさん、怪我のため参加できず解説にまわった檀拓磨さんも加わり、ギャラリーの大きな拍手のなか、日が暮れるまでフォトセッションが続いた。
競うだけじゃない自転車を中心にしたアウトドアの祭典
新型コロナの影響で中止になった年もあったが、昨年から復活した同大会。キッズレーサーたちのハイレベルな戦いもあれば、これからMTBやグラベルレースの世界に入るビギナーにも優しいプログラムも充実していた。会場内には期間中、特設オートキャンプエリアも出現。レースで順位を競うだけではなく、家族で、仲間と、ソロでも、自転車を中心とした遊びを楽しめる複合的なイベントに変わっていることを実感した。
同大会は、例年4月上旬から参加を募集する。ツーリング系の人気コンテンツや、オートキャンプエリアは、早期に定員に達するので、気になる方は、ぜひ来年、早めに公式HPをチェックしよう。