「シマノGRX」グラベルコンポーネントに12スピードの機械式変速が登場!
目次
シマノはグラベル専用コンポーネント「シマノ GRX」に12速のメカニカルコンポーネンツ“RX820シリーズ”を追加した。信頼性とシンプルさ、そしてアドベンチャーの楽しさをさらに拡大する新しい12速のラインナップは、より多くのギヤオプションが展開される。
グラベルライドの核心に迫るギヤバリエーション
あらゆるグラベルサイクリングへ向けたコンポーネントである「シマノGRX」が12段変速にアップグレードされた。新たな「RX820シリーズ」は、様々な目的のライダーやスタイルに対応できるよう、3つの12速メカニカルドライブトレインをラインナップする。
具体的には、フロントシングルのリア12速として「10-45T」と「10-51T」の2パターンのリア変速システムが用意される。そしてフロントダブル、すなわちリア12速対応のフロント変速システムも従来通り追加。
その3つのシステムには「アンビータブル」、「アンストッパブル」、「アンドロッパブル」というコンセプトがそれぞれ掲げられており、それは2023年現在のグラベルシーンにおける、グラベルレース的な走り方やアドベンチャーツーリングといった、ライダーの趣味嗜好に合わせて分岐した先の場面・ストーリーを想定している。
また、このRX820シリーズの技術を受け継ぐ「RX610シリーズ」においても、1×12、2×12スピードの両モデルが揃う。
このRX820シリーズで展開されるワイドなスプロケットは、12速用ロード(HG L2)、MTB(マイクロスプライン)ハブにそれぞれ対応しており、それらをスムーズに交換できるカーボンホイールセット「WH-RX880」も同時に発表された。
このシマノ GRX RX820シリーズは2023年9月1日(金)より発売予定だ。
Impression”グラベルサイクリングの限界を広げるために”
アメリカ・オレゴン州のベンドで開催された新GRXシリーズ発表会では、ワンバイ(40/10-45T)モデルとフロントダブルモデル(48-31/11-34T)それぞれでテストライドを行った。
グラベルライドにおいて12速への多段化、そして10T追加やワイド化は正統かつ歓迎されるものだ。そして今回のRX820シリーズは、シマノのMTB、ロードコンポーネントに次いでの12速化であり、そして機械式12速モデルとしては初のラインナップとなるので、多くのサイクリストの期待はとても大きいものだと言えるだろう。
果たしてその実力はといえば、まさに現在のGRXシリーズで培われたものがさらにブラッシュアップされたものである。グラベルライドにおいて長時間握り続けることになるブラケットとレバーは、その角度やブラケットのグリップパターンが快適さを向上させるものへとなった。2日にわたるライドでは素手で扱っていたが、手のひらで自然に握ると、その細身の形状とグリップパターンがフィットし、痛みや違和感が出ることはなかった。
そしてこの機械式のタッチであるが、フロントシングルで乗っている際、ギアを軽く・大きい歯数のギアへ入れる時の動作は、大ぶりにストロークをすることなく、「カチッ」と噛み合うように確実に変速してくれる。グラベル路面を登坂中にその変速性能をスムースに体感できるのは、もはや気持ちよさを感じるほどだと言えよう。
もちろん前二段のフロント変速においての変速も素早く、ロードライドにおける慣れ親しんでいる感覚で、グラベル路上でも変速のコンビネーションを味わえる。細部を見ていくと、これまでのGRXで採用されていたシマノシャドーRD +やスタビライザーのオンオフ機能は引き継がれている。その上で多段化によって変速ショックが減ることは、荒れた路面を走り続ける際に非常に有効であることが分かる。
何よりも、ギア比が広がるということは、走り続けることができる道のバリエーションが広くなっていくことだ。それは軽量なグラベルバイクでシングルトラックを急登坂する際も、たくさんのキャンプギアを積載して峠道を走り続ける際にも確実に効いてくる。
フロントシングル(1×12)の場合は、10-51Tモデルと10-45Tモデルへの交換において、ディレーラーケージの交換のみで対応することができるため、レバーやワイヤリングなど変速システムそのものに大きな手を加えることなく、グラベルバイクの持つポテンシャルを手軽に発揮できるようになるわけだ。
デザインはこれまでのRX810シリーズで採用されていた”ギア感”あふれるラインを踏襲しており、これまでのGRXモデルのユーザーがRX820シリーズを部分的に取り入れるということも可能だ。従来の11速モデルも引き続き展開されるため、この12速シリーズはある意味でこのGRXシリーズをさらに拡充させるためのオプショナルな立ち位置でもある。
この新たなGRX RX820シリーズは、より広いレンジへのライド体験を手に入れることができるものだ。それはグラベル遊びを楽しみ続けるために、必要な進化だと言える。
Rider/本誌・江里口恭平
サイクルスポーツ編集部員。グラベル、ロード、MTBとそれぞれの自転車を駆使してアウトドア遊びや温泉探索を楽しんでいる。
“UNBEATABLE ” シマノ GRX 1×12 with 10-45T
“UNBEATABLE”とは、1×12で10-45Tカセットと40Tまたは42Tチェーンリングの組み合わせ。スムーズで信頼性の高い変速を実現しながらも幅広いギヤレンジを備え、ハイスピードなグラベルライドでの集団内でポジションを維持するために最適なケイデンスが選択できる。
RD-RX822-GSは、10-45Tカセット用に設計されたチェーンスタビライザーを内蔵。チェーンのバタつきが抑えられ、スムーズなグラベルライドが可能になる。
これまでのシマノGRX RX810シリーズのフロントシングルモデルでは、ラインナップ上はフロントが40、42T、リアカセットが11-42Tであった。12速化によってよりワイドなギア比が導入しやすくなり、まさにあらゆるグラベルライドにおいて”打ち負かされず”走り続けることが可能となる。
FC-RX820-1 クランクセット
価格/2万9410円
-リヤ12速 対応
-クランク長: 170mm, 172.5mm, 175mm
-チェーンリング: 40T, 42T
-SHIMANO HOLLOWTECH II
-重量:655g (172.5mm / 40Tの場合)
RD-RX822-GS リヤディレーラー
価格/1万5008円
-SHIMANO SHADOW RD+ / チェーンスタビライザー搭載
-最大スプロケット: 45T
-ケージを交換することでSGSにも対応
-重量:290g
CS-M8100-12 カセット
価格/2万962円
-対応フリーハブ: マイクロスプライン
-カセットコンビネーション:10-45T
-重量:461g
“UNSTOPPABLE ” シマノ GRX 1×12 with 10-51T
“UNSTOPPABLE”とは1日中、あるいは数日間にわたるアドベンチャーライドのための1×12の組み合わせ。スーパーワイドレンジである10-51Tカセットと、40Tまたは42Tのチェーンリングを備えている。この組み合わせは、長く続く未舗装路や険しい上りにも最適なクライミングギヤ構成となっている。
シンプルなワンバイ変速システムにおいても、ギアが足りないことによって”止まることなく”。0.78〜4.0(40/10-51T)という広範囲のギア比は、あらゆる地形で有効となるだろう。
10-51Tカセットとの使用に最適化された、シャドー RD+ チェーンスタビライザー内蔵のロングケージ・リヤディレーラーRD-RX822-GSGがこのシステムに対応する。
そして新たなシマノGRXの機能として、1×12スピード間でディレイラーケージの交換が可能。つまり、ギヤ構成のニーズが変わった場合でもケージを交換するだけで対応し、ディレイラーを新たに買い換える必要がない。
さらにシマノは、実績のある「マイクロスプライン・マウンテンバイク・ハブテクノロジー」を、1×12メカニカルGRXに投入。この軽量アルミニウム製フリーハブボディは、10Tトップギヤとシームレスに一体化。より小さく間隔が広いスプラインが特徴で、経年変化によるスプロケットの摩耗も抑える。
RD-RX822-SGS リヤディレーラー
価格/1万5008円
-SHIMANO SHADOW RD+ / チェーンスタビライザー搭載
-最大スプロケット: 51T
-ケージを交換することでGSにも対応
-288g
FC-RX820-1 クランクセット
価格/2万9410円
-リヤ12速 対応
-クランク長: 170mm, 172.5mm, 175mm
-チェーンリング: 40T, 42T
-SHIMANO HOLLOWTECH II
-655g (172.5mm / 40Tの場合)
CS-M8100-12 カセット
価格/2万962円
-対応フリーハブ: マイクロスプライン
-カセットコンビネーション:10-51T
-470g
“UNDROPPABLE “シマノGRX 2×12
“UNBEATABLE”と“UNSTOPPABLE”両方の長所を求めるライダーのための“UNDROPPABLE”。
2×12のドライブトレインで、グラベルに最適化された48/31Tフロントチェーンリングと11-34Tまたは11-36Tカセットを採用。このセットは、平坦路をクルージングする時、果てしなく続くダートロードを軽快に走り続ける時、あるいはバックカントリーの巨大な上りに挑む時に、快適なケイデンスで走るためのワイドなギヤレンジを備えている。
この組み合わせでは正確な機械式フロント&リヤ変速を実現し、荒れた路面でもドライブトレインを安全に保つシャドー RD+チェーンスタビライザーを内蔵。リヤカセットのギヤステップが細かいため、レースや週末のグループライドでの細かなケイデンスの変化に対応。
2×12のセットは、従来の「HGフリーハブボディ」に対応することで、既存のほとんどの700cホイールと組み合わせることが可能だ。
FC-RX820-2 クランクセット
価格/2万9410円
-リヤ12速対応
-クランク長: 170mm, 172.5mm, 175mm
-チェーンリング: 48-31T
-SHIMANO HOLLOWTECH II
-重量:721g (172.5 / 48/31T の場合)
RD-RX820 リヤディレーラー(フロントダブル用)
価格/1万5008円
-12速対応
-SHIMANO SHADOW RD+ / チェーンスタビライザー搭載
-最大スプロケット: 36T
-重量:270g
FD-RX820 フロントディレーラー(直付)
価格/7327円
-2×12 対応
-新形状リンク(トグル)構造で様々なケーブルルーティングに対応
-幅広のタイヤに対応
・ロード用FDと比較し、チェーンラインが+2.5mmがオフセット
-正確で簡単なフロントディレイラー調整
-重量:95g
CS-R8101-12 カセット
価格/ 1万3420円
-CS-R8101-12 : 11-34T
・重量:345g
・対応フリーハブ: ロード11速/12速用
CS-HG710-12 カセット
価格/1万230円
-CS-HG710-12 : 11-36T
・重量:391g
・対応フリーハブ: ロード11速/12速用
Updated Ergonomics and Brakes
GRXのエルゴノミクスに基づく考えは、再設計されたシフト&ブレーキレバーにも受け継がれている。
レバーを大きくすることなく12段変速を実現したRX820シリーズのシフトレバーは、グラベルサイクリングの定番であるフレアドロップバーを使用する際、一日中快適に使用できるように設計されている。手の平にかかるプレッシャーポイントを減らし表面積を増やすことで疲労感が軽減され、荒れた道におけるロングライドでもストレスなくコントロールが可能。
新しいGRXシフト&ブレーキレバーは、軽快でレスポンスの良い機械式12段変速を実現。UNDROPPABLE 2×12 の左レバーが、スムーズなフロント変速を実現する一方で、新しい1×12左レバーは、初代GRXで初めて導入された機能を引き継いでおり、ブレーキ専用レバーと、ブレーキとドロッパーポストの操作を統合したレバーも用意している。
ST-RX820-R –
ST-RX820-L –
価格/各3万3567円
ハイドロ―リックディスクブレーキ デュアルコントロールレバー
-グラベルライドに最適化されたエルゴノミクス
-フレアハンドルバーに最適化
-ブレーキレバーへのアンチスリップ加工
-軽快なメカニカル変速操作
-重量:572.5 g (2×12 左右)
-重量:511.2 g (1×12 左右)
ST-RX820-LA –アジャスタブルシートポスト対応
価格/3万562円
ハイドロ―リックディスクブレーキ ドロッパーシートポストレバー
-グラベルライドに最適化されたエルゴノミクス
-左レバーでドロッパーシートポストの操作が可能
-フレアハンドルバーに最適化
-ブレーキレバーへのアンチスリップ加工
-重量:263g
BL-RX820-L –
価格/2万7562円
ハイドロ―リックディスクブレーキ レバー
-グラベルライドに最適化されたエルゴノミクス
-左ブレーキレバー
-フレアハンドルバーに最適化
-ブレーキレバーへのアンチスリップ加工
-重量:222g
シマノGRX RX610シリーズ
グラベルバイクの選択肢を広げるために、オリジナルの800シリーズGRXコンポーネントからのテクノロジー継承によって生まれた1×12および2×12用の600シリーズ、そのクランクとシフトレバーもアップデートした。
テクスチャー加工が施されたフードや、険しい路面でのコントロール性を高める滑り止め加工が施されたブレーキレバーなどが主な特徴で、新しいクランクセットは特にグラベルライディングの要求に応えるギヤオプションを用意。
RX610 2×12クランクは、46/30チェーンリングを採用し、クランクアーム長165mm、170mm、172.5mm、175mmから選択可能。RX610 1×12クランクは4種類のクランク長オプションがあり、耐久性の高いスチール製38T(新オプション)と40Tチェーンリングを用意し、10-45Tまたは10-51Tカセットとの組み合わせが可能。
FC-RX610-1 クランクセット
価格/1万9397円
-リヤ12速対応
-クランク長: 165mm, 170mm, 172.5mm, 175mm
-チェーンリング: 38T and 40T
-815g (40Tの場合)
FC-RX610-2 クランクセット
価格/1万9397円
-リア12速対応
-クランク長: 165mm, 170mm, 172.5mm, 175mm
-チェーンリング: 46-30T
-815g (46/30Tの場合)
ST-RX610-R –ハイドロ―リックディスクブレーキ デュアルコントロールレバー
ST-RX610-L –ハイドロ―リックディスクブレーキ デュアルコントロールレバー
価格/各2万4739円
-グラベルライドに最適化されたエルゴノミクス
-フレアハンドルバーに最適化
-ブレーキレバーへのアンチスリップ加工
-軽快なメカニカル変速操作
-611g (2×12 左右)
-542g (1×12 左右)
BL-RX610-L – ハイドロ―リックディスクブレーキ レバー
価格/2万3088円
-左ブレーキレバー
-グラベルライドに最適化されたエルゴノミクス
-ブレーキレバーへのアンチスリップ加工
シマノRX880 Carbon Gravel Wheels
GRXメカニカルコンポーネントとともに、シマノはグラベルライドの過酷な路面に対応するカーボン製グラベルホイールもアップデートした。新しいRX880ホイールは、前モデルよりも64g軽量化され、リムハイトは同じ32mmのローハイトリムを採用。
RX880ホイールはチューブレス対応で、32mmから50mm幅のタイヤに対応する25mmインナーリム幅を採用。デュラエースホイールのテクノロジーから採用されたダイレクトエンゲージメントハブは、マイクロスプライン(MTB12速用)とHG L2・12スピードフリーハブボディ(ロード12速用)を簡単に交換可能。
フェイスラチェット構造により駆動剛性が向上、素早く効率的にかみ合うため、どんな路面でも素早い加速を可能にする。そしてRX880のハブとリムは24本のJベンド・スポークを採用した。
WH-RX880-TL カーボンチューブレスホイール
価格/11万4906円(フロント)、14万441円(リア)
-ダイレクトエンゲージメント採用
-リムハイト: 32mm
-リム内幅: 25mm
-フルカーボンリム
-推奨タイヤ幅: 32-50mm
-フリーハブボディはマイクロスプライン(MTB12速用)と HG L2(ロード12速用)に交換可能
※注意: ロード11速用のカセットには非対応
-重量:1,394g (マイクロスプライン)
-重量:1,397g (HG L2)
発売予定日:2023年9月1日(金)
※表示価格は2023年9月1日時点のものです。
より詳細なレポートは2023年9月20日(水)発売の「サイクルスポーツ11月号」で紹介予定。お楽しみに!