ヨネックスからリムブレーキ仕様の新型「カーボネックス」登場! 試乗インプレッション
目次
YONEX(ヨネックス)を代表するロードバイクの「CARBONEX(カーボネックス)」が、新型となって登場。何と、リムブレーキ仕様だ。製品の特徴を紹介するとともに、試乗インプレッションをお届けする。
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なぜリムブレーキか?
ディスクブレーキ仕様のロードバイクが全盛のなか、なぜあえてリムブレーキ仕様の新型を投入してきたのか? まずはその意図をヨネックスの担当者に聞いてみた。回答したのは、スポーツサイクル営業課の雨乞竜己(あまごい たつき)さんだ。
![ヨネックスの雨乞さん](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-2.jpg)
ヨネックス スポーツサイクル営業課の雨乞竜己さん。元プロロードレーサーでもある。
「日本国内では、まだまだリムブレーキ仕様のロードバイクに乗っているサイクリストが大半で、リムブレーキを求める声が大きいことが分かっていました。また、ヒルクライムレースに挑戦する方も多く、上りにおける軽さで利点の大きいリムブレーキモデルを求めるお客様の要望も多く寄せられていたんです。それが理由の一つです。
実は、2024モデルイヤーでヨネックスがロードバイクへ参入してからちょうど10周年の記念すべき節目を迎えます。カーボネックスはヨネックスとしてリリースした最初のロードバイクであり、つまりはカーボネックスも発売10周年となります。そこで、より軽さを追求した新モデルをここで世に送り出したい、そんな思いもありました。それがもう一つの開発に至った経緯です」と雨乞さん。
特にリムブレーキを求めるユーザーがまだ多いというのは、確かに納得できる。そんな要望に応えてくれるのは、伝統ある日本のスポーツ用品ブランドならではと言えよう。
新型カーボネックスの特徴
![ヨネックス・新型カーボネックス](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-2-1.jpg)
ヨネックス・新型カーボネックス。写真のカラーはブルーグリーン
新型となって刷新された主なポイントについてまとめよう。
より軽量になった
もともと“超”がつくほど軽量なバイクだったが、さらにそこから重量を削ってきたのが第一のポイントだ。前作のカーボネックスよりも、フレーム&フォーク全体で60gの軽量化を果たした。参考重量は、Sサイズのフレームで590g、フォークはコラムカット前の状態で全サイズ共通で300gだ。
剛性と“しなりの力”の向上
2つ目のポイントは、軽量になった一方でさらに前作よりも剛性を高めるとともに、カーボックスの大きな特徴である“しなり(反発と加速性)の力”を向上させていることだ。
これらを可能にしたのは、2022年に発売のディスクブレーキ仕様モデル「カーボネックスSLD」にも採用された、「2G-Namd™ Speed(ツージーエヌアムドスピード)」と「NANOMETRIC DR(ナノメトリックディーアール)」というカーボン素材を追加したことだ。なお、NANOMETRIC DRについては前項で説明した軽量化にも貢献している。
![新型カーボネックスのシートステー](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-3.jpg)
2G-Namdはシートステーに使用されている。通常のカーボンよりも動的な荷重が加わるとしなり量が増加し、戻る速度も速い
![新型カーボネックスのフォーク等](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-4.jpg)
NANOMETRIC DRは前三角、チェーンステー、フォークに使用される。従来のカーボンよりも高強度でしかも軽量という特性がある
快適性を維持
3つ目は、カーボネックスらしい乗り心地の高さ・柔軟性による快適性を維持していることだ。とかく軽量化して剛性がアップするとこれらの性能は失われがちなのだが、そうなることなく、従来どおりの快適性やしなやかな乗り味を維持することに成功している。
細く美しいフレーム&フォークのデザインは継承しつつ細部をブラッシュアップ
フレーム&フォークの形状は前作とほぼ変更なしとなっており、カーボネックスを象徴する、細く美しいシルエットはそのままだ。電動コンポーネント専用でもなく、専用ハンドルステム、専用シートポストを前提としていないので、そうしたパーツ類の専用化が進む現在のロードバイクシーンの中で、むしろ幅広いパーツをアッセンブルできる点がユーザーにはうれしいと言えるだろう。
![新型カーボネックスのコクピットまわり](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-5.jpg)
コクピットまわりはシンプルでクラシカル
![新型カーボネックスのシートポストまわり](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-6.jpg)
シートポストはオーソドックスなものに対応
ただ、リヤディレーラー用のケーブル出口の位置が、リヤエンド付近に変更されている。これによって、配線をよりコンパクトにすることが可能となった。
![新型カーボネックスのケーブル出口](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-7.jpg)
位置が変更されたリヤディレーラー用ケーブル出口
新型カーボネックスのラインナップ
●価格:
51万7000円(税込)
●サイズ展開:
XXS、XS、S、M
●カラーバリエーション:
ブルーグリーン、バーガンディー、ブラック/レッド
![新型カーボネックスのカラーバリエーション](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-8.jpg)
バーガンディー(左上)、ブラック/レッド(右下)
●販売形態:
フレームセットのみ
新型カーボネックス 試乗インプレッション〜癖がなく扱いやすい。万人が意のままに操れるバイク
![カーボネックスを試乗する小笠原崇裕](https://cdn-img.cyclesports.jp/wp-content/uploads/2023/11/2312_yonex-9.jpg)
インプレッションライダー:プロサイクリスト/UCIコーチ 小笠原崇裕。MTBクロスカントリー選手、エクステラ選手として活躍した経歴を持ち、近年はコーチとして精力的に活動している。スポーツバイクやホイールなどのインプレッション経験も豊富。愛称は「オガ」
「まず感じられたのは、ひと踏み目からの軽さです。もちろん上りでもそうですが、平地でも軽さを感じられます。バイク自体の重量が軽いことが大きなアドバンテージになっているのは間違いなく、上りならギヤ1枚分軽くなるくらいの感覚があります。
また、単に重量が軽いことからだけではなくて、BBまわりに感じられる“しなり”が走りにいい影響を及ぼし、それも走りの軽さにつながっている印象です」。
「剛性がさらにアップしているということでしたが、それはダンシングでバイクを左右に振っていったときに感じられました。特にヘッドまわりの剛性が高い印象で、それがハンドルの左右への振りやすさへとつながっていると思います。
そしてカーボネックスといえば、先ほども述べましたがその独特の“しなり”が生み出す力が特徴ですね。今作ではそのしなりの力も向上させてきたということでしたが、それは“踏み始めのポイントの幅広い許容力”に表れていると感じられました。
選手・ライダーによって、ペダルをどの位置からうまく踏み始められるかは変わってきます。自分のペダリングにおける踏み始めのポイントとバイクのしなりがうまくマッチすると、バイクはうまく進んでくれる感覚が得られるものです。この新型カーボネックスの場合は、そのうまくマッチしてくれる幅が広く、どのあたりから踏み始めてもしっかりとバイクが進んでくれる感覚があります。人車一体というよく言われる言葉がありますが、まさにそれです。
うまくしなってくれないバイクは、ライダーのペダリングスキルによっては硬く感じられすぐに足がパンパンになってしまったり、逆にぐにゃぐにゃと柔らかすぎる印象のバイクにもなってしまいがちです。このバイクの場合はうまくしなってくれるのでそうしたことが起きにい。その点で非常に万人向けであるとも言えます。
快適性も良いレベルにあります。路面から受ける振動や衝撃をうまく抑えてくれる印象があり、高速域になってもバイクが跳ねる挙動をしにくいです。コーナリングでは路面に吸い付いてくれるような感覚があり、安心感も高い」。
「それと関連して、フォークがベントタイプなのとフレームの設計が良い働きをしていると思いますが、ハンドリングが非常に素直で癖がなく、目線を持っていった方向にしっかりとバイクが傾いていってくれます。クイックすぎず、かといってダルい感じもない。
総合評価すると、“癖がなく、扱いやすい、万人が意のままに操れるバイク”と言えます。性格としては、コンセプトどおりレーシングバイクで、その軽さと反応の良さからスピードに強弱が出るようなレースにマッチしてくるでしょう。
一方で、レース向きだけど癖がなくて扱いやすい・快適性が高いということは、レース派ではない人にも恩恵が高いと思います。自分の考えたとおりの走りをしてくれるバイクというのは、スピードが速い・遅いに関係なく、非常に楽しめるバイクだからです。そういう意味でも、万人向けのバイクだなと思いますね」。