おすすめグラベルロードインプレシリーズ④“ファクター・オストログラベル”編
目次
スポーツ自転車のジャンルとして確立された感があるグラベル&アドベンチャーバイク。その実態は多様で、モデルごとに独自の世界観を感じさせる。どれが優れているかというよりも、どれが自分の用途にふさわしいかという視点が求められる。ここでは、「グラベルバイクを遊びつくす!」編集長の田村浩と、「サイクルスポーツ」編集部の江里口恭平が、ファクターの「オストログラベル」の実走インプレをお届けする。
FACTOR OSTRO Gravel
ファクター・オストログラベル
フレームセット価格/78万6500円
問・トライスポーツ
ロードの最新トレンドを余すところなく凝縮したグラベルレーサー
2007年にイギリスのエンジアリング会社から誕生したファクター。歴史は浅いが、レーシングカーや航空宇宙産業で培われた技術力と積極的なレース参戦で、国内でも存在感を高めているブランドだ。ファクターのレーシングバイクは「F1の発想で創られた」とも表現される。2018年には早くもオールロード「ビスタ」を送り出し、舗装路以外へも進出した。
ツール・ド・フランスなどで活躍するロードバイク「オストロVAM」のエアロダイナミクスを忠実に受け継ぎ、一層強靭なフレームを与えられたグラベルバイクが「オストログラベル」だ。タイヤの最大クリアランスは45mmを確保。そのために大柄なフロントフォークを採用しているが、それ以外のフレーム各部の造形はエアロロードそのもので、深い前傾が取れる実戦的な乗車ポジションが可能になっている。一般的なグラベルバイクが求める快適性はすべて太いタイヤに任せ、速く走ることに特化しているフレームだと言えるだろう。非常に硬質でペダリングロスを感じさせず、乗り手の脚力を引き出してくれる。
軽量なのでアップダウンが激しいコースもこなせるが、本質的には北米のグラベルレースのように直線的で整った路面を疾走するためのレーサーであり、そうしたシーンでこそ空力性能も実感できるだろう。安定性や積載力をアピールする多くのグラベルバイクとはまったく立ち位置が異なり、表彰台を狙うレーシングマシンだ。
SPEC
フレーム:カーボン
フレームサイズ:49、52、54、56、58、61cm
フォーク:カーボン
カラー:ホワイト、ブラック、UDグロス
フレームセット付属品:フロントフォーク、ステム一体型ハンドル、シートポスト(オフセット20mm)、セラミックスピードBB、ヘッドセット、ガーミン用コンピュータマウント、バーテープ
試乗車実測重量:8.6kg(ペダルなし)
IMPRESSION
多用途さをそぎ落とし、レーシングバイクとして特化したモデル。試乗車は深めの前傾姿勢が取れるセッティングだったので、荒れたグラベルを走ると怖さを感じるほど。乗っているのがやっという有様で、真価を発揮する速度域が筆者には遠く感じられました。オンロードでは十分な安定感があり、風の抜けのよさも確かなようです(田村)。
グラベル走行に慣れていて、身体能力が高い人が操れば非常に楽しいバイクだと思います。高品質なカーボンフレームらしい乾いた乗り味は好みです。限界が試されるようなストイックな走りを要求されますが、それだけに速さを実感できます。エアロ効果までは体感しにくいですが、上りでの軽快さは圧倒的。まさに競技機材です(江里口)。
「グラベルバイクを遊びつくす!」編集長 田村浩
「グラベルバイクを遊びつくす!」などヤエスメディアムックシリーズの編集・執筆を担当するサイクリスト。スポーツ自転車歴は30年を超えるが、常にツーリングの相棒ととらえており、グラベルライドやキャンプもその一環。現在所有するグラベルバイクはジェイミス・レネゲードC2。近著に「自転車キャンプ大全」(技術評論社)。
サイクルスポーツ編集部 江里口恭平
温泉とグラベルを求めて全国を走り回るサイクルスポーツ編集部員。学生時代は自転車競技部に所属し、レーサー目線であらゆるジャンルの自転車とアイテムを評価することもできる。海外を含むグラベルイベントの実走参加経験も豊富だ。現在所有するグラベルバイクはサーヴェロ・アスペロ。
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