おすすめグラベルロードインプレシリーズ⑦“ビゴーレ・山と旅の自転車プラス”編

目次

スポーツ自転車のジャンルとして確立された感があるグラベル&アドベンチャーバイク。その実態は多様で、モデルごとに独自の世界観を感じさせる。どれが優れているかというよりも、どれが自分の用途にふさわしいかという視点が求められる。ここでは、「グラベルバイクを遊びつくす!」編集長の田村浩と、「サイクルスポーツ」編集部の江里口恭平が、ビゴーレの「山と旅の自転車プラス」の実走インプレをお届けする。

山と旅の自転車プラス

VIGORE Yama to tabi no jitensha PLUS
ビゴーレ・山と旅の自転車プラス

シマノ・GRX600完成車価格/44万円
シマノ・GRX820完成車価格/49万5000円
シマノ・105完成車価格/42万5000円
シマノ・105ワイヤーディスクブレーキ仕様完成車価格/37万7300円
シマノ・クラリス完成車価格/29万7000円
問・ビゴーレ

京都発「道具としての自転車」を具現化した万能モデル

90年超の歴史を誇る京都の老舗工房・ショップが「ビゴーレ」。3代目となるビルダーの片岡聖登氏は、かつて日本初のフルサス・ダウンヒルバイクを作るなど競技シーンとともに自転車を作り続けてきたが、近年は「遊び」を重視した自転車作りにシフト。その象徴がセミオーダー車の「山と旅の自転車プラス」だ。

ベーシックFRという独自のリジッドMTBからスタートした「山と旅の自転車」だが、ここ10年間で時代に合わせて進化。カンチブレーキからディスクへ、MTB用のメカからロード用へ、そしてスルーアクスルの採用など3度フレーム設計を更新して誕生したのが今の「プラス」である。近年もバージョンアップは続き、トップチューブとフォークブレードにアイレットが追加され、バイクパッキング適性を高めている。柔軟な進化とパーツセレクトにおける自由度の高さは、工房・ショップによるセミオーダー車ならではの長所だ。フレームサイズやタイヤの太さに合わせ、700Cだけでなく650Bを選ぶこともできる。

フレームはフォークまでスチール(クロモリ)だ。素材自体はやや重いことを除けば、振動吸収性や弾性、耐久性、積載時の安定性など、いずれも理想的な特性を発揮する。「道具としての自転車」というビゴーレの考えを実感させる仕上がりだ。低いトップチューブと全体のバランスを考えたヘッドチューブの長さは、多くの人にとって取りまわしがよいだろう。日本人のための日本のフィールドに合う万能ツーリング車だ。

ヘッドチューブまわり

メインフレームはかなりコンパクトで、乗車姿勢やサイズ感の調整範囲が広い。トップチューブ上にもアイレットが追加され、各種バッグのボルトオンに対応

フォーク

緩やかなカーブを見せる伝統的なベンドフォークを採用。肉厚配分を考えたダブルバテットのクロモリチューブを用いることで、軽快な乗り味とディスクブレーキの制動力に負けない剛性感を発揮

シートステーまわり

フェンダーと大型キャリアの同時装備に対応できるようにアイレットを充実させている。普段使いからグラベルライドまで、自分好みの一台に育てることができる

BBまわり

ブレーキホースはダウンチューブに内蔵。タイヤ幅は700Cで43mmまで、650Bで53mmまで対応するクリアランスを確保している

SPEC

フレーム:クロモリ
フレームサイズ:S、M、L、LL
フォーク:クロモリ
カラー:白、黒、オーダーカラー
メインコンポーネント:シマノ・GRX820
クランクセット:シマノ・GRX820 48-31T
カセット:シマノ・CS-HG710 11-36T
ブレーキ:シマノ・GRX820
ホイール:シマノ・WH-RS171
タイヤ:パナレーサー・グラベルキングSK 700×32C
ハンドル:ディズナ・バンディー2
ステム:ディズナ
サドル:ブルックス・カンビウムC17
シートポスト:ビゴーレ
試乗車実測重量:10.2kg(ペダルなし)

IMPRESSION

山と旅の自転車プラスに乗る田村さん

最新のコンポーネントやホイールをまとっても、そこはかとなく懐かしさを感じさせる優しい乗り味。サイズ表記より小さく感じさせるコンパクトなフレームは扱いやすく、祖先がリジッドフレームのMTBだったことを感じさせます。奇をてらったところがなくシンプルなので、飽きずに長く楽しめるでしょう。普段使いにも最適(田村)。

山と旅の自転車プラスに乗る江里口

スチールフレームのバイクは重い、という先入観を覆してくれました。数値上は軽くないのですが、実際の走りは軽快で快適性もかなり高いレベルにあります。フレームが小さめだったことも取り扱いのしやすさを高めてくれました。ここ一発の速さを求めるような自転車ではありませんが、誰にでも安心してすすめられる一台です(江里口)。

「グラベルバイクを遊びつくす!」編集長 田村浩

「グラベルバイクを遊びつくす!」などヤエスメディアムックシリーズの編集・執筆を担当するサイクリスト。スポーツ自転車歴は30年を超えるが、常にツーリングの相棒ととらえており、グラベルライドやキャンプもその一環。現在所有するグラベルバイクはジェイミス・レネゲードC2。近著に「自転車キャンプ大全」(技術評論社)。

サイクルスポーツ編集部 江里口恭平

温泉とグラベルを求めて全国を走り回るサイクルスポーツ編集部員。学生時代は自転車競技部に所属し、レーサー目線であらゆるジャンルの自転車とアイテムを評価することもできる。海外を含むグラベルイベントの実走参加経験も豊富だ。現在所有するグラベルバイクはサーヴェロ・アスペロ。

 

このようなグラベルバイクのインプレが掲載された、多彩なサイクリングの楽しみ方を紹介し、バイクパッキングで活躍するバッグやタイヤ選びのヒントも詳解する、グラベルバイクを楽しむヒントが詰まった一冊「グラベルバイクを遊びつくす!」。全国の書店、Amazonで販売しています。

グラベルバイクを遊びつくす!