フェルトの第四世代ロードバイク「FR」「VR」。軽快さと万能性、2つの個性をインプレッション!
目次
「FELT IS FAST」のメッセージを掲げ、ハイレベルなパフォーマンスバイクをラインナップするフェルト(FELT)。そのオンロードモデルである「FR」と「VR」の2台が第四世代として刷新された。サイクルスポーツ編集長中島がチェックする。
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カリフォルニア発のパフォーマンスを突き詰めるブランド「フェルト」とは?
世界で最も優れたパフォーマンス・バイクを提供することをミッションに掲げるフェルト(FELT)。「速く走ることは楽しいことだ」という考えからこそ、スピードを追求しバイクを設計するとともに、ライダーが自身の目標を達成するためのロードバイクやトライアスロンバイクを送り出してきた。
同社はジム・フェルト氏によって1991年にカリフォルニアで「Felt Bicycles」設立され、そのバイクはツール・ド・フランスやロード世界選手権で多くの勝利を収めるとともに、世界中のトライアスリートにも支持されている。
サイクルスポーツ中島(以下、中島):
さて今回は、フェルトの新作「FR」と「VR」という2台を、フェルトブランドを取り扱うライトウェイプロダクツジャパンの泉さんと一緒に見ていきたいと思っています。早速ですが、この2台はどういうモデルになるのかを教えていただけないでしょうか?
ライトウェイプロダクツ・泉(以下、泉):
今回紹介するのは、「FR」というパフォーマンスレーシングバイク、そしてエンデュランス&オールロード「VR」。それぞれ4世代目を迎える、フェルトの中でも常に注目が集まるモデルです。
(左)
サイクルスポーツ編集部・中島丈博
「サイクルスポーツ」統括編集長。現在、軽量ディスクロード、グラベルロードにトライアスロンバイクなどを気ままに運用中
(右)
ライトウェイプロダクツジャパン・泉敬介さん
同社フェルトブランドを知り尽くしたスペシャリスト。プライベートでも第四世代のフェルト・FRを乗り込んでいる
エアロを取り入れたパフォーマンスバイク「FR」
FELT FR4.0 Advanced Ultegra Di2
フェルト・FR 4.0 アドバンスド アルテグラDi2
完成車価格/99万円
泉:
まず「FR」は、クライミングレースバイクというような位置付けのバイクです。剛性に対しての重量比だったり、かかりの良さ、加速の良さといった点を重視したモデルです。今回この第4世代となったモデルはさらなるブラッシュアップが計られており、特にエアロという観点を新たに取り込んでいるモデルなんですね。パっと見、すごいトラディショナルな形じゃないですか。
中島:
そうですね。トップチューブが水平に近くシートステーも下がっていない、シンプルな形状です。
泉:
本国の開発サイドに聞くと、このようなトラディショナルなロードで、かつクライミングレースバイクという前提を崩さずに、エアロ的な要素をどういうところに取り込めるか。それを突き詰めたのが今作のステー形状なんです。
ステーの形状を、必要なポイントを絞って変化をつけることによって、ホイールが回転する際に起きるドラッグを削るという手法からエアロ化しているんですね。
それに加えて、現在主流となりつつあるケーブル内装といった、お作法に則った観点からも空気抵抗の削減を作っています。
中島:
たしかに定番ですね。フェルトと言いますと、エアロロード「AR」もあり、トライアスロンバイクでも結構有名なモデル「IA」がありますね。そこで培った空力のエッセンスを搭載しているのでしょうか?
泉:
その通りで、たとえばこのシートステーの細部に着目していただくと、ちょっとねじれが入りながらパイプの下へ続いていく。そんな部分は、ARやIAというようなエアロに特化したバイクのフィードバックによって取り入れられているんです。
軽快さを増したエンデュランスロード「VR」
FELT VR4.0 Advanced Ultegra Di2
フェルト・VR 4.0 アドバンスド アルテグラDi2
完成車価格/99万円
中島:
続いてはこちら、VRですね。
泉:
オールロード、すなわちいわゆるいろんな道を走れるよっていうバイクですね。
まずはタイヤクリアランスがとても広くて、最大700×38Cまで入るので、グラベル運用だってできてしまいます。
そんな走る環境を選ばないという位置付けのバイクなんですが、フェルトとしてはこのVRも多分にレース的な要素を取り入れた、現在の最新エンデュランスロードとなります。
コンセプトとしては「70%がレース、30%がエンデュランス」。ですのでFRとVRを見比べて分かるんですが、共通の似通った要素を多分に含んでいるんですよね。
例えばD型コラムによるケーブル内装から始まり、フォークやステーの形状、そしてねじれを入れてホイールのタービュランス(走行中の乱気流)を減らすような、空力を向上させる形状を取り入れてるんですよね。
中島:
そしてVR、そしてFRともにディレーラーハンガーに目をやってみると……。
泉:
そうなんです。ディレーラーハンガーのところは、スラムのUDHハンガーが対応しています。
このメリットとしては、補修部品のあの入手性が上がるのが1点、そしてシンプルにリヤドライブトレインまわりの剛性が上がります。
それに加えて、あとはBBの規格も変化しています。まだ普及はしていないのですが、より剛性と駆動バランスの良いT47のアシンメトリックっていう規格を使っています。
中島:
ドライブサイドにはこのBBのベアリングがフレームの外側に出ていますね。
泉:
はい、ドライブ側がエクスターナル(外側に露出)で、反対側がインターナル(内蔵)なんです。
T47規格でも通常のとはちょっと違うというか、カップのアウトボードとインボードをそれぞれ組み合わせることによって、ライダーがBBの左右で踏む際のパワーがそれぞれ等分ではないことから、そこへ調整を付けるためにカップの外側と内側を入れ替えている規格なのです。
そういった、まだ業界内でも目新しい規格を新たに取り入れているというのも、今回の特徴ですね。
中島:
あとはこのVRには、特徴的なギミックが、シートポストのシートクランプの周りですね。これはどんなメリットがありますか?
泉:
コラムのところにスペーサーが入っており、フェルトにはグラベルロードの「ブリード」というモデルと同じ機構となっています。それによって、中のスリーブで振動を減衰してくれるんですよね。
なので、例えばグラベルを走っていったときにガタガタするようなところでも、快適に乗っていただけるっていうような形になってます。
「でもそんな自分グラベル行かないから、もっとかっちりしたフレームで乗りたい」っていう方がいらっしゃったとしたら、その際は単純に、このスリーブを抜いて、太いシートポストの径のものを取り入れていただければ、もっとリジットな乗り方もできる。そんな2度おいしい機能になっています。
中島:
なるほど。ちなみにどちらのモデルにも、ちょっと凝ったクランプがついてますね。
泉:
上からの固定用ボルトと別に、下からも受け(ウェッジ)をホールドするためのボルトが設けられており、この二重構造となることでよりシートポストの固定を確実にする造りになっています。
縦1本だけのボルトとかで止めているタイプのインテグレーテッドシートポストはよくあると思うのですが、走っていて強い衝撃で下がってきちゃったりすることがあると思います。
それを防ぐために、下部からもう1パーツ支えとなる固定具を入れることで、シートポストが下がってくることなくストレスフリーだよ、というような構造になっています。
FR・VR試乗インプレッション!
中島:
まずはFR。ザ・ロードバイクっていう感じで、もう反応性もいいし、緩斜面などで”ガン”って加速したいなと思って踏み込んで、“スパン”って気持ちよく出ていく。
それに比べてVRは、乗り込めば乗り込むほど、結構こっちの方がしっくりくるんじゃないか?と思いました。平地をずっと一定のスピードで巡航しているような時、乗ってきた一度速度をずっと維持するっていうのが、このVRはとても楽ですね。「エンデュランスバイクって、すごいゆったりしてるんでしょ」、みたいな先入観で乗っちゃうともったいないですね。
泉:
走らせると加速の仕方とかレースに通じるものがあるなっていうような感じですし、エンデュランスロードって言われていたもののもっさり感が全くないんですよね。
中島:
快適性にばっかり振ってないっていうのはすごく理解できました。
泉:
加えて言うと、VRはフレーム重量が実は900gぐらいなので、結構軽量なんですよ。
なのでパーツの選び方だったりとかセッティングの仕方とかで、カリカリのレースロードみたいな乗り方もできます。
とはいえ38Cまでのクリアランスもあるので、グラベルや荒れた道へも行っちゃったりもできるしと、遊びの幅が多分すごく広がるバイクになっていると思います。
中島:
あとこのVRの方で、思い切りエアロなポジションを取って走ってみたんですけれど、すごい直進の安定感が高くて、ソロで走ることが多いような人とかっていうのはVRがぴったりかもしれないですね。
今回のテストバイクでは、VRのタイヤの太さが32C。ロードにしてはかなり太いスリックタイヤが入ってますね。
ちょっと砂利道やガレガレなところとかも走ってみたんですけれど、空気圧を落とせばけっこういけます。
ただ本当のグラベルは、もうちょっとノブのあるセミブロック系タイヤに換えて走っていきたいと思います。とはいえ、それだけのポテンシャルはフレーム自体が持っているってことですね。やっぱりサドルへの振動吸収性というのは、明らかにVRの方が伝わってこないのをとても実感しました。
FRでは逆に、そこを軽快感に振っている。ちょっと踏んだときのより反応の良さ、やはりVRよりもFRに軍配が上がります。FRはそんなパフォーマンスロードとしての方向へ振ってるなっていうのは改めて感じましたね。
では、どちらのバイクを選べばいい?
中島:
と、私はそんな印象だったのですが、その上でフェルトとしては、迷った時の選び分けの考え方はありますか?
泉:
そうですね、実際このFR、VRは両方ともかなり速く走るんです。
ではそんな速い自転車が欲しい、というニーズが共通したうえで、ですが、まずは1年間での走行距離が大体「6000km以上」と走れ、カリカリに体が仕上って、かつロードレースやヒルクライムとコンペティティブな走り方だけがしたいという人はFRを選んでくださいと伝えています。
そして、逆に年間「5000km以下」ではあるけど、楽しく自転車に乗りたい。そしてやっぱり速い自転車の方が欲しいよっていう人はVRを選んだ方が、結果的に速く走れるし満足もできると思います。
もちろんその上で脚力がもっとあっても、VRでは不満が出ることはほとんどの人にはないでしょう。本当にコンペティションの方にだけ軸足を突っ込みたいっていうような際に、FRを選ぶ。それはフェルトとしてのメッセージですね。
中島:
そして価格設定もFRとVRで同じなんですよね?
泉:
はい、横並びにしています。
中島:
シマノ・105Di2、そしてアルテグラDi2の完成車で、FRとVRでもちろんモデルは違うけれど、例えばハンドルが一体型かどうかのパーツ構成など、グレードとしての価格は同じと。
泉:
そうですね。なので、どっちのキャラクター性があなたはお好きですかっていうところで選んでいただければいいのかなと。
中島:
なるほど。今日の感じだと僕はVRに傾きました。
Spec.
フェルト・FR 4.0 アドバンスドアルテグラDi2
完成車価格/99万円
フレーム/フェルト・FR4.0 フェルトロード|UHCアドバンスドカーボンファイバー
フォーク/フェルト・FR4.0 フェルトロード|UHCアドバンスドカーボンファイバー
コンポーネント/シマノ・アルテグラDi2 R8150、braze-on
サドル/プロロゴ・ディメンション 143 T4.0
ホイール/レイノルズ・AR41 DBカスタム、カーボンリム、チューブレスレディ
タイヤ/ヴィットリア・ルビノプロIV、700×28C
サイズ/48、51、54、56
カラー/デライティングホワイト、ネイビースモーク
フェルト・VR 4.0 アドバンスド105Di2
完成車価格/79万2000円
フレーム/フェルト・VR4.0 バリアブルロード|UHCアドバンスドカーボンファイバー
フォーク/フェルト・VR4.0 バリアブルロード|UHCアドバンスドカーボンファイバー
コンポーネント/シマノ・105Di2 R7170
サドル/プロロゴ・ディメンション スペース T4.0
ホイール/レイノルズ・AR46 DB カスタム、シマノ
タイヤ/ヴィットリア・ルビノプロIV、700×32C
サイズ/47、51、54、56
カラー/ディスラプティブブルー、ファストオレンジ
試乗会イベントも開催予定!
FELT Bicycles 新型FR/VR4.0 テストライド@荒川BASE 【10/19(土)、10/20(日)】