オン・オフで活躍するシマノのサイクリングシューズ「ET3」の実力に迫る【通勤編】
目次
ビンディングシューズに迫るペダリング性能と歩きやすさとを両立したサイクリングシューズ、「ET3」がシマノから新登場。平日のビジネスシーンから週末のサイクリングまで、オン・オフを問わず活躍する性能を秘めるこのシューズの実力に、「通勤編」と「輪行&キャンプ編」の2回に分け、2人の識者の観点から迫る。今回は1回目の「通勤編」として、サイクルスポーツ編集長・中島がジャッジする!
ペダリング効率と歩行時の快適性を両立させたツーリングシューズ「ET3」
シマノは変速機以外にも、さまざまな自転車アイテムを製造している。シューズもその一つだ。スポーツバイク用シューズといえば、ビンディングタイプというスキー板のようにシューズとペダルを固定するタイプのものが印象的だ。一方、通勤ライドであれば、いわゆるフラットペダルと呼ばれるシューズをペダルに固定しないノーマルなものの優位性が高いことが多い。実際、私も通勤時はフラットペダルだ。
ただ、信号待ちなどで足を着いたり、ペダルを爪先で引き上げるなどの動作を革靴でやると傷が気になる。そしてビジネスシューズはペダリングで力を入れることを想定していない。それなら、フラットペダルでしっかりと力を込められるシューズを通勤で使い、デスクの下にビジネスシューズをしまっておくのはどうだろうか。「ET3」はそのためにソールを強化するなどシマノならではのノウハウで設計されており、自転車通勤用としてのニーズにもマッチする仕様となっているのだ。
ご覧のように、アウトソールにはSPDクリートを取り付ける穴は設けられていない。フラットペダルのために開発されたシューズなのだ。
ペダルにあるピンとしっかりかみ合うことを念頭に置いたパターンが採用されている。
フラットペダル専用シューズといえど、ペダリングパワーのロスを抑える工夫が盛り込まれている。アウトソールの内側には、パワートランスファーブレードという、しなりを抑制するための層が1枚入っている。スニーカーよりもソールがしならないので、ペダリングの力をしっかりと伝達できるというわけ。
新フラットペダル「PD-EF202」&「PD-EF205」も登場!
ベーシックなモデルの「PD-EF202」。踏み面全体が一つのパーツなので力を込めたときに非常に安定感がある。色数が豊富で、愛車とコーディネートできるのも◎。「ET3」のアウトソールとペダルのピンががっちりとかみ合う手応えを感じる。「PD-EF202」のグリップを強化したのが「PD-EF205」だ。こちらは、普通のスニーカーなどを履く場合でも、樹脂製のプレートがしっかりとグリップしてくれる。
編集長・中島が片道7kmの自転車通勤でET3の実力をチェック
まずはペダリング性能についてチェックする。さまざまな条件と比較してみるために、次の6つのパターンで試してみた。
①普通のペダル+スニーカー
②「PD-EF202」+スニーカー
③「PD-EF205」+スニーカー
④普通のペダル+「ET3」
⑤「PD-EF202」+「ET3」
⑥「PD-EF205」+「ET3」
一番感触が良かったのは⑤「PD-EF202」+「ET3」の組み合わせだった。「PD-EF202」の大きなペダルボディが安定感を与え、それに加えて「ET3」とペダルのピンがしっかりとかみ合い、力が伝わっていくのが感じられたのだ。
次に良かったのは②「PD-EF205」+スニーカーだ。⑥の「ET3」との組み合わせより意外にも好感触だったわけだが、「PD-EF205」に備わるグリップが効果的で、それによってスニーカーとの相性が良かったように思うからだ。
続いて歩きやすさについてチェックする。
SPD対応シューズを使ったことがある人なら分かると思うが、やはり普通のシューズに比べてやや歩きにくいことがあるのは否めない。ペダリング性能を優先しているため、ソールのしなりが少なく硬めのものが多いためだ。「ET3」も、どの程度まで硬さを持っているのか注視しながら使用した。下の写真にあるように、実際歩いてみるとそのしなり具合はSPDシューズとは大きく異なる。普通のスニーカーと同じとまではいかないが、ソールが良くしなっているのが分かるだろう。しゃがんだり立ったりという大きな動作をするとソールの硬さが気になるが、普通に歩いている分には、違和感は少ない。
以上からまとめると、シューズは通勤用と決めて使うなら⑤「PD-EF202」+「ET3」がベストパフォーマンス、オフィス内でもスニーカーでOKな人なら、「PD-EF205」を視野に入れて選ぶといいだろう。
ET3、目からうろこのパフォーマンス
私自身、フラットペダル用のシューズをテストするのは、かつてない経験だった。正直、靴は何でもいいんじゃない? と思っていたのだが、いざ「ET3」を履いてみると、なるほど、どんなものにも特化させた性能を与えるとそのパフォーマンスを感じられるんだなと、目からうろこが落ちた。
通勤という特性上、職場でも「ET3」を履き続けられるのかは検討材料だ。編集という仕事なので、この靴でオフィスを歩き回っていても問題ないので1日過ごしてみたが、シューレースをしっかりと締めて足にフィットさせ、オフィスを歩き回っても不便はなかった。
余談だが、通勤以外にサイクリングでも使ってみた。「つくば霞ケ浦りんりんロード」を50kmほど走ったが、これが快適! 道の駅に立ち寄ったり、写真を撮るために止まるときなどはSPDシューズよりもストレスが少なかった。湖岸のような平坦な道でのサイクリングなら長距離でも十分な機能を持っている。このあたりは、次回の【輪行&自転車キャンプ編】にて、執筆を担当する田村 浩氏のインプレッションをお楽しみに。
【SPEC】
ET3
●価格/8500円(税抜)
●サイズ/36〜48
●カラー/カーキ、ネイビー、グレー
●参考重量/332g(42サイズ)
PD-EF202
●価格/4054円(税抜)
●カラー/ブルー、ゴールド、ブラック、レッド、シルバー
●参考重量/512g
PD-EF205
●価格/4543円(税抜)
●カラー/ブルー、ゴールド、ブラック、レッド、シルバー
●参考重量/612g
次回は「輪行&キャンプ編」
2回目の記事では、自転車キャンプの達人であり、輪行の達人でもあるフリーライター/エディターの田村 浩氏に、週末の“オフ”のシーンにおける性能を評価してもらう。