BOAフィットシステムがもたらすパフォーマンスアップ
目次
プロ選手の7割が使っていると言われるほど自転車界に浸透したBOAフィットシステム。クロージャーシステムのいちサプライヤーと思っている人も多いだろうが、大きな間違いだ。BOAが持っている技術と担っている役割について知る。
Part1 パフォーマンスを上げるためのフィットシステムの重要性
山でスノーボードブーツの紐を結ぶ手間にうんざりしていたゲイリー・ハンマースラグは、そのいらだちからあるアイデアを思いつく。ダイヤルとワイヤーレースでシューズのフィット感を容易に調節できるクロージャーシステムである。1990年代半ば、コロラド州のロッキー山脈でのことだった。その後、ゲイリーは試作を重ね製品化に成功。2001年にBOAテクノロジー社を設立し、同年、早くもBOAダイヤルを搭載したスノーボードブーツが発売される。大きなメリットを持つBOAは瞬く間にスポーツシーンに広まり、今ではBOAを採用するメーカーが300以上になるまでに成長。ロードレース界では、7割ほどのプロ選手がBOAフィットシステム搭載シューズを使用しているという。
BOAパフォーマンスフィットラボとは?
とはいえ、BOAはただダイヤルを作っているだけのサプライメーカーではない。フィッティングが体のパフォーマンスに与える影響に関する研究を行うエンジニアリング企業でもある。コロラド州デンバーの本社内には、生体力学データを測定するための最新機器を備えたパフォーマンスフィットラボがあり、人間のパフォーマンスを向上させる方法を開拓すると同時に、ブランドパートナー(スポーツギアメーカー)とともに製品の開発を行っている。
フィットシステムの重要性
BOAがもたらすメリットは、脱着性や締め付け力の調節の容易さ、優れたルックス……だけではない。パフォーマンスフィットラボの研究によって、BOAの存在がライダーのパフォーマンスに好影響を与えることが分かってきている。
当然だが、ペダリング時の出力ロスを防ぐには、足が無駄に動かないようにシューズがピタリとフィットし、かつソールの剛性が高いことが望ましい。しかし、小さく硬いシューズは、長時間のライドで痛みやしびれ、知覚異常を生じさせることがある。
そんな「速く走るには我慢せよ」はもう過去のもの。「高剛性ソール&タイトなフィット感」と、「傷みの解消&パフォーマンスを高めるために必要な血流の確保」は、シューズのフィット感を高めることで両立し得ることが分かったからである。
それを実現するのがBOAフィットシステム。BOAは2003年に自転車用シューズに参入し、フィット感のレベルを一気に引き上げた。BOAフィットシステムは、「諸刃の剣」を「誰にでも扱える武器」に変えたのだ。今後、BOAはさらなるパフォーマンス向上を目指して研究を続けるという。
Part2 サラウンドラップ&新モデルLi2の有効性
従来の自転車用シューズは、ソール形状があらかじめ決まっており、個々のライダーが自分の足にフィットするシューズを選ぶ必要があった。昨年、フィジークからリリースされたヴェントスタビリータカーボンは、まったく異なるコンセプトで作られている。カーボンソールのアーチがなく、代わりにベルト状のストラップが土踏まずに沿って伸びている。そのストラップをBOAフィットシステムで調節することで、どんな足にもぴったりとフィットさせることができるのだ。
実はこのシューズの開発にはBOAが参加しており、フィッティングに関するBOAの知見が活かされている。BOAの存在があったからこそ生まれたシューズといえる。
使われるBOAのプラットフォームは新作のLi2。旧型のIP1はネジ止め式で、マウント部が破損してしまった場合は修理が難しかった。新型はカートリッジ方式となり、マウント部がダメージを受けない構造で、耐衝撃性が飛躍的に向上。非常に薄くなり、空気抵抗が少ないというメリットもある。
フィジーク・ヴェント スタビリータ カーボン
価格/5万2800円
spec
アッパー素材/PUラミネート メッシュアッパー
クロージングシステム:Li2 BOAデュアルゾーンBOAフィットシステム
ソール/R1 カーボンアウトソール、UDフルカーボン
カラー/ブラック×イエローフルオ
重量/227g(サイズ42)
Part3 スタビリータカーボン使用、小笠原匠海選手の着用コメント
Team Cycliste Périgord 24 / EQADS 準所属の小笠原匠海選手のコメント
最初、足を入れたときはその高いフィット感に驚きました。走ってみると、BOAフィットシステムで調節できるストラップが土踏まずを適度にサポートしてくれるので、パワーロスを防いでライダーの力を効率良く推進力に変換してくれます。カーボンソールの剛性感にも不満は全くありません。パワー系ライダーである私が踏んでもたわむ感覚がないのは本当に凄いとしか言い様がありません。距離を稼ぐエンデュランス走でも、スプリントなどのパワートレーニングでも、その印象は変わりません。新型のLi2ダイヤルは従来型と比較して薄くなっており、落車時に引っかかって壊れる可能性が低くなったのもうれしいところ。私を支えてくれる大切な機材です。
BOAフィットシステムに関する詳細はBOAFit.com