デュラエースR9270系ホイールをプロ選手がインプレッション
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SHIMANO(シマノ)のロードバイク用コンポーネントの最高峰「DURA-ACE(デュラエース)」がR9200系に刷新されるとともに、その名を冠した新型のホイールシリーズも登場。この新たなデュラエース・ホイールを日本のトッププロ選手はどう評価するのか。早速これを装備しレースで見事勝利を挙げた、チームブリヂストンサイクリング・今村駿介選手にインプレッションしてもらおう。
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デュラエース WH-R9270シリーズとは
デュラエースグレードのホイールとして新たに登場したのは、「C36」、「C50」、「C60」のリムハイトの異なる3つのカーボンホイール。
ディスクブレーキ用のWH-R9270シリーズではチューブレスとチューブラーの2種類を用意、リムブレーキ用のWH-R9200シリーズはチューブラーのみのラインナップとなる。なお、いずれも12速専用だ。
今回は、最注目のディスクブレーキ用チューブレスモデル(WH-R9270-C50-TLのように、製品名の最後にTLがつく)について見ていこう。
WH-R9270-C36-TL
WH-R9270-C36-TLは、36mmハイトのヒルクライムで力を発揮するタイプだ。非常に軽量でありながら、一方で優れたエアロダイナミクスを発揮する。
WH-R9270-C50-TL
WH-R9270-C50-TLは50mmハイトで、軽さとエアロダイナミクス性能を最もバランス良く兼ね備えたタイプ。オールラウンドに活躍するホイールだ。
WH-R9270-C60-TL
WH-R9270-C60-TLは60mmハイトで、高い速度が要求される場面やスプリントのように全力を注ぐ必要がある状況で力を発揮する、最もエアロダイナミクスと剛性に優れたタイプとなる。
「C50」を装備し見事国内レースで勝利した今村駿介選手
今回、プロ選手目線でのインプレッションを行ってもらうのは、チームブリヂストンサイクリングの今村駿介選手だ。
今村選手は1998年生まれで、トラック/ロードの両方で活躍する若きレーサー。2020年にアワーレコードに挑戦し、当時世界5位の記録を達成したことで一躍注目を浴びた。
2021年9月には「JBCF群馬CSCロードレース」でデュラエースR9200系と「C50」を装備し、フランシスコ・マンセボ選手との一騎打ちを制して勝利したことが記憶に新しい。国内プロ選手の中でもいち早くデュラエースR9200シリーズと新型デュラエースホイールを使い始めた今村選手だからこそ、深い評価を下してくれるはずだ。
WH-R9270シリーズを今村駿介選手がインプレッション
WH-R9270-C50-TU(チューブラータイプ)を供給され、レースで使用しているという今村選手。改めて「C50」のTL(チューブレス)に乗ってもらうとともに、「C36」「C60」についても試乗してもらった。まず、その第一印象は?
「すごく速いな、と、そう感じました。“適度なスピードをすごく楽に維持できる”と言いましょうか、特に普段から使っている『C50』についてはそう感じました。『C50』が最も好印象です」と今村選手。
最も好印象なのは「C50」
では、まずは最も好印象に感じているという「C50」について、詳しい評価を聞いてみよう。
「リムハイトが50mmあるということで、最初はエアロ性能に振った重めのホイールなのではないかと思っていたのですが、意外にも上りでも軽さが感じられます。空気抵抗を大きく削減してくれる一方で上りも軽く走れるということにまずは驚きました」。
「もちろん、平地の巡航性能も良いと感じます。『C60』にも試乗しましたが、自分の感覚としては『C50』が最もスムーズに平地を走れるという印象です。“速さというよりは、スムーズに・楽に走れる”のが『C50』の方である、と言うべきでしょうか。
また、トルクをかけて踏んでいるときでもしっかりとスピードに乗ってくれて、反応の遅さは感じられません。ですから、アタックやスプリントのときでも良く反応してくれます」。
「ハンドリング性能も良いと感じました。特に下りの安定感が高いです。自分は下りのコーナリング等は苦手な方なのですが、うまい選手の後ろについて走ると、このホイールのおかげでスッとうまくその選手のラインをトレースして走れる感覚があります」。
「正直なところ、もうこの一本でどんなレースでも万能にこなせてしまうという印象です。そういう意味でも、このホイールが一番気に入りました」。
「JBCF群馬CSCロードレース」で最後に一騎打ちでのスプリント勝負となり、見事勝利を手にしたが、そのときに「C50」はどう活きてきたのか?
「群馬CSCは非常にスピードの出るコースで、このホイールを装備して前の選手の後ろでドラフティングして脚を止めていても、遅れることなくついていくことができました。また、自分から動いてスピードを上げていく場面ではどんどん加速していってくれたので、それらがアドバンテージとなり、最終的にスプリントに持ち込まれたあの場面でしっかりと脚を残すことができたんです。それが勝利の一つの要因となりました」。
「C36」は上りだけでなく加減速のある場面でアドバンテージになる
では、「C36」についてはどう評価するのか?
「36mmハイトで軽量なので、ヒルクライムに性能を振ったモデルだとは理解していますが、一方で十分に空力性能を兼ね備えたモデルだと感じました」。
「特に選手目線で注目したのは、リムハイトが低いことによってもたらされる、スピードの加減速に対しての反応の良さです。例えばクリテリムにおけるコーナーの立ち上がりや集団で加減速のある走りが要求される場面で反応が非常に良いので、脚を残すことができると思います」。
トップレベルの選手ならではの目線で非常に興味深い。
「もちろん、ヒルクライムの性能は3モデルの中で最も高いと感じました。ダンシングをしたときの“かかり”も良いですし、その反応の良さから上りでアタックがかかった場面での対応力も高いと思います。また、一定ペースで上っていく場面でも効率良く走ることができると感じます」。
「C60」は踏んでいるとどんどん加速する
最後に「C60」については?
「やはりハイトが高く重量がある分、スピードに載せるまではある程度重さは感じられますが、このホイールは踏んでいるとどんどんスピードに乗っていくと感じられます。特に中速域からのスプリントといったシーンでは、その加速力から高いアドバンテージが得られると思います。
一方でハンドリング性能が良いことも好印象でした。ハイトが高い分ハンドリングが難しいのかと思われるかもしれませんが、そういったことは感じられません。下ハンドルを持って一気にスプリントする場面でも、癖なく素直にどんどん前へ進んでくれます。
エアロ性能に特化した、良いホイールだと思います」。
3ホイールから一本選ぶとしたら? & 使い分けは?
では、この3本のホイールから一本選んで使わないといけないとしたら、どれを選ぶか? また、使い分けるとしたらどうするか?
「最初に述べたとおり、やはり『C50』を選びます。このオールラウンドさから、これで全てのレースを戦えますね。平地でも上りでも下りでも、あらゆる場面で十分な性能を発揮してくれますから。
それぞれ使い分けるとしたら、『C36』はクリテリウムなど加減速が多いレースや、出場メンバーを見て頻繁にアタックがかかる場面が予想されるなら装着するでしょう。もちろん、上りが長いレースでも装着しますね。
『C60』は、完全に平坦基調のレースだったり、長い下りがあるレース、そしてゴールが下りになっているレースですね。タイムトライアルでも使ってみたいと思います」。
一般のレーサーに向けてのアドバイス
例えば実業団登録して走っている人など、一般のレーサーに向けてこれらのホイールをどうおすすめするか?
「何でも一本でこなさないといけない、どんな場面でも万能に勝負したい人なら『C50』で間違いありません。あとは自分の得意とする場面や脚質で選ぶと良いと思います。
上りが得意な人は『C36』、体重がある人やスプリントで勝負したい人は『C60』といった具合です。
自分の脚質に合ったホイールが“3段階”で選べるので、すごくいいホイールがそろったな、と思いますよ」。