REVEメルトインソール 湯煎で手軽に靴にも足にもフィットするインソールが作れる!
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ライダーの脚力を自転車に伝えるうえで、シューズが自分の足にフィットしていることは非常に重要。足裏はシューズではなくインソールと接しているため、インソールが足に合っているかどうかも非常に重要だ。足に合うインソールとして真っ先に思い浮かぶのがカスタムインソール。高価で製作にも時間がかかるイメージだが、REVE(レーブ)のメルトインソールはわずか30分ほどで靴にも足にもジャストフィットするインソールが作れる。しかも費用も手ごろだ。REVEメルトインソールとはどのようなものか、メーカーの担当者に話をうかがいながら、実際にインソールを作ってみた。
シューズにも足にもフィットさせる画期的なインソール
レーブのメルトインソールは、国際特許出願中の液状化成形式インソール。素材は50度ほどの熱で溶ける特殊な樹脂だ。真空パックと特殊なフィルムで密閉されたインソールを湯煎して柔らかくし、真空パックを外したインソールをシューズに入れて実際に足を入れて成形する。インソールがシューズ内で足裏と靴の形に合わせて成形されて冷え固まるため、足にもシューズにも合うインソールが作れるのが特徴だ。このため、シューズ内で足やインソールががずれにくくなり、脚力を無駄なくペダルに伝えることでパフォーマンスの向上が期待できる。
一般的なカスタムインソールとの違いは、手軽さと成形範囲の広さにある。
レーブのメルトインソールは、樹脂製の厚さ数mmのインソールが収まる底面積とある程度の深さがあるシューズトレーのような容器と、お湯が沸かせられる環境があれば成形できる。自宅で成形することも可能だ。価格もインソール代8960円と施工費4000円程度と、かなりお値打ちだ。自宅で自分で成形すれば、インソール代だけでカスタムインソールが作れてしまう。これに対し、一般的なカスタムインソールは専用の什器を使ってインソールを成形していくため、ショップで作業する必要がある。さらに価格も数万円と高めだ。
成形可能な範囲は、一般的なカスタムインソールの場合、かかとや土踏まずに限られることがほとんどなうえ、シューズ内で成形するわけではないので、シューズと必ずしもフィットするとは限らない。相性の悪い組み合わせだと、インソールとシューズが最高の性能を発揮できない可能性だってある。一方、メルトインソールは、成形時は湯煎したメルトインソールをシューズ内に入れ、そこに足を入れて成形するため、使用中のシューズにも自分の足にもフィットするインソールが作れる。シューズにも足にもフィットするインソールが誰でも安価に作れるという点で、これまでのカスタムインソールとは異なる。
メルトインソールの成形を体験!
レーブのメルトインソールの特徴が分かったところで、さっそく成形手順を体験し、レポートしよう。
成形手順
1.シューズ内の土踏まずの位置にアーチ形成パッドを貼る。アーチ形成パッドは低反発素材で、溶けた状態のメルトインソールを入れても正確に土踏まずの形状を再現するためのものだ。
2.インソール全体がつかる容器にお湯を入れ、真空パックの熱湯に2分間つけて湯煎する。このときインソールの真空パックに直接お湯をかけないように注意。
3.お湯から真空パックに入ったインソールを取り出し、真空パックをはさみでカット。中に入っているインソールを薄い中フィルムごと取り出す。中フィルムは溶けたメルトインソールが飛び出さないようにするためのものなので、この段階ではまだ開封しないこと。
4.インソールが冷めないよう、なるべく早くシューズ内に入れる。このときインソールをV字型に折り曲げると入れやすい。インソールを入れたらつま先をシューズに合わせ、インソールが全体的にシューズの底になじむように手で広げる。
5.インソールを入れたシューズを履いて立ち上がり、6〜8分間そのままの状態をキープして足裏とシューズの形に成形する。このとき足の指に力を入れたりせず、自然な状態をキープするのがポイント。
6.インソールが固まったらシューズを脱いでインソールを取り出す。インソールの表面にある中フィルムをはがす。
7.クッション材をインソールの表面にしわにならないように貼り付ける。
8.はみ出したクッション材は、インソールの形に合わせてはさみでカットする。
9.最後にロゴシールを貼って完成!
ここまでの所要時間は20〜25分ほど。両脚のインソールを作っても1時間はかからない。
メルトインソールに関するQ&A
ここではメルトインソールに関する素朴な疑問について、メーカーの代表・中川智さんに質問してみた。
Q.取り扱い上の注意は?
A.直射日光の当たる場所や炎天下の車内など、50度以上の高温になる場所では、インソールが溶けて変形してしまう恐れがあります。高温や直射日光を避けて保管してください。また、靴を乾燥するときにドライヤーなどの熱風を当てるのも避けてください。
Q.成形時の注意は?
A.いつも自転車に乗るときのソックス(もしくはレースではくソックス)をはいて成形してください。ソックスが変わると厚みや縫い目の位置が微妙に変わるためです。
Q.熱成形のシューズに湯煎して熱くなっているインソールを入れても大丈夫? 熱成形したシューズが変形しない?
A.問題ありません。一般的な熱成形シューズは、90度以上の高温で成形しますが、メルトインソールの樹脂は50度前後で溶けるようになっていますし、成形時には人が触れても大丈夫な温度になっているためです。
Q.一度成形したインソールを再成形できる?
A.一度成形したインソールを再度熱成形することはできません。もし特定の部分が当たってどうしても気になる場合は、カッターなどで樹脂を削って微調整することはできます。
Q.レーブのインソールを使うことによるメリットについて、医学的見地やデータからの裏付けはある?
A.医学的見地からの裏付けはまだありませんが、秋の舞洲クリテリウムでレーブのメルトインソールを使用したライダーが16人入賞し、うち6人が優勝しました。使用したライダーからは「シューズ内で足が無駄に動かなくなってパワーが伝わるようになった」という感想を多くうかがっています。
Q.今まで使ってきたインソールに比べて厚みや重量が増えるのが気になる。表皮のクッション材を使わなくても大丈夫?
A.おすすめしません。
ブリーフインプレッション:シューズの中で足が動かず、力まなくてもパワーが出る!
ライダーの脚力を自転車に伝えるうえで、シューズが自分の足にフィットしていることは非常に重要。しかし、見落としてはいけないのは、足裏は直接シューズに接しているわけではなくインソールと接しているという事実だ。
いくら自分の足にフィットするシューズが見つかっても、インソールが合っていなければシューズが本来の性能を発揮できない可能性もある。したがって、シューズと同じぐらいインソールは重要だ。
レーブのメルトインソールは、成形後に足の指の形や土踏まずのアーチ、さらにはいていた靴下の縫い目やインソール裏側のシューズの縫い目まで形に残っている。それだけ正確に足やシューズの形を再現できるということだろう。だからこそ成形時は履き慣れた自転車用のソックスを使うか、レースで使うならレース用のシューズにレース用のソックスで成形するぐらいの気持ちで臨んだ方が良さそうだ。
はき心地はいわゆるシンデレラフィットとはこれか!というぐらいしっくりくる。自分の足とシューズを再現しているから当たり前ではあるのだが。となると足がむくんだらどうなるのか、という不安はあるが、これまで1か月ほど使った印象では心配する必要はなさそうだ。
ペダリング中はシューズの中で足が無駄に動かないのに好感を持った。特に上死点と下死点の通過がスムーズになった印象だ。一方、踏み込みの局面では、ダイレクト感を強く感じる。クッション材の最低限のクッション性だけで、一般的なスポンジを使うインソールに比べてダイレクト感があり、踏力が逃げずにペダルに伝わる印象だ。かといって硬すぎるとは感じない。クランクが1周する間にムダなくトルクをかけられる時間が増えた印象だ。
このインソールを作ったシューズをはいて実際にいつものコースで5分走のテストをしたところ、平均パワーベースで今季のベストを記録した。テスト当日はやや疲労が残る状態で、序盤は比較的抑えめに入ったにもかかわらず、である。20分走ではベストに届かなかったものの、好感触を得た。これまでは熱成形シューズに市販のインソールを入れていて特に何の不満もなかったが、レーブのインソールを使うことでよりシューズと足との一体感が増したように思う。レーブの代表・中川さんが「このインソールのユーザーがレースで続々入賞した」という話をされていたが、それも単なるセールスのための“盛った”エピソードなどではなく、実際にパフォーマンスを引き出してくれるから結果が後から付いてきたのだろうと想像できる。
メルトインソールがもたらすメリットは、パフォーマンスアップだけではない。長距離を走った時の疲労度もより低減できると感じた。これはペダルの踏み込み局面で足に無駄な力が入らなくなったことが影響していそうだ。
気になる点があるとすれば、これまで使ってきたものと比べて重量が倍ぐらいになってしまったことだ。とはいえ、市販のカスタムインソールの中では軽量な部類ではあるし、中川さんによると「より軽量なインソールを開発中」とのことなので、そのあたりの改善も期待していいだろう。
ブランド名のレーブはフランス語で「夢」という意味だそうだ。メルトインソールは、手ごろな値段でフィット感抜群のインソールが作れてしまうという意味でまさに夢のようなインソールと言っても過言ではない。