ヨネックス新ロードバイク「グローエント」をインプレッション
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日本のロードバイクブランド・ヨネックスからミドルグレードのディスクブレーキ仕様ロードバイク・グローエントが登場した。ゴムメタルやマイクロコア、OPSといったハイエンドモデルの軽量レーシングロード・カーボネックスの主要テクノロジーを受け継いでいるが、その実力はどうか? 実際にバイクの細部と走りをチェックしていこう。
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「GROWENT(グローエント)」の特長
ヨネックスのニューモデル・グローエントは、同社のハイエンドモデルにしてピュアレーシングモデルのカーボネックスの軽さやしなりを生かした高い推進力を踏襲し、快適性をさらに向上させたロングライド向けモデルだ。カーボネックスにも採用されているゴムメタルやマイクロコアといった素材、オーバルプレスドシャフト理論(OPS)といったフレーム形状に関するテクノロジーなどを採用してカーボネックス譲りの走行性能や乗り味を実現しながらも、素材や生産工程の工夫によって低価格化を実現しているのが特徴だ。
フレームにはゴムのような弾性と復元性に優れたチタン合金「ゴムメタル」を配合。素材を軽量化しても強度が保てるだけでなく、ペダリングによって生じるフレームのしなりを推進力に変換し、高い振動吸収性で体への負担を低減することで優れた快適性も実現する。
シートステーやBBには振動減衰性を持つウレタン製の素材「マイクロコア」を搭載し、路面からの微細な振動をカットすることも快適性向上に貢献している。
さらにフレーム形状にも工夫が。ラケットにも使われる独自理論「オーバルプレスドシャフト理論」を採用してチェーンステーの断面形状を横長の楕円形状とし、剛性を保ちながら振動に対して適度にしならせることで、快適性と路面追従性を向上させている。
フレームチューブの成型は新潟の自社工場で行いながら、接合や塗装などの仕上げの工程は台湾で実施。素材構成も見直したことで、高い品質と低価格化の両立に成功しているのも特徴だ。
「グローエント」のスペック
価格:41万8000円(シマノ・105完成車)、32万7000円(フレームセット)
サイズ:XXS、XS、S、M
カラー:ホワイト/ブラック
フレーム&フォーク:カーボン
メインコンポーネント:シマノ・105 R7000(油圧ディスクブレーキ仕様)
ハンドル:アルミ製オリジナル
ステム:アルミ製オリジナル
ホイール:シマノ・WH-RS171-CL
タイヤ:IRC 700✕28C
サドル:スチールレール製オリジナル
シートポスト:アルミ製オリジナル
「グローエント」インプレッション
グローエントは見た目にはカーボネックスディスクの新色か?というほどカーボネックスに似ている。実際、何の予備知識もなく、「ベーシックなコンポーネントとホイールで組んだカーボネックスディスクです」と言われれば、信じてしまうのではないか。少なくとも見た目には違いはない。
ジオメトリーもほぼ同じ。リヤセンターがグローエントの方が5mm長く、ホイールベースも長くなっているぐらいの違いだ。このことからグローエントは直進安定志向をやや強め、後輪側の路面追従性や振動吸収性を高めようとしていることが分かる。
インプレや撮影を兼ねて半日ほどかけて試乗した印象では、ロングライド向けフレームとうたう他社のバイクに比べても快適性は高い気がする。路面の細かな振動を効果的にいなしてくれると感じるが、これがマイクロコアやゴムメタルの効果なのだろう。BB周辺の剛性が高すぎないのもホビーライダーには好ましい味付けで、長時間のロングライドでも踏み負けることなく気持ちよく走り続けられるだろう。
同社の上位モデル・カーボネックスと比べてどうか?というのも気になるポイントだろう。グローエントの方がやや快適性が高いような気がするが、大きな差はないように思う。
特にダンシング時に感じるフレームのしなりが推進力となって走りの軽さにつながる独特のバネ感ある乗り味はカーボネックス譲りだ。剛性に関してもミドルグレード、ロングライド向けモデルだからカーボネックスよりマイルドになっているかというと、正直なところそれほど違いは感じられない。そもそもカーボネックスがレーシングバイクでありながら剛性が高すぎると感じるタイプのフレームではないからかもしれない。
カーボネックスディスクと比べて上りでは重さを感じるが、これはコンポーネントやホイールなど、アッセンブルされているパーツがベーシックなものだったからという影響もあるだろう。もしデュラエースで組んでホイールをもっと軽量なカーボンホイールに履き替えたら、カーボネックスと遜色ないレベルの加速時の軽快さや登坂力を得られるのではないか。
直進安定志向は確かにカーボネックスより高い気がするし、強めに横風が吹いているようなところでも安定しているような気もするが、これはオーソドックスなフレーム形状によるものだろう。しかし、コーナーで直進安定志向に由来するコーナーでのレスポンスの悪さはなく、高速コーナーでも狙ったラインをトレースしやすいし、挙動にも変なクセがなく安定感があって高い人車一体感を味わえる。乗っていて、操っていて気持ちのいいバイクだ。
細かなところに目を向けると、ハンドルまわりやシートポストは専用品ではなくオーソドックスなパーツが使えるのも好ましいポイントだ。特にハンドルまわりはライダーとバイクとの数少ない接点であり、ハンドル形状や幅、ステムの長さや角度まで好みのモノを選べるのはすばらしい。これはポジションが固まりきっていないサイクリストにも、ミリ単位でシビアにポジションを調整したいサイクリストにもメリットになる。
一方でディスクブレーキケーブルをヘッドチューブ前方から取り込むため、ステムの下に開口部のある専用スペーサーを1枚かませる必要があるので、ステムをヘッドチューブ上端まで低くすることはできない。ロングライド向けモデルをうたっているだけに仕方ないのかもしれないが、この点だけは惜しい。
グローエントのターゲットはロングライド志向の強いサイクリストとのことだが、コンポーネント次第ではレーシングバイクに近い走りも楽しめそうだ。ロングライドやグランフォンドをメインに楽しみながら、ときどきエンデューロやヒルクライムなどに出るようなホビーサイクリストにはまさにドンピシャと言えそうだ。
金子広美選手によるインプレッション
「第一印象として、ストレスなく乗り続けられるバイクだなと感じました。ガチガチに硬いフレームって脚に来るのですが、そういうところがないのでいつまでも乗っていられそうだと感じます。フレームの振動吸収性も高いので、荒れた路面でも安心して走れますし、下りでも安定感があって怖さを感じませんでした。ハンドリングもいいので意のままに操れるのも気に入りました。とにかく乗っていてストレスを感じませんね」。
「完成車に使われているパーツがそれほど軽いものでもないに関わらず、上りの性能は今乗っているカーボネックスに通じるものがありますし、加速や反応も悪くないと思います」。
「乗り心地がいいのでロングライドに使えますし、レースでも使えますね。初心者や女性に特におすすめしたいです。アップグレードしたら実業団レースでも走れそうだと感じていて、上位グレードのコンポーネントと自分のホイールで組んでみて、自分でも乗ってみたいですね」。
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