ホイールインプレッション2021 Pick Up!
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巨人たちが動いた。そういう印象だ。2021シーズンのロード用ホイールシーン。シマノ、カンパニョーロ、マヴィックという主要ホイールメーカーがそろってトップモデルを発表したからだ。フルクラム、DTスイス、カデックス、コリマ、スピナジーも新作を出した。ヴィジョンやスコープなどの実力派も積極的に動いている。さらに、10年ほど前に日本のロードバイクシーンを席巻したFFWDが再上陸し、ボルテックス、ルン、スミスといったサードウェーブ系メーカーも注目を集めている。かように動きが激しいロード用ホイール。本誌2021年12月号では、注目の新作を集めてホイールインプレッションを行った。タイトルには“インプレッション”とあるが、印象を述べるだけでなく、採点を行って各性能を数値化する。しかも、忖度なしの、辛口評価だ。俎上に載せるのは、最新のディスク用ロードホイール25本。意図したわけではないが、結果的に全てカーボンリムとなった。カーボンホイールの低価格化とメインストリーム化を実感する。ディスクロードが定着期へ入りつつある今。それに伴ってホイールの熟成も進んでいるのか、それとも未熟な段階なのか。結果から言うと、問題は根深く残っているが、希望が見えた試乗だった。今回、サイクルスポーツ.jpではそのうち7ブランド12本をピックアップした。
カンパニョーロ・ボーラWTOウルトラ33
2018年に登場したボーラの新シリーズ。リムブレーキ時代にはワンとウルトラという2グレード体制だったが、ディスクブレーキ用は今までウルトラが設定されていなかった。2021年、WTOについにウルトラグレードが登場する。ベアリングと受けがCULTになり、フロントハブがカーボン化。それだけでなく、WTOのウルトラはリムも違う。形状は同じだが、繊維と樹脂を変更して軽量化。ニップルを内蔵して空力性能をさらに高めた。33mm、45mm、60mmというラインナップは従来どおりだが、ウルトラはディスクブレーキ仕様のみとなる。ボーラWTOウルトラ33のみリム内幅が21mmだ。
→カンパニョーロ・ボーラWTOウルトラ33〜ホイールインプレッション2021 Pick Up!〜
カンパニョーロ・ボーラWTOウルトラ45
上記のリムハイト45mm版がボーラWTOウルトラ45。リム内幅は19mmだ。
カンパニョーロ・シャマルカーボンDB 2ウェイ
カンパニョーロが20万円台前半に投入した新型カーボンホイール。コンセプトは「エンデュランス性に特化したホイール」というもので、グラベルユースまで視野に入れている。アルミリムの名作シャマルの名称を受け継ぐが、カーボンリムにステンレススポークと、その設計はアルミ版とは大きく異なる。ロード用タイヤなら25~30C、グラベル用タイヤなら65Cまで対応。グラベルに対応させたからか重量はアルミシャマルより重い1585g。
シマノ・WH-R9270-C50
シマノがR9200系デュラエースと同時に発表した新型ホイール。リムハイトは3種類。ディスクブレーキ用はチューブレスとチューブラーが用意されるが、リムブレーキ用はチューブラーのみ。今回試乗するのはディスク用チューブレスモデル3種。全モデル前後セット23万円強という価格にも注目だ。なお、フリーボディがシマノ12速専用であるため、試乗は新型デュラエースで組まれた試乗車(メリダ・スクルトゥーラディスク)で行っている。WH-R9270-C50は万能に使うことができるモデルだ。
シマノ・WH-R9270-C36
上記のリムハイト36mm版。WH-R9270-C36はヒルクライム用だ。
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シマノ・WH-R9270-C60
上記のリムハイト60mm版。WH-R9270-C60は高速向けだ。
→シマノ・WH-R9270-C60〜ホイールインプレッション2021 Pick Up!〜
ヴィジョン・メトロン45SL ディスク
EFエデュケーション・NIPPOとバーレーン・ヴィクトリアスが2021年のツール・ド・フランスに投入したことで話題を呼んだ新型ホイール。リムハイトは45mmと60mmの2種類となり、チューブラーとクリンチャー/チューブレスレディの計4種類。メトロン45SL ディスクのリム幅は31.1mmまで拡張され、空力性能がさらに高められているという。試乗するクリンチャー/チューブレスレディのリム内幅は21mmで、28Cタイヤに最適化。
→ヴィジョン・メトロン45SL ディスク〜ホイールインプレッション2021 Pick Up!〜
ヴィジョン・メトロン60SL ディスク
上記のリムハイト60mm版。メトロン60SL ディスクのリム幅は33mmまで拡張された。
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カデックス・36ディスク
ジャイアントが2019年に立ち上げた高性能パーツブランド、カデックスのカーボンホイール。リムハイトが45mmと60mmという2種類のラインナップだったが、そこに36mmの36ディスクが加わった。快適性・動力伝達性・軽量性をバランスさせるためカーボンスポークを採用していることが特徴。フックレスリムのため認定タイヤのみ使用できる。今回の試乗は相性が最も良いはずのカデックス・レースで行った。
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フルクラム・エアービート400DB2ウェイーレディ
フルクラムのカーボンホイールファミリーに加わった注目の新作。40mm高、27mm幅(内幅21mm)のチューブレスレディカーボンリムは25~40mmまでのタイヤに対応し、舗装路はもちろん、砂利道のグラベルロードまでオールマイティーに使えるという。目を引くのはリムの色。UDカーボンの表面にほのかに青色が付けられており、従来のカーボンホイールにはない雰囲気を湛えている。最大の特徴は税込14万円という低価格だ。
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コリマ・32mmMCC WS+ DX TA
リムブレーキの時代からコリマは太いカーボンスポークをリムとハブに接着するコンプレッション構造のMCCシリーズを作ってきたが、昨年ディスクブレーキ用のMCC DXシリーズを発表。Y字のジョイントを使って2本のスポークを根本で1本にまとめ、それをハブに接続して駆動力にも制動力にも耐える設計が特徴だ。リムハイトは47mmと32mmで、それぞれにチューブラーとクリンチャーがある。試乗するのは32mmクリンチャー。
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ボルテックス・N4
中国からやってきた注目のホイールメーカー。主力モデルはNシリーズで、太いカーボンスポークを使うことが特徴。当然リムもハブも専用設計だが、ライトウェイトのような一体型ではなく、スポークは交換可能。スポーク穴周辺のみ積層が増やされたリムはオフセットしており、スポーク角の左右差を抑える。Nシリーズは計8モデルがあるが、試乗するのはハイト40mmのディスク用チューブレスモデル。1280gとかなり軽い。
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テストライダー
吉本 司
本誌編集長を経て現在はフリーの自転車ライター。ピュアロードからMTBまで、自転車遊びの幅は多岐に及ぶ。最近購入したばかりのSワークスエートスで試乗に挑む。
安井行生
さまざまな自転車メディアで執筆を行う自転車ライター。小柄で体重も軽いからか、しなやかで一体感のあるホイールを好む。体力は落ちてきたが、やっぱり上りが好き。
小笠原崇裕
幼少期から自転車競技を経験、ロードレース、トライアスロン、アドベンチャーレースなどで活躍。近年はイベントのアドバイザーやジュニアの育成にも力を入れている。
ホイールの評価基準
評者3人がホイールの各性能を100点満点で採点。意味のない「満点連発インプレ」を避けるため、「ここからがいいレベル」という標準ラインを60点に設定。メーカーにこびることなく、低い点数も容赦なくつけた。
加速性(低速)
ゼロスタートや低速域の加速性能。リム重量や剛性に左右される。レースではほとんど必要とされないが、低速域の加速力は「操る楽しさ」に直結する。
加速性(高速)
時速30~40kmからの加速性能。アタックへの反応やスプリントなどロードレースで必要とされる項目。空力、重量、剛性、しなりなどのバランスが求められる。
高速巡航性
空力性能は重量などと同じく絶対性能だが、空力に加え高負荷時のペダリングのしやすさ、高速維持のしやすさなどを加味した高速巡航性を評価した。
登坂性
ヒルクライム性能。重量や剛性が影響するが、軽くて硬ければいいというわけではない。体重・好み・脚力・使用フレームによって評価が大きく分かれる。
快適性
振動吸収性の良し悪し。リム素材や形状、構造などに左右される。正確に評価するため、タイヤ、インナーチューブ、空気圧を統一してテストした。
ハンドリング
扱いやすさや横風に対する影響度を評価したもの。前輪のリムハイト、リム形状、剛性感に左右される。制動性と同様に、安全に直結する性能。
お気に入り度
「高得点は付けられないがいいホイール」に光を当てたい、という評者の悩みを解決するために追加した項目。「好きか嫌いか」を数値化したもの。
使用タイヤ
フルチューブレス▶IRC・フォーミュラ プロ チューブレス RBCC(700C×25C)
チューブレスレディ▶IRC・フォーミュラ プロ チューブレスレディ スーパーライト(700C×25C)
クリンチャー▶IRC・アスピーテ プロ RBCC(700×26C)