BRAND INFO
デュラエースやDI2電動パーツなど、ロードバイク用コンポーネントでは圧倒的なシェアを持つ日本のシマノ。スポーツバイク向け主幹部品の充実した供給体制から、しばしば”自転車界のインテル”と例えられることも。
グラベル&アドベンチャーに最適化されたオールラウンダー GRX
ドロップハンドルが見直される昨今、パーツに求められる機能も変化しつつある。グラベル路面で求められる操作性やギヤレシオの最適化……、走行シーンの多様化に呼応する専用コンポーネントが求められているのだ。そんなシマノGRXの深部に迫ろう。
デュアルコントロールレバー
●レバーのシルエットは、今までのロード用とは明確に異なる。大胆に立ち上がったフード先端は、ライド中の手のすっぽ抜けを防いでくれる。レバーの形状をピストン位置から見直すことで、手の小さなライダーも指が滑らずしっかりと掛かるのだ
指の掛かりと制動力を重視して、確実なコントロールを実現
ST-RX815
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価格/5万3477円(税抜、左右セット、ホース・オイル付属)、2万4262円(税抜、片側レバーのみ)
●フード上面はリブ状の滑り止めで覆われる。前後方向には握り位置を変更しやすくする一方で、左右方向には確実にグリップしてくれる。不安定な状況下でも、ブレーキを制御したりボトルの水を飲んだりしやすい
●DI2仕様のレバーでは、ブラケット先端部分に”隠れスイッチ”が組み込まれている。シマノのe-tubeに接続することで、変速操作やGPSユニットの画面切り替えといった機能を割り当てることが可能だ
●レバーのピボット位置とカーブ自体を見直したことで、指の掛かりは格段に向上している。写真のようにレバー位置の遠近も調整できるので、手が小さく指の短いユーザーでも、繊細なコントロールができる
機械式もショートリーチなレバーを採用
●機械式変速のST-RX810も、レバー部分へのアクセス向上と確実なグリップが図られている。またフロントシングル用の左レバー、ST-RX810-LAには、ドロッパーポスト用のリモート機能が割り当てられ、用途に応じたバイクのアップデートが実現される
●タイヤのファット化がタイヤ外周の大径化をもたらし、一方でグラベルバイクがターゲットとするフィールドはアスファルトにとどまらない。このため選ばれたチェーンリングの歯数は48×31T。ロード用よりも約1割小さくすることで、速度域に応じた最適化が図られている
荒い路面もターゲットにするグラベル専用チェーンリング
FC-RX810-2
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価格/2万2103円(税抜)
歯数構成/ 48×31T
クランク長/ 170、172.5、175mm
PCD / 110×80mm
●アウターとインナーの差は17T。ロー側での逆比(ギヤレシオ1対1未満)を実現しつつ、トップ側も十分にカバー。この歯数差を軽々と変速させる技術こそ、世界でシマノだけが唯一持つ伝家の宝刀だ
●チェーンリングのPCDは、アウター 110mm/インナー 80mm。不等アングルの4アームやギヤ板の固定方法も含めて、GRXのための新規格。これによってアウターギヤ48T、インナーギヤの31Tが実現されているのだ
●CXレーサーなどからの声に応えるように、フロントシングル仕様のクランクがラインナップされたことも大きなトピックである。MTBで培った歯先形状により、チェーンが振動していても外れにくく加工されている
シングル用クランク
FC-RX810-1
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価格/2万2103円(税抜)
歯数構成/ 40、42T
クランク長/ 170、172.5、175mm
PCD / 110mm
フロントディレーラー
●右:DI2モデル FD-RX815、左:機械式モデル FD-RX810。48Tチェーンリング用に、ガイドプレートのアール(湾曲)を小型化。また、極太なリヤタイヤとのクリアランスを確保する目的もあり、従来のロード用FDと比べるとチェーンラインが約2.5mm外に出されている
●機械式では、ケーブルアジャスト用バレルを内蔵するなど、より繊細に調整を詰められるような工夫がされる。ストレスのないフロント変速において、FDの役割は大きい
アウターの歯数と位置に合わせてガイドプレートを小型化
FD-RX815
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価格/2万2394円(税抜)
取り付けタイプ/直付
対応アウターギヤ/ 46 ~ 50T
FD-RX810
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価格/ 5107円(税抜)
取り付けタイプ/直付
対応アウターギヤ/ 46 ~ 50T
リヤディレーラー
機械式モデル RD-RX810
ワイドなキャパシティだけじゃ物足りない!?チェーンスタビライザー付きRD
RD-RX810/RX812
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[RX810]
価格/1万1025円(税抜)
最大フロントギヤ歯数差/ 17T
対応トップスプロケット/ 11T(最小・最大)
対応ロースプロケット/ 30-34T(最小/最大)
[RX812]
価格/1万1191円(税抜)
対応トップスプロケット/ 11T(最小・最大)
対応ロースプロケット/ 40-42T(最小/最大)
●DI2モデル RD-RX815。よりキツイ登坂勾配や荷物の積載を見据え、グラベル用スプロケットの大型化が止まらない。スタンダードなRD-RX810 / RD-RX815では30-34Tのロースプロケットだが、RD-RX812 / RD-RX817ならば同40-42Tを組み合わせることになるのだ。インナーの小ささも含めて、一世代前のMTBに迫るワイドさ
RD-RX815/RX817
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[RX815]
価格/2万8278円(税抜)
最大フロントギヤ歯数差/ 17T
対応トップスプロケット/ 11T(最小・最大)
対応ロースプロケット/ 30-34T(最小/最大)
[RX817]
価格/3万1427円(税抜)
対応トップスプロケット/ 11T(最小・最大)
対応ロースプロケット/ 40-42T(最小/最大)
●プーリーは、上下で大きさが異なる。Gプーリーが従来の11Tなのに対して、Tプーリーは13T。軸部分には、ともにベアリングが封入され、キャパシティ増加とチェーンのスムーズな動きが実現されている
●暴れや外れといったチェーントラブルを防ぐスタビライザーは、全グレードに装備される。アルテグラRXの一択的な状況から、リヤの段数やスプロケットの大きさに合わせた選択肢が増えることになった
ブレーキ
●ロード用ブレーキの基本設計を用いながら、キャリパーが泥の影響を受けにくいようにしたのがBR-RX815。アルテグラ/ 105などに標準装備されるL02Aパッドから、L03Aパッドへとアップデートされている。もちろんL04Cメタルパッドにも対応しているので、必要に応じて制動力を向上できる
ツーリングまでこなすオールラウンダーへと変貌を遂げた
BR-RX810
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価格/ 7298円(税抜、フロント用)、6824円(税抜、リヤ用)
●キャリパーは2ピース構造。もちろんワンウェイブリーディング構造で、オイルのエア抜き作業はしやすい。ピストン径などの基本プラットフォームは共通なので、従来のロード用レバーと組み合わせることも可能
●GRXに標準装備されるパッドは、放熱フィン付きのレジン仕様であるL03A。形状はデュラエースなどで使われているK04Sメタル/ L04Cメタル/ K02Sレジン/ K03Sレジン/ L02Aレジンと共通で、互換性がある
ホイール
●ホイールには、高さ22mmのロープロファイルのリムデザインを採用。リムの内寸は21.6mmと広めで、ホイールサイズにより推奨タイヤ幅は700Cが32 ~ 42mm/ 650Bは38 ~ 53mmと異なる。中堅グレードで650B規格の完組ホイールが登場した意義は大きく、既存グラベルバイクのファットタイヤ化を気軽に実現できる
ツーリングまでこなすオールラウンダーへと変貌を遂げた
WH-RX570
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価格/4万5040円(税抜、前後セット、700C・650B)
エンド幅/ 100mm(フロント)、142mm(リヤ)
スポーク本数/ 24本(前後とも)
●ハブは、ロードやCXバイクと同じ12mmのスルーアクスル。このため、ロードバイクをツー リング用途にモディファイするときにも、GRXのホイールは役に立ちそうだ
●リムは、前後ともに非対称設計。表面には泥が付きにくいコーティングが施されるなど、MTBで培われたノウハウが注ぎ込まれる。もちろんチューブレスレディ対応だ
IMPRESSION 小さな積み重ねが、グラベルでの大きなベネフィットを生み出した
ブレーキレバーやブラケットの形状、前後ギヤ板の歯数構成、絶妙なリム幅のホイールセット。どれも既存のロード用パーツから比べると些細な変化でしかない。しかし、それらが積み重なることによって、グラベルバイクは大きな恩恵を受けることになる。
砂利路面はもちろん、車道にあるグレーチングやアスファルトの継ぎ目ですら、バイクの挙動が安定するのだ。安定は精神的な余裕を生み出し、ストレスのないライドが堪能できる!
今回試乗で使用したバイクはメリダ・サイレックス+8000-E
●2020年に向け、DI2バージョンのRX815系GRXをいち早くスペックインしたのが、メリダ・サイレックス+8000-E。太めの650Bタイヤが組み合わされた”+”仕様で、あらゆる路面をスムーズに走る。ツーリング向けのジオメトリ採用で抜群の安定感!
MERIDA
SILEX+8000-E
メリダ ・ サイレックス+8000-E
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シマノ・GRX810DI2完成車価格/ 49万9000円(税抜)
※試乗用にホイールは変更してあります。
問・ミヤタサイクル
シマノ・GRXとあわせて使いたいグラベル用ハンドル
グラベル路面で重視したいのが、ハンドルの”フレア”の具合。下部に向けて幅が広がっていることで、下ハンを持った際の実質幅が広がり、安定感が向上する。ブラケットポジションでも、フード側面から握り込める。
●30°ものフレア角を持つ、アドベンチャーライド向けハンドルバー。荷物を積載した状態で、本格的なトレイルや荒れた林道を走行するようなシーンでのコントロール性は抜群。前輪が弾かれてもハンドルが取られにくい
シマノ・ディスカヴァービッグフレアハンドルバー
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価格/ 7000円
ドロップ幅/ 420、440mm バーエンド幅/ 555、575mm
素材/アルミ カラー/ブラック
●12°のフレア角で仕上げられた、グラベル用の王道的な曲がりが特徴。ドロップ/リーチもコンパクトで、最小限の姿勢変化で上ハン/ブラケット/下ハンを使い分けられるため、ロングライド向けにフィットする
シマノ・ディスカヴァーミディアムフレアハンドルバー
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価格/ 7000円
幅/ 400、420、440mm バーエンド幅/ 450、470、490mm
素材/アルミ カラー/ブラック