ヴィットリアのロードバイク用タイヤ「コルサ」が新型に! 最速インプレッション

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Presented by V.T.J 撮影場所協力:日本サイクルスポーツセンター

イタリアのスポーツ自転車用タイヤブランド、Vittoria(ヴィットリア)。そのロードバイク用タイヤの最高峰モデルであり、レーシング用タイヤを牽引する存在である「Corsa(コルサ)」がフルモデルチェンジし、「Corsa Pro(コルサプロ)」となって新登場! その特徴を紹介するとともに、試乗インプレッションをお届けしよう。なお、店頭に製品が並び始めるのは2023年5月9日頃からの見込みだ。

ヴィットリア・コルサプロをインプレッション

 

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ヴィットリア・コルサプロの特徴

ヴィットリア・コルサプロ

ヴィットリア・コルサプロ

 

ヴィットリアのコルサ・コットンタイヤシリーズは、同ブランド最高峰のロードバイク用レーシングタイヤで、コンポで例えるならシマノ・デュラエースと言ったところ。長年にわたり世界トッププロチームで採用され、フィードバックを受けて幾度となくモデルチェンジを重ねてきた。そして今回のフルモデルチェンジを受け、「コルサプロ」となって新登場した。

コルサプロの構造

コルサプロの構造

 

前作から構造が新しくなっている。従来のトレッドゴムをケーシングに接着する構造を改め、グラフェンとシリカのコンパウンドにコットンケーシングが完全にシームレスな構造で加硫(かりゅう。ゴムの弾性を発揮させるために硫黄などを加える工程)されている。なお、チューブラー仕様は従来どおり接着構造のハンドメイドを継続している。

コルサプロのトレッドパターン

主に進化したポイントとしては、まず、対パンク性能を向上させたうえで、さらに低い転がり抵抗も実現したことだ。前作に比較し、チューブレスレディのモデルでは12%の転がり抵抗の削減を達成し、対パンク性能は18%も向上している。

次に、先述のグラフェンとシリカの混合コンパウンドにより、スピードを損なうことなく、さまざまな路面状況でより高いグリップ力を発揮できるようになった。また先述のシームレス構造によって、さらに路面追従性も高めている。

そして軽量化だ。チューブレスレディのモデルでは、前作に比較して4%の重量削減を達成した。ちなみに、700×28Cのチューブレスレディの重量は295gと、同種のタイヤの中では非常に軽量に仕上がっている。

上がコルサプロで下が前作に当たるコルサ

上がコルサプロで下が前作に当たるコルサ。コルサプロは山なりを描くオーソドックスな形状になっていることが分かる

 

また、ホイールへの装着がしやすくなった。従来のコルサは広げてみると平らな形状をしていたが、コルサプロは一般的なタイヤ形状になり、これがホイールへの装着のしやすさに貢献している。多くのホイールでフロアポンプによるポンピングのみでビードが上がるという。

最後に、フックレス対応サイズが登場した点だ。チューブレスレディの700×28C〜32Cが対応サイズだ。フックレスホイールが近年登場してきている中で、コルサコットンシリーズがこれに対応したのは大きなトピックスと言えよう。

なお、コルサプロは2023年に入ってからのレースで既に実践投入されており、EFエデュケーション・イージーポスト、ユンボ・ヴィズマ、アルペシン・ドゥクーニンク、アスタナ・カザクスタンチーム、ロット・デスティニーといったサポートチームが使用している。3月のミラノ~サンレモ、そして4月9日に開催されたパリ~ルーベではこのコルサプロを装着したマチュー・ファンデルプールが勝利を飾っている。既にこのタイヤはメジャーレースでの実績を作っているというわけだ。

 

「コルサ プロ」ラインナップ

チューブレスレディとチューブラーの2種類の展開となる。チューブドタイヤ(いわゆるクリンチャータイヤ)はなく、こちらは前作に当たるコルサのチューブドモデルが継続となる。

チューブレスレディ

700×24C 

700×26C

700×28C フックレス対応

700×30C フックレス対応

700×32C フックレス対応

価格:1万3900円

カラー:Black/Para

 

チューブラー

28″-23mm 

28″-25mm

28″-28mm

28″-30mm

価格:2万900円

カラー:Black/Para

 

推奨シーラントについて

コットンケーシングに悪影響を及ぼすため、シーラントはアンモニアフリーのものの使用が強く推奨されている。純正の「ユニバーサル チューブレスタイヤ シーラント」の使用がもちろんベストだ。

 

「コルサプロ コントロール」も登場

コルサプロ コントロール

コルサプロ コントロール

 

より荒れた路面向けの「Corsa Pro Control(コルサプロ コントロール)」も同時に新発表となった。「コルサコントロール」の後継モデルに当たる。基本的な構造はコルサプロと同じだが、トレッドパターンが異なり厚みがある。転がり性能は前作より2%向上、対パンク性能は19%向上、重量は2%削減されている。チューブレスレディのみの展開で、サイズは700×26Cと28Cの2種類。28Cはフックレス対応だ。価格はコルサプロのチューブレスレディ仕様と同じく1万3900円で、カラーは写真のBlack/Paraの1色展開だ。

 

コルサ プロインプレッション〜トラック用タイヤのような際立つしなやかさ

インプレッションライダー:平塚吉光

インプレッションライダー:平塚吉光。元プロロードレーサーで、現在はサイクリングガイドやインストラクターとして活躍する。サイクルスポーツではインプレッション記事などの執筆も手がけており、選手としての経験に裏付けられた的確な考察に定評がある

ZIPP 303 Firecrest Tubeless Disc

今回のテストホイールに用いたのは、「ZIPP 303 Firecrest Tubeless Disc(ジップ・303ファイヤクレスト チューブレス ディスク)」。内幅25mmのフックレスリムを持つホイールで、この新型タイヤの性能を遺憾なく発揮できる逸品。軽さを活かした登坂力と巡航性能のバランスに優れた、40mmハイトのカーボンホイールだ。価格:36万5400円(前後セット)

 

冒頭から平塚吉光さんのコメントではなく恐縮だが、編集部員がタイヤをホイールに取りつける際に、本当にビードがフロアポンプだけで簡単に上がった。チューブレス系タイヤは装着にブースター/エアコンプレッサーが必要なことが多く、リムとの組み合わせによってはかなり手こずることも多いので、これは驚きだ。走りの性能以前に、まずはユーザビリティが非常に高いことが評価される。そして、肝心の走りについて。

コルサプロは簡単にビードが上がる

「第一印象として、軽さとしなやかさが際立っていると感じられました。特にこのしなやかさについては、トラック用のタイヤやハンドメイド系のタイヤに感じられるような種類のしなやかさが感じられました。

前作に比べて転がり抵抗が減り走りの軽さが向上しているということでしたが、これはそのとおりだと感じます。先ほど述べたこのタイヤが持つしなやかさによって路面の振動がかなり吸収されるので、それが安定した走行につながり、結果として転がりの軽さにつながっています。このタイヤが持つ転がりの軽さとは、そういう種類のものですね。また、軽量化されたことによっても転がりの軽さがもたらされていると感じられました」。

コルサプロを触る平塚さん

「走行感については前作のコルサと変わっています。これはタイヤが触ってみて分かるほど薄くなったことと、新しいシームレスな構造になったことによると思われます。従来のコルサは、“ねちょっとしている”と言いますか、独特の粘り感があり、これによってもたらされるクッション性があったんですね。その感覚は薄くなり、今作では、繰り返しますが、しなやかで柔らかな感覚となりました。これによって、トータルで見ると前作を上回る、良い走行感が得られるようになったと思います」。

コルサプロでコーナリング

「グリップ力が向上した、ということに関してですが、これも確かにそのとおりだと感じます。このグリップ力に関しても、やはり先ほど述べた衝撃吸収性の高さからきている面が大きいと思われます。高い速度で突っ込むコーナーから荒れた路面まで、路面の振動を吸収してタイヤが安定し、しなやかさによって路面に食いついてくれるので、安心してコーナーを曲がれる感覚が得られます」。

コルサプロで上る平塚さん

「上り性能も高くなっています。これも、やはりタイヤのしなやかさ、柔らかさによってもたらされているものです。一言で言うと、スムーズでストレスがない。タイヤのしなやかさが上りでのロスをなくしてくれると言いましょうか。硬いタイヤだとペダリングのロスがタイヤでうまく吸収できず、それが体の動きに出てしまいます。しかし、このタイヤが持つしなやかさによって、多少雑にダンシングしたりダンシングとシッティングの切り替えをしても、そのロスがタイヤで吸収されてしまうので、推進力に影響がないわけです。慣性が働きにくく速度の乗りにくい上り坂では、特にこのしなやかさによる恩恵が大きく感じられます」。

コルサプロをインプレッション

「最後に総合評価しましょう。今まで述べてきたように、このタイヤの走りの軽さだったりグリップ力の高さというのは、多くがそのしなやかさとそれによる振動吸収性によってもたらされるものだと感じています。このタイヤは最高級グレードのレーシングタイヤで、もちろん一般の市民ロードレーサーにとって恩恵は高いですが、レース派ではない、ロングライドやスポーツとしてのサイクリングを楽しむ層にとっても非常に恩恵のあるタイヤだと言えるでしょう。

しなやかで振動吸収性が高い、そして走行が軽くてグリップ力も高いということは、それだけ楽に速く走れ、安心感にもつながるということで、それはむしろロングライドなどでもメリットは大きいです。タイヤとは、自転車において“唯一地球とつながっている部品”であり、安心感が高く良いものを使うことは正義だと私は考えています。それはレース派でもサイクリング派の人でも同じです。

そんな、レース派だけでなくサイクリング派にとっても最高の選択肢となるオールラウンドなタイヤ。それが今作のコルサプロなのではないかと私は思います。ビードが上がりやすいというのも、非常に重要なメリットですよ」。

 

Brand Info〜vittoria(ヴィットリア)について

イタリアで1953年に誕生した、スポーツ自転車用タイヤ専門ブランド。ロードバイクだけでなくほぼ全てのスポーツ自転車ジャンルを網羅し、年間700万本以上の生産数を誇る。その数量は業界トップレベルだ。近年はグラフェンを使った次世代コンパウンドの開発をはじめ、バイクパークの建設・運営など、ハードとソフトの両面で業界をリードする。