ベテランレーサー筧五郎の強さに迫る 〜私のトレーニング履歴書〜

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プロ選手、ホビーレーサー、ショップ店長を問わず、自転車レースのトップカテゴリーで活躍する有名レーサーたちは一体どんなトレーニングをしているのか?それは多くのサイクリストが気になるところ。そんな有名レーサーたちの“トレーニング履歴書”に迫る特集をお届けしよう。今回は「56サイクル」店長の筧 五郎(かけい ごろう)さんだ。

 

筧五郎さん

 

筧五郎さんプロフィール〜46歳のベテランレーサー

筧 五郎さん

筧 五郎さん

 

筧さんは1975年生まれの46歳。名古屋生まれ名古屋育ち、そして名古屋在住のレーサーだ。現在はスポーツバイク専門ショップ&コーチングサービスを行う「56サイクル」を運営している。

「18歳からロードバイクに乗り始めました。仕事をやめて完全にレース活動だけをやっていた時期を経てから、パン職人の仕事をしながらしばらくホビーレーサーを続けました。そして2015年に56サイクルを開業したんです」と筧さん。

アマチュアヒルクライムレースの最高峰「マウンテンサイクリングin乗鞍」の最高カテゴリーで2005年に優勝し一躍脚光を浴び、その後も全日本選手権ロードレースで10位代に食い込むなど活躍する。そして2016年からは5年連続で「シクロクロス全日本選手権大会 マスターズ」で優勝。「全日本最速店長選手権」では2018年に優勝、2021年では2位となっており、年齢を重ねてからもなおもレースの第一線で輝いている。メディア出演も多く、知名度も非常に高い。

 

筧さんの身体的スペック〜ザ・日本人体型

「僕、短足なんです」と筧さん。……小柄で日本人的な体型と言うべきか。「体重は若い頃に比べて落ちにくくなってきました」と語るが、実際見てみると筋肉質でがっしりしている印象だ。

●身長:167cm
●体重:57kg〜60kg
●FTP:約270W
●得意分野:高速域からのスプリント

 

筧さんの体型

筧さんの体型。柔軟性は「年齢相応」と本人談

 

筧さんのフォーム〜サドル先端に座り“腰を入れる”

筧さんのライディングフォームは非常に独特だ。サドルのかなり先端部分に座り一見するとものすごい前乗りに見えるが、かといってサドル自体を大きく前に出しているわけではない。

「いろいろと試して、サドル位置を前に出さずにサドルの先端に座るスタイルが一番自分にとっていいと分かり、これに落ち着きました。あとは、骨盤が立ちすぎないようにして、“腰を入れる”(骨盤を前傾させる)ように意識しています。こうするとうまく走れます。一見すごい前乗りに見えるんですけど、実はちゃんと適正位置になっているんです。脚が短いので、そう見えるんです(笑)。

平地を速度を上げて走るときはほとんどブラケットで肘を深く曲げるスタイルです。上りもこれに近いフォームのままいきます。上りではダンシングはほとんどしません」。

 

ブラケットリラックスフォーム

ブラケットリラックスフォーム

ブラケットエアロフォーム

ブラケットエアロフォーム

下ハンドルフォーム

下ハンドルフォーム

上りのフォーム

上りのフォーム

 

筧さんのバイク〜ありものでうまくまとめる

「長年トレックに乗っていますが、基本的にはありものパーツで何とかする、というのが私のスタンスです。機材にはこだわりません。だって、落車して壊れたりすることもありますし。変速まわりは推奨されない組み合わせなので、真似しないでください」と筧さん。

 

エモンダSLR(2020年モデル)

筧さんのバイク。トレック・エモンダSLR(2020年モデル)にロヴァール・アルピニストCLX、そして複数メーカー・グレードが入り混じったコンポーネントと、よ〜く見るとなかなかすごいことになっている。

やや前下がりのブラケット

ややブラケットを前下がりにしている

 

「“腰を入れて”肘を深く曲げブラケットを持つフォームを取るので、ブラケットは若干前下がりになっています。唯一のこだわりはセライタリアのサドルで、先に説明したとおりここの先端に座るのがしっくり来ます」。

 

シマノとスラムパーツを混ぜ合わせた駆動系

真似してはいけない組み合わせなので詳しくは説明しないが、シマノとスラムパーツを混ぜ合わせた駆動系まわりになっている

SLRチーム

セライタリア・SLRチーム。「もうこれしかない! というくらいこのサドルが好きです」と筧さん

 

筧さんのトレーニング法〜“平地20分走を3〜4本” 長年これだけをやっている

筧さん

基本的に平地でしか走らないという筧さん

 

お待ちかね。気になる筧さんのトレーニング法だ。「若い頃から現在に至るまで、基本的には一つのメニューだけを重点的にやっています。平地20分走を1日に3本〜4本行う、これだけです。

脚を止めずに20分弱走れる平地コースを使って、体重の4.2〜4.3倍の出力、私の場合はだいたい250W〜260Wくらいの出力で20分走ります。途中気分や疲労度合いに応じて5分〜20分程度のレストを入れて、合計3本〜4本。これをやる日は、1日140km〜150kmくらいの距離となります」。

工夫しているポイントもあるという。「このメニューをやるときは、わざと上ハンドルを持って上半身を起こし、空気抵抗を増やします。これがそのまま上り坂の練習にもなります。速く走ることが目的じゃなくて、負荷をかけることが目的なので。また、山にトレーニングにいくことは基本的にはありません。山が嫌いということと、距離を稼げなくなるからです」。

 

20分走を行うときにわざと取るフォーム

20分走を行うときにわざと取るフォーム

 

練習の頻度は? 「基本的には毎日乗ります。週にこうした強度を上げるトレーニングの日を4日設けて、合間でリカバリーライドの日を設けます。月2000kmを乗ることを目標にしています」。

かなりのトレーニング量だ。「トレーニングするのが好きなんです。そしてしっかり距離を走っていると、レースで勝負できるんです」。

 

自分の走りを客観的に見つめ直せ!

ベテランの眼差しで語る筧さん

ベテランの眼差しで語る筧さん

 

若い頃から同じトレーニングメニューを続けている筧さんだが、成績が浮き沈みしたり、体に不調をきたした時期があったという。

「パン職人をしていたとき、仕事の影響からだいぶ体に歪みが出てしまい、腰を悪くしてペダリングすらままならない状況になったときがありました。また、年齢を重ねるにつれていつの間にか姿勢が悪くなっていたり、フォームも骨盤が後ろに倒れかけた悪いものになっていたんです。

裸の王様じゃないけど、こうしたことってキャリアを重ねるほど気づきにくく、悪い癖が蓄積されてくるんですよね。自分ではすごくかっこいいフォームを取っているつもりでも、他の人から指摘してもらうとすごく歪んでたりとか。

だから、ここ2〜3年で治療院に通ったり、トレーナーに指導を受けたりと、一から体を直していきました。すると体の歪みが取れて、若い頃のように高い負荷に耐えられる体に戻ってきています。フォームも改善されて、しっかりと“腰が入る”ようになってきました。トレーニング内容は若い頃から変わっていないけど、自分の体を見つめ直すことで走りが改善されたんです。そして成績も戻ってきました。

大切なのは、自分の走りを客観的に見つめることだと思います。自分のフォームを動画を撮って確認したり、他のライダーに変な癖を指摘してもらうなどして、客観的に見て悪い部分を直していくことが重要です。自分が思っている自分の姿と実際の自分の姿って、全然違う。“裸の王様から脱却しよう”ということですね」。

 

筧さんのコンディショニング〜しっかり寝て食べる。サプリもうまく活用

トレーニングはコンディショニングとセットとなるが、気をつけていることは?

「まず、しっかり寝ることですね。週に最低1日は“今日は寝る日”と決めて、7時間〜8時間睡眠を取るようにしています。

次によく食べること。栄養管理をこと細かにやるわけじゃないですが、走った分しっかり食べるように気をつけています。また、食事の内容にもある程度気を遣っています。食事からきちんと栄養を摂るようにする、ということですね」。

スポーツサプリメントは使っている?

「過去スポンサーがついていろいろ試したことがあったんですが、どれも何とも実感ができませんでした。

で、今年はアミノバイタルⓇGOLDを試してみたんですが、正直これには驚きましたね。長距離でハードな練習をしたときにぜひ欲しくなる、買ってでも使いたいと思うサプリメントです。重要なレースがあるなら、その1週間前から1日2本ずつ飲んでいきたいところです(※)」。

アミノバイタルⓇGOLD

アミノバイタルゴールド

ロイシン高配合BCAAなど、必須アミノ酸4000mg配合の最先端スポーツサプリメント。顆粒タイプで携行に便利で、トレーニング後やレース後サッと取り出して飲みやすい。 ●参考価格/3124円(14本入箱・税抜)

 

「あくまで食事から栄養をきちんと摂るのが基本ですが、それでは補いきれない面をサプリメントで補助してあげるというのはアリだと思いますよ。全部食事からだと、意外と結構お金もかかりますし。スポーツサプリメントを併用する方がむしろ食費のコストパフォーマンスがよくなることもあります。

ただ、1本飲んだからといってすぐ何かが変わるわけじゃないというのが実感です。取り入れるなら、継続してしっかり飲んでいくことがポイントだと思います」。

※あくまで個人の感想であり、用法用量を指定するものではありません。

 

年代別で常にチャンピオンであり続けることが目標

最後に、今後の目標を聞いた。

「さすがに今の年齢で若い選手に勝つというのは難しいけど、シクロクロスでもロードレースでもいいから、年代別クラスでチャンピオンになり続けていきたいですね。今年なら、全日本マスターズ選手権を狙っていきたいかな」。

裸の王様にならず、自分の走りを客観的に見つめ直す。そんな筧さんの姿勢を見習っていきたいところだ。