【和歌山県】クマイチサイクリング&ウォーキングツアー(後編)
目次
2021年に自転車で熊野古道に並走するルートを一周する新たなサイクリングルートとして誕生した「クマイチ」。今回はその全長約230kmを実走するツアーに参加してきた。(後編)
主催:一般社団法人紀州くちくまの未来創造機構 上富田サイクルステーションKMICH(和歌山県西牟婁郡上富田町)
協力:日本航空、一般社団法人南紀ウエルネスツーリズム協議会
クマイチサイクリング&ウォーキングツアー(後半)
後半のスタートは前半のゴール地点、那智勝浦から。南紀白浜空港から紀伊勝浦駅までは直通バスで1時間50分で行くことができる。この日はツアーリーダーの瀬戸さんに空港まで迎えにきてもらい、車で那智勝浦のホテルへと向かった。
後半スタート前日の晩ごはんは絶対アレを食べると心に決めていた。
そう、前回のツアーで紀南(和歌山県南部)ではイルカを食べる習慣があると聞いていたのだ、しかも、おいしいと……。つぶらな瞳を想像したら、きっと食べれなくなるので、心を無にして食することにした。果たしてそのお味は…….。
<ツアー行程(後半)>
一日目:那智勝浦~JR宇久井(うくい)駅~神倉神社~熊野速玉大社~飛雪の滝キャンプ場~瀞峡めぐりの里 熊野川~川湯温泉
二日目:川湯温泉~世界遺産センター~路線バスで発心門王子~熊野古道(ウォーキングツアー)~湯の峰温泉
三日目:湯の峰温泉~三体月モニュメント~道の駅 熊野古道中辺路~高原~滝尻王子~ねむの木食堂~稲葉根(いなばね)王子・潜水橋~KMICH
新宮に入り熊野速玉大社の飛び地境内の摂社、神倉神社へと向かった。参拝はもちろんウォーキングだが、ただのウォーキングではなく、538段もの急峻な石段を登るという。思わず「聞いてないよ~」と言いたくなるような激坂だ。
前半に続き台湾から参加となるジュリーさんが次第に無口になっていたんで、話し掛けると「I don’t like walking」と笑いながら答えてくれたが、マジで辛そうだ……。
御一行は神倉神社からわずか1km先に位置する熊野三山の一つ「熊野速玉大社(世界遺産)」へと向かった。朱塗りの壮麗な社殿が何となく女性的な感じがしたが、ツアーリーダーの瀬戸さんから速玉大社はお父さんだと聞き、自分の感覚を恥じる(苦笑)。ちなみに那智大社がお母さんで本宮大社が子供だそう。
朝の海岸と打って変わり、午後からは熊野川沿いを走った。和歌山は「水の国」と呼ばれるだけあって、海だけでなく、清流にも恵まれたエリアだ。マリンブルーに映る川を眺めながら川湯温泉がある北西方面へと向かう。
熊野川沿いは車の交通量が多い和歌山側の国道168号を避け、対岸の三重県側を走ったのだが、車はほとんど走っていないどころか、グラベル(未舗装路)もあったりして、アドベンチャー感たっぷりの道だ。スポーツバイク初心者の女性陣もビビるどころか、めちゃくちゃ楽しいと言ってたくらい、楽しいルートだった。
そして、初日のゴール川湯温泉に無事投宿した。
この日の走行距離:那智勝浦~川湯温泉(54km)
ツアーのハイライト熊野古道を歩く(二日目)
この日はいよいよクマイチモニターツアーのハイライトとも言える「熊野古道」ウォーキング。海外からの参加者はもちろんのこと、筆者も初めての体験なので、期待に胸が高まる。
川湯温泉から5kmほどの和歌山県世界遺産センターまでeバイクで向かう。そこで古道ウォーキングに向かうまで、本宮語り部の会のガイドさんに熊野三山のレクチャーを受けた。歩く前に基礎知識を学ぶことで、より興味が湧いてくる。
その後、路線バスに15分ほど乗り、熊野古道ウォークの出発地点となる発心門王子(ほっしんもんおうじ)へと向かう(※自転車は世界遺産センターに止めて、バスで行くこと!)。
この日のウォーキングルートは、熊野本宮大社の神域の入口とされる発心門王子から熊野本宮大社とその旧社地大斎原(おおゆのはら)を目指す7km(2時間30分)のコースだ。
「伊勢へ七度(ななたび)、熊野へ三度(さんど)」と言われるほど、古から信仰心が深いとされる熊野を初めて参詣し、心身とも清められた御一行は宿泊先の湯の峰温泉まで4kmほどeバイクを走らせ投宿した。
<語り部と歩く熊野古道 問合せ>
・熊野本宮観光協会(TEL:0735-42-0735)
・新宮市観光協会(TEL:0735-22-2840)
・那智勝浦町観光案内所(TEL:0735-52-5311)
この日の走行距離:川湯温泉~湯の峰温泉(10km)
クマイチコンプリート!(最終日)
いよいよこのツアーも最終日を迎え、ゴールへと向かう。今日は湯の峰温泉→道の駅 熊野古道中辺路(なかへち)→高原→滝尻王子→ねむの木食堂→稲葉根王子・畑山橋(潜水橋)→KMICH上富田(ゴール)を目指す。
初日の川沿いライドから打って変わり、最終日は熊野の山々が織りなす美しい景色を眺めながらのライドとなった。ただ、山の中の道にしては、車の交通量が半端なく多かった。しかもダンプカーが多かったので、結構、恐怖を感じる区間があった。おそらく近隣で大きな工事をやっているのであろう。早く工事が終わることを祈りたい。
高原以降は下り基調で、清流富田川に沿って国道311号を走る。車も少なく、とても走りやすい。途中で滝尻王子に寄り、富田川沿いのほとりにある茅葺屋根の食堂へと向かった。いよいよこの旅のラスト飯だ。
前・後半計6日間に渡る「クマイチサイクリング&ウォーキングツアー(230km)」、熊野を一周して無事ゴール地点のKMICHに到着した。しかもサイクリングで一周しながら、同時に熊野三山詣もできてしまったのだ。
スポーツバイク初体験の参加者の皆さんが誰一人リタイヤすることなく、この長距離を走破できるeバイクの素晴らしさを改めて感じることができた。ふだんからスポーツバイクに乗っている人と、まったく乗ってない人が同じコンディションで、しかも楽しみながら移動できるeバイクって、最高のモビリティだと思う。
筆者も仕事柄、日本中を自転車で旅しているが、今回のルートは、前半は海、後半は川から山へと、日毎に変わる景色がとても新鮮で、まったく飽きることなく走ることができた。
また、サイクリングの合間に「エコツーリズム(地域の自然環境や文化・歴史を学ぶことを目的とした旅行)」や「サイクルトレイン」といった、従来のゴリゴリサイクリストの乗り方では到底味わえない体験をさせてもらった。
熊野古道をいつか行ってみたいという人は多いと思うが、陸の孤島と言われる紀伊半島ゆえに、熊野三山をどうつないでいくかを考えたとき、二次交通の手段として、eバイクを使ったこのツアーは非常に高いポテンシャルをもっていると思う。しかも環境にも健康にもいいし、体力を使うことで、食事もお酒もよりおいしくなるという、まさに三方よしと言えるのではないだろうか。
この日の走行距離:湯の峰温泉~KMICH(55km)
今回のツアー主催者のKMICHより、この記事を読んで、クマイチに興味を持っていただいた方に、参加の目安を聞いたので、以下参考にしてほしい。
・日常的に運動に親しみ、基礎体力がある方
・自転車に安全に乗れる方
・アウトドアウエアやシューズ、サイクリングパンツ、雨具、リュックなど装備を正しく整えられる方
・ロードバイクやMTBなどスポーツバイクに乗ったことがあるか、少なくとも日帰りのサイクリングイベントなどの参加経験がある方
・時速18〜20kmの自転車走行が可能な方
上記のチェック項目で2つ以上、不安を感じたなら、KMICHに気軽に相談してほしいとのこと。
備えがあれば、安心して旅ができる。熊野地方は全国でも有数の降雨地帯。吉野熊野国立公園や南紀熊野ジオパークなど、自然豊かな場所でもあるだけに、ぜひ準備を万全に自転車旅を楽しもう。
問合せ:KMICH(クミッチ)
※「クマイチ」は一般社団法人くちくまの未来創造機構の登録商標です。