ミシュランの自転車用タイヤはモトGPのテクノロジーをフィードバック!
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モーターサイクルレースにおける最高峰のシリーズ戦が「FIMロードレース世界選手権」だ。そのトップカテゴリーであるモトGPクラスに、公式サプライヤーとしてタイヤを供給している唯一のメーカーがミシュランであり、そこで培われた技術の一部は自転車用タイヤにも生かされている。9/29〜10/1に開催された日本グランプリでは、日本ミシュランタイヤのブースに初めて自転車用タイヤが展示されるなど、両ジャンルのリレーションをアピール。そこで、あたらめてミシュランの取り組みについて紹介しよう。
ミシュランの歴史は自転車用タイヤからスタートした
排気量1000cc、4ストローク自然吸気エンジンを搭載した競技専用マシンで争われるモトGPクラス。ストレートでの最高速は時速360kmをオーバーし、コーナリング中の最大バンク角は65度(!)に達するという、ライダーにとっても、またタイヤにとっても非常に過酷なカテゴリーだ。
そんなモトGPクラスに、2016年より公式サプライヤーとして全車両にタイヤを供給しているのがミシュランだ。この契約は2026年まで続くことが決まっている。
今では乗用車用やトラック・バス用、農業機械用、はたまた航空機用に至るまで、あらゆるジャンルのタイヤをラインナップしているミシュラン。このフランスを代表するタイヤメーカーの設立は1889年であり、近代的なタイヤとして最初に開発したのが実は自転車用だったのだ。シャルル・テロン選手は、容易に取り外し可能なミシュラン製タイヤを装着した自転車で、ロードレース「パリ〜ブレスト〜パリ」に出場。2位の選手に8時間以上もの大差を付けて優勝しており、この瞬間にミシュランの偉大な歴史がスタートしたといっても過言ではない。
モーターサイクル用と自転車用は同じ事業部にある
現在、ミシュランのフランス本社にはいくつかの事業部があり、モーターサイクルと自転車の両部門が同じ事業部に属しているという。そのため、非常に近い距離でテクノロジーを融通しあえる点が、他メーカーにはない大きなアドバンテージと言えるだろう。例えば2022年5月に発売されたロードバイク用の最新ハイエンドタイヤ「パワーカップ」シリーズは、モトGPテクノロジーから派生したコンパウンドが採用されている。これは変形率を抑えることで転がり抵抗を低くしたもので、優れたドライグリップも発揮するのが特徴だ。
モトGPに限らず、F1やWRC、WEC、スーパーGTなど、世界中のモータースポーツへ積極的に関わってきたミシュラン。その理由の一つが「速さと安全性の研究を加速させる」ためであり、過酷な現場で培われたテクノロジーを、ジャンルを超えて共有できるのがこのメーカーの最大の強みと言えるだろう。
なお、ミシュランは電動レーシングバイクで争われるレース「FIM MotoE 世界選手権」も公式サプライヤーとしてタイヤを供給している。搭載されているモーターの最高出力は約150ps、最高速は時速275kmに達する。このクラスでは、ミシュランは持続可能な材料を用いるという新たな取り組みを行っており、最新のリヤタイヤは50%がバイオ素材や再生素材が使われているという。つまり、サステナブルな面でも世界をリードしているのだ。
日本グランプリのブースでは自転車用タイヤを初展示
9/29〜10/1、栃木県芳賀郡茂木町にあるモビリティリゾートもてぎで開催された日本グランプリ。中央エントランスに設けられた日本ミシュランタイヤのブースには、モーターサイクル用や4輪用に混じって、自転車用のタイヤも展示されていた。これは初の試みだという。
「モトGPという世界的なイベントですので、来場者の多くがモーターサイクルに乗っている、もしくは興味がある人ばかりですが、普段は乗用車にお乗りだったりとか、もしかするとスポーツバイシクルも趣味だという方もおられるでしょう。そういった方々に向けて、ミシュランにはさまざまな製品があるということをアピールしたく、今回の展示を決めました。我が社には「シェア・オブ・モビリティ」という考え方がありまして、さまざまなライフスタイルに寄り添えるのが強みだと思っています。ですので、今回はミシュランガイドも展示したんです」と、答えてくれたのは、日本ミシュランタイヤの二輪事業部マーケティングマネージャーの山田寿一さん。
ブースでは、元GPライダーによるトークショーとサイン会が土曜と日曜に行われ、整理券がすぐになくなってしまうなど大いに盛り上がった。また、ミシュランのイメージキャラクターであるミシュランマンが登場するたびに、写真を撮ろうとする人が押し寄せるという事態に。元祖ゆるキャラ強しといった印象だ。