自転車に青切符は導入される? 自転車議連の総会が開催
超党派の国会議員でつくる自転車活用推進議員連盟の総会が、2023年11月29日、参議院議員会館で開かれた。自転車の交通違反に対するいわゆる青切符の導入を含む道路交通法改正の動きなどが議題として取り上げられた。
総会ではまず、警察庁の太刀川浩一交通局長が、自転車の安全利用に関する有識者検討会の検討状況について説明を行った。
特に、自転車の交通違反に対して、反則金を納付させる青切符を導入しようとしている点については、手続きの簡素化を理由に挙げた。現在は、自転車の交通違反には指導警告を原則とし、警告に従わないなどの悪質、危険なケースに限って取締りを行っているという。例えば、信号無視を警察官が現認したとしてもそこで検挙はせず指導警告し、赤信号なので停まれと警察官が注意しているにも関わらずあえて突っ込んでしまうような場合に限って取締りを行う。また、この指導取締りは全ての場所ではなく、自転車の交通事故が多い場所で行っている。そして、検挙された、刑事手続の対象となった場合には、いわゆる赤切符によって処理され、現場でさまざまな書類を作り、40分から50分ほどの時間が掛かり、その後改めて警察や検察庁に出頭することが求められる。このような負担に対して、青切符制度では、簡略な書類を現場で10分から20分ほど掛けて作成すれば済み、その後反則金を納付すれば手続きが終結するので、「警察も違反者も共に負担が軽減できて、その分を本人に対する安全指導に費やすことができるのではないかと考えている」と太刀川局長は話した。さらに、青切符を導入したとしても、現在の警察の指導取締りの方針は変えず、指導警告を原則として、自転車の交通事故が多い場所に限って実施するという。
なお、青切符の導入は、自転車活用推進法附則3条1項(「政府は、自転車の運転に関し道路交通法に違反する行為への対応の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」)に対応する。
この説明に対して、自転車活用推進議員連盟のPT座長を務める自民党の岩屋毅元防衛大臣は、個人的な意見として、「これから自転車を利活用していこうというときに、自転車の取り締まりが強化されるかのようなアナウンスがあっては、この利活用の空気に冷水を浴びせかねない」と、青切符の導入について懸念を示した。
その理由として、第一に、交通事故全体に占める自転車事故の割合は微増しているが、自転車が関連する事故、自転車が関連する死者、重傷者が2004年と比べて2022年は減っており、交通事故全体、その死者の数も減ってきている。第二に、事故の処理の時間が短くて済む点は、むしろ交通違反への抑止力を減退させると考えられる。第三に、自転車利用者が萎縮するようなメッセージを出すことは、政府の方針と齟齬をきたす恐れがあると話した。
そして、自転車は免許制ではないので、道路交通法を知っているとは限らない自転車利用者に対して青切符を切って反則金を取ることが適切なのかどうかを考える必要があり、自転車に優しい道路環境の整備や、クルマの側の自転車に対する配慮義務違反を法令として強化すべきだと強調した。
自転車の安全利用に関する有識者検討会では、2023年12月5日に中間とりまとめを行い、2024年1月下旬に最終報告を予定している。
総会ではこのほか、広島県尾道市の平谷祐宏市長からeバイクのアシスト比率の規制緩和の要望や、欧州サイクリスト連盟が主催する世界最大級の自転車国際会議「ヴェロシティ」についての報告があった。
最後に、自転車活用推進議員連盟の会長である自民党の二階俊博元幹事長が、
「思い切って来年度の予算で、目を見張るようなことをやってみよう。自転車道路の予算がどの程度あるかというのは文化のバロメーターだ。国会が、本気で交通事故をなくすためにも国民の健康のためにも、自転車道路をどうするかということをもう1回考え直して、いつも自転車道路とテキトーに言ってテキトーに進んでいるが、そうではなく、思い切って。ヨーロッパあたりの自転車先進国は、自転車道路にどれくらいの予算を注いで、どの程度の整備をやっているか、それに比べて我が国はどうなんだと、政治の、その地域のトップリーダーに認識をさせなきゃいけない」
と話し、総会を締め括った。