プロ自転車選手に聞くチェーンオイル使い分け術
目次
ロードバイク、マウンテンバイク(MTB)などのスポーツ自転車ではドライブトレイン、特にチェーンの潤滑が重要となる。しかしチェーンオイル(チェーンルブとも言う)にはいろいろな種類があり、気になるのはプロ自転車選手はそれをどう使い分けているのか? ということだ。今回はプロMTBライダーの池田祐樹選手にそのノウハウを教えてもらおう。
自分のライド特性に合ったものを使うことが重要
「基本的にはトレーニングでもレースでも一緒で、これと決めた一本を使い続けています」と池田選手。“使い分け術”というテーマながら、いきなり予想外の答えがきた。
「ふだん使っているのは、フィニッシュラインの『セラミック ウェット チェーン ルーブ』です。これはウェット系のルブで耐久性が高いのですが、それでいて汚れがつきにくいんです」。
「チェーンルブは、大きく分けてドライ系とウェット系の2つがあります。
ドライ系は雨が降っていない、乾燥していてコンディションの良いときに使うと良いタイプで、抵抗が少なく汚れもつきにくいですが、耐久性ではウェットタイプに劣ります。また、注油頻度を高くすることもポイントとなります。
ウェット系は、長距離や降雨・泥がある状況でも効果が切れにくく耐久力のあるタイプですが、ドライタイプに比べれば抵抗が上がります。また、汚れもドライに比べるとつきやすい性格があります。
私は、MTBかつ長距離という競技特性からウェットタイプを選んでいますが、その中でも汚れがつきにくいことを重視するので、セラミック ウェット チェーン ルーブが重宝しているわけです。
現代では、このように高耐久で汚れがつきにくいウェット系といったように、非常に高性能なルブが登場しているので、これと決めた、自分に合ったものを基本的に使い続けるのが良いというわけです」。
なるほど。では、そんな中でも別のタイプを使うシーンはあるのだろうか?
「あります。例えば、以前アメリカのコロラド州でのレースに参加したことがあるのですが、そこはものすごい乾燥している土地だったんです。そのときは、MTBとはいえフィニッシュラインの『ドライ バイク ルブリカント』(下の項目で詳しく紹介)を使いました。
また、冬季で特に低温になるときは、あえてノーマルなウェットタイプの『ウェット バイク ルブリカント』(下の項目で詳しく紹介)を選ぶこともあります。ドライタイプのようにさらりとしたタイプはどうしても低温だと固まってしまいやすく、チェーンに浸透しにくくなることがありますが、オーソドックスなウェットタイプは低温でも安定していてチェーンに浸透しやすいんです。
と、基本的にはこれと決めた1本で良いのですが、状況によっては、それ以外のものを選択するのも賢いと思います」。
注油だけでなく洗浄も非常に重要! 他に気をつけるべきポイントも
「チェーンに注油することにばかり目が行きがちですが、その洗浄もかなり重要です。どんなに高性能で優れたチェーンルブでも、チェーンが汚れた状態で重ね塗りしてしまうと、その真価を発揮することはできないからです。
ですから、頻繁にチェーン、そしてそれを含むドライブトレインまわりの洗浄をする必要があります。私は車体の洗車よりもこちらを優先しています。また、自転車の中でも摩耗しやすい部品でもあるので、そういう意味でも洗浄が大事です。これでドライブトレインまわりの寿命がかなり伸びますから。
ふだん私がチェーン洗浄で使っているのは、フィニッシュラインの『プロ チェーン クリーナー キット』です。ブラシを使うよりもチェーン内部の隙間までしっかりと洗浄することができて、欠かせないアイテムの一つとなっています」。
他に気をつけるべきことは?
「ルブを塗布する前に、よく振ることですね。これ、意外と皆さん忘れがちですが、すごく重要です。しっかりと成分を撹拌(かくはん)してあげることも、ルブの性能を100%発揮させるためには必須です」。
実戦経験豊富なプロの意見。ぜひ皆さんも参考にしてみてほしい。
池田選手も使うフィニッシュラインのおすすめチェーンルブ
セラミック ウェット チェーン ルーブ
ウェットタイプのチェーンルブで、優れた耐久性と潤滑性能を発揮する。その一方でドライブトレインの表面にセラミックコーティングを構築するので汚れがつきにくく、高い静粛性を発揮するのも大きな特徴だ。
ドライ バイク ルブリカント
オンロードとオフロードどちらにも適しているドライルーブ。ホコリや砂などの汚れが付着しにくく、ドライコンディションのみならずさまざまな条件下で優れた潤滑性を発揮する。ディレーラーや変速レバーの可動部、ケーブル類にも使用できる。
ウェット バイク ルブリカント
定番的ウェットタイプのルブリカント(潤滑剤のこと)。強力な耐久性を持ち、160kmを超える長距離ライドや豪雨、激しいマッドコンディションなど、厳しい環境下でも高い潤滑性を発揮する。防水性が高いのも特徴の一つ。「多くの国で販売されているので、海外遠征のときに現地で手に入って助かった経験があります」とは池田選手の談。
セラミック ワックス チェーンルーブ
種類としてはドライタイプに分類されるが、ワックスをベースとしたチェーンルブ。塗布後すぐにドライになり、塗布面にセラミックコーティングを構築する。ウェット感や粘りを残さないのが大きな特徴だ。「ドライコンディションかつ短時間のレースで力になります」と池田選手。
フィニッシュライン その他のおすすめアイテム
プロ チェーン クリーナー キット
ディグリーザーを流し込んでチェーンにセットし、ぐるぐるとクランクを回転させるだけでみるみる汚れが落とせるチェーンクリーナー。3つの回転ブラシと2つのパッドで、内部のすみずみまで汚れを残さず除去することができる。「エコテック バイク チェーン ディグリーザー」(120ml)1本と「ドライ バイク ルブリカント」(60ml)1本が付属している。
ディスクブレーキ クリーナー
ディスクブレーキローターとブレーキパッドに直接噴出して汚れを落とせるディグリーザー。樹脂やゴムへの攻撃性が低いので、レジンパッドへも安心して使える。「使う前は、本当にディスクブレーキまわりにディグリーザーを直接使って大丈夫なの!? と思っていましたが、使ってみるとそんな心配はどこへやら。きれいになるうえ、不快な音鳴りも消してくれます」と池田選手。
プレミアム テフロン グリス
多くの自転車メーカーやプロチームに選ばれ続ける、高品質で耐久性の高い合成グリス。ベアリング部に使用することで皮膜を形成し、摩耗やゆがみを防いでくれる。また、シートポストやネジ山への使用にも適している。
ファイバーリンク チューブレス シーラント
ケブラーと天然ラテックスを使用したタイヤシーラント。気密性の保持力が高く、スピーディなパンクシールを形成してくれるのが特徴。最大8mm程度の刺し傷をふさいでくれる。「これは第2世代に当たる製品ですが、前作よりも確実にパンク穴の修復能力が上がっていると実感しており、常に3本くらいはストックしています」と池田選手。