乗鞍ヒルクライム女子2連覇中・佐野歩の強さに迫る〜私のトレーニング履歴書
目次
自転車レースで活躍する有名レーサーたちは一体どんなトレーニングをしているのか? 彼・彼女らの“トレーニング履歴書”に迫る特集をお届けしよう。今回は「乗鞍ヒルクライム」女子カテゴリーを2連覇中の佐野 歩(さの あゆみ)さんだ。
師匠の兼松大和さんの影響でヒルクライムレースの世界に
佐野 歩さんは1994年生まれで、大阪府出身・大阪府在住。ふだんは医療福祉施設に勤務をしている。いわゆるホビーレーサーだ。
ロードバイクに乗り始めたきっかけは、大学4年生のときに通学用として購入したこと。そして自転車で通える範囲の職場で、かつ自転車に理解のあるところ、ということで就職したのが、あの有名な市民自転車レーサーの兼松大和さんが施設長を務める医療福祉施設だったのだ。
その職場では兼松さん率いる“ガチ”な自転車チームがあり、一緒に走るうちにどんどん自転車レースの世界にはまっていった。
「2017年に兼松さんがMt.富士ヒルクライムで優勝した姿を見て、私も挑戦してみたい、と思って本格的にトレーニングを始めました」と佐野さん。
そこから実力をつけ、2022年〜2023年のMt.富士ヒルクライム・主催者選抜女子を2連覇、そして同年の乗鞍ヒルクライム・一般女子を2連覇! 市民ヒルクライムレースの2大タイトルの両方を2連覇するという偉業を成し遂げている。
佐野さんの身体的スペック〜小柄で体重が軽い
「体は硬い方です。脚質は完全にクライマーですね。以前はロードレースとシクロクロスにも出ていましたが、2023年からはヒルクライムレースに出場を絞っています」と佐野さん。確かに、小柄で絶対的な体重も軽いので、まさにヒルクライマー体型だ。
●身長:156cm
●体重:40〜42kg
●FTP:近年は計測していない
佐野さんの走り〜上りはシッティング&ハイケイデンスで
「平地ではあまり前傾は深くしないタイプだと思いますが、エアロフォームを取るときはブラケットが多いです」と佐野さん。
上りではシッティングでかなりケイデンスを高めて走るのが印象的。「上りはほぼシッティングで、ケイデンス高めが楽なので、それが自分のスタイルです。
レースでアタックがかかったときでもシッティングで対応します。ダンシングするのは、トレーニングでだらだら走っていて、勾配がきつくてしんどいな、というときくらいですね」。
佐野さんの機材選び〜軽さと体格に合ったパーツを重視
「軽さにはこだわっていて、自転車を含めて軽量パーツてんこもりです。あとは短いクランク長で軸長の短いペダルなど、体格に合わせたセッティングをしています。
それ以外は特にこだわりはありません。通勤もこの自転車で行っているので、いつ雨が降ってもいいようにレース以外はトレーニングも含めて常にドロヨケを装着しています。
ホイールは、ふだん履きとしてマヴィック・キシリウムプロUSTの1本しか持っていません。レース本番のときは、ライトウェイト・マイレンシュタイン オーバーマイヤーを使います」と佐野さん。まさにヒルクライム用と言える自転車だ。
そして、通勤を含めてガンガン乗っているのがよくわかる、使い込まれた状態なのが印象的。雨の中でも乗るのでチェーンの消耗が激しく、やや錆びて伸びているようだが、いつもレース直前になったら交換するほど、限界まで使い込むそうだ。
佐野さんのトレーニング〜強さの秘けつは師匠の指導
「時期によって内容を変えていて、全然外で走らないときもあります。通勤は雨でも自転車で行っていて往復16km程度ですが、これは通勤と割り切っていて、トレーニングとしての走りはしません」と佐野さん。1年の流れは以下のとおり。
●1月〜2月:
外は寒いので基本的にインドアトレーナー。休日に4時間程度、淡々と一定ペースで脚を止めないように回す。平日にも時折1時間程度乗る
●3月〜4月:
実走を取り入れ始め、ホームコースにある長い上りをメインで走る。例えば「金剛山を2本上る」など、パワーというよりも本数を上る観点で走る。平日は出勤前の早朝か仕事終わりで上り坂へ走りに行く。休日は1日トータルで4時間程度乗る
●5月〜6月:
Mt.富士ヒルクライムを目標としたレースシーズン。上りでのインターバルトレーニングを行い、決めたパワーを一定時間維持して走る
●7月〜8月:
乗鞍ヒルクライムへ向けたレースシーズン。ここから兼松さんによる指導が入る。1人で行うメニューと兼松さんと一緒に走るメニューの2つを与えられる。1人で行うメニューは指定のパワーを中時間維持して走るインターバルが中心。兼松さんと一緒に走るメニューは短時間のインターバルが中心。15秒程度のスプリントに近いものから1分程度の短時間高強度を、レストを挟みつつ延々と長い上り坂の麓から頂上まで繰り返す内容
●9月〜12月:
完全にシーズンオフで、通勤以外は全然乗らない
かなりメリハリのある内容だ。「2023年は、特に兼松さんとこなすトレーニングを一生懸命やりました。それが乗鞍2連覇の結果につながったんだと思います」。一緒に走って指導してくれるコーチの存在が、彼女の強さの秘けつなのだろう。
ちなみに、年明けから春までに行うという4時間程度のインドアトレーニングは、スマートトレーナーでZwiftをプレイするといったわけでなはく、いわゆる「ローラー台」で行い、しかもビデオ鑑賞しながらといったわけでもなく、ひたすらペダルを回し続けるそうだ。驚きの精神力。これも強さの秘けつか。
なお、2024年3月現在は筋トレも取り入れている。
佐野さんのコンディショニング〜あくまで趣味なのでシビアになりすぎないように。でも気はつかっている
「コンディショニングと言えるのかは分かりませんが、レモンティーが大好きで、よく飲みます。これは結構、自分の中では大事なことなんです。
と、それはさておき、なるべく内容には気をつかってはいますが、食事は基本的に食べたいものを食べたいように食べています。“マクド”も普通に行きますし、ハンバーガーにアップルパイも食べちゃいます(笑)。ただ、揚げ物を避けて、塩分を摂りすぎないようにはしていますね。
睡眠・休息はしっかりとるよう心がけています。最低7〜8時間は寝ていて、朝練する時期は9時台には就寝します。
あくまで自転車レースは趣味なので、シビアにやりすぎないようにしています。じゃないと気が滅入って楽しくなくですから。
ただ栄養については、なるべく食事から必要な分をまかなうようにはしていますが、それも難しいことがあるので、最近はアミノバイタル®シリーズを飲み始めました。スポーツサプリメントは苦いものが多くて苦手なんですが、そんな私でも飲みやすいものが多いと感じています」。
「一般のサイクリストの方は、って私も一般のサイクリストですが(笑)、なかなか通常の食事だけで栄養を全てまかなうのは難しいと思うので、こういうサプリメントを使ってみるのも手だと思います」。
アミノバイタル®シリーズの製品をピックアップ
スポーツ時に大切な、体では作ることのできない9種類の必須アミノ酸にグルタミン・シスチンを加えた11種類のアミノ酸3800mgが、口どけの良い顆粒状で飲みやすく摂取できるスポーツサプリメント。運動前・運動中の摂取がおすすめだ。
ロイシン高配合BCAAなど、必須アミノ酸4000mgを摂取できるスポーツサプリメント。使いやすいスティックに入った顆粒タイプで、水と一緒にさっと飲むことができる。運動後の摂取がおすすめだ。
「アミノバイタル®アミノショット®」パーフェクトエネルギー®
持続性エネルギー源アミノ酸2500mgと糖質を配合した小容量ゼリー。携帯性に優れるうえ片手で開封できるので、自転車スポーツにおける補給食として最適だ。運動前、運動中の摂取がおすすめ。
水に溶かすとハイポトニック飲料になるスポーツサプリメントで、アミノ酸1500mgと運動時に不足しがちなその他の栄養素を水分補給しながら摂取することができるアイテム。運動中でも飲みやすい、すっきりとしたグレープフルーツ味だ。運動中に飲むのがおすすめだ。
いつまでも自転車は楽しみたい
「2024シーズンは、ちょっとプライベートで忙しいことがあり、どうなるかなぁ……」え!?
そういえば、2022年に乗鞍ヒルクライムで初優勝しポディウムに立ったときにも彼女へインタビューしたのだが、「2連覇を目指しますか」と聞くと「いや、今回でもうレースは終わりかなと思ってます」と答えていた。そして結局、2023年は圧倒的強さで連覇を達成していた。なので、これは彼女なりの謙遜も含めた意気込みなのかもしれない。
「自転車はいつまでも続けていきたいと思っています。2023年に静岡である自転車イベントがあって、そのときにいろいろな女性サイクリストの方々に自分が今まで取り組んできたことを伝える機会があったんです。そのとき、それがすごく参考になって良かったって、言ってもらえたんです。
それがきっかけで、もっと多くの女性に自転車の楽しさを伝えて、もっと女性の自転車競技人口を増やせるような活動もやっていきたいと最近は思ってるんですよ。そうしたらよりレース自体が盛り上がって楽しくなると思うんですよね」。
ある程度実績とキャリアを積み、次なるビジョンも見え始めている佐野さん。富士ヒル&乗鞍ダブル3連覇なるか!? 注目したい。