瀬戸内地域やその周辺地域を世界に誇るサイクリングの推進エリアとするため、地方自治体、国、経済連合会等で構成するSetouchi Vélo協議会 5回目のミーティングが鳥取県の境港市・米子市で行われた。
開催日:2024年4月25日(木)
会場:夢みなとタワー(境港市)、米子市観光センター(米子市)
主催:Setouchi Vélo協議会
海の上に浮かび上がる大山を拝みながらサイクリング
ミーティングに先立ち、恒例のトライアルライドを実施。この日は米子空港からほど近い境港市から米子市皆生(かいけ)温泉まで整備された「白浜青松の弓ヶ浜サイクリングコース(15km)」を走った。今回もeバイク初体験の方が多く、ライド前のブリーフィングで、正しいヘルメットの被り方、eバイクの乗降、止まり方、変速ハンドサイン等のレクチャーを受け、出発した。
オージーケーカブトの広報柿山さんより、指の1、2、3を使った、とても分かりやすいヘルメットの被り方をレクチャー
トライアルライドのブリーフィングではサイクリングガイド有資格者が、eバイクの乗り降り、止まり方、変速、ハンドサイン等をレクチャーし、周辺を試走した後、5名ずつ6班に分かれてスタート
海の上に浮かんで見える、標高1729mの大山(だいせん)をバックに恒例のSetouchi Véloポーズで記念撮影。青い海と空にSetouchi Véloジャージがよく映える
米子空港に着陸する飛行機と一緒に写真を撮ることもできるスポット
この景色を眺めながらのサイクリングは格別だ
エイドステーションでは、水道水がおいしい都道府県で上位にランキングされる「よなごの水」と「白ウサギフィナンシェ」がふるまわれた
車が入ってこれない自歩道なので走りやすいが、クルマの横断箇所に設けられている注意喚起のセンターポールの多さが気になった
瀬戸内の垣根を超え、どんどん広がりつつある「Setouchi Vélo」
昨年、同協議会3回目のミーティングが開催された高知県いの町は太平洋にほど近く、今回開催地の鳥取県米子市は、日本海に面している。協議会名になっている、瀬戸内の垣根を越え、どんどん広域でつながってきているのが、このSetouchi Vélo協議会の特色とも言えよう。
開催地の伊木隆司米子市長は、冒頭の挨拶で「Setouchi Vélo協議会のミーティングを米子市で開催していただき感謝します。先ほどトライアルライドで走っていただいた弓ヶ浜サイクリングコースは、休日になると多くのサイクリストや、若いファミリー層にも楽しんでもらっています。また、境港に寄港するクルーズ客船の乗客の一つの見どころとなっている弓なりの半島と、その付け根にある大山の景色を楽しみながらサイクリングできるのも魅力の一つです。今日は、自転車の先進地である、皆さんのお話を聞いて勉強させてください」と語った
事務局を代表して、本四高速 取締役常務執行役員 森田真弘氏が、昨年10月に加盟いただき、早期のミーティング実施にご尽力いただいた鳥取県へのお礼と、今年の4月に開設したサイクリストをサポートする「Setouchi Véloスポット」の紹介、さらに11月には広島県でSetouchi Vélo協議会の総会を予定していると報告をした
基調講演「世界の広域連携」
プロサイクリストの(株)コイデル 代表取締役門田 基志氏による基調講演では、 台湾やヨーロッパの広域連携の具体的事例を映像を流しながら発表した。
映像では、走行レーンや標識等、県境や国境を越えても走る環境が共通しているので、走りやすいことがよく分かる。今日走った弓ヶ浜の自転車歩行者道もポールが非常に多くて、正直危険を感じた人もいたと思う。海外では歩行者と自転車の間に段差を設けるなどして分かりやすく、且つルールやマナーが徹底されているので、安心して走行できる。また、サイクリストだけでなく、家族も楽しんでいるのが特徴的だ。
Setouchi Véloでは、広域連携で意識の造成も含め、エリア全体で同じマナー、同じ走行環境を作れることを目指していきたい
基調講演「自転車先進県、愛媛のこれまでとこれから」
愛媛県の自転車新文化の普及に10年以上携わってきた、愛媛県 東京事務所 所長の河上芳一氏による基調講演では、 2010年に中村知事が「しまなみ海道のサイクリストの聖地化」を目指したのを皮切りに、日本初の高速道路を止めたサイクリングイベント「サイクリングしまなみ」実施に向けた秘話、自転車新文化推進室設立、自転車活用推進法、NCR指定秘話等を自転車施策担当者としての苦悩をユーモアを交えて語った。
さらに現在の愛媛県の自転車新文化推進計画は、第2フェーズに入っており、世界の自転車先進国から新たな気づきを得るために、自転車の国際会議の誘致に動いている、と語った
開催地発表①では、鳥取県商工会連合会西部商工会産学支援センター 前畑裕志所長より、人口減少という大きな課題に危機感をいだき、「域外」という販路を獲得することを目標として、サイクルツーリズム推進に目を向けることとなった。そのブランド事業として、「大山時間(テーマ:悠久的な時の流れを味わう旅)」のブランディング事業を令和元年からスタートし、国内外のサイクリストの誘客を目指し、現在、周囲の巻き込み、研修会、サイクリングガイド育成等の受け入れ体制作りを行なっている
開催地発表②では、鳥取県 サイクルツーリズム振興監 鈴木俊一氏より、愛媛県に遅れること7年、鳥取県にもサイクルツーリズム振興室ができた。自身、ロード、MTB、ミニヴェロの3台所有していて、自転車を楽しんでいる。県内はコンパクトな地形の中に、海岸線を152km走る「鳥取うみなみロード」をはじめ、大山のヒルクライムルート他、変化に富んだ10ルートを整備した。さらにサイクリングガイド育成やサイクリスト向けサービス等、ハードとソフトの両面から整備を行なっているが、住民からは、矢羽根の標識が理解されていなかったりしており、まだまだ機運情勢、地域理解が大切だと考えている
パネルディスカッションは「鳥取県における自転車活用の未来」
先ずはNCR指定を目指す鳥取県に向けて、パネリストによる辛辣な意見交換が行われた。世界を見渡せば、サイクリストだけを呼んでいる観光地はあまりなく、家族旅行で行った先で、レンタルバイクを楽しめるエリアが多い。また、NCR指定がゴールではなく、ソフト・ハード面を備え、観光も楽しめる、そして地域理解を得た世界に誇れるサイクリングルートの環境を作っていくことが大切である。
鳥取県としては、サイクリストに限らず、来県されたお客様に対し、受け入れ態勢、案内できる力があるので、県全体としてウエルカム感を出していきたい。
さらにはサイクリングガイド育成のポイントとして、事故ゼロを目指す、地域の歴史や文化を伝えられる語り部を育てる、といった意見もあった。
最後にSetouchi Vélo協議会として9県がやるべきことについて話し合った。
サイクリストにとって県境はまったく関係なく、来たひと誰もが楽しめる環境作り、そして、そこの住民も一緒に自転車を楽しめるエリアとなるよう、全体として、面でやっていくことが大切だというまとめで、パネルディスカッション終了となった。
コーディネーターにプロサイクリストの(株)コイデル 代表取締役門田 基志氏、パネリストは鳥取県 サイクルツーリズム振興監 鈴木俊一氏、愛媛県 東京事務所 所長 河上芳一氏、サイクルスポーツ編集部迫田、バイシクルクラブ山口編集長(写真左から)
構成団体(順不同)
兵庫県、岡山県、広島県、山口県、鳥取県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、近畿地方整備局、中国地方整備局、四国地方整備局、近畿運輸局、神戸運輸監理部、中国運輸局、四国運輸局、(一社)中国経済連合会、四国経済連合会、中国経済産業局、四国経済産業局、(一社)せとうち観光推進機構、(一社)四国ツーリズム創造機構、本州四国連絡高速道路(株)
Setouchi Vélo HP