世界最強チームが使う謎のロードバイク用カーボンホイールを試してみた
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群雄割拠のロードバイクホイールにおいて新興ブランドでありながら、ユンボ・ヴィスマの3大グランツール制覇を支えた存在として、にわかに注目されているホイールブランドがアメリカの「Reserve Wheels(リザーブホイール)」だ。今回はリムハイトの異なる3モデルを2人のライダーが乗り比べて、リザーブホイールの走りの特徴と各モデルの魅力を体感した。
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Reserve Wheels / リザーブホイール 主要3モデルの特徴
リザーブホイールはMTBのトップブランド「サンタクルズ」が持つ優れたカーボン技術を駆使して、2014年にMTBホイールを発表。2019年末にはサーヴェロとともにロードバイクホイールの開発に着手する。
ロードバイクの空力におけるパイオニアであるサーヴェロのノウハウを基に、空力設計の常識であるCFD解析に頼りすぎず、実走時に最も空気抵抗の差が生じやすい乱流に照準を合わせて、実走によるテストも繰り返すことにより製品は開発されている。
その結果として、独自設計のカーボンリムは前後で異なるエアロ形状を採用。前輪は高さを抑えて横風の影響を最小限にし、幅を広くとることで空気の流れを良くしてエアロ効果を高めた。一方の後輪はハイトを高めて空気抵抗を削減し、リム幅を抑えて強度と剛性を増している。こうして空力と安定性、軽量化、強度・剛性というホイールに求められる総合的な性能を高レベルで最適化している。
さらに走行シーンに合わせて、リムハイトの異なる「34 | 37」、「40 | 44」、「52 | 63」などのモデルを展開。こうした緻密な設計から生まれたリザーブの製品は、2023年にユンボ・ヴィズマの“ジロ”“ツール”“ブエルタ”の3大グランツール制覇を支え、その優秀性を世界のロードバイカー達に示している。
34 | 37
リムハイトを前輪34mm、後輪37mmとして、シリーズ中で最も軽量な1354g(DTスイス・240ハブ仕様のカタログ値)を実現。俊敏なハンドリングと軽快な走りでロードライディング全般、ヒルクライムに適した性能を示す。ハブは品質・性能に定評のあるDTスイス製(試乗モデルは240仕様)。前後ともに24本のスポークで組まれ、そのパターンは前後左右ともにクロス仕様という、オーソドックスな構造で作られる(各モデル共通)。
40 | 44
リザーブロードホイールの中でも最も汎用性に富んだモデル。前輪に40mm、後輪に44mmのリムを採用して、前後セットで1445g(DTスイス・240ハブ仕様カタログ値)を実現している。優れたエアロ性能、高い剛性、そして快適性が高度にバランスされており、ロードレースやロングライドにおいてライダーに効率的な走りと速さを与えるのはもちろんのこと、優れた快適性と剛性はシクロクロスやグラベルライドにも最適な性能を持つという。
52 | 63
実在の風の状態を再現する独自の風洞技術「タービュレント・エアロ・テクノロー」と実世界の空力を高度に融合させることで、シリーズ最高レベルのエアロ性能を獲得。他モデル同様、前後で異なるリムハイトを採用。前輪は52mm、後輪は63mmとして、平地の逃げやスプリント、トライアスロンなど、高速なライドが続く状況で最高の速さをライダーに与えてくれる。重量は前後セットで1606g(DTスイス・240ハブ仕様のカタログ値)。
インプレッション〜軽い、滑らか、快適の3拍子がそろう高性能
CS:お二人は昨年サイクルスポーツ誌のホイールインプレッション企画でリザーブの「40 | 44」を試乗し、その高性能に驚いたということで、今回、改めて3つのモデルを試乗してもらいました。まず、リザーブホイールの全体的な印象はいかがでしたか?
小西:どのモデルもライダーのパワーを逃がさず、推進力がとても高く、走りの軽さも印象的でした。
吉本:汎用的なDTスイスのハブを使って、スポークパターンはタンジェント組、ビードフック付きのリムというオーソドックスな構造ですが、走りのレベルは総じてとても高いです。ひと言で表すなら“軽い”“滑らか”“快適”です。
CS:3拍子そろっているというわけですね。
小西:見た目は何の変哲もないホイールなんですけどね……。
吉本:それぞれが得意とする分野を持ちながらも、弱点は見られず、とてもバランスのいいホイールたちだと感じました。
【34 | 37】際立つ軽快さと推進力の絶妙なバランス
CS:なるほど。では個別のモデルについての印象ですが、まずはリムハイトが一番低い「34 | 37」についてです。
吉本:端的に言って、走りの軽さが際立っています。
小西:3つの中で最も軽快です。重量の軽さがそのまま走りの軽さにつながるので、ストップ&ゴーを繰り返すような走り方に向いています。常にパワーを補足しながら速度を維持するようなヒルクライムやクリテリウムには良いでしょうね。
吉本:軽量なホイールはトルクが抜けるような感覚があるのですが、「34 | 37」にはそれがありません。小西さんが “推進力が高い”とおっしゃっているとおりで、バイクを後ろから押してくれるようなトルク感があります。だからこのリムハイトにしては巡航性能が優れていますし、平地でも無駄な脚力を使わずに済みます。あくまで想像ですが、タンジェント組のスポークがペダリングトルクをしっかり受け止めて、路面を強く蹴るようなフィーリングを出しているような気がします。
小西:剛性感も高すぎないので、脚当たりは良いですね。乗り心地も良く、ハンドリングも素直なので、レースをしないサイクリストの方は、ライドシーンを問わず使えるでしょう。軽さは際立っていますが、トータルバランスも良いですね。
吉本:それに、乗り味が滑らかで上品なのが良いですね。走りは軽いのに、路面にしっかりと接している感覚が強く、落ち着いて乗れます。こういったホイールは、ロングライドでも肉体的・精神的に楽だと思いますよ。
【40 | 44】抜群の万能モデル。リザーブの魅力が凝縮された存在
CS:続いて以前の試乗でも評価の高かった「40 | 44」は改めていかがですか?
小西:3モデルの中では最も性能のバランスが取れています。弱点はありませんね。ただ上りは「34 | 37」、平地は「52 | 63」には敵わない。だからその両者のホイールの性能を体感してしまうと中途半端に思えてしまうところがあります。でも全体の性能はとても高いレベルにあって、低速から高速まで走りの軽さは魅力的なので、ホイールの選択に迷ったらこれを選べば間違いありません。
吉本:小西さんがおっしゃることはよく分かります。でも今回の試乗後に「40 | 44」を改めて乗ったのですが、やはり魅力的です。リザーブホイールに共通する、走りの軽さ、転がり感の強さと滑らかさ、そして乗り心地の良さという長所が抜群に高いレベルで融合しています。だから平地も上りも問わず、全ての場面で走りの上質さが気持ちいい。性能の穴がないのでレーダーチャートで表すと、すごくきれいで大きな形。リザーブの魅力が凝縮された存在だと感じました。
CS:そういうコメントに至るホイールというのも珍しいですね。小西さんもおっしゃっていましたが、「何の変哲もない作り」なのに、こうした高性能を実現しているところが、またすばらしいところですね。
吉本:本当にそこが謎ですよ……。
乗った瞬間に分かる速さ。でも上りを諦める必要はない
CS:そして最後に最もリムハイトの高い「52 | 63」ですが、こちらの走りはいかがでしたか。
小西:平地の巡航性能は、他のモデルと比べて別格に高いですね。
吉本:速いの一言で、加速した瞬間に「進むわ〜」と感じませんでしたか。
小西:そうですね。リムハイトが高い割に踏み出しはとても軽くて、上りも結構いけちゃいます。激坂以外であれば、特に最近の主流となっている「前乗り・高ケイデンス」という乗り方をすれば、こなせる上りの領域は多いと思います。
吉本:このクラスのリムハイトのホイールは、「上りは諦めます」という性能になりがちですが、「52 | 63」はそうならない。このホイールで平地を楽しみ、上りが苦手なサイクリストでも「自分なりに上りを頑張ろう」と思わせてくれる程の上りの軽さを持っています。
小西:確かに。
吉本:さらにこのクラスは縦方向に硬くてダンシングで体の使い方を気にしないと進まないとか、脚へのストレスが強く感じることもありますが、それも皆無です。リザーブのホイールには共通していますが、脚当たりが優しくペダリングがしやすく、ハンドリングにも癖がありません。
小西:ディープ系ですけど、フロントのリムハイトが52mmに抑えられているのもあってか横風の影響も少なく、ハンドリングも癖がなくて扱いやすいですね。
吉本:得意とする高速の伸びはすごく気持ち良いけれど、ネガティブな面も極めて少ない。このクラスのリムハイトのホイールとしては、走行性能は相当に高い次元にあります。
CS:お二人ともこのホイールは相当に好きですよね。
小西:今回乗った中では、個人的に一番気に入ったモデルですね。
吉本:僕もかなり好きですね。
理想とするロードホイールのアイデンティティがしっかりある
CS:リザーブホイールというメーカーはまだ歴史も浅く、メジャーブランドではありませんが、改めて今回、性能を体感していかがでしたか?
吉本:新興ブランドなのにこれだけ完成度の高いものを作れることに驚かされますね。基本構造はオーソドックスですけど、リムはハイトだけでなく幅も全て違う。それってコストがかかるし、メーカーとしては非効率。でも、性能の追求のために惜しみなく手を付ける。そして風洞技術「タービュレント・エアロ・テクノロー」まで独自に作って空力を分析するなど、製品作りはかなり真面目です。そういう部分が、われわれが今回感じた高性能につながっているのかもしれませんね。
小西:3つのモデルともに体にかかるストレスが少ないので、とても扱いやすいですね。脚当たりのよい剛性感、素直なハンドリング、乗り心地の良さが統一されています。ターゲットとするスピード域でホイールを使い分けても、ライダーの感覚に大きな差がないよう性能が調整されていると感じました。オーソドックスな作りで、リムの違いだけで、各々の魅力を出しつつ統一した乗り味を作ってきたことに驚きました。
吉本:統一した走行感があるというのは、メーカーの中にロードホイールの理想とする性能、つまりアイデンティティがしっかりとあるということでしょうね。今回は3つのモデルを試乗したことで、改めてリザーブのすばらしさを知ったような気がします。
こちらもチェック〜「フィルモアバルブ」と「ライフタイムホイールワランティ」
チューブレスレディタイヤの運用で頭を悩ませるのが、エアバルブへのシーラント詰まり。この状態になると空気の充填や空気圧の微調整がしにくくなる。そんなトラブルから解放してくれるのがリザーブホイールが特許を持つ「フィルモアバルブ」だ。既存の仏式バルブと比べて内部構造を簡素化。言うなればバルブ本体が仏式バルブのバルブコアと同じ役目を果たすような構造だ。これによりバルブ内部の空間が大幅に広がり、シーラントの目詰まりを低減するのはもとより、空気の流量が多くなるので空気の充填も容易。シーラントを注入時にバルブコアを外す必要もない。良いことづくめのシステム。チューブレスレディタイヤユーザーには必需のアイテムだ。
また、リザーブーホイールでは「ライフタイムワランティ」サービスを行っている。ホイールを購入したファーストオーナーに限り、その商品がメーカー側の欠陥が原因となって破損した場合、生涯にわたり無料交換に対応してくれる。ユーザーのクラッシュによる破損には対応していない。