“自転車用リュックは背中が蒸れる”はもう古い!? 最新製品を試したら驚きだった
目次
パンクへの備え、防寒着、補給食……安全で楽しいサイクリングを実現するには、さまざまな「荷物」が必要だ。カメラなど趣味の道具があれば、出先での楽しみも増える。けれども、ロードバイクなどスポーツ自転車の多くは、素の状態では荷物が積めない。そんなとき、荷物スペースとして真っ先に選択肢となるのがバックパック(リュック)だ。その代表的ブランドであるドイターの最新モデルを通して、快適さや便利さを紹介する。
動画で見たい人はこちら
自転車用バックパックのメリットとは?
ロードバイクなどスポーツ自転車によるサイクリングで荷物を携行する方法はいくつかある。大別すると3通り。後付けしたキャリヤ(ラック)にバッグをつるす、自転車の各部にバッグを直接固定する(バイクパッキング)、そしてバックパックの利用だ。
それぞれの方法に長所と短所があるが、もっとも手軽で活用範囲が広いのがバックパックなのは間違いない。文字通り背負うだけなので、自転車への取り付け作業や相性の問題などが皆無。
自転車を離れるときも一心同体なので、ひと手間かけずに立ち寄りどころへ安心して入ることができる。そして、自転車側に取り付けるバッグに対して、大きな荷物容量を確保しやすいのも魅力。稼げる容量における費用対効果は抜群だ。また、自転車側にバッグを取り付けると振動が増えるため、走行安定性が損なわれる場合もあるが、体にフィットするバックパックは重量バランスに優れ、アクティブな走りにも対応できる。当然ながら普段使いにも便利だ。
けれども、バックパックにも欠点がある。肩や腰に荷重が加わるため、荷物重量が増えると疲労やストレスに直結する。さらに背中を中心に通気性が下がるので、特に暑い季節は発汗が増えるのも事実である。
そのため、バックパックを敬遠するサイクリストも多いのだが、そうしたバックパックの欠点を抜本的に解決しているのが、ドイターの自転車用バックパックだ。
最新製品 驚きの構造と通気性
今回、もえぞーさんと筆者が試用したドイターのバックパックは、「レース エアー」というモデルである。20年以上前に登場して以来、改良と進化を重ねており、多くのサイクリストに愛用されている定番である。
レース エアーの最大の特徴は、採用されている「エアコンフォート」という背面通気システムだ。バッグ本体の背面側にアーチ状のスチールフレームがあり、それにメッシュパネルを張ることで、バッグ本体と背中の間に空間を作り出している。このエアコンフォートシステムは40年前から存在し、各種のバックパックに採用されているが、最新のレースエアーではメッシュパネルの形状が刷新され、面積を必要最小限とすることでいっそう高い通気性を獲得している。
エアコンフォートが最大の特徴であるレース エアーだが、乗車姿勢にフィットする本体のデザインやベルトの配置、多様な荷物を効率よく収納できる荷室やポケットのディティール、そしてヘルメットホルダーやレインカバーといった充実した装備など、バッグ全体がサイクリスト目線で作り込まれているのが魅力だ。
意外と荷物がけっこう入る!
工具類、防寒着、輪行袋、エマージェンシーキット、補給食など、日帰りの遠征サイクリングを想定した荷物が余裕で収まる。さらに、かさばる一眼レフカメラやミラーレスカメラなどもOK。これが容量10Lのサイズ感である。カメラに限らず、「遊び道具」の存在は楽しみを増やしてくれる。バックパックによる搭載能力が、サイクリングの安全性や遊びの幅を大きく広げてくれるのは間違いない。レース エアーは小物収納に適したポケットが二つの荷室それぞれと、外部の両サイドにあり、荷物の出し入れを効率よく行うことができる。
こちらはレース エアー14+3。このくらいの容量になると、お土産など出先で増えた荷物や着替えなども収めやすい。冬場など、防寒着としてダウンウェアを携行したいシーンにも心強い。エクスパンダルファスナーを開放すれば、容量がさらに3L増えるというギミックも備えている多機能モデルだ。
ロードバイク女子の「もえぞー」さんが実力をチェック
レース エアーの使用感を確かめるべく、もえぞーさんとサイクリング。彼女は「富士ヒル」などにも出場するアクティブなサイクリストだが、これまでバックパックを背負ってのサイクリングは未体験だとか。
「バックパックは背中が蒸れるんじゃないかな、という先入観があって避けていたのですが、レース エアーは快適ですね。背中を風が通る感じがはっきりわかって、思いのほか涼しいんです。これがエアコンフォートの効果なのか! と実感できました。普通のバックパックに比べると背中側の構造がとても変わってますが、それで背負いにくいとか揺れるとか、違和感がないのもいいですね。腰に当たるパッドやベルトの効果なのか、あまり肩に重みを感じないのも心地いいです」。
「ダンシングもいつもどおり自然にこなせますし、さすがだなあと思いました。私の場合、フレームサイズが小さめなので大きなサドルバッグとかフレームバッグが選べないんです。だから困ることもあったのですが、これからはバックパックを積極的に使っていこうと思います!」
すっかり「レース エアー推し」になったもえぞーさん。筆者としても長くつきあってきたバックパックなので、愛着と信頼感は大きい。なお、十分な容量があるバックパックでも、たとえば工具など小さいけれど重量がある荷物は、自転車側に付けたサドルバッグなどに搭載し、重量を分散するのも効果的だ。荷物を含めたバックパックの重さに対する印象や疲労感は個人差が大きいが、重量を2〜3kgまでに収めれば、快適なサイクリングを長時間にわたって楽しみやすいだろう。
ドイターによると通常のバックパックに比較し2.9℃涼しいという実験データが!
発汗サーマルマネキン試験という方法で、エアコンフォートとドイターの通常の背面システムとの熱のこもり具合を比較したところ、エアコンフォートの方が最大2.9°C温度が低いという実験結果が出た。つまりこの構造によって、背中とバックパックとの間の温度を2.9°C冷却していることを意味する。また上の実験画像を見ると、温度分布が①ザック(エアコンフォートシステム搭載)の方が明らかに低くなっていることも見て取れる。
オーソドックスな形状のこちらのアイテムもチェック
パネルを張ったエアコンフォートではなく、「エアストライプス」を採用した定番モデル「レース」にもメリットがある。こちらは通気性のあるウレタンパッド2本を配したシンプルな背面構造を採用しており、荷室と体が近づくため、いっそう優れた安定感・フィット感を発揮してくれる。軽量なのも美点だ。さほど暑くない季節だったり、グラベルライドなどでバックパックとの一体感を一段と高めたいシーンでは、エアストライプス採用のレースを選ぶのも賢い。サイズ違いの展開も豊富。
Brand Info〜deuter(ドイター)について
ドイツの総合バックパックブランドがドイター。1991年から自転車用バックパックを手がけており、このジャンルのパイオニアだ。そのラインナップは非常に多彩で、容量6Lのファストラン用モデルから容量30Lを誇るトレイルライド用モデルまで網羅。あらゆるサイクリストのニーズに応えてくれる。近年はメインファブリックに100%リサイクル素材を採用し、環境に配慮したブランドとしても注目されている。