マウンテンバイクシューズはフラットペダル用かビンディングペダル用か?【MTBはじめよう! Vol.21】

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Presented by SHIMANO 撮影協力:エンデューロ ナショナルシリーズ

マウンテンバイク(MTB)トレイルライド&グラビティライドの基本が学べるシリーズの21回目。初期の回で、シューズはフラットペダル用を使おうと紹介したが、一方で足をペダルに固定するビンディングペダル用もある。どっちがいいのか?

マウンテンバイクシューズはフラットペダル用かビンディングペダル用か?【MTBはじめよう! Vol.21】

 

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必ずしもビンディングペダル用シューズに移行しなければならない、というわけじゃない

今回教えてもらうのは、静岡県にあるスポーツ自転車専門店「CRAFT(クラフト)」代表で、グラビティ系MTBの動画クリエイターとしても活躍する、SHOYAこと藤田翔也さんだ。

※MTBにおけるグラビティとは、下りに主眼を置いたライドスタイルのことを指す。日本語で言うと“下り系”と言うべきか。

SHOYA CHANNELの藤田翔也さん

藤田翔也さん。グラビティ系MTBのジャンルでは国内で最も人気のあるYouTubeチャンネル「SHOYA CHANNEL」を運営する動画クリエイター。国内エンデューロレースのトップカテゴリーで走るライダーだ。老舗スポーツ自転車専門店での勤務を経て、2023年には自身のショップ「CRAFT」を静岡市内に開業した

 

Vol.4の記事で、MTB用シューズはフラットペダル用を選ぶようにしよう、と説明した。安全上とっさに足を着ける必要があり、自転車を押して歩く場面も多いから、という理由だった。

本シリーズもついに21回目を迎え、基本的な項目はだいたい網羅してきた。読者の皆さんもあらかた必要な道具はそろえてきて、「よし、脱初級者を目指して頑張ろう!」と考えている人は多いだろう。

そこで気になるのがビンディングペダル用のシューズだ。上級者でレースに出るようなライダーはほとんどこれを使っているイメージがある。

「そうですね。上級者ほど使っている人は多いと思います」とSHOYAさん。

やはり。では、ビンディングペダル用シューズ(とビンディングペダル)のメリットとは?

「何よりも足がペダルに固定されることによって、衝撃などで足ずれを起こすリスクが減り、走りがより安定する、足がペダルから外れることによる転倒リスクを減らせることです。

また、力をダイレクトにペダルに伝えられますから、(下りのおいての)ペダリングの効率も上がり、レースで結果を出すことを目指す人にとってはそれも大きなポイントになります。もちろん、トレイルライドなどで自走で上るときのペダリング効率も良くなります」。

今の説明を聞くと、ある程度MTBの扱いに慣れてきて頻繁に足をついてしまうことがなくなってきたのなら、ビンディングに移行してしまった方が良いのではないかと思える。

「いや、決してそうとは限らないんですよ。確かにメリットは大きいのですが、脱初級者を目指すライダーはまだフラットペダル用シューズを使い続けた方がいいと思います」。

そ、そうなのか!?

「ビンディングペダルは、“テクニックのなさをごまかしてしまう”ことにつながってしまうこともあるんです」。

ちゃんとペダルに乗れてますか?

ちゃんとペダルに乗れてますか?

 

「MTBで重要となる、“ペダルに乗る”技術、“加重・抜重”の技術がしっかりと身についたうえでビンディングを使うのならば、それは問題ありません。プラスアルファのメリットが得られるでしょう。しかし、これらが身についていないのにビンディングを使うと、足が固定されているがゆえに基本技術が身についているのかどうかの感覚が得られにくくなります。

そもそも、フラットペダル用シューズを使っていて衝撃などで足がペダルから外れてしまう時点で、“ちゃんと自転車に乗れていない”んです。要するに、ペダルに乗れてない、加重・抜重の動作ができてないってことです」。

う〜ん、耳が痛い。

 

上級者でも“フラペシューズ”を使う人はいる

上級者でも“フラペシューズ”を使う人はいる

ちなみに、SHOYAさんはやっぱりビンディングを使っているのだろうか?

「もちろんビンディングも使えますが、実は私は長年のフラットペダル用シューズ愛用者なんです。私に限らず、上級者でも好んで“フラペ”を使う人は居るんですよ。

フラットペダルにも、すぐ足をつきやすいとか基本を学びやすいといったこと以外にメリットがあって、それは“自由度が高い”ということです。私なんかは走るセクションや状況に応じて、微妙にペダルを踏む位置を変えることがあります。

また、どうしてもライド中に体勢を崩して足を離してしまうことがありますが、そのあとで爪先だけとか、かかとだけでもペダルに乗せ直せば何とかすぐに乗り続けられるなど、リカバリー力の高さというメリットが大きいんです。足を乗せる位置が固定されてしまうビンディングでは、このメリットは得られにくいです」。

なるほど!

 

脱初級者を目指す人が次に買うべき“フラペシューズ”とは?

我々のような脱初級者を目指すライダーは、まだフラットペダル用シューズを使い続け、しっかりと基本を身につける必要があることは分かった。では、もっと本格的にMTBに乗れるようになりたい! 下り系パークでしっかりと走り始めたい! と考えるライダーが次に買うべきシューズとは、どんなものなのか。多くの初級者ライダーは、1万円台のエントリーグレードのものを使っているだろう。

「グラビティシューズと呼ばれる、より下り性能を高めたモデルを選ぶといいと思います。エンデューロ用、あるいはダウンヒル用とされているものです」。

シマノの「GF6」

グラビティシューズの例。写真はシマノの「GF6」(2万1780円)

 

「こうしたモデルは、まずソールの剛性がより高まります。ペダリング効率が良くなることももちろんありますが、下りでの安定性が高まります。また、ペダルのピンに食いつくグリップ力も上がり、激しい下りでの不安感をだいぶ和らげてくれるでしょう」。

シマノ・GF6

上で紹介のシマノ・GF6。ソール部の剛性が高く、より下りに特化した作りになっている

シマノ・GF6のアウトソール

シマノ・GF6のアウトソール。独自の「アルトレッドGF」を採用し、高いペダルグリップ力と下りでのコントロール性能を発揮する

 

「さらに、アッパー部分の剛性も上がりますので足のホールド感が高まるとともに、木の根や岩などに足をぶつけたときの保護性能も大きく向上するので安心です」。

シマノ・GF6のアッパー部分

シマノ・GF6のアッパー部分。ホールド力の高い分厚く頑強なアッパーで、爪先部分には強固なガードも装備されている

 

例えばどんなモデルがある?

「最近、私はシマノのGF6(上の写真)というモデルを使い始めました。実は、シマノってグラビティ系のフラットペダル用シューズを出しているんですよ。これは先ほど説明した要素を全て備えています」。

筆者(サイクルスポーツ編集部・大宅)も、まさに脱初級者を目指して奮闘するマウンテンバイカーだ。ふだんはエントリーグレードのトレイルシューズを使っているが、ここで一つ、シューズをグラビティシューズにグレードアップしてみようじゃないか。

「せっかくなんで、一緒にこのGF6を試してみましょう。ENS白馬岩岳のレースで、走りましょうよ!」

……ということで、レースでいきなり使ってみることにした。

※「エンデューロ」については、Vol.10の記事を参照してほしい。

 

フラットペダル用グラビティシューズを使ってみた!

SHOYAさんの走りはこちらの動画でチェック!

サイクルスポーツ編集部・大宅

サイクルスポーツ編集部・大宅。長年ロードバイクに乗っていたが、ここ2、3年でMTBグラビティライドにどハマりしたにわかマウンテンバイカー。脱初級者目指してコツコツと奮闘中

 

初日の試走日は晴天だったが、レース本番では完全に雨のコンディション。会場となる白馬岩岳MTBパークは雨が降るとツルツルになる厳しいコースだ。まさにシューズの真価が試される。

そんななか、見事SHOYAさんは総合8位、筆者もビリになることなく、しかも転倒せずに走り切ることができて、自信がついた!

 

大宅:さて、SHOYAさん、シマノ・GF6を使ってみてどうでした?

SHOYA:第一印象はすごくペダリングしやすいってことです。足ずれをしてうまくこげないというのはタイムロスにつながるのですが、そういったことはなかったです。

大宅:下りでもペダリングするって、すごいレース目線というか、上級者目線ですね。そんなレベルでも良かったってことですね。

SHOYA:そうですね。レースでの使用でも十分なレベルでした。そしてグリップ力自体も高いですね。振動によって足ずれして乗りづらかったというのは正直なかったです。網目状のパターンのアウトソールですが、これがいい仕事をしていて、うまくピンに食いついてくれるようですね。

大宅:私は初めてグラビティシューズを履きましたが、がっしりとしていてびくともしない印象を持ちました。その安心感がありますね。でも、ソール剛性はすごく高いんですが、一方でガチガチすぎなくて足に優しいというか、その点が好印象でした。このガチガチすぎないというのは、ソールに特殊な構造が施されていて、ある程度柔軟性も持たせていることによるそうです。

あと、バームがツルツルで乗る自信がなかったので、無理なく片足を出してイン側を走りました。そのとき、ぱっと足を出してまたぱっと足を乗せる動作がやりやすくて、かつ乗せた後に泥がついた状態でも滑らずグリップしてくれて、かなり助けられましたよ。そして雨でガタガタの部分でも、一度も足はペダルから外れませんでした。

SHOYA:シューズは下りでの恐怖感に直結しますから、本当に大事なんです。大宅さん、今回はシューズに助けられましたね。

大宅:いや、まったくです。一方で、きつい坂のリエゾン区間では押し歩きをしましたが、靴裏がしっかりグリップするうえ、先ほど言ったように適度な柔軟性があるので歩きやすかったです。

SHOYA:そうですね。グラビティシューズとしては結構歩きやすい方だと感じます。このジャンルになると、どうしてもソール剛性が高くなるので歩きにくくはなるんですが、このシューズはその点がうまく作られていますね。

大宅:肝心のフィット感はどうでしたか?

SHOYA:私は甲高・幅広なザ・日本人タイプの足というわけではなく、まあ標準的な形状だと思いますが、よくフィットしていましたよ。特に足裏のフィット感が良くて、今まで履いてきたシューズの中でも抜群です。

大宅:私は甲高・幅広のザ・日本人タイプの足なんですが、それでもフィット感は良かったです。シマノによると、全人種を平均化したような形状にしているそうですね。なので、私みたいな足のタイプの人でも安心して履けると思いました。

シマノ・GF6の靴紐収納機構

靴ひもの収納部を指でつまんで持ち上げられる機構がついており、シューズを履くときに便利だ。ライド中に靴の中に入った土や砂を出すためにシューズは何回も脱いだり履いたりするので、地味に効いてくる機能と言える

 

大宅:さて、最後にまとめを。脱初級者を目指すならビンディングペダル用シューズを使った方がいいのかなと思っていましたが、まだまだフラットペダル用シューズを使った方が良いということ、そしてグラビティシューズにアップグレードするとより安心してライドが楽しめるようになることを学びました。これからこのGF6を使ってがんばります。

SHOYA:そうですね。シューズも大事なMTBの一要素。こうした工夫を積み重ねていくのもまた、MTBの楽しみの一つだと思います。

今回、例として紹介したGF6は、その意味でおすすめです。ちなみに、私はダメなものは使いません。ましてやタイムに影響するレースでなんて。そんな私がレースで使ってみたので、ほんと、良かったってことです。たぶん、フラットペダル用シューズ使用者で最高位じゃないかな(笑)。

大宅:MTBは特に海外ブランドのシューズが多いので、そんななか日本のブランドという安心感もありますよね。

SHOYA:そうですね。培ってきた歴史とネームバリューもありますから、その安心感は大きいと思います。

 

GF6の詳細と購入についてはシマノ オンラインストアをチェックしよう!
【シマノ オンラインストア】
https://shop-jp.shimano.com/

 

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