Brompton P LINE ロードバイクにプラス一台の価値

目次

吉本さんと佐野さん

ブロンプトンのベーシックモデル「Cライン」から20%軽くなった「Pライン」。ワンランクアップした携行性と機動性は、ロードサイクリストに新たな楽しみをもたらす“もう一台”に最適な存在だった。

Pライン

Pライン
アーバン4速
価格/44万1100円~
重量/9.7kg~

エクスプローラー12速
価格/48万700円~
重量/10.5kg~

共通Spec
メインフレーム/スチール
リヤフレーム素材/チタン
フォーク素材/チタン
ハンドルバー/ロウまたはミッド
付属/泥よけ
カラー/ブロンズスカイ、ルナアイス、ミッドナイトブラック、フレームラッカー、ボルトブルーラッカー(ラッカーカラーは+1万7600円)
*ラック付きは+1万2650円

問・ブロンプトン ジャパン
support@brompton.co.uk
https://jp.brompton.com/

Pライン Pライン Pライン

1975年にアンドリュー・リッチーが発明したブロンプトン。折り畳み小径車の難題である携行性と機動性を高次元で両立したこの英国車は、街から郊外まで連れ出せる絶好の相棒として世界中で愛されている。そして、さらに驚かされるのは、基本設計が今なお変わらない完成された一台であることだ。もちろん時代に応じて洗練を続けており、現在は「Cライン」「Pライン」「Tライン」のラインナップを展開している。

その中でも最も身近な存在がスチール製フレームの「Cライン」。これを基にフォークとリヤフレームをチタン製に換えて約20%の軽量化を図り、加えて新設計のリヤサスペンションブロックを搭載したのが「Pライン」だ。そしてブロンプトンの技術の粋を集めた最高峰であり、フルチタンフレームとカーボンパーツを搭載して7.95kg(4段変速仕様)の超軽量を実現したのが「Tライン」だ。

各モデル共に変速段数の異なる「アーバン」と「エクスプローラー」があり(後者は段数が増える)、ハンドル形状もフラット型の「ロウ」とライザー型の「ミッド」が用意されている。今回はそんな車種の中からPラインの「エクスプローラー」(12段変速)×「ミッド」、「アーバン」(4段変速)×「ミッド」を、元プロ選手の佐野淳哉と自転車ジャーナリストの吉本司が試乗する。

後部のエラストマー

フレーム前後の接合部にはエラストマーを装備して乗り心地を高める。その形状は旧型の円柱状から新たに台形になり、フレームセットとして剛性が高まり走りが機敏になった

折り畳み部

メインフレームやハンドルに備わる折り畳み部はしっかりとした作りで、剛性感のある走行感に貢献する。レバーはバイクの造形を邪魔しない適度な大きさで作業性にも優れる

ミッドハンドル

グリップ部分が上方にせり上がった「ミッドハンドル」。前傾を抑えた乗車姿勢を提供し、より視界が広くなり、景色を楽しみながらのライディングができる。ポタリングにも最適

タイヤ

以前はシュワルベ製だったタイヤは、最新モデルではコンチネンタル製の1.35サイズに変わった。サイド部には反射機能を備え、ナイトライドも安心。乗り心地も向上した印象だ

ラッカー仕上げのカラー

フレームカラーはソリッド仕様の他に、写真のラッカー仕上げもある。光の当たり方で塗装の明暗が美しく変化し、溶接部をはじめフレームの素材感が透けて見えるのも魅力

フロントバッグ台座

ヘッドチューブにはフロントバッグを装備する台座を標準装備する。オプションで容量の異なるバッグがいくつか用意されている。いずれもワンタッチで着脱できるので便利

折り畳んだ状態

折り畳むと縦565×横585×幅270mmという、16インチホイールの小径車随一の小型サイズになる。輪行での気遣いが減るのはもちろん、車や屋内の収納でも邪魔にならない

転がせる状態

リヤフレームには小型の車輪が装備されているので(機種の仕様によっては荷台または泥よけにも装備)、写真のようにハンドルを折り畳まない状態でバイクを引いて移動できる

わずか20秒以内で作業は完了!ブロンプトンの折り畳み方

ブロンプトンの折り畳み方

メインフレームとリヤフレームの接合部に装備されるレバーを押して後輪を持ち上げる

ブロンプトンの折り畳み方

メインフレームの固定ネジを緩めて、ハンドルを若干左に切りながらフレームを折り畳む

ブロンプトンの折り畳み方

フロントフォークに付いているフックがフレームの後ろ三角に引っかかるように畳む

ブロンプトンの折り畳み方

フォークに装備されるフック。これを引っかけることでフレームの前まわりが固定される

ブロンプトンの折り畳み方

シートポストを下げることでリヤフレームの動きが固定され、折り畳みが安定する

ブロンプトンの折り畳み方

ハンドルポストの固定ネジを緩めて畳む。フォーク部分に固定用の台座が装備される

ブロンプトンの折り畳み方

ペダルをクランクから外して、フロントフォーク後部に付いているペダルホルダーに入れて完成

Impression

吉本さん

RIDER1
吉本 司

フリーの自転車ジャーナリスト。40年余りのスポーツバイク歴から、車種を問わず自転車遊びを体験し、機材からレース、市場動向まで幅広い知見を持つ。ブロンプトンでのライドも楽しんでいる。

佐野さん

RIDER2
佐野淳哉

今夏を前に20年に及ぶ選手生活に終止符を打った元プロロード選手。個人TTにも強いスピードマンの脚質を生かして、2017年には単独逃げ切りで全日本ロードを制覇。

ロード好きが乗っても全く不満のない走行性能

吉本前回はフルチタンフレームの「Tライン」に乗りましたが、今回の「Pライン」の印象はいかがでしたか。
佐野:やっぱりPラインも小径車として、作りの良さを感じます。フレーム剛性に物足りなさはありませんし、Tラインと比べて基本性能も大きく変わりません。
吉本:そうですね。僕はCラインに相当する旧モデル(M6)にも乗っていますが、CラインとPラインを比べると車重が1.6kgほど軽いので走行感が軽快です。リヤサスのエラストマー形状も違うので、バイク全体の剛性感が増しているのに、チタン素材のフォークと後三角が効いているためか乗り味は滑らかですね。
佐野:今回乗ったPラインはアップライトなハンドル形状(ミッドタイプ)だったのもありますが、Tラインよりも落ち着きがあるというか、より景色を見ながら乗るのが楽しいですね。Tラインが不快なわけではありませんが、Pラインは、よりスピードを出さなくても良い気持ちにさせてくれます。そして、このハンドルはオートバイのハーレー(ダビッドソン)みたいな感じですかね。とてもゆったりとしたポジションで乗れるので、すごく気に入りました。だから、サイクリング(およびポタリング)をさらに楽しみやすい自転車ですよね。
吉本:確かにハンドル操作も落ち着くので、ゆったり乗れますね。で、実際にPラインをどんな風に楽しみたいですか。
佐野:近所に野菜とかパンを買いに行きたいですね。その合間に立ち寄ってコーヒー飲んだりして、自転車に乗るだけじゃなく、そこに違った楽しみをプラスするみたいな使い方をしてみたい。だから今回、僕が乗ったモデルのように、荷台が付いたタイプがいいですね。
吉本:自分の生活圏の10kmくらいのエリアを気軽に楽しむような感覚ですね。しかもブロンプトンって簡単に折り畳みできるし小型になるので、違う交通手段との親和性がすごく高いんです。サクッと電車に載せて都心近郊の見知らぬ駅で降りて、その周りを走ると楽しいんですよ。面白い昭和の純喫茶やマニアックな街中華に出合ったりすることもあります。
佐野:ふらっと散策するみたいな。田舎に持っていくのも良さそうですね。
吉本:ブロンプトンってカメラに例えると、コンデジみたいな存在だなと思うんです。旅に一眼レフを持っていくと撮影に必死になっちゃって、“見る”より“撮る”が主役になっちゃう。でもコンデジって気軽に撮れるので、あくまで見るのが主役。それと同じでロードバイクでツーリングに出ると、つい距離を走ってしまい観光がおろそかになる。でもブロンプトンは、旅が主役でそのお供という存在なので、それがコンデジっぽいかなと。
佐野:だからPラインは、Tラインよりも日常に溶け込んでいる自転車という感じですよね。スポーツってわけではないけれど、ロードに乗り慣れた人が運動性能に不満を感じるようなことはない。かといって走らせる以外の楽しみをしっかり与えてくれる。それがすごく良いです。
吉本:ブロンプトンはCラインが象徴するように“急げ”と背中を押さないのが魅力の一つです。PラインはそこにTラインが持つ運動性能のエッセンスが付加され、この“甘辛”なキャラが絶妙だなと。それこそがロード乗りがもう一台持つ小径車として最適なのだと思います。価格は決して安くはありませんが、Pラインはロードバイクとはまた違う新鮮な自転車遊びを与えてくれるはずです。

吉本さんと佐野さん