QNリーグ「スキルアップ!レーススクール」&ブリッツェン☆ステラ「入団体験会」レポート

目次

QNリーグ実行委員会では9月14日(土)、2024-2025わたらせクリテリウム第2戦と併催する形で「スキルアップ!レーススクール:まもなくシーズンイン!シクロクロスから学ぶコントロール術」を開催した。

2024-2025わたらせクリテリウム併催

 

ブリッツェン☆ステラ 入団体験会レポート

まず、午前10時から宇都宮ブリッツェンの下部組織でありキッズ育成チームでもある「ブリッツェン☆ステラ(以下:ステラ)」の入団体験会が開催された。

入団体験会へ参加するキッズたちは動きやすい服装とシューズを着用する。自転車専用のジャージを着ているのは1人だけだ。募集要項を読むと自転車用ヘルメットとグローブのみ各自用意となっている。

2024-2025わたらせクリテリウム併催

2024-2025わたらせクリテリウム併催

 

“鬼ごっこ”でチェック!

時間ピッタリに集合しランニングから開始。最初は自転車に乗らずに基礎運動からスタート。

当日は9月中旬にも関わらず、最高気温の予報が34度という残暑厳しいコンディションのため、集合したレースコース内側にあるアスファルト路面から外れて横の木漏れ日で日陰のある芝地に移動。ゆっくりと走り体が馴染んだタイミングでステラチームコーチである鈴木真理氏がブラウ・ブリッツェンのトレーニング帯同を終えて合流してきた。

軽くランニングをした後に、水分補給の休憩を挟み鈴木コーチから「鬼ごっこ」が提案された。

2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催

広めのグラウンドがあり、そこでステラ所属選手チームと体験入団参加者チームに分かれる。最初はステラ側が鬼となって体験参加をグラウンド内でタッチできたらアウトで、全員がアウトになるまで追いかけっこする。

数名と数名で対決し捕まえあう形で、素早い1人を数名で囲んだり、大勢での動きのスキをうまく衝く子もいる。基本的な運動神経の良さをチェックしていたようだ。事務局に伺うと「運動中ももちろん、鬼に捕まってからいったん待っている間や休憩しているとき、注意やルール説明を受けているときの態度や行動も見ています」との由。

私も高校生以上の女子選手が所属するチームを運営していた経験があり、加入試験「トライアウト」では面接にもウエイトを重く置いていたが、小学生が所属する育成チームであるステラの場合は、平素の自然な動きが「チーム」として加入する際には重要なポイントになるのだろう。

2024-2025わたらせクリテリウム併催

2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催

汗びっしょりで鬼ごっこを終えて、元気な子どもたちはいったん保護者が待機する場所に戻ってから、いよいよ自転車で走るメニューを体験。水分補給しながらヘルメットやグローブを身に着けて、自転車貸与を事前に希望した子どもたちはメリダの子ども用ロードバイクで1人ずつポジションを合わせて受け取る。貸与子は初めてロードバイクに乗る様子。

スタート前に鈴木コーチからブレーキのかけ方からハンドルの握り方などのレクチャーを受けてから走り出した。 コースはQNリーグがスクールを行なうコースで、基本ルートにパイロンを置いてあるだけ。真っすぐ走るだけでなく途中からスラローム走行にもチェンジできるレイアウト。鈴木コーチを頭に1列になって、前を走る人とできるだけ離れないようにスピードを合わせながら真っすぐ走り、Uターンでコーナーを曲がる、そして再び真っすぐ走るを連続してスムーズにできることを目指す。

2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催

鈴木コーチからのアドバイスで何度も反復練習するうちに、危なげのない安定した走りに変化。近くで見守っていた保護者の皆さんもうれしそうだった。

11時30分には体験会を終了。約90分という短いながらもロードバイクで走る楽しさを知った様子であった。

なお、11月17日にはブラウ・ブリッツェン、同月24日にはステラの「トライアウト」が開催される。

*ジュニア育成チーム「ブリッツェン☆ステラ」公式ホームページ
https://www.blitzen.co.jp/team/stella/

 

ブリッツェン☆ステラ 鈴木真理ヘッドコーチ:インタビュー

2024-2025わたらせクリテリウム併催

体験会を終えてからステラのコーチである鈴木真理氏から、話を伺うことができた。

国内を中心に20年以上活躍し、2002年に全日本選手権優勝、2003年と2004年はアジア選手権で2連覇、2004年にはアテネ五輪の日本代表としてロードレースに出場するなど、日本国内・アジアで数々の勝利とタイトルを獲得した名選手。

現在は指導者として、2018年から「TRUTH BIKE(トゥルースバイク)」、そして「TEAM TRUTH(チームトゥルース)」として自転車コーチ業を開始。以前に自身も所属していた宇都宮ブリッツェンが運営するジュニア育成チームである「ブリッツェン☆ステラ」には 1期目からコーチとして関わっている。

筆者自身が女子選手であることもあり、男子、しかもトップ選手の練習内容を如何にして育成チームに伝授しているのか気になっていたので、先ず当時の練習内容をザックリではあるが聞いてみた。

 

大事なのは体力・成長期の子供への配慮

何よりも強くなるには「体力が一番大事です」と断言する。「だからステラの選手には基礎運動の指導を徹底して行なっています」という。

ただ、相手は小学生なので集中力が途切れやすい。そのために「ゲームをするんです。遊び方を教え、皆で考えてやる。だからチームの練習以外でも家とかいろんな場所で遊ぶことで練習を再現できます」と教えてくれた。自分たちでルールやコースも考えて変化させ工夫することを促すと、習得し集中力もアップする。

さらに「ゲームを楽しむことで、無意識のうちに心拍が上がって追い込めるんですよ。先ほどの鬼ごっこも、鬼を仲間と追いかけるから汗だくになってましたよね!」と笑っていた。

ランニングや自転車コース走行の際、先頭からの並び順についても、ちょっとしたコツがあるそうだ。

ランニングでは走るのが得意だったり、ちょっと遅れてしまう子とかも出る。ロードバイク走行のときも同じなのですが、技術の差がどうしても出てしまうし小学生は成長期で体つきはまちまちになります。強い子は(練習に)付いてこられるから放っておいても大丈夫。一方で付いてこられないような子は無理をさせないように気をつけています」と目の配り方を教えてくれた。

2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催

ステラ練習内容を聞くと「週に2回、年間で90回ぐらいのチーム練習で、基礎運動から自転車の集団走行でスラロームやコーナリングなどを身につけてもらいます。あとは『練習ノート』。これが大変だけど一番大きいです。体については見れば分かるけれど、心、精神面はノートを交換することで初めて把握できます。心身の両面で育てていきたいですね」と丁寧なコーチぶりを伝えてくれた。

最後に育成に大事なことは?と聞くと「何よりも一番は体力、それからテクニック、基本的な集団走行、そして礼儀ですね!10月に宇都宮で開催されるジャパンカップではステラチームでデモ走行を行ないますので、走りをたくさんの人に見てほしいです!」と今後の教え子たちの活躍に自分の夢を乗せ期待を寄せている様子だった。

個人的には先日、細かいコーナーが連続する周回ルートで素晴らしい集団コーナリングを見せているステラチームの動画を見て驚いた。これはロードレースの普及と啓蒙に新たな“披露できる技”になると考える。マウンテンバイクや BMX、シクロクロスではトリッキーなテクニックをデモンストレーションとして披露できるが、ロードレースでは非常に難しい。

しかしステラチームが披露する連続コーナリングのきれいな動画の走りは安全啓蒙にも繋がるし、何よりも不特定多数の人の目が関心を寄せるキッカケになりそうだ。ぜひ、未来を拓くさまざまな動きを今後もブリッツェン☆ステラに期待している。

 

QNリーグ:スキルアップ!スクールレポート

体験会の後、午後1時半よりQNリーグ主催の「スキルアップ!レーススクール:まもなくシーズンイン!シクロクロスから学ぶコントロール術」を実施した。

今までリーグ主催のスクールは参加が見込まれる小学生や中学生が出場する、わたらせクリテリウムの午後レースに重ならないよう、午前中に実施していた。しかし、この日は午前中にブリッツェン☆ステラ「入団体験会」があり、午後からスクールをおこなった。

2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催

体験会の後ということもあり準備が万端の受講者もいたため、準備運動は省き、その分を装備のチェックに時間を割いた。ヘルメットの正しい着用方法や調整、シューズの準備や安全な服装のアドバイスとともに、自転車に乗る前のブレーキやタイヤの確認方法もていねいに教えた。

準備と走行前チェックができた受講者とともに、まずはコース周回から走行スタート。先頭を走る講師担当の須藤大輔氏を追いかけるように、最初はゆっくり、その後に慣れてきた頃合いを見て徐々にスピード上げていく。その際に、キチンと止まってブレーキをかけたいところで、しっかりとかけられる、そして止まるという動作がスムーズにできるように何度も繰り返した。

最初は受講者の体が小さいため、小さい手でブレーキがうまく握れずコントロールが難しかったようだが、要領良くブレーキをかけられるコツを覚えてきて、しっかりとスピードをコントロールできるようになった。

そんな基本動作ができるようになってから、次にコーナリング走行を何度も行ない、適切なスピードでコーナーに入って、また真っすぐの姿勢に戻ってからスピードを上げていくという繰り返しをタイミング合わせて走れるようになった。動作がスムーズになってからは、スラローム走行もしてお互いの距離が離れないように程よく接近しながら走るコツも覚えてもらった。

2024-2025わたらせクリテリウム併催
2024-2025わたらせクリテリウム併催

最後には、シクロクロスをベースとしたスキルを指導。スタートラインにゼロ体制で準備し、号令とともにスムーズにスタートし真っ直ぐ走り出す練習。これで信号待ちなどからのスムーズな走り出しにも対応できるようになる。さらに段ボールの上でブレーキをかける動作や、柔らかい障害物を用意し真上を潰しながら、できるだけショックを和らげながらスムーズに通過する動作も体験し覚えてもらった。

それぞれのセクション切り替わりの度に水分補給などの休憩も小まめに入れて、飽きないようにゲーム感覚で走らせたので、約90分の長丁場も集中できた。スクールを見学した受講者の付き添いの皆さんも「意外と集中して、夢中に走っていたので良かった」「楽しそうに走って、最後には自転車が上手になったみたいです」と喜んでいただけた。今後もシーズンや、受講者のご要望に応えたさまざまなスクールを実施できるようにしたい。

 

総括

レースに付随するスクールというと、どうしても「スピードアップ」や「レースに勝つ方法」など短絡的な手段を知りたい方もいると思うが、もっと手前にある「スキルアップ」が大事だと考えている。

自転車という二輪の乗り物をいかにうまくコントロールできるか?を、しっかり覚えてもらうことで、各自の体力を活かして安全に自転車を乗りこなすための術としての「スキルアップ」を多くの人に知ってほしい。そのために今、すでにレースを走れているライダーでもチェックを兼ねて受講すると、今後のさらなる成績アップにもつながると思う。

超初心者の方にもぜひ「スキルアップ!オフロードスクール」を受講していただき、1人でも多くの人に自転車本来の楽しさを知ってほしい。 最後に、今回もスクール企画に賛同いただき、ご協力いただいた宇都宮ブリッツェン、ロックスパーク、そして場所をご提供いただいた、わたらせサイクルパークに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

<レポート概要>
写真撮影:QNリーグ事務局
テキスト:須藤むつみ(QNリーグ事務局)
協力:松本敦(バックス事務所)
協力:宇都宮ブリッツェン、ブリッツェン☆ステラ、わたらせサイクルパーク

 

<参考資料:スクール要項>
2024-25わたらせクリテリウム第 2戦併催
スキルアップ!レーススクール:まもなくシーズンイン!シクロクロスから学ぶコントロール術

開催日:2024年 9月14日(土)

開催地:栃木県栃木市藤岡町藤岡字東原地先 (栃木県栃木市藤岡町1218-1)
藤岡渡良瀬運動公園内わたらせサイクルパーク
https://watarase-cyclepark.jp/access/

主催:QNリーグ実行委員会

協力:NPO法人サイクリスト国際交流協会、宇都宮ブリッツェン、わたらせサイクルパーク

今までのスクール開催実績はこちら
http://www.jbrain.or.jp/q-n-league/event-information.html