【KHS編】石井正則さんと最新&定番モデルを乗り比べ!いま選ぶべき折りたたみ自転車
目次
モデルごとにがらりと違う個性を見せる折りたたみ自転車。どれを選ぶかは、単に性能のよし悪しといった尺度だけではなく、乗り手の用途や価値観が決め手になる。
数多くの折りたたみ自転車を所有し、生活と旅の双方で活用してきた石井正則さんがKHSの2モデルを乗り比べた。経験と直感、そして「趣味性」に基づいたモノ選びに定評がある。もう一人の案内人は、「折りたたみ自転車で旅に出る」編集長である田村浩。輪行を駆使して全国を走ってきた経験を活かし、各モデルの特徴や適した用途を解き明かす。
石井正則
ドラマや舞台で幅広く活躍するタレント・俳優・ナレーター。初代ミニベロ親善大使や7代目自転車名人に任命されるほどの折りたたみ自転車愛好家。写真撮影、喫茶店めぐり、軽量ギアを活用したハイキング、オーディオ機器選びなど、自転車を軸に多彩な遊びを実践する趣味人でもある。
KHS F-20RC
ケイ・エイチ・エス エフ20アールシー
価格/22万円
「走る」折りたたみ自転車の元祖にして現在進行形
KHSはアメリカのブランドだが、折りたたみのFシリーズは、輪行+山岳という日本ならでのツーリングシーンに的を絞って開発された。大きな451タイヤ、フロントダブルのギヤ構成、そして多様なポジションと折りたたみ時の省スペースを両立させるブルホーンハンドルバーなど、他の折りたたみ自転車では見られない数々の特徴を備える。最上位グレードのRCではカーボン製フロントフォークを採用し、クロモリ製のメインフレームとソフトテール構造が相まって、フルサイズのロードバイクに比肩する滑らかな走行感覚を味わわせてくれる。ロングライドへの適性は、折りたたみ自転車で随一だ。
初登場は2002年という歴史のあるモデルだが、着実に進化を続けており、オプションのハンドルコラム取付アダプター(価格5500円)やフォールディングマグネットセット(価格6600円)を装着すれば、折りたたみ時のまとまりがいちだんと良好になる。高さ違いのハンドルコラムやキャリアも用意されており、乗り手の要望に応じて実用性を高めることができるのも魅力だ。
SPEC
フレーム/レイノルズ500クロモリハイドロフォーミング
フォーク/カーボン+アルミ
コンポーネント/シマノ・ティアグラ 10スピード
ギヤ/52・36T×11-25T
タイヤ/Q2 20(451)×1.1インチ
重量/11.1kg
折りたたみ寸法/高さ67cm×幅73cm×奥行き36cm
カラー/マットチタン、パールイエロー、ブラック×シルバー
インプレッション
石井:僕の感想では、折りたたみ自転車界でクラシックやビンテージと呼ばれるジャンルに入るモデル。もはやフィルムカメラ時代のライカを愛でるようなカルチャーに近い。そういう感覚で楽しめる小径車は少ないので、個人的には大好きです。バーディーなどのほうが歴史は古いのですが、クラシックさは乏しいですからね。いま、若い子たちがフィルムカメラを面白がるように、このモデルも再評価されて欲しい。車輪が451サイズなので走りは確かです。
田村:久しぶりに乗ってみると、やっぱりよく走るな〜とうれしくなります。ほどよい前傾姿勢が取れるブルホーンハンドルも扱いやすい。バーコントローラーやブレーキレバーなど操作系に古臭さはありますが、実用上は何の支障もありません。カーボンフォークとソフトテールの恩恵で乗り味はシルキー。ビワイチだろうがカスイチだろうがどんと来い!という感じ。折りたたみ時の寸法が大きめですが、この走りを実感すると納得できる範囲でしょう。
評価
KHS P-20RC
ケイ・エイチ・エス ピー20アールシー
価格/30万8000円
「パッケージバイク」という新たな選択肢
走りを追求するKHSらしい小径車の進化形が「パッケージバイク」。451サイズの車輪やソフトテールの採用などはFシリーズの上位グレードと同様ながら、あえてフレームの折りたたみ機構を廃した。つまり、厳密には折りたたみ自転車ではないのだが、前輪とハンドル、サドルを外し、フォークを反転させれば十分に輪行しやすい小ささに収まる。輪行で遠征したいけど、走りには一片も妥協したくない、という欲張りなサイクリストの要望に応えるのがP-20RCというモデルだ。
フレームにはタンゲプレステージジャパンのクロモリパイプを使用。熱処理を施して軽さと剛性感を向上させている。これにシマノ・105を中心とした22スピードのコンポーネントをセット。ドロップハンドルと相まって、完全にロードバイクといえるスペックだ。
走りの印象もロードバイクそのもの。451サイズの車輪に1-1/8と細身のタイヤがセットされており、舗装路を快走するシーンで真価を発揮する。ソフトテールのおかげで快適性も高いレベルにあり、700Cのロードバイクから乗り換えても違和感がないだろう。
SPEC
フレーム/タンゲプレステージジャパン 熱処理クロモリダブルバテッド
フォーク/カーボン+アルミ
コンポーネント/シマノ・105 11スピード
ギヤ/56・44T×11-28T
タイヤ/パワーツールズ 20(451)×1.1インチ
重量/10.2kg
カラー/マットチタン、キャンディレッド、クロームシルバー
インプレッション
石井:451タイヤを履いた小径車はみんなよく走りますが、これはもう本当にロードバイク。フレームを折りたたまないので、車輪を外したり輪行に手間はかかりますが、しっかりした走りは451系の中でトップクラスでしょう。食堂などで「本日のカルパッチョ(小)」とあるので頼んでみたら、意外と量が多かった、みたいな感じで、小径車であることを感じさせません。折りたたみ自転車として語るのはイレギュラーですが、舗装路の走りに関しては文句なしですね。
田村:走りを求めるなら折りたたみ機構はいらない、でも輪行は積極的に楽しんで欲しい……という設計者の意図を強く感じます。それに賛同するなら、これ以上に頼もしい自転車はないでしょう。個人的には折りたためるFシリーズのほうにロマンと愛着を感じますし、それほど走りに違いがあるとは感じませんでしたが、ガンガン踏んでハイペースで走りたい人の期待に応えてくれる一台だと思います。オーソドックスなダイヤモンド形状でクロモリらしいスリムなフレームデザインも魅力。背負えるタイプのスリムな縦型輪行袋(価格1万1000円)があるのは面白いですね。
評価
今回のKHSを紹介しているサイクルスポーツ特別編集「折りたたみ自転車で旅に出る」は好評発売中です。誌面では、他の車種のインプレッションも掲載しています。