【カラクル編】石井正則さんと最新&定番モデルを乗り比べ!いま選ぶべき折りたたみ自転車

目次

モデルごとにがらりと違う個性を見せる折りたたみ自転車。どれを選ぶかは、単に性能のよし悪しといった尺度だけではなく、乗り手の用途や価値観が決め手になる。

数多くの折りたたみ自転車を所有し、生活と旅の双方で活用してきた石井正則さんがカラクルの2モデルを乗り比べた。経験と直感、そして「趣味性」に基づいたモノ選びに定評がある。もう一人の案内人は、「折りたたみ自転車で旅に出る」編集長である田村浩。輪行を駆使して全国を走ってきた経験を活かし、各モデルの特徴や適した用途を解き明かす。

石井正則さん

石井正則
ドラマや舞台で幅広く活躍するタレント・俳優・ナレーター。初代ミニベロ親善大使や7代目自転車名人に任命されるほどの折りたたみ自転車愛好家。写真撮影、喫茶店めぐり、軽量ギアを活用したハイキング、オーディオ機器選びなど、自転車を軸に多彩な遊びを実践する趣味人でもある。

CARACLE S 451RS

S451RS

カラクル・エス451アールエス
価格/25万3000円

驚異の折りたたみ機構で小ささと走りを両立

「カラクル」シリーズを世に送り出したテックワン。金属加工を主な事業とする“大阪の町工場”だが、30年来の自転車好きである代表の吉田明弘氏が新事業として選んだのが折りたたみ自転車だった。「小さいモノを作るのは日本のお家芸」という自負を形にしたのが、2015年に第一弾が登場したカラクルS。十分な走行性能と折りたたみ時の小ささ(14インチ車輪以上の自転車では世界最小)を極限まで追求した意欲作である。

最初のモデルは20インチ(406サイズ)の車輪とフラットハンドル仕様だったが、車輪を451サイズにアップし、ドロップハンドルを採用した新モデルが登場。それがこの「451RS」だ。

折りたたみの基本構造は前モデルと同様ながら、ハンドルステムのクランプ部を工夫することで、ドロップハンドルが車輪の間に収まるという巧妙な仕組みを実現したのが451RSの特徴。そのため、ドロップ部を短くした特殊なハンドルを採用しているが、それでも最新のSTIレバーを使用できるというメリットは大きい。車輪の大径化と相まって、よりロードバイクに近い走行感覚を得た。

折りたたみスタイル

車輪が451サイズになったことで、フレームの小ささが一層際立つ

スーツケースに収まる

追加の航空料金が不要な寸法(3辺合計158cm未満)のスーツケースに収まるカラクルS。その小ささは451RSでも健在

BBまわり

一見すると極低床フレームだが、BB位置が適切なので走りの印象は自然

特殊なハンドル

下ハンを握ってもがくような走りはできないが、複数のポジションが得られる

SPEC
フレーム/6061アルミ
フォーク/カーボン
コンポーネント/シマノ・ティアグラ 10スピード
ギヤ/52T×11-32T
タイヤ/デューロ・DB-7043スティンガー 20(451)×1インチ
重量/9.8kg(ペダル、リフレクターなし)
折りたたみ寸法/高さ67cm×幅50.5cm×奥行き33cm
カラー/ガンメタリック、オレンジ、ココア、ホワイト、レッド、ブルー

インプレッション

石井さん

石井:走りと小ささの両立ぶりがいいですね。たたむとこんなに小さくなるんだ!という驚きやワクワク感がたまりません。車輪が大きめな451サイズになったので、走りの「地力」もあります。独自のドロップハンドルはかなりクセが強いですが、それを乗りこなしてやる、使いこなしてやるぜという気にさせてくれます。451サイズを履いた他のモデルは、どうしても走りが最優先になってガジェット感は薄れますが、この子は面白いですね。

田村さん

田村:折りたたむ箇所が多く、しかも直感ではわかりづらい手順なので、苦手意識があったカラクルSですが、3回ほど練習したら慣れてしまい、「小さくなるでしょ」と自慢したくなります(笑)。展開すればホイールベースが106cmもあるので、安定感も高い。このモデルは車輪が451サイズになって加速感や滑らかさは格段に向上しましたが、タイヤが細いので気を使うシーンもあります。扱いやすい太さのタイヤを履いた従来の20インチモデルにもひかれますね。

評価

S451RSの評価

CARACLE COZ DB

コージーDB

カラクル・コージーディービー
価格/30万9100円(シマノ・105仕様基本モデル)、36万3000円(シマノ・105仕様ライト1×11モデル)、58万7400円(シマノ・アルテグラDi2仕様)、16万9400円(フレームセット)、22万3300円(フレーム+ホイールセット)*ほか各種設定あり

フルカーボンは伊達じゃないコンパクトロードバイク

2018年、カラクルの第二弾として速さと軽さをテーマに生み出されたのがCOZだ。折りたたみ自転車では極めてまれなカーボンフレームを採用し、7kg弱の驚異的な軽さと451ホイールによって飛び抜けた走行性能を獲得し、業界をざわつかせた。3トライアングルと呼ぶフレーム形状も斬新で、小径車の課題だったフロント周りの強度を確保しながら軽さも実現。たためるロードバイクとして確かな地位を得て、多くのファンを獲得した。

その印象もまだ鮮やかな2020年、COZは早くも第2世代モデルが登場した。車輪の固定に精度と剛性面で有利なスルーアクスルを採用し、フラットマウント規格のディスクブレーキを装備。フルサイズのロードバイクで主流になってきた規格を導入することで、最新コンポーネントの恩恵を余す所なく享受できるモデルとなった。

折りたたみ時は、後輪を縦方向に回してフレームの左側に添え、外した前輪をダウンチューブに固定する。準備にやや時間がかかり、収納サイズも大きめだが、それらを補って余りあるほどの圧倒的な走行性能を体験させてくれる。

折りたたみスタイル

走行性能が最優先で設計されているが、ここまで小さくなる

ヘッドチューブまわり

テーパーヘッド仕様になったフレーム・フォークセットの重量は約1.75kg。シマノ・アルテグラで組んだ完成車は7kg台に仕上がる

クイックイットシステム

リアフレームを固定するQuick-itシステム。交換可能なエラストマーが振動を吸収

リヤフレーム

BB下部を回転軸としてたたむリアフレーム。試乗車は近日発売予定のカーボン製バトンホイールを装備

SPEC
フレーム/カーボン
フォーク/カーボン
コンポーネント/シマノ・アルテグラDi2 12スピード
ギヤ/52・36T×11-30T
タイヤ/パナレーサー・ミニッツライトPT 20(451)×1-1/8インチ
重量/7.4kg(ペダルなし)
折りたたみ寸法/高さ71cm×幅88.5cm×奥行き33cm
カラー/マットブラック

インプレッション

石井さん

石井:これは走りますね。すごかった。何もかもがちゃんとした自転車で、めっちゃカッコいい。愛でるようなガジェット感はありませんが、走る機材として確かな仕事をしてくれます。折りたたみ自転車としては高価な部類に入りますが、比べるべきはカーボン製のロードバイクでしょう。そうなると、決して高くありませんし、むしろこれだけのものがこの価格で、と思えます。走りの星は5までしかありませんが、これは6とか7を付けたいところです。

田村さん

田村:折りたためるロードバイクという位置付けのモデルはいくつかありますが、COZがもっとも先鋭的で走りの実力が高いと感じました。カーボン製フレームということで、輪行中の取り扱いには慎重を要する面もありますが、走っている状態で不安を感じる要素はいっさいありません。小径や折りたたみというカテゴリーを超越し、ロードバイクと一緒に走るのが当たり前の自転車。むしろ、ゆっくり走る気分にならないのが、欠点と言えば欠点かもしれません。

評価

コージーDBの評価

 

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