【5リンクス編】石井正則さんと最新&定番モデルを乗り比べ!いま選ぶべき折りたたみ自転車

目次

モデルごとにがらりと違う個性を見せる折りたたみ自転車。どれを選ぶかは、単に性能のよし悪しといった尺度だけではなく、乗り手の用途や価値観が決め手になる。

数多くの折りたたみ自転車を所有し、生活と旅の双方で活用してきた石井正則さんが5リンクスの2モデルを乗り比べた。経験と直感、そして「趣味性」に基づいたモノ選びに定評がある。もう一人の案内人は、「折りたたみ自転車で旅に出る」編集長である田村浩。輪行を駆使して全国を走ってきた経験を活かし、各モデルの特徴や適した用途を解き明かす。

石井正則さん

石井正則
ドラマや舞台で幅広く活躍するタレント・俳優・ナレーター。初代ミニベロ親善大使や7代目自転車名人に任命されるほどの折りたたみ自転車愛好家。写真撮影、喫茶店めぐり、軽量ギアを活用したハイキング、オーディオ機器選びなど、自転車を軸に多彩な遊びを実践する趣味人でもある。

5LINKS 5LINKS 2.5

5リンクス2.5

ファイブリンクス・ファイブリンクス2.5
価格/13万2000円(7段変速仕様)、143,000円(シマノ・カプレオ9段仕様、アイボリーホワイト)、15万9500円(同、ブルーメタリック)

誰もが驚き、 笑顔になるスライディング式折りたたみ

5リンクスは、サイクリストの五百住守彦氏が2009年に立ち上げたブランドだ。自身が自転車通勤で感じた駐輪問題などの不便さを解決するために、2000年代初頭から折りたたみ自転車の開発に取り組み、試作と生産工場の検討を繰り返して最初に実用化したのが、14インチを採用した5リンクス1だった。独創的なスライディング式の折りたたみ構造と接地面積が小さな形状は、列車内に置かれたハーフサイズのゴルフバッグを見て、着想したという。

グッドデザイン賞を受賞した初代モデルの好評を受け、車輪を16インチに拡大した5リンクス2が2015年に登場。さらに改良を加えて安定感ある走りを追求したのが、ここで紹介する2.5だ。

本モデルの特徴は、メインフレームは折らず、ハンドルポストとシートポストを工夫してスリムな折りたたみ形状と寸法を実現していること。パシフィックサイクルズのキャリーミーに考え方は似ているが、構造は独創的だ。折りたたみ手順は簡単で所要時間も短い。そして、ふだん使いから休日の小旅行まで活用できる快適な乗り味を体験させてくれる。

折りたたみスタイル

フレームを縦に置き、ハンドルとシートポストを添える形状

折りたたみ部分

ヘッドチューブ周りとハンドルのクイックレバーを開放することで折りたたむ

サドルの高さを変えることなくたたむことができる

シートポストにヒンジを備えた延長ポストを備えており、サドルの高さを変えることなくたたむことができる

スライディング構造

ヘッドチューブから延びた独創的なスライディング構造によって、ハンドルと前輪をフレームに沿わせることができる

SPEC
フレーム/アルミ
フォーク/アルミ
コンポーネント/シマノおよびマイクロシフト 7スピード
ギヤ/53T×11-28T
タイヤ/オリジナル16×1.5インチ
重量/10.0kg(スタンドなし)
折りたたみ寸法/高さ102cm×幅34cm×奥行き40cm
カラー/ブルーメタリック

インプレッション

石井さん

石井:ハンドルの近さと高さからアップライトな乗車姿勢になるので、とても親しみやすいですし、周りに警戒感を与えない。キャリーミーやK3ほど走りのクセは強くないので、小径車に不慣れな人にも勧めやすいですね。自分が疲れている時も一緒にいると元気になれる友達、といった印象。折りたたみ操作も楽しいですし、価格的にも家に招きやすい。遊びに来なよって家に招いたら、お父さんお母さんにも嫌われない友達……みたいな(笑)。僕は評価高いです。

田村さん

田村:個性的な折りたたみ方法と、自然な乗車感覚を兼ね備えています。トップチューブとダウンチューブの間に持ち手を兼ねるパイプが存在するので、見た目の印象よりもフレーム全体にカチッとした剛性感があります。試乗車は7速モデルでしたが、明らかにトップ側のギヤが足りません。筆者だったら、最小9Tのギヤを備えたカプレオ仕様モデルを選びます。廃番のメカですが、5リンクスでは万全のアフター体制を整えているそうです。

評価

5リンクス2.5の評価

5LINKS MUSASHI/R

ムサシR

ファイブリンクス・ムサシアール
フレームセット価格/26万4000円

折りたためる「普通」のロードバイク

5リンクスの「ムサシR」は、折りたたみ自転車イコール小径車ではないことを教えてくれる。ロードバイクで主流の700Cという大きな車輪を採用しながら、輪行が苦にならないコンパクトさを実現した意欲作だ。開発に4年の歳月をかけ、2020年に登場した。

5リンクスの代表であり、各モデルの発案者である五百住守彦氏によると、ムサシR開発のきっかけは「反骨」だったという。走る折りたたみ自転車は451サイズを採用する、という先行ブランドが築き上げた常識に挑戦し、小径車という枠を超えた折りたたみ自転車をめざした。本当の意味で走る自転車には、700Cの車輪がふさわしいという判断だ。

ムサシRのメインフレームは、後ろ三角を前方へ回転させながら収納することができ、フォークの反転と合わせることで、ほとんどフレーム前三角しか存在しないように見えるほど小さくなる。後輪の着脱ギミックも斬新だ。こうした凝ったフレームの製造を、埼玉県(旧武蔵国)を中心とした国内で行なっている。それが「武蔵」というネーミングの由来だ。

折りたたみスタイル

700Cの車輪とほぼ同じ寸法まで小さくなる

折りたたむ

フレームの後ろ三角を前方へスライドさせ、前三角に重ねるように収納する

カセットをフレームに残したまま後輪を外すことができる

オリジナルのホイールシステムによって、カセットをフレームに残したまま後輪を外すことができる

ハンドルの角度をワンタッチで変えることができるエクステンション

ハンドルの角度をワンタッチで変えることができるエクステンション。ニットーのUI21BXステムに対応。安全ピンがあるので固定力は完璧

SPEC
フレーム/7N01アルミ
フォーク/カーボン
サイズ/450、500、530mm
重量/1.92kg(500サイズフレーム)、370g(フォーク)
カラー/アルマイト単色、アルマイ+リキッド焼付塗装(各色。本体価格プラス2万2000円〜)

インプレッション

石井さん

石井:700Cというフルサイズの自転車を折りたたもうというチャレンジ精神がすごい。車輪を外すので、それなら普通のロードでいいじゃないですかという気もしますので評価が分かれそうですが、ここまで小さくなると輪行のしやすさは抜群ですね。夢への第一歩という感じがして、この一台から新しい文化が始まるかもしれません。携帯電話も登場したばかりの頃は肩から下げるほど大きかったですが、今はスマホ。そういう進化を期待したくなるモデルです。

田村さん

田村:何の予備知識もない人が乗れば、まったく普通のロードバイクにしか感じられないはず。折りたたみによるネガが一切感じられず、アルミフレームらしいキビキビした走りが楽しめます。その上で、リアサス付きMTBにヒントを得たというフレームの折りたたみギミックがすばらしい。ただし、完全に収納するまでの作業には、一般的なロードバイクと同じくらい時間を要しました。それでも、輪行時に自転車が小さくなることは、あらゆる面で好ましいでしょう。

評価

ムサシRの評価

 

今回の5リンクスを紹介しているサイクルスポーツ特別編集「折りたたみ自転車で旅に出る」は好評発売中です。誌面では、他の車種のインプレッションも掲載しています。

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