テーマを決めて旅に出よう!折りたたみ自転車と相性がいい「夜景」
目次
人が創り出した絶景が夜景。なかでも工場夜景は幻想的だ。その聖地たる川崎臨海部へ!
工場夜景の聖地 川崎の臨海部へ
人工島が連なる川崎の臨海部をめぐる。一般的にはサイクリングの舞台として考えられないエリアだが、工場夜景というテーマに興味があれば、一時も飽きることがない。全体に交通量が多いので、歩道の走行も考慮しよう。
走行距離 32km
今回の旅に使用したバイク BESV PSF1
価格:29万8000円
問・ベスビージャパン
乗り手に優しい小さな力持ち
ブランド10周年を迎えたベスビー。小径20インチを採用したeバイクのPSシリーズは、同ブランドの顔といえる人気モデルであり、なかでも折りたたみ機構を採用したPSF1は、日本のライフスタイルに溶け込んで多くのユーザーに迎えられている。最大の魅力は、最長95kmの走行距離を誇る頼もしさ。そして、リアハブモーターと洗練されたシステム設計による自然なアシスト力が持ち味。フロントフォーク・前輪を後方へ収納し、リアフォークと後輪を前方へたたむメカニズムは直感的で扱いやすく、ロック機構など安全面の信頼性も高い。高いハンドルポストによって、誰もが違和感なく乗車できるポジションと良好な視界を得ることができる。折りたたみeバイクとして、間違いない選択肢だ。流麗なスタイルも魅力。
体験に基づいたプランニングで訪れよう
旅のテーマやモチベーションとして、夜景を見るというのは定番だ。なかでも熱心なファンが多いのが工場夜景。24時間動き続ける工場プラントは、日が暮れると明かりが灯され、幻想的な景色を生み出してくれる。北海道の室蘭市、三重県の四日市市、福岡県の北九州市、そして神奈川県の川崎市が「日本四大工場夜景」と呼ばれている。
サイクリングと夜景の相性は、他の交通機関に比べてよい面も多いが、不都合もある。
よい面の第一は、小回りが効くから思う存分に夜景を楽しめること。駐車場を探したり(工場地帯には少ない)、交通機関の運行時刻を気にせずに訪れることができる。暑い夏場などは、夜間のほうがサイクリングそのものが快適だ。
不都合な面は、工場は輝いていても道中が暗いため、土地勘や経験がないとめざすポイントがわかりづらく、迷いやすいこと。空気が澄んだ冬場の夜景は格別だが、防寒対策が重要になってくる。
これらをかんがみると、工場夜景サイクリングは、日中に予定ルートを訪れておくのが無難である。明るい時間帯の工場群も壮観なのは間違いない。そして、夜景に臨む本番も、まだ日が十分に残った夕刻にスタートしよう。一番期待する夜景ポイントに、日没前後のいわゆるトワイライトタイムに到着するのがベスト。刻々とあたりが暗くなり、それと反比例して輝きを増していく工場群は最高にエモい。
前置きが長くなったが、川崎の工場夜景をめぐるルートへ出発しよう。京浜工業地帯を代表する広いエリアなので、欲張り出すとキリがない。代表的な夜景ポイントが点在する、千鳥町、東扇島、そして浮島町に絞ろう。スタート&ゴール地点はJRと京急が利用できる川崎駅にすれば各方面からアクセスしやすいが、あえて東京側の羽田(弁天橋)とした。すると、2022年に開通したばかりの多摩川スカイブリッジを渡って川崎へ入ることができ、新鮮味が増すだろう。東京側はスロープもしくはエレベーターで橋に上がることになるが、むしろ走るより楽で、クルマを気にすることなく川崎の臨海部に迫ることができる。橋上を吹く風は爽やかだ。頭上には色鮮やかな旅客機が舞う。小さな旅の序章として完璧なシーンである。
千鳥町から海底トンネルを抜けて、まずは最奥となる東扇島へ向かう。明るいうちに行程の半分はこなしておきたい。また、入り組んだ工場地帯に入ると、飲食店やコンビニなどを見かけなくなる。走り出す前に腹ごしらえを済ませておくか、少々の補給食を用意しておけば安心だ。
大自然にも劣らない人工の絶景
東扇島へは、長さ約1kmの海底トンネルを利用する。やや荒んだ印象の公園の奥に入り口があり、暗い時間帯に初見で見つけるのは困難だ。明るいうちに進もう。およそ150段もある階段を押し歩き(自転車用のスロープがある)真っすぐなトンネルに至る。壁一つ向こうをクルマが疾走しているので、エンジン音が鈍く響く。そして「ここは歩行車道です。自転車は押してください……」という自動アナウンスがこだまする。少し不気味だ。
トンネルを抜けて上陸した東扇島には、巨大な倉庫が林立する。川崎市民の憩いの場としても整備されており、川崎マリエンというコミュニティ施設がそびえている。高さ50mの展望室に上がれば、これから訪れる工場群を一望できる。1階には、千鳥運河に漂着したという巨大なホオジロザメの剥製が展示されており、ここが人工島でありながら自然とのつながりが確かにあることを感じさせる。近くの東扇島東公園は爽快なウッドデッキが設けられており、開放感に満ちている。
再びの海底トンネルで千鳥町に引き返し、川崎の工場夜景で屈指の人気を誇るポイントである貨物ヤード前に向かおう。いわゆるコンビナートが一般道に沿って立ち並び、圧巻である。
人工島を行き来するので、往復したり櫛形のルートになってしまうが、走る方向が違えば目に入る光景も新鮮だ。タイミングがよければ、小ぶりな電気機関車が牽引する貨物列車を見ることもできる。浮島町の工場夜景も、千鳥町に勝るとも劣らない。ゴール前に再び渡る多摩川スカイブリッジが終盤のごほうび。誘導灯がまぶしいほど輝く羽田空港を間近に眺めることができる。こうした夜の絶景をテーマにすれば、見慣れた街も新しい発見に満ちている。
今回の工場夜景サイクリングを紹介しているサイクルスポーツ特別編集「折りたたみ自転車で旅に出る」は好評発売中です。ベスビー・PSF1を始め、誌面では、他の車種のインプレッションも掲載しています。