ゆめしま海道でリトリート。 サイクリングとアウトドア・アクティビティで整う2泊3日ひとり旅(後編)
目次
ゆめしま海道(愛媛県上島町)は瀬戸内海の4つの離島を結ぶ道。信号が一つもないストレスフリーのドリームアイランドで癒される2泊3日のひとり旅をお届けする(後編)
朝から癒される
いよいよゆめしま海道じてんしゃ島旅も最終日。爆睡していたところ、民宿中塚のお母さんの「さこやん、みんなご飯食べてるよ~」の優しく、心地の良い声で目覚める。そう、実に癒される声なのだ。
どうでもいい話かもしれないが、筆者自身は、自分の母親が幼少期から現在に至るまで苦手なので、このゆったりとした時間が流れる島で、こんなお母さんに育てられてたら、もっと素直で穏やかな人間になってたのでは?とすら思ってしまうほどお母さんのファンなのだ。
ままっ、それはさておき、今朝もおいしい朝食をいただき、お母さんに「ほな行ってきます。また、帰ってくるわ~」とお別れし、eバイクにまたがった。お土産に天日干しのひじきとみかんをいただいたのは内緒にしておこう……。
少しひんやりとしているが、澄み切った空気の中を走り出すと、昨日の青いレモン無限ハイボールのほろ酔いがほどよく抜けていく気がする。ままっ青いレモンのおかげで二日酔いは、ほぼなかったんやけどね……。
出会いは旅の醍醐味の一つ
最終日の今日は、昨日一緒に遊んでくれた華ちゃんが出身地の岩城島を案内してくれることになっていた。
すでに何度も訪れている岩城島だが、ジモッティならではのスポットを紹介してくれるかもと、期待に胸を膨らませ民宿中塚から3つの橋を渡り10kmほど走った先、岩城港の前にある「リモーネプラザ(岩城観光センター)へと向かった。
「それにしても、こんなおっさんによく付き合ってくれるな~」と不思議に思いながらも「出会いは旅の醍醐味の一つやし、ままっええか」と勝手にええように解釈し、常に海を眺めながら「しっかしええ道やな~、ゆめしま海道は~」とニヤニヤしながらペダルを回す筆者。はたから見たらだいぶ怪しかったと思われるが、幸いにもすれ違う人が少なかったのでとりあえずセーフだったいうことにしておこう(笑)。
華ちゃんが最初に連れて行ってくれたのは、リモーネプラザからわずか400mのところにある「岩城郷土館(旧島本陣)」。
この建物は江戸時代に伊予松山藩主が参勤交代の時に立ち寄る島本陣(宿泊所)だったそう。自転車業界では「旧街道おじさん」として知られている筆者は、「参勤交代で使われていた本陣」と聞くだけで、すぐにテンションが上がってしまうのだ。
しかも昨日のたわいのない会話の中で、筆者が歴史の道が好きと言ったことにピンときて、ここを案内してくれたと聞き、思わず「ヒデキ感激~!」とモノマネをするものの、二人にはまったくウケず、感謝の気持ちが伝わらず凹むおじさんだった。
岩城郷土館で、華ちゃんが知り合いのおばちゃんにばったり出会い、柿をもらっていたが「あの~私、自転車なんすけど……」とは言えない華ちゃんが実にほほえましい。
そして次は華ちゃんのイチオシスポット、西部(にしべ)海岸へとeバイクを走らせた。
その途中、小さな造船所だったり、防波堤にあるお手製の階段だったり、気になるものがあればすぐに止まって写真を撮ったりしてサイクリングを楽しんだ。車では気づかない風景を見つけ、そしていつでも気軽に止まれるのもサイクリングの魅力の一つ。
目的地の西部海岸は、華ちゃんが帰省すると必ず立ち寄るほど子供の頃から大好きな場所で、とにかく水がきれいで、ここに来ると全てを浄化してくれる場所だと教えてくれた。確かにそこは穏やかな波、きれいな水、そして大三島と生口島にかかる多々羅大橋が一望できる最高のロケーションだった。ここで読書しながら、お昼寝もええなと思ったので、再訪の楽しみが増えた。
華ちゃん、ええとこ教えてくれてありがとう~。
きれいな海岸と景色に癒された後、ぼちぼちお昼にしようということになり、華ちゃんが「おいしいベーグル屋さんがあるので、どうですか?」と言ってくれたので、またまた、朝出発した弓削島に戻ることとなった。て、言うても10kmちょっとやし、eバイクやし、何より常に海を眺めながらのサイクリングは、河川敷サイクリングと違って飽きることのない景色を楽しめるので、まったく苦にならない。
離島を感じさせないアクセスの良さ
遅めのランチを食べた後、そのまま三人で弓削島をサイクリングし、写真を撮ったり、お茶したりして楽しんでいたのだが、ふと時計を見ると、もう17時前。行きのルートと同じく、弓削港から因島の土生(はぶ)港へ渡り(乗船時間10分)、土生港前から高速バスで福山に向かう予定だったので、バスの時刻表を確認すると、最終便が17:20だと知る。「アカン、帰られへん、延泊か……」と一瞬、頭の中が真っ白になりかけたが、そういえば昨年来たときは、生名島の立石港から広島県の三原港経由で帰ったなと、思い出し、船の時刻表を調べたら、全然余裕だったので、華ちゃんと唯香ちゃんに深々とお礼をし、一人生名島へと向かった。
<帰路>
土生(はぶ)商船
生名島・立石港 17:30発→ 三原港 18:09着(料金:1500円)
三原港→ 山陽新幹線 三原駅 徒歩4分
(※三原港から広島空港へはリムジンバスで約40分)
前編でも述べているが、離島へのじてんしゃ旅というと、ものすごくハードルが高いイメージをもたれている方も少なくないと思う。しかしながら、上島町はこの日のように帰路の手段を容易に変更できるのだ。
船に乗らないと来れない島ではあるが、本州方面への船は一日に140便も出ているので、不便さを感じることはない。
そして、サイクリングだけでなく、キャンプ、船釣り、レモン狩り、いちご狩り、BBQ、ビーチヨガ、サップ、シーカヤック、ヨット……、さらにはおいしい食事に子供からお年寄りまで誰もが挨拶をしてくれる優しい島の人たち。2泊3日では全然遊び尽くせない……。
帰ってきたくなる島、そしてリトリートが叶う島、ゆめしま海道……。今年もありがとう~