これからサイクリングを始めてみたい人にぜひ知ってほしいこと
目次
近年、クロスバイクやロードバイクといったスポーツ自転車でサイクリングする人をよく見かけるようになりましたね。自転車はとかく“移動の手段”として捉えられがちですが、実はこうした“サイクリング”という楽しみ方もあるんです。この春から新たに自転車を手に入れサイクリングを始めてみようと思っている人に向けて、ぜひ知っておいてほしいポイントを編集部でまとめてみました。
サイクリングの魅力とは?
①人力で電車や車を使って行くほどの距離を移動できる

これまでは“かなり遠い”と思っていた場所も、自転車なら意外に脚を伸ばせてしまうかも
舗装路に適したスポーツ自転車の場合、簡単に時速20〜25kmで走り続けられます。なので、10kmくらいなら初心者でも無理なく走破でき、慣れてくれば1日に50kmを超える距離を移動することも十分に可能です。
②自転車だからこそ出会える景色・味わえる達成感がある

“自分の力でこんなところまで来れたんだ”。たとえそこがふだんは車や電車で訪れるうな場所でも、自転車で訪れるとまったく違った見え方がするに違いありません
徒歩やランニングよりもはるかに速く、でも車や電車よりも遅い。この“絶妙な速度感”だからこそ見えてくる景色があるものです。また、自分の力でその場所まで移動してきて見るからこそ味わえる、大きな達成感もサイクリングの魅力の一つと言えるでしょう。
③無理なくできる運動でありダイエットにも最適である

自転車なら1時間〜2時間くらいずっと淡々と運動を続けられます。もちろん休憩を入れながらですが、丸1日でも走り続けられてしまいます。こんなに長い時間“プレイ”し続けられるスポーツって、他になかなかないですよね
ランニングのように膝などの関節に負担がかかりやすい運動と違い、自転車のペダリングは関節に負担がかかりにくく長時間続けられる運動だと言われています。そのため有酸素運動としての効果が高く、ダイエットにも最適なのです。景色が移り変わっていくことで、飽きることなく楽しみながら運動し続けやすいのも利点です。
④食事が数倍おいしくなる

例えば朝に出発して海を見に出かけたとします。お昼時に浜辺の海鮮丼屋に入る頃にはもうお腹がペコペコ。運動してお腹が減っているときの食事って、格別な味ですよね
有酸素運動としての効果が高く長時間続けやすいということは、それだけお腹も減りやすくなり、走り終わった後の食事がいつもの何倍もおいしく感じられるということでもあります。また、サイクリングで出かけた場所で入った飲食店での食事も、そこまでに消費したカロリーを考えると“何の罪悪感もなく”食べられちゃうんです。
サイクリングに適したスポーツ自転車は? そろえるべき道具は?
では、サイクリングを楽しむための最初の一台としておすすめなスポーツ自転車とは? 編集部がおすすめしたいのは、「クロスバイク」です。

クロスバイクの例。写真はアンカーの「RL1」(こちらは油圧式ディスクブレーキタイプ/7万4000円)
クロスバイクはスポーツ自転車に不慣れな人でも扱いやすいという特性があります。また、やや太めなタイヤが装着されていて乗り心地が良い一方で、舗装路で速度を上げやすく軽やかな走りも楽しめます。通勤や通学といった日々の移動でも活躍してくれるので、万能タイプと言えるでしょう。
価格は6万円台〜9万円台が相場となっており、スポーツ自転車の中では手に入りやすい価格帯となっています。その点からも、最初の一台としてぴったりです。
では、自転車本体以外に最低限装着すべきアイテムは何でしょうか?

ヘッドライトとベル

リヤリフレクターとテールランプ
まず、安全のためには欠かせないヘルメット(後述)と、ヘッドライト、ベル、そしてリヤリフレクターです。ヘッドライトは最初から付属してくるクロスバイクもあり、ベルとリヤリフレクターは多くの製品で初期で付属します。
できればテールランプも装着すると後続車からの被視認性が高まり、より安全性が高まります。
忘れてはいけない自転車保険
道具ではないのですが、自転車保険への加入も一種の“必須アイテム”と考えてください。自転車はとかく交通弱者と捉えられがちで、例えば車に衝突されてけがをしたらどうしよう、と思う人が多いことでしょう。しかし一方で、自転車は自分自身が事故を起こしてしまい、自らが加害者となってしまう可能性もあるのです。過去には、自転車走行中に歩行者に対して衝突事故を起こし、自転車を運転していた側へ1億円を超える賠償金を支払うよう命じる判決が下された事例もあります。
もちろん絶対に自分自身が事故を起こさないよう気をつけることが大切ですが、人間は完璧ではなく、どんなに気をつけていても“万が一”があります。もしも自分が加害者になってしまったときにその補償ができるよう、自転車保険へは必ず加入しておきましょう。近年は手頃な月額料金で加入でき、さまざまな付帯サービスがついた自転車保険商品が販売されているので、自分に合ったものを見つけてみてください。
最初はどんなところを走ったらいい?
念願のスポーツ自転車を手に入れたとして、いきなり本格的に走りに出かけるのはちょっと怖いですよね。

関東圏であれば荒川サイクリングロードや江戸川サイクリングロード、関西圏であれば淀川サイクリングロードなどが代表例で、大都市でも身近な場所にサイクリングロードはあります
そこでおすすめなのがサイクリングロードです。自動車が来ないので、安心して走ることができるでしょう。また信号に当たることが少なく淡々と走り続けられるので、運動として乗るにも最適な場所です。まずはこうした自動車が来ない道を走ってみて操作に慣れたり、体力をつけていってみてください。

初心者のうちは国道や交通量の多い都道・県道を走りがち。でも、よく探すともっと走りやすくて安全な道をつないでいけるものです
一般道を走る場合は、できるだけ幹線道路など交通量の多い道を避けるのがコツです。地図を見て探しては実際に走ってみて、あなたのお気に入りの走りやすいルートを見つけてみてください。
一度は走ってみたい 編集部おすすめコース〜「ナショナルサイクルルート」
ある程度慣れてきたら、本格的なサイクリングに挑戦してみたくなってくるでしょう。そこで編集部がおすすめしたいのは「ナショナルサイクルルート」です。
ナショナルサイクルルートとは、日本を代表し世界に誇りうるサイクリングのルートとして国が指定したものです。2025年3月現在、全国に6つのルートが制定されています。以下に各ルートの概要をまとめてみますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
太平洋岸自転車道

静岡県の御前崎近辺では、サイクリングロードから太平洋と風車のコントラストが楽しめる絶景ポイントがあります
千葉県銚子市から神奈川県、静岡県、愛知県、三重県の各太平洋岸沿いを走り、和歌山県和歌山市に至る延長1487kmの自転車道です。富士山をはじめ、日本を代表する観光地・景勝地が多数存在するルートです。
つくば霞ヶ浦りんりんロード

霞ヶ浦 湖岸道路の風景。ロケーションによっては湖と筑波山の景色が楽しめます
「つくばりんりんロード」と霞ヶ浦を周回する湖岸道路を合わせた全長約180kmのルートです。その中でも霞ヶ浦を一周する部分は“カスイチ”と呼ばれ、都心から近くアクセスもしやすいことから関東圏では定番の一周サイクリングルートとして人気です。
ビワイチ

琵琶湖北部、賤ヶ岳(しずがたけ)近辺がビワイチのハイライトと言われます
琵琶湖を 反時計回りに一周する約200kmのルートです。“ビワイチ”の愛称で親しまれ、関西における一周サイクリングルートの定番中の定番となっています。あの琵琶湖を自転車で一周するという達成感、喜びの大きさは一生忘れられない思い出になるでしょう。
しまなみ海道サイクリングロード

亀老山の上りから見渡せる来島海峡大橋は、まさに“多島美”。息を飲むような絶景を堪能できるのがこのルート最大の魅力です
広島県尾道市と愛媛県今治市とを結ぶ、瀬戸内海を横断する約70kmのルートです。“絶景度合い”で言えば間違いなく全ルート中最高峰で、自転車乗りなら一度は行ってみたいと憧れるルートです。
富山湾岸サイクリングコース

富山湾と立山連峰、さらにレトロな鉄道の3要素が合わさった絶景が楽しめます
富山県氷見(ひみ)市から朝日町までの富山湾岸沿いに整備された、延長102kmに及ぶサイクリングルートです。富山湾は「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟するほどの美しさで、その景観を余すことなく楽しめるでしょう。
トカプチ400

これぞ“ザ・北海道”という景色を味わえるのがこのルートの魅力です
北海道東部に広がる十勝平野を8の字に結ぶ、延長403kmのルートです。北海道の壮大で広大な大地を、山から平野へ、平野から海へと自転車で旅をする。そんな最高な体験が待っています。
サイクリングをするときに注意すべきこと
自転車は楽しい乗り物である一方、一歩間違えば事故を起こす/事故に遭ってしまう危険性をはらんでいることを忘れてはなりません。そこで、安全にサイクリングを楽しむために最低限次のことに気をつけてほしいと思います。
交通ルールを守る
とりわけ、次の2点を守ることが大切です。
原則として車道の左側を走行する

近年は、写真のように自転車の通行すべき場所を視覚的に示したピクトグラムが設けられている道路がよく見られるようになってきました
道路交通法では、自転車は「軽車両」と位置づけられています。つまり、自動車と同じ車両なのです。よって、歩道と車道の区別がある道路では、原則として車道の左側を走行しなければなりません。
歩道はあくまで“例外”で、自転車の通行が認められている所で、歩行者の通行を妨げないように徐行して通行して良いと定められています。この徐行とは、すぐに止まれる速度とされています。先に「自分が事故を起こして加害者になってしまう可能性がある」と説明しましたが、歩行者との事故のおそれがあるため、やむを得ず歩道を通行しなければならない場合は自転車から降り、押して歩くべきと考えてください。
信号と一時停止を必ず守る

自転車は車両に区分されますので、信号のある交差点では自動車用の信号に従ってください。一時停止では、必ず停止線で一旦足をついて停止し、安全の確認をしてから発進しましょう
警察が公表しているデータによると、自転車関連事故の約7割が対自動車事故となっています。しかも、その発生状況の約8割は「出会い頭」「右左折時巻き込み」であり、それらの多くは交差点で発生していることがデータから分かります。さらには、自転車乗車中の死亡・重症事故件数のうち、約6割で自転車側に法令違反があるとされています。
よって自転車事故の多くは、信号を守ること、一時停止を守ることで防ぐことができると考えられます。また、車道の左側を走行することも、それらのリスクを少なくすることにつながるとも考えられています。
詳しく説明するとこれだけで大特集が組めてしまうので全ては説明しませんが、つまりは、繰り返しとなりますが、まずは原則として車道の左側を走行することと信号と一時停止を必ず守るよう徹底することで、あなたのライドは限りなく安全なものとなるのです。

特に下り坂では気持ちよくなってついつい速度を出しすぎてしまいがち。常に自制心を持って、自分の技術の限界を超えない走りを心がけましょう
また上記以外に、自分の技術を過信せず常に安全な運転を心がけることも大切です。特に下り坂やカーブのある場所では注意を払ってください。
必ず自転車用ヘルメットを装着する

警察の公表するデータによると、自転車乗車中の事故で死亡する人の約5割が頭部に致命傷をを負っている、とされています。頭部を保護することが何よりも重要なのです
事故を起こさない・事故に遭わない運転を心がけることも大事ですが、それでも事故のリスクを完全にゼロにすることはできません。そんな万一の事故に備え、自転車用ヘルメットの装着は必須です。近年は着用が道路交通法で努力義務と定められたことにより、少しずつ着用率が上がってきましたね。もちろん、単に法律で定められているからというだけでなく、安全上必ず必要な“マストアイテム”として捉えてください。
出発前の空気圧の点検をはじめ、日頃から購入した自転車店での整備点検の持ち込みを怠らない

できれば空気圧ゲージのついたフロアポンプも購入し、タイヤの適正空気圧を保てているか常日頃チェックしてください
タイヤの空気圧が不足していると思わぬパンクを招き、事故のリスクを高めます。そこで定期的に、できれば毎回出発前に空気圧をチェックするよう、習慣づけましょう。
また、ブレーキの不調や変速の不調も出先でのトラブルや事故につながる可能性があります。定期的に自転車専門店へ持ち込み、点検してもらうことも忘れずに。
自転車大好き声優・東城咲耶子さんからのメッセージ
知っておいて損はない「自転車×フェリー」という選択肢
実は、フェリーによっては自転車をそのまま乗せられるサービスを展開しているものもあり、自転車は船とも組み合わせて楽しむことができる、ということを知っておいて損はありません。サイクリングのプランにフェリーを組み込めればより旅の幅が広がるだけでなく、自転車でフェリーに乗るという素敵な体験もできるというわけです。
自転車アンバサダー・稲村亜美さんからのメッセージ

自転車アンバサダー 稲村亜美さん