10万円前後で買えるお薦めスマートトレーナー3選
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新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の解除後も、我々サイクリストは感染拡大防止を念頭に置いた「新しい生活様式」の実践が求められる。これを機にインドアサイクリングを楽しむ人は着実に増加することが予想される。インドアサイクリングを満喫するなら、勾配変化をリアルに再現するスマートトレーナーを使って、ズイフトをはじめとするバーチャルサイクリングを楽しむのがお勧めだ。そこで、手が届きそうな10万円前後のスマートトレーナーのお薦め機種を編集部がピックアップした。
そもそもスマートトレーナーとは
スマートトレーナーとは、インドアサイクリングの必需品・サイクルトレーナーの中でもバーチャルサイクリングアプリとの双方向通信機能を備えたトレーナーの総称。ズイフトなどのバーチャルサイクリングアプリを入れたパソコンやタブレット、スマートフォンなどとANT+やBluetoothでワイヤレス接続して使う。ライダーがペダリングすると仮想空間の分身であるアバターが走り出し、バーチャル空間で勾配が変化するとそれに応じてトレーナーの負荷が自動的に変化するのが特徴で、実走に近いリアルな走行感が味わえる。
例えばバーチャル空間で上りに差しかかると、トレーナーの負荷が上がり、変速しないとギヤが重く感じられる。勾配がきつくなるとさらに負荷が上がるので、インドアサイクリングでも実走と同じようにコースの状況によってこまめに変速する必要が出てくるのだ。
ライド中の出力を計測できるパワーメーターを内蔵するモデルも多く、パワーメーターを持っていなくてもパワートレーニングに取り組むことも可能。パワーは心拍数より運動強度の変化にリニアに反応するので正確な消費カロリーも把握しやすく、フィットネスにも効果的だ。
最初の一台はどう選べばいい?
スマートトレーナーは、これまでのサイクルトレーナー同様、後輪を負荷装置に接触させて使うタイヤドライブ式、高い実走感が得られる3本ローラー、タイヤドライブ式と3本ローラーのハイブリッドタイプ、後輪を外して自転車を設置するダイレクトドライブ式など、さまざまなタイプがある。中でもダイレクトドライブ式は静粛性に優れ、振動も発生しにくいモデルが多い。インドアで使うなら騒音や振動が少ないに越したことはないので、新しく購入するならダイレクトドライブ式がおすすめだ。
ズイフトなどのバーチャル空間の勾配をどれぐらい再現できるかも重要なポイントだ。オンラインサイクリングで最もポピュラーなズイフトでは最大15%ぐらいの勾配があるので、最低限15%前後の勾配が再現できるモデルを選びたい。
パワーメーターを持っていない人は、スマートトレーナーがパワーメーターを内蔵しているかどうかもチェックしたい。ズイフトは基本的にANT+やBluetooth対応のスピードセンサーとケイデンスセンサーがあれば利用できるが、パワーメーターやパワーメーター内蔵型のスマートトレーナーを使わないと出場できるレースに制限が設けられることもある。ズイフト以外の多くのサービスでも、パワーメーターかパワーが測れるスマートトレーナーの使用が前提になっているので、せっかくならパワーメーター内蔵モデルを選びたい。
以上を踏まえると、候補に挙がるのは10万円前後のスマートトレーナーだ。具体的にお薦めのモデルを3つ紹介しよう。
お薦めモデルその1 Xplova(エクスプローバ)・NOZA S(ノザS) 高性能を求めやすい価格で実現
ノザSは、台湾のグローバル企業グループ・acer(エイサー)が手がけるサイクリング関連機器ブランド・エクスプローバから発売されたばかりのスマートトレーナーの最新モデルだ。
同ブランドから2018年11月に発売され、コストパフォーマンスの高さで話題となったスマートトレーナー・ノザの後継機。価格を9万8000円(税抜)に抑えながら、さまざまな改良を加えて旧モデルより静音性をはじめとする性能を全体的に底上げし、異音や故障の発生リスクを低減させるなど信頼性も向上させているのが特徴だ。
旧モデルと比較すると、フライホイールの重さが5.7kgから5.9kgになり、直径も17.5cmから20.5cmになったことで実走感が向上。フライホイールの刷新に伴ってベルトも新しいものに変更し、低騒音を実現している。フライホイールには放熱用の通気口を備えたカバーが付けられ、やけどなどのリスクを低減している。
このほか、負荷をプログラムで計算する設計に変更して物理的な故障を減らす対策も実施。さらに電磁コイルとフライホイールの隙間を広げ、異音の発生リスクも下げられている。
もちろんズイフトをはじめとするさまざまなバーチャルサイクリングアプリやオンライントレーニングアプリに対応。パワーメーターも内蔵しており、アプリ上でワイヤレス接続するだけですぐにバーチャルサイクリングの世界を楽しめる。
POINT① 時速30kmで58dBという低騒音を実現
インドアで使うサイクルトレーナーで気になるのは騒音の少なさ。ノザSは時速30kmで58dBと、普通の会話(*1)や博物館館内(*2)と同レベルの静かさを実現。メーカー担当者によると、実際の音はカタログ値よりも静かに感じるといい、トレーナーの駆動音よりチェーンとギヤの駆動音や変速時の音の方が大きいぐらいという印象だそうだ。
*1:東京都環境局ホームページ 生活騒音
*2:全国環境研協議会 騒音調査小委員会「騒音の目安」
POINT② 最大出力2500W、勾配18%を再現可能
ノザSは最大出力2500Wに対応。これは他ブランドのハイエンドモデルに匹敵するスペックで、この価格帯のモデルとしては圧倒的な数値だ。スプリントを想定した高負荷かつ高強度のトレーニングにも十分対応可能だ。また、バーチャルサイクリング時の勾配変化には最大18%まで対応。ズイフトの激坂区間もバッチリ再現してくれる。
POINT③ 専用アプリでアップデートやトレーニングも
App StoreまたはGoogle Playから無料でダウンロードできる専用アプリ、エクスプローバ・ワークアウトが用意されているのも特徴。これを使えば、ファームウェアを簡単に更新できるだけでなく、トレーニングピークスのトレーニングプランと連携してトレーニングを行ったり、ストラバと連携して過去に走ったルートを再現することもできる。もちろん、ズイフトをはじめとする各種バーチャルサイクリングアプリにも対応する。
主な対応オンライントレーニングアプリ
- ズイフト
- ワンラップ
- トレーナーロード
- ルービー(※Bluetoothでは利用できないが、今後利用できるよう現在調整を行っている。)
- キノマップ
- フルガス(※Bluetoothのみ対応)
- パーフプロスタジオ(※ANT+のみ対応)
価格:9万8000円(税抜)
エクスプローバとは
エクスプローバは、台湾に本拠を置くパソコンや周辺機器を製造するグローバル企業グループ・acer(エイサー)傘下のサイクリング関連機器ブランド。グループの強みを生かした電子機器を得意とし、GPSサイクルコンピューターとスマートトレーナーをラインナップする。カメラ付きGPSサイクルコンピューターX5エボや、10万円を切るスマートトレーナー・ノザSなど、新興ブランドながら高い価格競争力と開発力の高さで早くも存在感を示している。
お薦めモデルその2 SARIS(サリス)・H3 Direct Drive Smart Trainer(H3ダイレクトドライブスマートトレーナー) 静かで高性能なスマートトレーナー
サリス(旧サイクルオプス)はサイクルトレーナーやサイクルキャリヤなどを手がけるアメリカのブランド。サイクルトレーナーはかつて、ハブ式パワーメーター・パワータップでおなじみの「サイクルオプス」というブランドで販売されており、この分野でも20年近く歴史がある。
サリスのスマートトレーナーの最新モデル・H3ダイレクトドライブスマートトレーナーは、実走感の高さと振動と騒音の少なさが最大の特徴。これはフライホイールの重量バランスを緻密にとって実現している。
最大2000Wに対応するパワーメーターを内蔵し、その精度も±2%と正確。ハブ式パワーメーターとしておなじみのパワータップで培った技術が生かされている。
サリスでは固定式サイクルトレーナーの宿命である乗り心地の不快さの解消にも取り組んでいる。MP1 Nフィニティトレーナープラットフォームは、前後左右自在に揺れる天板の上にバイクとサイクルトレーナーを固定するシステムで、実走のような自然なライドフィールを実現する。「サイクリストがインドアでもより快適にライドを楽しめるように」という社是を形にし続けるライダーファーストなブランドなのだ。
POINT① フライホイールのバランスをとって、低振動・低騒音を実現
本国アメリカで1点ずつドリル加工を施して重量バランスを取ったフライホイールを採用することで、インドアトレーナー使用時に気になる振動と騒音を低減。本体の高い安定性も相まって、時速32kmでの騒音59dBと、旧モデルと比べて圧倒的な静音性を実現している。スマートトレーナーとしては最重量級でもある9kgのフライホイールと電磁式の負荷ユニットを採用することで、実走さながらの自然なライドフィールも実現している。
POINT② MP1 Nフィニティトレーナープラットフォームと組み合わせて自然なライドフィールを実現
サイクルトレーナーの課題の一つとして、実走に近いライディングフィールをいかに実現するかが挙げられる。サリスではH3ダイレクトドライブスマートトレーナーと組み合わせて使えるMP1 Nフィニティトレーナープラットフォームによってその課題の克服に挑んだ。これは、前後左右に動く天板にトレーナーとバイクを固定し、実走さながらのバイクの動きを再現するもの。このシステムは他社製も含め多くの固定式トレーナーと組み合わせて使うことができる。
主な対応オンライントレーニングアプリ
- ズイフト
- ルービー
- トレーナーロード
ほか
H3 Direct Drive Smart Trainer
価格:12万8000円(税抜)
寸法:787.4×469.9×495.3mm(展開時)、215.9×469.9×495.3mm(収納時)
重量:21.3 kg
対応最大出力:2000W (32km/h)
最大シュミレーション勾配:20%
対応エンド:クイックリリース130mm/135mm、スルーアクスル142mm/148mm
出力計測精度:±2%
サリスとは
アメリカ・ウィスコンシン州に本拠を置くサイクルキャリヤやサイクルトレーナーの製造ブランド。サイクルトレーナー部門はかつてサイクルオプスというブランド名で展開し、ハブ内蔵式パワーメーター・パワータップも同ブランドで製造されていた。現在、UCIプロツアーチームのトレック・セガフレードと契約しており、チームにスマートトレーナーを供給。選手たちがレース前のウォーミングアップやインドアトレーニングなどに同社の製品を活用している。
問:ワイ・インターナショナル
※サリスの購入は全国のワイズロード、ワイズロードのオンラインショッピング、及び全国のサリス正規取扱店で
お薦めモデルその3 wahoo(ワフー)・KICKR CORE(キッカーコア) 拡張性の高さが魅力のスマートトレーナー
スマートトレーナーを展開するブランドが増えてきたが、孤高の存在感を放つのがアメリカのワフーフィットネスだ。同ブランドのスマートトレーナーは、ダイレクトドライブ式のキッカーを筆頭に、基本機能を踏襲したお値打ちモデルのキッカーコア、ホイールドライブ式のキッカースナップがある。いずれのモデルも勾配シミュレーター・キッカークライムやスマートファン・キッカーヘッドウインドとペアリングすることで、さらに実走感が高められる。キッカークライムは、バーチャル空間の勾配変化に合わせてフロントフォークを上下させることで、バイクの傾きまで再現できる。キッカーヘッドウインドは、バーチャル空間でスピードを上げるとより強い風が吹き、あたかも実走で速度を上げたときのような感覚までも再現してくれる。これらが一体となって唯一無二の“インドアサイクリングシステム”となるのがワフーフィットネスの製品の特徴だ。
キッカーコアは、上位モデル・キッカーより価格を抑えたモデルながら、最大パワー1800Wに対応し、最大勾配16%の再現が可能。ズイフトのようなインドアサイクリングでも勾配の再現力に不安はないし、スプリント練習も問題なく行える。もちろん静音性の高さや滑らかな動作、振動の少なさも上位モデルと遜色ない。さらにキッカークライムやキッカーヘッドウインドとペアリングすることで、より実走感のあるインドアサイクリングを楽しめる。将来の拡張性を考えると、価格以上の価値があるスマートトレーナーだ。
POINT① 上位モデル・キッカー譲りの高い実走感と静かさ
キッカーコアに搭載されるフライホイールは、上位モデルのキッカーより軽い5.4kgとなっているが、キッカーゆずりのベルトモータードライブトレインと高度なアルゴリズムを採用することでリアルな走行感と静音性を両立。キッカーより約4万円安い価格設定ながら、最大パワー1800Wに対応し、勾配シミュレーションも16%まで対応するなど、インドアサイクリングを存分に楽しめるポテンシャルを秘めている。
POINT② キッカークライム&キッカーヘッドウィンドの組み合わせで唯一無二の実走感
ワフーのスマートトレーナーの最大の特徴は、別売の勾配シミュレーター・キッカークライムやスマートファン・キッカーヘッドウインドによってバーチャルサイクリング中の地形の変化やスピード変化もシミュレーションできること。キッカークライムでは上り20%、下り10%の勾配が再現可能で、勾配の変化に応じてバイクのフロントフォークが持ち上がる。キッカーヘッドウインドはスピードが上がればファンから送られる風も強くなって高速走行を再現するほか、ワークアウト中の負荷や運動強度に応じて風量をコントロール。トレーナー自体の自然で優れたライドフィールと相まって、よりリアルな実走感を味わえる。
主な対応オンライントレーニングアプリ
- ズイフト
- フルガス
- ルービー
- キノマップ
- トレーナーロード
- サファーフェスト
ワフーとは
アメリカ・ジョージア州で創業したワフーフィットネスは、サイクルコンピューターやスマートトレーナー、心拍センサーなどを展開。UCIワールドツアーの強豪チーム・イネオスとのパートナーシップを結んでいるほか、2018年からカチューシャ・アルペシン、ボーラ・ハンスグローエにも機材提供を行っている。スマートトレーナーの分野では勾配シミュレーターやスマートファンと連携する独自システムを構築し、インドア用スマートバイク・キッカーバイクを発表するなど、革新的な製品を続々と発表している。
ズイフトだけじゃない スマートトレーナー用アプリいろいろ
スマートトレーナーが本領を発揮するのは、バーチャルサイクリングアプリと組み合わせたときだ。ペダルをこげばバーチャルのコースの中で自分の分身・アバターが走り、勾配変化に合わせてスマートトレーナーの負荷が自動で変わるからだ。バーチャルサイクリングアプリではズイフトが圧倒的な支持を集めているが、現在はさまざまなサービスが展開されている。CGではなく実写ベースの映像を利用するサービスや実在のコースを走れるサービスもあるので、好みのサービスを探してみよう。
RGT Cycling(RGTサイクリング)
操作のためのスマートフォン用のモバイルアプリと、画面表示のためのPCやタブレット用のスクリーンアプリという2つのアプリを組み合わせ、奥行きとリアルさを高い次元で再現したCGの世界をCGのアバターで走る。コースはステルビオ峠やモン・ヴァントゥなど実在のコースも選べる。トレーニングピークスで無料公開されているワークアウトを利用したトレーニングも可能。日本語には未対応。一部機能は無料で利用でき、全機能を利用できるプレミアム会員は月14.99ドル。
BKOOL(ビークール)
https://www.bkool.com/en/cycling-simulator
実在のコースも多数アップされており、3Dビュー(CG)とビデオ(実写)、地図と表示モードを切り替え可能。レースやリーグ戦、グループライドも楽しめる。PC(Windows/Mac)、iPad、Androidと多彩なプラットフォームに対応。日本語にも対応し、Stravaとの自動連携も行える。月9.99ユーロ~。
ROUVY(ルービー)
ツール・ド・スイスのデジタル版「デジタル・スイス5」が行われたサービス。実写による実在のコースをCGのアバターで走る。PC(Windows/Mac)、iPad/iPhone、Androidに対応。レースやグループライドも随時開催されているが、日本語には未対応。月12ドル~。
TRAINERROAD(トレーナーロード)
インドアでのワークアウトに特化したサービス。ワークアウトの種類が豊富なのが特徴。CGや実写によるバーチャルライドの要素はないので、トレーニングツールという要素が強い。ストイックに追い込みたいサイクリスト向け。日本語には対応していない。月19.95ドル~。
FULGAZ(フルガス)
4Kの実写映像を使ったバーチャルサイクリングサービス。リアルで美しい映像でインドアサイクリングを楽しめるのが魅力。iPad、iPhone、Apple TVとアップル系のデバイスにのみ対応(PCには非対応)。日本語には対応していない。月10.99ドル~
The Sufferfest(サファーフェスト)
ワフーフィットネスと提携しているサービス。ツール・ド・フランスや世界選手権、ジロ・デ・イタリアなどUCIレースのコースの実写映像を使っているのが特徴。世界の一流トレーニングコーチが作成したワークアウトのライブラリがあり、強化したいポイントに応じた11のカテゴリーから自由にワークアウトを行える。2月にはツアー形式のイベントも開催された。日本語には対応していない。月14.99ドル~。