ミドルグレード・ディスクロード厳選5台一気試乗【試乗編その1】
目次
スポーツバイクファクトリースズキ代表・鈴木卓士氏と自転車ジャーナリスト・安井行生氏による、ミドルグレード・ディスクロード一気試乗の第2回目。今回から試乗編だ(前回の記事はこちら)。ここでは厳選した5台のうち、ビアンキ・スプリントディスク、カレラ・ER-01ディスク、ラピエール・ゼリウスSL500ディスクの3台を試乗し、インプレッションをお届けしよう。(text:編集部)
ビアンキ・スプリント ディスク
名門ビアンキの中核を担う戦略車
一時期、オシャレな街乗り自転車のイメージが強くなってしまったビアンキ。しかし最近では独自技術の「カウンターヴェイル」を搭載したモデルを、ユンボヴィスマをはじめとしたトッププロチームに供給するなど、クオリティの高いモデルを送り出し続けている。
そして万能ロードカテゴリーのミドルレンジに追加されたのがスプリント。センプレの後継機である。近年では珍しいほどスッキリとした直線基調のフレームは、ところどころに「空気抵抗も意識してますよ」的な雰囲気を匂わせつつ、オーソドックスにまとめられている。コンパクトなリヤ三角が“2020年”を主張するくらい。ダウンチューブにブランド名を大書きし、トップチューブ前端に車名を小さく入れるというグラフィックも伝統に則ったもの。
しかしよく見るとトップチューブとダウンチューブには透かしで小さな「Bianchi」ロゴが一面に入っており、カタチの面でもグラフィックの面でも、新しさと懐かしさをうまく融合させた感じだ。スプリントは2020年春に価格が改定され、ディスクブレーキ仕様はシマノ・105完成車で20万円台前半となった。名門ビアンキの売れ筋となるであろう注目のロードバイクである。
Suzuki’s IMPRESSION:130年以上の歴史は伊達じゃない
かなり好印象。まず、ゼロスタートからの加速は非常に軽い。メジャーブランドらしい走りの良さが出ている。ハンドリングは軽快で、個人的に好みの味付け。ヒルクライムも、バイク全体のバランス感によってよく走る。フォーカス・イザルコレースディスク 9.6はバイクの後ろが粘るタイプだが、これは全体のバランスがいい一台。ビアンキ好きにはもちろん、走りそのものを追求する人や、レーシーな走りをする人に向く。快適性はフワフワというわけではないが、バンプでも意外と跳ねにくい。見た目で選んでも走りで選んでも満足できる一台。大衆向けのバイクも多く出しているビアンキだが、このクラスもなかなかいい走りをしてくれる。伊達に130年以上の歴史を持っているわけではない。
SPEC
価格:22万8000円(税抜)
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
メインコンポ:シマノ・105 R7020
ホイール:シマノ・WH-RS171
タイヤ:ヴィットリア・ルビノ(700×28C)
ハンドル:JD・JD-RA38A
ステム:JD・JD-ST182A
サドル:セラロイヤル・SR2302
シートポスト:JD・SP-02.1
サイズ:47、50、53、55、57
カラー:ブラック×CK16フルグロッシー、CK16×ブラックフルグロッシー
試乗車重量:8.94kg(ペダルなし)
GEOMETRY&SIZE
A
|
B | C | D | E | F | G | H | I | J | |
47
|
420 | 515 | 74.5° | 70.5° | 60 | 410 | 580 | 43 | 105 | 377 |
50 |
450
|
525 | 74.5° | 71.5° |
60
|
410 | 582 |
43
|
110 | 383 |
53 |
480
|
535 | 74° | 72° |
68
|
410 | 583 |
43
|
125 | 384 |
55 |
500
|
550 |
73.5°
|
73°
|
68
|
410 | 588 |
43
|
140 | 388 |
57 |
520
|
560 |
73.5°
|
73°
|
68
|
413 | 593 | 43 | 155 | 393 |
試乗車サイズは50。単位:mm(C、Dを除く)
Other Line Up 1〜「アリアディスク」
アリアはミドルグレードのエアロロードバイクシリーズだ。TTバイクである「アクイラCV」の設計データを活用して開発され、「アクイラCV」直系のモデルと位置付けられている。そのディスクブレーキ仕様がこの「アリアディスク」である。空気抵抗を減少させるため、フレームとフォークは精密に設計され統合されたデザインを取る。メインコンポーネントはシマノ・105で、ホイールはフルクラム製のものを採用するなど、完成車としてのトータルバランスにも優れる。価格は32万円(税抜)だ。(text:編集部)
Other Line Up 2〜「オルトレXR3 ディスク シマノ105」
オルトレシリーズはビアンキのエアロレーシングモデルに位置づけられる。このオルトレXR3はプロユースのXR4のセカンドグレード的モデルで、こちらはメインコンポーネントをシマノ・105としたもの。この上に同・アルテグラ仕様もある。ブランド全体としてはミドルグレードの位置付けだが、国内プロチーム「さいたまディレーブ」も使用するモデルだ。ビアンキレースバイクのアドバンテージである振動除去素材「カウンターヴェイル」を手の届きやすい価格で体感できる一台。ホイールをグレードアップすれば、上位モデルと遜色のない走りができるポテンシャルも秘める。価格は38万8000円(税抜)だ。(text:編集部)
カレラ・ER-01 ディスク
カレラはミドルグレードでも手を抜かない
かつて、フレームセット9万8000円という価格ながら、適度な剛性感としっかり進む走行性能を持っていたカレラのER-01。ER=エンデュランス・レーシングという車名のとおり、フワフワでもなくカリカリでもない、バランスのとれた佳作だった。しかもカーボンコラムのテーパードフォークで、フレームサイズはカーボンフレームとしては多めの6種類が用意され、塗装のクオリティは高く、カラーバリエーションも多い。それは、「あの硬派なカレラが素敵なカフェレーサーを作ってくれた」という、2016年ロードバイク界の“ちょっといい話”だった。現在は少々値上げして10万8000円だが、それでも性能と内容を考えれば大バーゲンである。
2017年にはディスク版であるER-01ディスクを追加。フォークとリヤ三角をディスクに最適化しながら、これも12万8000円と破格だった(現在は13万8000円)。2020シーズンも継続となるカレラのER-01シリーズ、実は完成車も用意されている。今回試乗するのはもちろんディスク版の完成車。コンポーネントはシマノ・105、ホイールはヴィジョンで25万円弱と、こちらも破格である。
Yasui’s IMPRESSION:玄人をうならせるミドルグレード
素性のいいバイクは10m走ればそれと分かる。このカレラもそうだった。完成車25万円とは思えない反応性、クセのないペダリングフィール、シャープだが素直なハンドリング。もちろんハイエンドバイクのそれとはレベルが違うのだが、体によくなじみ、しっかり感があり、適度な軽快感もある。この価格ながらホイールにしっかりとしたヴィジョンを入れたのも良かった。たぶんこのフレームは、デュラエースで組んでボーラディスクを入れても全然OKなポテンシャルを持っている。基本設計は5年前のものだが、魅力はまったく翳っていない。結局、こういうバイクが“いいバイク”なのだと思う。派手さはないが玄人をうならせるミドルグレードである。
SPEC
価格:24万5000円(税抜)
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
メインコンポ:シマノ・105 R7020
ホイール:ヴィジョン・チーム30ディスク
タイヤ:ハッチンソン・インテンシブ2デビルズグリップ(700×25C)
ハンドル:FSA・ヴェロコンパクト
ステム:FSA・ゴッサマー
サドル:サンマルコ・ショートフィット レーシング ワイド
シートポスト:FSA・ゴッサマー
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
カラー:A9-106マット、A8-100マット、A8-101グロッシー、A7-104グロッシー、A7-105グロッシー
完成車実測重量:9.75kg(ペダルなし)
※実際の完成車とは仕様が異なる場合があります
GEOMETRY&SIZE
A
|
B | C | D | E | F | G | H | I | J | |
XXS
|
420 |
506
|
75° | 71° | 75 | 408 | 582 | − | 115 | 367 |
XS |
460
|
515 | 74.9° | 71.5° |
72.5
|
410 | 576 |
−
|
125 | 371 |
S |
490
|
533 | 74.2° | 72° |
72
|
411 | 584 |
−
|
150 | 376 |
M |
520
|
551 |
73.5°
|
72°
|
72
|
413 | 596 |
−
|
175 | 380 |
L |
550
|
569 |
73°
|
72°
|
72
|
413 | 608 | − | 200 | 384 |
XL |
580
|
587 |
72.5°
|
72°
|
72
|
415 | 621 | − | 225 | 389 |
試乗車サイズはXS。単位:mm(C、Dを除く)
Other Line Up 1〜「TD-01エア」
よりグレードの高いディスクロードも紹介しよう。フレームセット販売のみとなるが、上位モデルとして「TD01-エア」がある。カレラのエアロロードバイクのミドルレンジに位置づけられ、空力性能を高めつつも快適性を犠牲にしない、トータルバランスに優れた乗り味を持つ。カレラのファンとなったなら、次に選びたいバイクである。フレームセット価格は24万円(税抜)だ。(text:編集部)
Other Line Up 2〜「エラクルエア」
カレラの中ではハイエンドクラスに位置づけられるエアロロードだ。こちらもフレームセット販売のみとなる。プロが使って満足できる空力性能と剛性を持ちながら、同時に快適性も犠牲にしないバイクである。性能だけでなく、もはや芸術の粋に達すばかりのそのカラーリングも大きな魅力だ。ミドルグレードディスクロードで経験を積み、その先に手に入れる上級バイクとして選びたい。フレームセット価格は36万円(税抜)。(text:編集部)
問・ポディウム
ラピエール・ゼリウス SL500 ディスク
個性的なフレンチオールラウンダー
万能ロードがどれも似たような形状に収れんしつつある中、フランスのラピエールは超個性的なゼリウスを万能モデルとしてラインナップしている。ゼリウスの個性とは、シートステーがシートチューブではなくトップチューブに接合されていること。3Dチューブラーテクノロジーと呼ばれるそれは、GTのトリプルトライアングルと似ているが、かつてのトリプルトライアングルはシートステーがシートチューブにもトップチューブにも接合されており、接合箇所を増やすことで剛性向上を狙ったものだった。
しかし3Dチューブラーテクノロジーの形状を見る限り、意図はシートまわりの柔軟性とリヤ三角の路面追従性を上げるためだと思われる。シートチューブはシートステーの拘束を受けなくなるので変形の自由度が上がる。シートステーは長くなるのでより柔軟になる。ディスク版は左右のシートステーをつなぐブリッジがなくなるぶん、さらに柔軟性が上がるはずだ(なお、GTもフローティングトリプルトライアングルとして同様の設計をグラベルロードなどに採用している)。
試乗するのはセカンドグレード。105完成車で33万円となるゼリウスSL500ディスクである。
Yasui’s IMPRESSION:その見た目同様、走りも個性的
しかしこのシート集合部の複雑な形状はどうやって金型から抜いているのだろう? 接着をうまく使っているのだろうが、こんな知恵の輪みたいな造形ながら塗装面の平滑度はかなり高い。成型技術が優秀なのか、仕上げに手間をかけているのか。いずれにせよミドルグレードながら丁寧な作りである。その独特な設計によって、剛性感もかなり独特なものになっている。脚当たりは非常にマイルドで、快適性は非常に高い。リヤ三角の剛性が抑えられているため、カンカンに反応するわけではないが、動力伝達性は悪くない。クリテリウムというよりハイスピードクルーズに合う乗り味。フレームの性格を考えると、硬めのホイールとの相性がいいはずだ。
SPEC
価格:33万円(税抜)
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
メインコンポ:シマノ・105 R7020
ホイール:シマ ノ・WH-RS171
タイヤ:コンチネンタル・ウルトラスポーツ2SL(700×25C)
ハンドル:ラピエールオリジナル
ステム:ラピエールオリジナル
サドル:ラピエール・ロードVL-1A34
シートポスト:ラピエール
サイズ:46、49、52、55
カラー:シルバー
試乗車重量:8.65kg(ペダルなし)
GEOMETRY&SIZE
A
|
B | C | D | E | F | G | H | I | J | |
46
|
460 |
520
|
74° | 72° | 67 | 405 | − | − | 105 | 376 |
49 |
490
|
535 | 73° | 72° | 67 | 405 | − |
−
|
120 | 377 |
52 |
520
|
550 | 73° | 73° | 67 | 405 | − |
−
|
140 | 385 |
55 |
550
|
570 |
72.5°
|
73° | 67 | 405 | − |
−
|
160 | 394 |
試乗車サイズは46。単位:mm(C、Dを除く)
Other Line Up 1〜「センシウム300ディスク」
センシウムは、ベーシックなエンデュランスロードシリーズだ。アップライトな乗車姿勢が取れ、長距離ライドを快適に楽しめる。緩やかなアーチを描くトップチューブから細身のシートステーで、路面からの突き上げをいなす。このモデルはシマノ・ティアグラをメインコンポーネントとし、カーボンのディスクロードながら22万5000円(税抜)の価格を実現する。(編集部)
Other Line Up 2〜「ゼリウス SL600 ディスク」
ゼリウス SL500 ディスクの上位モデル。メインコンポーネントがシマノ・アルテグラとなり、ホイールもマヴィック・アキシウムにグレードアップしている。価格は39万円(税抜)。購入後にホイールをアップグレードすれば、ほぼ死角なしの一台に仕上がるだろう。(編集部)
問・東商会
【試乗編その2】へ続く
【試乗編その2】では、メリダ・スクルトゥーラディスク4000、ピナレロ・ラザ ディスクを試乗&インプレッションする。