ミドルグレード・ディスクロード厳選5台一気試乗【試乗編その2】
目次
スポーツバイクファクトリースズキ代表・鈴木卓士氏と自転車ジャーナリスト・安井行生氏による、ミドルグレード・ディスクロード一気試乗の第3回目。今回は試乗の後編(前回の記事はこちら。導入編はこちら)。ここでは厳選した5台のうち、メリダ・スクルトゥーラディスク 4000、ピナレロ・ラザ ディスクの2台を試乗し、インプレッションをお届けしよう。最後にはコラムとして、実際にミドルグレード・ディスクロードを所有するユーザーの声を紹介する。(text:編集部)
メリダ・スクルトゥーラディスク 4000
ディスクロードが得意なメリダの中堅機
2〜3年前まで「リムブレーキモデルをディスクブレーキ化したモデルはバランスが悪い」とあちこちで書きまくっていたのだが、そんなときでも「これだけはバランスがほぼ完ぺきだ」と思ったのがメリダのスクルトゥーラ・ディスクだった。それは、当時ディスク化によって不可避に発生していたギクシャク感やペダリングの重ったるさがほとんど感じられず、リムブレーキ版と同レベルのしなやかさと軽快感を備えていたからだ。ブラインドテストだったらリムブレーキ版と判別できないかも……と思ったものだ。
もちろんそれはCF4カーボンを使ったハイエンドのスクルトゥーラの話。今回試乗するのは下位モデルとなるCF2版スクルトゥーラ・ディスク4000。注目はCF4のようなバランスを備えているか、だ。
上位モデルとチューブ形状は似ているが、ジオメトリはヘッドチューブを長く取るなど、エンデュランス志向になっている。メインコンポは105ディスク。クランクにFSAを、サドルやハンドル、ホイールにオリジナルパーツを使ってコストを下げた結果、27万円弱という価格を実現している。ミドルグレードながらフレームサイズが7種類と多いことも称賛すべき点だろう。
Yasui’s IMPRESSION:スクルトゥーラらしいバランス感
剛性感はマイルドで、しなやかさを生かしてスイスイ進ませるというスクルトゥーラらしいもの。上りもなかなか軽快だ。ハンドリングはかなりスローに感じる。ジオメトリ表を見てみると、CF4フレームよりヘッド角がわずかに寝かされている。もしかしたらフォークオフセットも変えられているのかもしれない。しかしこれは安定感が高いとも言い換えられる。コンポーネントやホイールの重さを感じる場面もあるが、ディスク化によるデメリットはほぼ感じられず、素性はかなりいい。快適性の面でも欠点はなく、吸収能力も減衰能力も高い。現行スクルトゥーラは息の長いモデルだが、ロードバイクのプラットフォームとしてかなり優秀である。
SPEC
価格:26万9000円(税抜)
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
メインコンポ:シマノ・105 R7020
ホイール:メリダ・エキスパートディスクSL22
タイヤ:マキシス・ドロミテ(700×25C)
ハンドル:メリダ・エキスパートコンパクトロード
ステム:メリダ・エキスパート31.8-5
サドル:メリダ・コンプSL
シートポスト:メリダ・カーボンエキスパートSB15
サイズ:41、44、47、50、52、54、56
カラー:グリッタリーシルバー×ブラック、マットブラック×グロッシーアンスラサイト
試乗車重量:8.52kg(ペダルなし)
GEOMETRY&SIZE
A
|
B | C | D | E | F | G | H | I | J | |
41
|
410 |
500
|
75° | 70.5° | 70 | 408 | − | − | 100 | 366 |
44 |
440
|
510 | 75° | 71° | 66 | 408 | − |
−
|
120 | 376 |
47 |
470
|
520 | 74.5° | 71° | 66 | 408 | − |
−
|
130 | 373 |
50 |
500
|
535 |
74°
|
72° | 66 | 408 | − |
−
|
140 | 375 |
52 | 520 | 545 |
74°
|
73° | 66 | 408 | − |
−
|
150 | 386 |
54 | 540 | 560 | 73.5° | 73° | 66 | 408 | − | − | 170 | 390 |
56 | 580 | 575 | 73° | 73° | 66 | 408 | − | − | 190 | 394 |
試乗車サイズは47。単位:mm(C、Dを除く)
Other Line Up〜「スクルトゥーラディスク 400」
スクルトゥーラディスクのアルミフレームバージョン。メリダ本社工場製のトリプルバテッドアルミフレームが使われ、軽量に仕上がっている。また独自の塗装処理により、高品質で耐久性に優れた仕上げを実現。メインコンポーネントはシマノ・105で価格は19万9000円(税抜)とコストパフォーマンスはかなり高い。(text:編集部)
Other Line Up〜「スクルトゥーラディスク 6000」
スクルトゥーラディスク 4000の上位モデル。コンポーネントがシマノ・アルテグラになり、ホイールがフルクラムレーシング700DBにアップグレードされている。価格は35万9000円(税抜)。(text:編集部)
ネットで注文、店舗で受け取り〜「メリダショップ」
メリダではECサイト「メリダショップ」を用意しており、公式ウェブサイトで即オンライン注文し、取り扱い店舗で受け取ることができるサービスを展開している。公式サイトでのネット注文でショップを通じて受け取るので、サポートやメンテナンスの不安がないのがうれしい。(text:編集部)
問・ミヤタサイクル
ピナレロ・ラザ ディスク
かつての面影を残したピナレロのディスク車
ピナレロは2014年のドグマF8をきっかけに、曲線を多用したマッシブなフォルムに別れを告げ、カムテール形状を多用したスマートなシルエットへとラインナップを一新。現在のフラッグシップ、ドグマFからプリンスシリーズまで、その基本形状を共有している。しかしピナレロのカーボンバイクで一台だけ、かつてのピナレロの面影を残したモデルがある。エントリーグレードのラザである。
左右非対称設計や、かつてピナレロのアイコンだったオンダフォークなどを搭載したラザに、ディスクブレーキモデルが追加されたのは昨年のこと。メインコンポはシマノ・105。フロントフォークは昔ながらのオンダフォークではなく、ドグマFに似た形状のものにアップデート。クランクにはシマノのグレード外品を使うなどコストダウンの形跡もあるが、〈カーボンフレーム×ディスクブレーキ×シマノ・105〉というパッケージで30万円弱と、ピナレロにしてはお買い得な価格に抑えられている。
取り寄せサイズも含めると、エントリーモデルながらフレームサイズはなんと11種類もある。この点においてピナレロは相変わらずロードバイク界の良心である。
Suzuki’s IMPRESSION:ピナレロらしさがこのクラスにも宿っている
プラットフォームとしては1世代前になるが、乗るとやっぱりピナレロ。フォークの剛性が高く、ヘッドまわりに塊感があり、よく進む感じがする。しかし凹凸では跳ねにくい。本当によくできたフォークだと思う。パワーをかけるとフレーム後半がわずかにしなり、それを前が受け止めてグワッと進む印象。どっしりとしていて安定感がある。ピナレロらしさはこのクラスにも宿っている。ピナレロはブランドとして選ばれることも多いが、これは走りで選んでもいい。このフォークの塊感、フレームの剛性感は、他メーカーの同クラスのバイクにはないもの。ピナレロを見直した。スペックを考えると割高だが、他のメーカーとはこだわりが違う。
SPEC
価格:29万8000円(税抜)
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
メインコンポ:シマノ・105 R7020
ホイール:シマノ・WH-RS171
タイヤ:ヴィットリア・ザフィーロ(700×25C)
ハンドル:モスト
ステム:モスト
サドル:モスト・リンクス
シートポスト:モスト・テイルAL
サイズ:44SL、46SL、50、51、53、54、55、56、57、59
カラー:ブラックマット、ネイビーマット
試乗車重量:9.09kg(ペダルなし)
GEOMETRY&SIZE
A
|
B | C | D | E | F | G | H | I | J | |
44SL
|
460 |
503
|
74.4° | 70° | 67 | 406 | 565 | 43 | 115 | 355 |
46SL |
485
|
515 | 74.4° | 70.5° | 67 | 406 | 575 | 43 | 120 | 367 |
50 |
520
|
525 | 74° | 71.4° | 72 | 406 | 575 | 43 | 125 | 372 |
51 |
535
|
535 |
73.7°
|
72° | 72 | 406 | 578 | 43 | 130 | 378 |
53 | 550 | 545 |
73.7°
|
72.5° | 72 | 406 | 583 | 43 | 144 | 384 |
54 | 560 | 550 | 73.4° | 72.8° | 72 | 406 | 583 | 43 | 152 | 384 |
55 | 570 | 557 | 73.4° | 72.8° | 72 | 406 | 590 | 43 | 163 | 388 |
56 | 580 | 565 | 73° | 73.2° | 72 | 408 | 592 | 43 | 170 | 390 |
57 | 595 | 575 | 73° | 73.7° | 72 | 408 | 596 | 43 | 184 | 396 |
59 | 615 | 587 | 72.4° | 73.4° | 67 | 408 | 605 | 43 | 210 | 395 |
試乗車サイズは50。単位:mm(C、Dを除く)
Other Line Up〜「プリンス ディスク(シマノ・105完成車仕様)」
ピナレロ不朽の名作、プリンスの最新版。ドグマF10の技術を受け継ぎ、エアロダイナミクスを進化させたレーシングバイクへと仕上げている。こちらのモデルはシマノ・105完成車で、価格は43万円(税抜)。アルテグラ完成車もある。ホイールはオールラウンドに使えるフルクラム・レーシング600DBを採用。ピナレロの真髄を手の届く価格で味わえる一台だ。(text:編集部)
Other Line Up〜「プリンス FX ディスク(シマノ・アルテグラ完成車仕様)」
「プリンス ディスク」よりもグレードの高いカーボン素材を用いて軽さと反応性を向上させ、ロードレースやヒルクライムに最適なレースバイクに仕上げたのがこのモデルだ。こちらはそのアルテグラ完成車仕様で、価格は62万8000円(税抜)。ホイールをアップグレードしてやれば、もはやトップモデルと遜色ない一台へと仕立てることができるだろう。(text:編集部)
問・ピナレロジャパン
リアルなユーザーを直撃! ミドルディスクロードのポイントは?
ここではミドルグレードのディスクロードを選んだユーザーに、購入後にどのようなポイントに手を加えたかを直撃取材! ミドルグレードだからこそ、自分の使い方や好みに合わせてカスタマイズも自由自在だ。(text:編集部・江里口 恭平)
足まわりを一気に高速巡航仕様へ!
小林尚樹さん
ベースバイク:スペシャライズド・アレースプリント
初めてのスポーツバイクとして、スペシャライズドのアレースプリントを選んだ小林さん。「おいしいものを食べに行ったりするのが楽しそうだなと思って乗り始めましたが、購入後半年ほどで、足まわりをディープリムホイールにアップグレードしました。明らかに平地の巡航速度が上がりましたね!おかげで仲間とのグループライドでも先頭を引くことが増えました(笑)」。また、ディスクローターを上位モデルへ交換したのは、「やっぱり趣味なので安全に走って、ケガなく帰ってくるためには必要かなと思って選びました」。近頃は激坂巡りをする機会も増えてきたということで、「次はスプロケットをもっと歯数の大きいものへ交換しようか考え中です」。
カーボンフレームに乗り換えてもっとオールラウンドに
谷村暁之さん
ベースバイク:キャノンデール・スーパーシックスエボ
トライアスロンをたしなむ奥さんに影響されてロードバイクに乗り始め、キャノンデールのキャード8を5年乗り倒した後に「坂をもっと軽く上りたい」と思い2台目に選んだこちらのモデル。「まだ新しくなってから走りこめていませんが、今のところ上りはあんまり変わりませんね(笑)。けれど、平地では明らかに速く楽になりました」と、アルミからカーボンフレームへの乗り換えの差を実感中。以前はリムブレーキモデルだったため、「ディスクブレーキとなって、下り坂での操作性がすごく良くなりました」。ニューバイクで奥さんと共に今年はヒルクライムレースにチャレンジして、ベストタイムの更新を狙っている。
長く一緒に楽しむために自身にぴったりの一台へ
酒井ご夫妻
ベースバイク:キャノンデール・シナプス、ブリヂストンアンカー・RL6D
もともとクロスバイクに乗っていた旦那さんが、息子さんがロードバイクに乗り始めたことを機に、自身もロードバイクをと選んだのがキャノンデールのシナプス。「長距離を楽に走りたいという目的にすごくマッチしています。普段はグルメライドなどを楽しんでいるのですが、昨年はお店のチームでもてぎエンデューロにも出走するなどさまざまに走っていますね」。そしてチームの人に勧められ、ホイールをグレードアップ。「ホイールを換えたことで、脚の力がよりダイレクトに進む力に伝わっている感じがしますね。あとはスプロケットのラチェット音がカッコいいです」。
そして息子さん、旦那さんに続いて奥さんもロードバイクに乗り始め、「私の身長に合わせたモデルということで、夫とショップさんとでどんどん決まって、私はこのカラーを選んだだけなんですけどね(笑)」と、アンカーのRL6Dにカラーオーダーシステムからマジョーラカラーを選択。「見る方向によって緑や紫などといろんな色を見せてくれるのがきれいで気に入っています」。握力が強くない奥さんにとってディスクブレーキは必須とのことで、引きしろなどをショップにセッティングしてもらい乗りこなしている。今では親子三人で週末のサイクリングを楽しんでいるまさに自転車一家だが、「あとは娘も一緒に乗って、家族でエンデューロのチーム参加なんてしてみたいですね」と二人で笑いながら語ってくれた。